ぼくはきっとやさしい

著者 :
  • 河出書房新社
2.88
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本棚登録 : 278
感想 : 28
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  • Amazon.co.jp ・本 (148ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309027845

感想・レビュー・書評

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  • 分かるような分からないような…。メンヘラ男子に少しだけ共感。

  • 読書開始日:2022年3月2日
    読書終了日:2022年3月3日
    所感
    とても好きな作品。
    装画通りの読後感。
    インドが一瞬でも舞台になる作品はなぜか自分の中で外れがない気がする。
    岳文がかなり拗らせてる。
    でも自分と重なる部分は沢山ある。
    さも自分しか考えつかないような思想を神秘に感じ、ひけらかしてしまう感じなんか特に。
    冬実の岳文への一言は完全に自分へもぶっ刺さった。「女のこの言外のかしこさを、舐めたらだめだよ。あなた程度の神秘なんて、みんなすぐにわかる、でもことばにしないだけ」
    惚れた女のこにたびたび水に落とされる部分もわかる。本当は落とされていないんだろうけど、岳文の記憶の脚色。
    ずぶずぶに落ちていく気持ちよさもわかる。
    破壊衝動。
    されたい衝動。
    駆られる。
    純粋は犯罪であり、暴力というのもとても共感できる。なんか不思議だ、純粋は良さだというが、純粋はすぎると上記の通り。
    この世に純粋なんてものは実はないんだ。
    ちょうどいいところを純粋と言って、それがわからないから岳文なんだ。
    なんか通ったことのある道を少しだけ違う人格で見てるような気持ちになった。
    これまでを思い出せるいい作品。
    日記がモチーフになってるからかな。
    良作。

    手のひらと手のひらが繋がる経験は、他の何にも代替の効かない、まったき閃光
    こういうときに、季節が役
    いわせてもらえた、と言う感謝の気持ちが湧き上がる
    体温と拒絶の温度との落差に耐え切れず、ぼくはしずかにからだを離した
    現世的幸福と幻想的幸福を区別すべきでない。
    あまり現実に拘泥すると、現実の範囲が狭まる
    日記を誰かに見せると、都合の良い物語になる。岳文は記憶の脚色を自覚している
    女のこの言外のかしこさを、舐めたらだめだよ。あなた程度の神秘なんて、みんなすぐにわかる、でもことばにしないだけ
    ぼくと冬実の会えない時間は、こんなにも違った
    垂れる滴の圧倒的おもさが、じぶんのからだの外枠を象る
    言語よりは非言語、意識よりは無意識で会話していると信じているぼくらの、拭いがたいノスタルジー
    慇懃無礼
    合理的にことを進めるだけの謝意
    官能的な検索
    長考を、待っててくれた
    わたしは男らしいよりやさしいを優先する。そりゃときどきは、男らしい本能が欲しい時、女の本能が燃える時もある。だけどわたしの個性は人間としての優しさを優先する
    耳朶をはむ、魔除け
    ことばの介在しない曼荼羅
    からだのすみずみにまでリズムを充填させ、なんでもない道でも楽しそうに歩く人間が、いつだってモテる
    他人のことが怖いから、他人に自分をみつけて、委ねようとする。
    自分を、他人に預ける。
    好きな女の子の心の中に住みたかった
    恋をしているときは心身をまるごと相手に預けたかった。それでもあまる個の核が残る。それが厭わしい。
    7/10くらいが共感できるようなことを、情熱と自分の文体を保ち続けながら書き、言うこと
    純粋こそが暴力、犯罪
    岳文の純粋は壊す。ゆえに小さくなりたい。
    変な衝動は、純粋なんだ
    能動でも意思でもないなにかが、たびたび岳文を水に落とす、どこかへいけと
    日記、まちがっていたのは実感とことばの関係ではない、流れ
    キャッチの距離

  • 最近、こういう主人公みたいなやつが増えている気がする・・・。付き合いづらくてめんどうくさい。現実にいたらこいつにも周りで付き合ってあげているやつにもイライラしてしまいそう。

