生命式

著者 :
  • 河出書房新社
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レビュー : 22
  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309028309

感想・レビュー・書評

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  • 開始2ページ目の、衝撃。
    これは、敢えてページをめくらせたな(笑)

    村田沙耶香の描く、異常の眼差しに含まれる普遍みたいなのが割と好きだ。
    ただ、「生命式」「素敵な食材」はちょっと振り切り過ぎて、グロさだけが際立っている感が。

    「101匹わんちゃん」は、クルエラの狂気がまざまざと描かれていようがアニメになるけど、あれが対人間だったら……と考える。

    続く「素晴らしい食卓」は、相容れない価値観を食卓の上で現していて、面白い。
    厨二病の妹が作る魔界都市ドゥンディラス料理。
    対して姉が出すはハッピーフューチャーフード。
    そしてお相手の両親からは虫系佃煮……!

    最近、よく「日本上から目線番組」を見るけど、そういう番組が増えるのを見ていると、これ見て気持ち良く感じてるの、もしかして日本人だけなんじゃないの、って怖くなる時があるのを思い出した。
    日本の技術を否定してるわけではなく。
    あしからず。

    「街を食べる」は、有川浩が書けば『植物図鑑』という甘酸っぱい恋愛小説になるのに、村田沙耶香が書けば恐ろしいネイチャーフード洗脳小説になるところが面白すぎる。
    でも、ファーストフードの野菜剥がして食べたくなる気持ちは、分かる。

    他に、
    「夏の夜の口付け」
    「二人家族」
    「大きな星の時間」
    「ポチ」
    「魔法のからだ」
    「かぜのこいびと」
    「パズル」
    「孵化」

  • 村田さんの頭の中覗きたい願望はもうデビューからずっとあるのですが、新刊発表するためその欲がむくむく起きる。何じゃこりゃと、表題作読んだときに思わず笑ったよ。前置きがなく、さらりと変なこと言うんだもん。生命式行く? 行くならランチ控えなきゃ。○○さん美味しいかな、って。何の話なのって思いきや、人肉を食す世界になっていて、セックスは道端でまるで動物が交尾するかのようにあらゆる場所で行われ、そこで受精しできた子はセンターで大事に育てられる。センターっ子って言葉まででき…
    生命式でぬぉーってなってたら次の素敵な素材で、結婚指輪の主流が人間の歯や骨になっており、プラチナにすると言うとお金ないの? って言われる世界になっていること。家具も人間を使い、人毛のセーターは高級品。生命式の次がこれだからびっくりしてまた笑った。
    ぶっ飛んだものから少しおかしいもの、12篇の面白い作品がギュッと詰まった短編集、読むの少し疲れるけど楽しかった!

  • 村田沙耶香「地球星人」以来1年ぶりの単行本。

    間違いなく、村田さんでないと書けない作品たち。
    村田さん初めて読む!って方にはちょっとオススメは出来ないかも?ダメな人は数ページで閉じてしまうかなぁ。

    ①「生命式」今の葬式とは違い、国からの補助が出る「生命式」死んだ人間を皆で料理して食べる。そこで気が合えば男女が式から退場、受精行為に及ぶ。

    ②「素敵な素材」死んだ人間の臓器や皮膚・歯などを使って、洋服やら家具やら指輪やらを作り出す世界。婚約者(男性)はその考えに反対していたが、ある素材で作ったドレスのベールを手にした途端、考えを改め出して・・・・。

    ③「素晴らしい食卓」夫に合わせて食べるようになったドライフーズ。妹は小さな頃から「前世は魔界都市で暮らしていた」と言い、故郷の食べ物はたんぽぽやどくだみ。その妹の婚約者の両親は、いわゆる「普通」の食を好む・・・・が、田舎でよく見る虫の甘露煮などが大好き。妹の婚約者は、いわゆるジャンクフードしか食べない。彼らが一つのテーブルを囲んだ時、文化の交流が始まる。

    ④「夏の夜の口付け」わずか3ページの作品。でもしっかり、村田さん。70代の女性二人の性のお話。

    ⑤「二人家族」④の二人と同じ名前の女性だったから、設定が変わっててアレ?と混乱。違う二人だった。周りからしたら、なんて不思議な家族なのか。

    ⑥「大きな星の時間」こちらも3ページ。ちょっと怖くなるおとぎ話のような・・・・。

    ⑦「ポチ」ユキが大手町で拾ってきて裏山で飼っているポチ。ポチ・・・・ニジマデニシアゲテクレ。

    ⑧「魔法のからだ」二人の女子中学生。大人びた私と、まだ幼い体つきの詩穂。詩穂は中1の時から自分の意志でセックスをしているらしい・・・・。

    ⑨「かぜのこいびと」カーテンに名前がついて、意志を持つ話は初めてだ。

    ⑩「パズル」満員電車を「人間浴」として好む早苗。人間の中身(臓器やら排泄物やら)に興味がある・・・・これまた、初めてのタイプ。

    ⑪「街を食べる」なんか最後怖い。

    ⑫「孵化」自分には性格がない。中学校・高校・大学・バイト先・職場と、それぞれ違うキャラで生活している。どれが私?どれも私。婚約者の彼に初めてそれを打ち明ける。どのキャラで生きていけばいい?

