さよならの儀式

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 315
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309028071

作品紹介・あらすじ

2019年7月10日刊行。

親子の救済、老人の覚醒、30年前の自分との出会い、仲良しロボットとの別れ、無差別殺傷事件の真相、別の人生の模索……淡く美しい希望が灯る。宮部みゆきの新境地、心ふるえる作品集。

感想・レビュー・書評

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  • 2019/07/18読了

  •  宮部みゆきさんの新刊は短編集である。初出を見ると、SFのアンソロジーに収録された作品が多い。SFの短編集なのか? 読み始めてすぐに気づく。SF的な設定の中に、極めて現代的かつシリアスなテーマを内包している。

     最初の「母の法律」からいきなり重い。現実にこんな法律はないにしても、同じ立場に置かれ、同じように差別や偏見に苦しむ子どもたちがいる。胸が苦しく、怒りが込み上げる。さらに結末でこんな仕打ちでは、救いがないではないか…。

     「戦闘員」の舞台は、現代か近未来か。街中の至るところに設置されているあれの正体が、実は…。予告編で終わっていて、続きが気になってしょうがない。短いが印象深い「わたしとワタシ」。タイムパラドックス云々とか野暮なことは言うまい。自分がワタシだったら、その手段が目の前にあるのに、我慢できるか。

     表題作「さよならの儀式」。現代でもそれは浸透しているものの、ここまで技術は進んではいない。進んでほしいようなほしくないような。漫画や映画でよく描かれる、それが当たり前に溶け込んでいる社会は、人類にとって福音かどうか。

     「星に願いを」。設定よりも、姉妹の境遇が現代の社会問題そのもので、また胸が苦しい。いつの時代も学校とは…。そして、いつ巻き込まれてもおかしくない事件…。しかし、原因を生んだのはおともだちにあった。何て大迷惑な…。

     本作の一押しは「聖痕」だろう。SFではなく社会派作品と言い切りたい。別れた子を気にかけ、訪ねてきた男性。子は親を選べない。現実にもありそうな事件。自分なら同情する。そして、宮部さんご自身も過去に扱った、このテーマ。どうしても見てしまう人間の性と、それを利用する者たち。薄々読めた真相に打ちのめされる。

     「海神の裔」は、あの『屍者の帝国』の世界観を基に書かれたという。『屍者の帝国』は難物だったが、短いこの作品は、わかりやすいスピンオフと言えるだろう。最後の「保安官の明日」もすごい。ザ・タウンが作られた意図とは。酔狂か執念か。本人は大真面目としか言いようがない。技術が進んで人間を狂わせたのか、人間が狂っているから技術が進んだのか。

     十分長編にアレンジできそうなネタも多い、贅沢な作品集だった。普段、SFを読む機会は少ないが、SFの枠に留まらない宮部流SFを、また読ませてほしい。で、『ドリームバスター』はどうするんですか、宮部さん。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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