生命式

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309028309

感想・レビュー・書評

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  • この作品は短編集。
    個人的には「パズル」と「街を食べる」
    という話が好き。

    5ページくらいの話が何個あって、
    少し読みたいなっていう時とかにおすすめ。
    (「夏の夜の口付け」「大きな星の時間」「ポチ」)


    全体的に、
    こんな世界があってもおかしくないな。
    自分が大人になった頃にはこんな世界に
    なってるかもしれないな。
    今、私がいる世界は普通なのだろうか。
    人間って広いなぁ。
      と思うような作品だった。

    死んだ人を食べて新しい人を産んだり、
    死んだ人をフル活用して家具、服等
    色々なものにしたり、
    中年男性を飼ったり、
    そこら辺に生えているぺんぺん草、ハルジオン、オオバコ、蒲公英などの雑草を食べたり、それを
    さりげなく人に押し付けたり、
    六人の私がいたり、

    どれも素敵な世界。

    嗚〜呼、
    私が今いるこの世界はなんてつまらまいのだろう。
    この世界が自分の中で
    普通になってきているからだろうか。 


    「街を食べる」の最後、
    この題名の本当の意味がわかって、
    呪文のように、
    平仮名で
    点も丸もなく
    主人公が喋っている様子には
    鳥肌がたった。

    街を食べるっか。
    じゃあ、私は
    少し範囲が狭いけれど、
    学校を食べようかな。 

  • いよいよ手に取ったのですがのっけから違和感にヘタレてしまい読めませんでした。
    異文化に放り込まれたような世界観に困惑し放題で、死者を食べていつくしみ新たな生命の糧としその場に居合わせた気に入った相手と受精するとか、生まれた子供はセンターに預けて人類の子供として育てるとか、婚姻関係、親子関係が崩壊してるどころか食人まで禁忌フェルテバルかぁww
    こじらせキタ――(゚∀゚)――!!
    1000年くらい遡ればそんな祭りの風習どこぞにあったような気がしたりどうなんだろうか?古代にあったとしたら、価値観が初期化された感じか!?
    カンニバルとか洒落た居酒屋もあるにちがいない。
    そのうち殺人もまかり通りそうだし、いくら少子化とはいえ狂気度上がりすぎてついていけませんでした。
    深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを覗いている。

    最近は夏山シーズン始まっちゃったので計画立てるだけでワクワクドキドキして、好山病で脳内はアルプスのお花畑状態。高山植物は氷河期からの生残りの花たちが多くってアルプスの厳しい環境にあっても健気に咲いている姿が誇らしく美しい。時代に迎合することなく進化を拒み希少種として命を繋いでる花たちは、ちょっとした環境の変化でも絶滅するかもしれませんが、そんな生き方の方が尊く思えてしまうのです。
    価値観は時代によって変わってもしっかりと大地に根づき麗しい香りを放っていきたい。
    この先は、気分が滅入ってささくれた状態じゃないと読み進められない気がしましたww
    あるいは、何も感じないようなまっさらな状態じゃないと吸収できそうにないですww
    狂気度耐性つけたつもりだったのですが残念。
    村田さんのエッセイは楽しく読めたのに

    • つくねさん
      アルプスの稜線上に咲いてて大好きな花です♪(*≧∀≦*)森林限界超えた2500m以上は登らないと見られないけど、
      そこらじゅうで見かけるから...
      アルプスの稜線上に咲いてて大好きな花です♪(*≧∀≦*)森林限界超えた2500m以上は登らないと見られないけど、
      そこらじゅうで見かけるからアルプスでは珍しい花じゃないのですがこの花を見ると今年もアルプスに帰って来たーって元気貰えます。
      このお花もスケルトンになってたのを一度だけ見たことあります。
      2023/07/10
    • つくねさん
      チーニャさんが読まれたスピンオフとかも読んでみたいのですが、その前に汝、星の如くが170人待ちとかで仰天してしまいました。
      チーニャさんが読まれたスピンオフとかも読んでみたいのですが、その前に汝、星の如くが170人待ちとかで仰天してしまいました。
      2023/07/10
    • かなさん
      しじみさん、チーニャさん、こんばんは!
      今日もお疲れさまでした(*^-^*)
      チーニャさんのアイコンも、
      しじみさんのアイコンもお花で...
      しじみさん、チーニャさん、こんばんは!
      今日もお疲れさまでした(*^-^*)
      チーニャさんのアイコンも、
      しじみさんのアイコンもお花でいいですねぇ❀❀
      癒されますっ♪