    どういった思いで、こういうひとを主人公にしたんだろう。

  • 「1R1分34秒」で第160回芥川賞を受賞した町屋良平さんの2017年初出作品。

    受賞作品は未読で町屋さんの作品を読むのは本作が初めて。

    無気力系男子・岳文が主人公。
    無気力なのに恋に落ちるのは一瞬。

    同級生の冬実、インド旅行で出逢ったセリナ、弟の彼女の心佳。

    デート中の会話も意味不明だし恋愛ベタなのに、好きになると周りが見えなくなって猪突猛進、無謀な恋を繰り返す岳文だが、なんとなく憎めない。

    親友の照雪、弟の海斗、母親、登場人物達もみんな淡々とした人達ばかり。

    独特な空気感の中で描かれた恋愛小説。

    好みは分かれそう。

  • 独特な世界観
    あらすじの恋愛ピュアストーリーとは程遠かったけど、素敵な本、独特な表現が多くて文学系

  • "メンヘラ"と母親から言われる、地に足のついていないふわふわ系主人公。
    自意識は過剰だけど自我がない彼は、日記を書くことで自分の人生を創っている。思い出し、書き足し、細部を描写し・・・そうして、日記は自分よりも自分になる。
    彼が実存を自覚できるのは、自分の身体性を思い出せるとき。だから感情や痛み、そういうものを与えてくれる誰かに依存したくなってしまうのかな。
    彼に自分と似て非なる弟がいて良かった。ほんとに。
    他者との境界をようやく覚えて、彼は初めて"やさしく"なれたのだ。
    町屋さんの著作は初めて読みましたが、ハマりそうです。

    • 駿・クリームさん
      腹落ちしました。ありがとうございます。
      腹落ちしました。ありがとうございます。
      2022/03/03
  • メンヘラというかなんというか。まあ主人公には共感できないけど、初恋こじらせるとこんな風になるのかなあ。

  • 表面をなぞるようにしか読めなかったけど

    ぼくがきっとやさしいのは間違いない

  • 大学生男子のストーリーだが、読んでいて中学生か?と思うような幼さを感じた。
    母親からも「男メンヘラ」って言われてるけれど、こんなに簡単に誰かを好きになって勝手に思い上がって勝手に失望してって、そういうのメンヘラとは違う気がする。
    必要以上のひらがなの乱用には不快感しか抱けない。
    デビュー作「青が破れる」はすごく良かったのに、町屋良平さんこういう方向性でいくことにしたんだろうか……。
    ゴロウデラックスに出演されたとき、執筆はお風呂で、スマホのメモ帳に書いてます。って言ってたのが印象的で、これもそんな風に書いたんかなーと読みながらどうでもいいことばかりチラついた。

  • 大学で付き合った冬美にはすぐフラれ、インド旅行でいい感じになったセリナにも早々に逃げられ、就職してまともになったかと思えば弟の婚約者に告白して弟から絶縁され、母親からも見放される男。友人は大学時代の親友ひとり。勤務していた出版社が潰れるが、正式な雇用契約をしていなかった彼は雇用保険のことなんてわからず、バッティングセンターに通うニートになる。何か悟ったようなフリばかりしている彼に未来はないのかもしれない。

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    やさしいとかピュアとか、ポジティブに表現することもできる。物語のなかで彼は自分がやさしいと思っていた。
    メンヘラやウジ虫、というふうにネガティブな呼び方もできる。物語の終盤、彼は母親にメンヘラと言われていた。

    彼はやさしいわけじゃない。メンヘラなわけでもない。ただただ、自分がない人間だっただけ。
    好きな女の子が出来れば、その子に依存し、相手の存在が自分の全てであるかのように錯覚し、自分の過去もすべて受けて入れてもらおうとする。まさに他力本願人間。

    自分から行動しないで相手からのアクションを待つ姿勢は”やさしさ”ではない。
    相手に依存しているのに何かあるたびに悟ったような気持ちになって、高尚な気分に酔っている彼はメンヘラにすらなりきれない。水に落とされたとか自分から落ちたとかそんなことはどっちだっていいんだよ。アイデンティティが無さすぎるぜ。

    何も出来ないくせに、何かを期待して、何かを悟ったようなフリをしている。そう、彼は何もしていない。最初から最後までずっと。
    一周回ってすごい物語だった。

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著者プロフィール

1983年生まれ。2016年『青が破れる』で第53回文藝賞を受賞。2019年『1R1分34秒』で芥川龍之介賞受賞。その他の著書に『しき』、『ぼくはきっとやさしい』、『愛が嫌い』など。最新刊は『坂下あたるとしじょうの宇宙』。

「2020年 『ランバーロール 03』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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