    「自分には性格がない」って、変なことを言っているようにも聞こえるけど、すごくわかる気がする。ここまで年代でキャラを分けてあだ名も変えて、ってのはさすがにないと思うけど。誰でも職場での自分と、家庭の中と、あるいはSNSでの自分って少しずつ違って、その集合体が「巣の自分」なんだろうか。それも違うような。
    すっごい長くなってしまった。

  • 待ちに待っていた村田さやかさんの最新作!
    表題作を始めとし、”ニンゲン”のあるべき姿を問い質す12の物語。
    コンビニ人間や殺人出産などの長編はここから生まれたんだなぁという、実験的に撒かれた種のような掌編もあって面白かった。

    【生命式】
    お葬式ではなく生命式。死者の身近な人々は死者の肉を食べ、その場で意気投合した異性と受精を行い新たな生命を産む。そんな世界で、真保は人肉食に対して嫌悪感がある。おつい30年前までは話題にすることさえタブーだったはずが、掌を返した風潮についていくことができない。
    すごい設定だ。。。とギョッとするけれど、ありえなくもないと思っている自分がいる。何かのきっかけやはずみでこんな世界になってしまうことだって、ありえないとは言い切れないよね?
    「だって正常は発狂の一種でしょう? この世で唯一の、許される発狂を正常と呼ぶんだって、僕は思います」
    真保が親しくしていた同僚・山本の生命式の後で出会った男性のこの言葉に救われる人はたくさんいるだろう。みんな気づいていないだけで、この世は常に発狂しているんだ。

    【魔法のからだ】
    性をいやらしいものとしてでなく、自分の快楽は自分のためだけにあると知った中学生女子の話。すごく好きなテイスト。自分のなかに眠っていた魔法の星屑の塊。

    【パズル】
    「コンクリートと人間は、相反するものではなかったのだ。この世に蠢きまわる人間の全てが、私達、灰色のビル全ての、共有の内蔵だったのだ。」

    【孵化】
    村田沙耶香さんがテレビのインタビューで今書いている小説として話したのを聞いてからずっと読みたかったやつ。およそ”自分”というものを持たずに成長し、その時々のコミュニティに応じて自動的にキャラクターをつくりその役を演じることで人間関係を築いてきたハルカ。結婚式を挙げるにあたって、どのキャラを演じるべきなのか悩み、、、という、分人主義を思い出させるようなストーリー。本当の自分ってなんなんだろう?
    結局、結婚相手であるマサシ向けに第6のペルソナをつくる、というラストはめちゃくちゃ突き抜けてて最高だった。ハーちゃんとマザー。「6人目の私」と「呼応」して、マサシからも新しいマサシが生まれていく。

  • 目を覆いたくなるような、軽蔑したくなるような光景が、どのページを開いても広がっている。
    けれど、例えば30年後の私達が、どんな「正しさ」を信仰していて、何を軽蔑するようになっているのだろうか、と、ふと思わされる。

    例えばこの国でも、ある時代には、ある価値観の下に積極的に自死することが正しいことであったりもしたわけで、
    またある時代のある国では、ある種族の人間を徹底的に排除することが正当化されたりもした。
    それは今では、理解し難く、軽蔑され得ることでもある。

    今だって、例えば罰ゲームとして無理矢理に現地の「ゲテモノ」食材を食べさせるようなバラエティ番組の一企画があったりするのだけれど、
    正直、自分はそういった企画への違和感を禁じ得ない。
    それは現地の食文化へのリスペクトに欠ける行為であると思うし、
    いっそ文化の違いをきっぱり伝えて、
    「私はこれを食べません」と言い切る方がよほど誠実だと思う。
    良くも知らないうちに、相手の宗教に対してみだりに理解や関心を示すべきではないのと同じように。
    それは相手の文化を聖別する行為であり、同時に自身の文化を守るための行為でもあるのだと思う。

    ある価値観は同時に、他者にとっての違和感である。
    「価値観」の対義語は「違和感」であると、この本に教えられた。
    また、「正しい軽蔑の仕方」も教えられた。