      サンカヨウのこと、また思いがけず知れて
      本当によかったですよ(^O^)/
      ホント、嬉しくなっちゃう♪

      「汝、星の如く」に「しろがねの葉」
      両方読めたらまたコメント欄で語り合えるかなっ!
      その日を楽しみにしてます(*´▽`*)
      早く順番、まわってきますように…!
      2023/07/10
  • 僕がこよなく愛する村田沙耶香の最新短編集。
    僕にとっては村田沙耶香作品の11作品目、この『生命式』を読了して、現在のところ未読は『殺人出産』『地球星人』2作品のみとなった。

    いままで中編作品は何度も読んだが、本書に含まれているような小編を含めた短編小説は村田沙耶香作品では初めてだ。
    非常に興味深かった。

    本書にはかなり古い過去の作品(収録されている最も古い作品は2009年発表の『街を食べる』)も含まれており、彼女の文筆の傾向が変っていくのが分かって非常に面白い。

    本書は、表題作の『生命式』を含め、12の中小作品が収録されおり、いままで村田沙耶香作品を読んできている読者が読むと『にやり』とする作品も多い。
    例えば『タダイマトビラ』で登場した『ニナオ』と名付けられていた重要な小道具である「カーテン」の原型が本書に収録されている小編『かぜのこいびと』にも登場している。
    『タダイマトビラ』の発表が1012年3月で、この『かぜのこいびと』も同じ年の4月ということも非常に興味深いところだ。

    村田沙耶香作品といえば『コンビニ人間』『消滅世界』『しろいろの街の、その骨の体温の』『タダイマトビラ』など傑作ぞろいだ。
    しかしながら、この短編集に収録されている小編には、「これはちょっとまだ甘いな。」と感じられる作品も少なからずある。
    例えば、自分には人間らしさがないと思い込み、他人の誰をも無条件で愛してしまう早苗という女性を描いた『パズル』や街の中に生えている雑草等を食べるようなっていく女性OLを描いた『街を食べる』などはもっと切れ味を良くして肉付けしていけばさらに傑作作品に仕上がったのではないかと思われる。

    しかしながら、こういった僕からみればいまいちな作品であっても、そういう作品をあえて本書に収録し、読者が普通に読むことができるということが重要なのだ。
    なぜなら、こういったいまいちな作品が生みだされる過程のなかでこそ『コンビニ人間』や『タダイマトビラ』などの傑作が生まれてくるからだ。
    間違いなく将来傑作にいたるであろう物語の原型がどの作品のなかにも感じられる。

    本短編集で最も秀逸なのは表題作の『生命式』、それに続く『素敵な素材』、そして最後の『孵化』だろう。

    死んだ人間を食べるということが儀式として日常化した社会を描いた『生命式』や、死んだ人間の骨や皮を利用した家具やアクセサリーが最も価値の高いものであるという社会を描いた『素敵な素材』など現代人の常識を根本から覆す作品だ。
    僕はこの作品を読みながら何度も頭を抱えた。自分の価値観があまりも狭い範囲でしか機能していなかったということをまざまざと見せつけられるからだ。

    そして中学校、高校、アルバイト先、就職先などの環境において自分の性格をカメレオンのごとく変化させてしまう女性を描いた『孵化』。
    この『孵化』は『コンビニ人間』においてコンビニの歯車としてしか生きることのできない主人公の女性・古倉恵子を彷彿とさせるものがある。

    本書は村田沙耶香ファンならぜひ手に取ってもらいたい短編集である。『クレイジー沙耶香』の頭の中をほんの少しだけ垣間見れるような気がする傑作短編集だ。

  • 短編集なのだが全てにおいて常識とその価値観が壊されていく感覚を与えられた。

    どの作品も凄い違和感、その不協が前提で話が進んでいく。作者のあまりにも美しい言葉と表現力と共に。
    何かホラーを感じるがそれは自分の常識と価値観が邪魔をしているからなのだと気づく。

    常識が価値観を生んでいるのか?
    また逆で価値観が常識を生むのか?

    新しい倫理観の中での新しいヒューマニズムなのだろうと感じた。
    個人的にはだいぶグロテスクさが残った。
    だけれども人間の核心の部分を抉られるようで感じるものや考えさせられるものは本当に多い素晴らしい作品だった。

  • 最初の表題作を読んだとき、「殺人出産」や「消滅世界」と似通ったテーマで(正直またかと思った)、ここ最近の村田さんは、少子化の心配をされているのだろうか?