  • 短編集、待ってました。面白かった〜。大好き。
    カニバリズムなんて普段は気持ち悪いと思ってしまうのに、村田さんの小説を読むとこういう世界があってもおかしくないよなぁと、コロッと考えが変わってしまうから不思議。
    私にはない発想で、凝り固まった考えをほぐしてくれるから、読んでいて楽しいしなぜだか救われる思いがする。
    「魔法のからだ」や「かぜのこいびと」のような、性の話もやっぱり外せない。
    村田さん大好きなことを再確認できた一冊でした。素晴らしい。
    これからカシューナッツ炒めを食べるたびに、山本のことを思い出すんだろうな♪

  • “村田沙耶香らしい”としか言いようのない短編集。長短織り交ぜて12編が収録されている。最初の2編で辟易してしまい、この先もこの調子だとキツイなあと思ったが、そこまでではなかった。普通の感覚が少しだけずれるとこうなるんだと腑に落ちる作品はまさに作者の真骨頂。最後の2編がそれで、最初の2編と好対照をなす。

  • 『生命式』
    空の色や模様は絶え間なく動き、森の木も都会の街路樹も風になびく。車は血液のように道路を流れるし、人間は虫のようにそこらじゅうを蠢いている。
    世界はつねに変化し続けていて、それはテレビのチャンネルを変えるように断続的なものではなく、青が紫になりいつの間にか赤になり、橙から黄、緑になってまた青に戻っていくようなグラデーションである。
    そのグラデーションの速度に追いつけなかった人にとってはその一瞬の色に馴染めないこともある。青は突然赤にはなれない。
    しかし、その青自体も昔赤だったものが変化したものであるのだから、自分の色だと思っているもの自体、幻なのだ。
    「正常は発狂の一部」
    その唯一許される発狂の一部を、自分の色(幻の色)とは違うという理由で拒絶するよりかは、新たな幻だと受け入れて楽しんだほうが生きやすくなる。
    死んだ人を食べて新たな命を作る生命式という設定が狂気じみてはいるが、今の現実世界の常識も100年前や100年後の人からすると狂気じみているのかもしれない、そう考えると生命式の存在も当たり前のことのように思えてくる。
    そこには狂気の村田沙耶香が発し続ける普遍的なテーマがあった。

  • 常識なんて無い信じる世界の不安定さを感じる。
    みんなで嘘をついて気づかないふりをしながら、同じようにその蜃気楼を信じることは恐怖だけど安心でもある。
    自分だけが特別ではない。
    意識的か無意識的かはわからないがみんな同じように狂っている。
    各々違う狂気を持っているが、許される発狂を正常と見なしている。
    常識から離れていることを特別では無く当たり前のことと捉えていることが村田沙耶香の小説の魅力だと思う。
    常識なんて無いし、本当の自分なんていない。
    だからそこに自意識も存在しない。

  • 最初の「生命式」から狂ってる…というか正直気持ち悪い。正常は発狂の一種、何が社会的に正しいのか?と自分にしっくりくるのか?は別の話で自分自身の価値観もいつかの社会的価値観の影響下にあるとすると本当に正しいものってあるのだろうか?そんなあやふやな気持ちにさせられる作品。

    続く「素敵な素材」もまた狂ってる。村田沙耶香らしくはあるがこの路線がエスカレートするとこのままファンでいられるか少々不安になる。生命式にも似たテーマにも思えるが、何か物質としてのヒトと生物としてのヒトの違いのあやふやさか?この話を読んで嫌悪感を全く感じない人は少ないと思うがその嫌悪感はどこから来るんだろう。

    途中、短い話を挟みながら最後の3編がまた良い。特に最後の「孵化」は人間関係における心理を極端に強調して多重人格者の話であるようでいて日常に普通にあるような気もするこれも村田沙耶香さんらしい作品。

    全般的に生きていく中で感じるちょっとした違和感をデフォルメして価値観を不安にさせられるような作品が多くファンなら間違いなく楽しめますし、村田沙耶香を読んだことがない人でも「らしさ」に溢れた作品なので良いと思います。(とはいえ初読なら「コンビニ人間」か「しろいろの街の〜」をお勧めします)

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた さやか)
1979年、千葉県印西市生まれ。二松學舍大学附属柏高等学校、玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業。
2003年『授乳』で第46回群像新人文学賞優秀賞を受賞しデビュー作となる。2009年『ギンイロノウタ』で第22回三島由紀夫賞候補及び、第31回野間文芸新人賞受賞。2010年『星が吸う水』で第23回三島由紀夫賞候補。2012年『タダイマトビラ』で第25回三島由紀夫賞候補。2013年、しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞。2014年『殺人出産』で第14回センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞。2016年『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞。
2018年8月末、『地球星人』を刊行。

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