    否、そうではなく、未来に於ける愛の証や形(人の内側の見えない部分でしか分からないもの)が無くなってしまうことを恐れているのかもしれない。

    と考えると、今回の表題作では、それに対する考察のひとつが窺える。


    『正常は発狂の一種でしょう? この世で唯一の許される発狂を正常と呼ぶんだって、~は思います』


    思わず笑ってしまったが(この時点で私もその仲間入りかも)、村田さんは村田さんだった。
    ああ、よかった。
    私の危惧は要らぬ心配だった。
    本書もキレキレの風刺と皮肉ですな。
    効き過ぎて、キョトンとする人もいそうだけど。

    12の短篇集は、物語こそ多彩だが、『正常って何なの?』といった共通点があるような気がする。

    例えば、「素晴らしい食卓」での
    「名前があると、ちゃんとしているの?」

    「魔法のからだ」の
    「誰かが作った『いやらしいもの』」

    「孵化」の
    「人はね、綺麗なものより汚いものを見たとき、『真実だ』『これこそ本当だ』って騒ぎ立てるの」

    また、「街を食べる」の、「今まで街の光景を記号化してしまっていた」には、ああ、分かる、今まで目に見えていなかった自然に目を向けようということだなと思ったら、それで終わらず、人間の価値観やこれまでの文化と衝突する、ある意味、多様性の悲劇を謳っているようにも感じられる点に、さらなる奥の深さを感じさせられた。

    奥深さといえば、「孵化」は最も哀しくやるせない。

    最初は、人間って色々な面をもった奥深い存在だというけれど、実際に人格をその場その場で極端に変えていっても、怖くならずにそう思えますか? と問い掛けてるのかと思ったら・・・愛する二人だけの空間だと余計に物哀しいものがあり、皮肉にも、正常と呼ばれている発狂に飲み込まれていく姿には、何とも言えない絶望感が漂い、ああ、人間って・・と思ってしまう。なんて不器用で真っ直ぐなんだ。

    また、その他にも、「大きな星の時間」はショートショートながら、眠りも三大欲望のひとつだということを再認識させられたり、「かぜのこいびと」は、その風の意味の深さを痛感させられ、これもひとつの愛のかたちだと実感。

    それから、最も印象的だったのは、素敵な女性二人の物語、「夏の夜の口付け」と「二人家族」で、このような、淡く瑞々しく死を間近に感じさせる作品を、村田さんが書かれたことにも驚いたが、しかもこの二作品、○ラ○○ワールドで、そこがまた味わい深く切ない。

    更に、表紙と裏表紙のアートは、実際にそれと言われるまで私は気付かなかった、まるで騙し絵のような感覚で、それは、ちょうど本書のテーマとも合致するような気がした。

    ちなみに、ここまで色々と書いてきたのだが、全ての作品が好きで良かったとは思わなかったので、評価はこんな感じで・・・そりゃあ、12の短篇(あるいは発狂)それぞれが、作家村田沙耶香の一部分なんだと思えば、村田さんという、人間の全てを知ることなんてできるわけないし、人の心に果てはないと思うし、村田さんにだって、ミステリアス○カ○シな一面もあるということで、よろしいんじゃないでしょうか。

    • たださん
      チーニャ、ピーナッツが好きさん、おはようございます(^^)

      「生命式」、読んで下さってありがとうございます。

      ぎょっとしながら読まれたこ...
      チーニャ、ピーナッツが好きさん、おはようございます(^^)

      「生命式」、読んで下さってありがとうございます。

      ぎょっとしながら読まれたこと、印象的で、それは世間一般でイメージされている、村田さんならではの一つの世界観ですが、短篇集の場合、決してそれだけではない所に、また村田さんの様々な一面を知るようで、興味深いですよね。

      その分、長篇は、割とテーマがはっきりしたものが多いのですが、それはそれで、村田さんのより濃厚な世界観を表現していて、面白いです。また興味を持たれたら是非(^^)
      2023/01/22
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      たださん、おはようございます(^^)

      「生命式」読めて良かったです。

      村田沙也加さんの魅力にはまりました。
      少しずつ、だんだんと…
      長編...
      たださん、おはようございます(^^)

      「生命式」読めて良かったです。

      村田沙也加さんの魅力にはまりました。
      少しずつ、だんだんと…
      長編の方まで…
      手を伸ばしていけたらと考えています。

      村田沙耶香さんのぎょっとする部分に私などは、どうしてもとらわれて読み終わってしまいます。
      でもその奥の深いところにある大切なところまで考えられている、
      たださんのレビューにハッとさせられ、いつも心に響きます。
      (今村夏子さんの本でもそうでした!)
      たださん、いつもありがとうございます。これからもよろしくお願いします (*´▽`*)

      2023/01/22
    • たださん
      チーニャ、ピーナッツが好きさん、お返事ありがとうございます(^^)

      いえいえ、私も奥の深さまで達しているのかは分かりませんが、村田さんが好...
      チーニャ、ピーナッツが好きさん、お返事ありがとうございます(^^)

      いえいえ、私も奥の深さまで達しているのかは分かりませんが、村田さんが好きだから、つい書きたいことをどんどん書いてしまうというのは、あるのかもしれません。

      こちらこそ、これからもよろしくお願いいたします(^_^)
      2023/01/22
  • 表題の「生命式」を含む12編の短編を収録。
    「生命式」「素敵な素材」で、さらりと凄いことを…「中尾さんっておいしいかな…」「人毛100%が一番…」って、えっ??どういうこと???

    凄いなぁ…村田沙耶香先生っ!他の作品も意表をつかれる作品ばかり…!そして、この表紙…もう、これは手に読まずにはいられないでしょう??みたいな!読んでいて、一貫して飽きのこない、ザワザワし通しの作品でした。

    • 辛4さん
      あ〜、ごめんなさい。もしもお読みになっていたら、というニュアンスでした。
      チーニャさんもよい一日をお過ごしください。
      あ〜、ごめんなさい。もしもお読みになっていたら、というニュアンスでした。
      チーニャさんもよい一日をお過ごしください。
      2023/01/29
    • チーニャ、ピーナッツが好きさん
      辛4さん、(^ー^)
      わかりました~
      ありがとうございます~
      辛4さん、(^ー^)
      わかりました~
      ありがとうございます~
      2023/01/29
    • かなさん
      チーニャさん、辛4さん、こんばんは!
      今日は一日出かけてました。
      図書館と、あと足を伸ばしてブックオフに行ってきましたぁ~♪
      そして、...
      チーニャさん、辛4さん、こんばんは!
      今日は一日出かけてました。
      図書館と、あと足を伸ばしてブックオフに行ってきましたぁ~♪
      そして、また読みたい本を仕入れてきました。
      至福の時間でした(^^)
      読みたい本が沢山ありすぎて、
      嬉しい悲鳴をあげてます。
      ジャンルにとらわれず、この先も沢山の本を読んで
      楽しみたいですよねぇ~!
      コメントありがとうございます(^^)/
      2023/01/29
  • 村田沙耶香さんワールド全開の短編集。
    常識や当たり前の概念が覆された。
    怖い作品、グロい作品もいくつかあったけれど、総じて楽しめたと思う。
    個人的に特に気に入ったのは、
    『素晴らしい食卓』と『孵化』
    以下、各章簡単なあらすじとレビュー

    ◾️生命式
    故人のお葬式でご遺体を食べて弔う「生命式」が当たり前の時代となっているお話。だんだん気持ち悪くなってきて、後半からは頭の中で人肉を豚肉に変換した(苦笑)

    ◾️素敵な素材
    人の遺体を余すところなく家具やアクセサリーに再利用するお話。確かにエコだし、いつか作品の中の考え方が常識的にる時代が来るのだろうか?そうなったら受け入れられるのだろうか?でも、やっぱり怖いなぁ…。

    ◾️素晴らしい食卓
    親族みんな、食文化がぶっ飛んでいて(笑)、互いにそれを認め合っていこうというお話。
    「僕は久美さんと結婚しても、一切彼女の作る食べ物を食べようとは思いません。久美さんも、僕や、僕の両親の食べ物を食べたり、作ったりする必要は全くない。僕たちは別の文化を生きているんだから。迎合したり、融合したりする必要なんて全くないんです」
    この圭一の宣言・主張がとても良かった。
    本作の中では一番気に入った。

    ◾️夏の夜の口付け ◾️二人家族
    処女だが結婚して人工授精で二人娘のいる芳子と、独身だがSEX大好きな菊枝。真逆だけれど互いを認め合い仲良い二人の関係は素敵だなと思う。

    ◾️大きな星の時間
    眩しすぎて人が少ない大きな星(太陽)の世界と、一生眠ることがなく人の賑わう小さな星(夜)の世界の話。ファンタジー。

    ◾️ポチ
    小学生の女の子二人が中年男性をペットとして飼うお話。怖くて気持ち悪かった…。

    ◾️魔法のからだ
    思春期の少女たちの身体の変化、性への目覚めのお話。主人公は中学生で、周りよりも性への目覚めの遅さに焦っているが、私からしたら十分に早いなぁと思った。

    ◾️かぜのこいびと
    カーテン(風太)と奈緒子の純愛。
    アニミズムのお話。

    ◾️パズル
    自分自身の身体から無機質で冷たく感じるのに対し、他人の身体に愛しさを覚える女性のお話。

    ◾️街を食べる
    都心に住む主人公が、幼少期に過ごした田舎での暮らしに思いを馳せ、野草摘みに目覚めるお話。
    私も小学生時代、学童までの帰り道にたんぽぽや蓬、野蒜などを摘んで、調理して食べてたなと懐かしい気持ちになった。

    ◾️孵化
    コミュニティによってキャラクターが変わる女性のお話。彼女はだいぶ極端かなと思うけれど、自分が周囲から求められている人物像を感じ取り、"役"を演じてしまえるのはよくわかる。学校や会社でよく喋る人が、家に帰ると全く喋らないというのと同じだと思う。それは処世術であり、そこには裏も表もなくて、どっちも本当の自分。ただ、彼女のように、キャラクターが多過ぎたり、性格や振る舞いが正反対なのは、かえって疲れるだろうしいろいろと不都合も出てくるだろうなと、読んでいて思った。
    「周囲に適応するために幾つものペルソナがあるのは人間にとって普通のことだよ」というアキのことばは救いだ。

  • 村田沙耶香さんのクレイジー感が一番感じれること
    ができる作品だと思います。特に表題作「生命式」
    故人の肉を食べて、男女が交尾をするという、新たな葬式がテーマのデイストピア風の作品で、とても
    面白かったです。普通の人だったら考えられないようなテーマを少しユーモアを加えて、読者に考えさせるような内容をつくりあげる村田さんの世界観に脱帽です。

  • 短編集。
    葬式のかわりに死んだ人の肉をみんなで食べる「生命式」とか、人毛のセーター、ホクロや傷痕の残る皮膚で作られた結婚式用のベールが出てくる「素敵な素材」、などなど。あらゆる角度から物事を捉えた刺激的な村田ワールド。
    人間の死体を食べようとしたり、気持ち悪いんだけれどさ、もう完璧に世界作っちゃってそこがこの作家さんの凄いところかしら。こうもさらりと圧倒的に描かれてしまうと、ほんとにこんな世の中が来るんじゃないかと錯覚する。よくもまあ、考えつくなあと。いろんなことに着眼点があり、感性があるのかな。針が吹っ切れるほどの村田ワールド、パチパチパチ。
    グロテスクで衝撃的なので(特に最初の方)、好みが分かれるところか。

  • 世間の常識や価値観の脆弱さ曖昧さを特殊な設定で突きつけてくる12編の短編集。お葬式は亡くなった人を美味しく食べる事が供養となる「生命式」となり、人は死ぬと服や家具の高級な「素敵な素材」となる。突拍子もないと思っていたら絶妙な語りであっという間に世界に引き摺り込まれ、有り得るかもと正常と狂気の狭間を揺蕩う羽目になったがそれが心地良い。設定の特殊さについては白井智之他読みのせいか余裕。「素敵な素材」で沼正三を思い出す私。あ、筒井康隆も。好みなのは「生命式」「素晴らしい食卓」「パズル」「魔法のからだ」「孵化」最後はここまで極端じゃなくても皆思い当たる節ないか?なのでよりぐさぐさ刺さらないか?

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた・さやか)
1979年千葉県生れ。玉川大学文学部卒業。2003年『授乳』で群像新人文学賞(小説部門・優秀作)を受賞しデビュー。09年『ギンイロノウタ』で野間文芸新人賞、13年『しろいろの街の、その骨の体温の』で三島由紀夫賞、16年「コンビニ人間」で芥川賞を受賞。その他の作品に『殺人出産』、『消滅世界』、『地球星人』、『丸の内魔法少女ミラクリーナ』などがある。

「2021年 『変半身(かわりみ)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

村田沙耶香の作品

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