ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい

著者 :
  • 河出書房新社
3.27
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本棚登録 : 1199
感想 : 98
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  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309028743

感想・レビュー・書評

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  • まさに新発見!!
    こんな逸材がいたなんて、初めて読んだ著者の作品が、ここまで印象に残るのは初めてで、私的にとても好みな作品でした。
    4編で構成されている短編集で、各作品とも、非常に素晴らしいストーリーと文章で、印象深いフレーズも多くありました。共通しているテーマというか、似ているのが、作品に出てくる登場人物たちが、人ではない、何かとコミュニティを開いているところです。例えば表題作の「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」では、大学のぬいぐるみサークル
    がでてきて、そこでは、ぬいぐるみを作るのではなく、ぬいぐるみとコミュニュケーションをする事が前提となっている。何か自分の中で、他人にも言えない悩みや思いをぬいぐるみに話すことで、自分の中で浄化できる、そういった悩みを抱えた人たちの
    集まりで、主人公の七森は、麦戸ちゃんと出会い、麦戸ちゃんの思いも知ることになる。
    優し過ぎる自分を嫌いな七森と麦戸ちゃん、彼らの葛藤が描かれています。

  • 『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』

    「男」と「女」は分かれている、みたいなことばが、七森は苦手で、嫌いだ。
    麦戸ちゃんは、電車で痴漢にあってる女の子を見かけてから 「そういうニュース」に敏感になって生きていくのが辛くなった。七森は自分が「男だから、それだけでひとをこわがらせちゃうがしれない。」ことがすごく嫌だと思っている。悲惨な事件やSNSでの誹謗中傷のコメントを見ては、自分が何かされたみたいに心が潰れた。自分のしんどいを誰かに話して、それを聞いてくれた人がしんどくなるのは嫌だ。

    だから 僕らはぬいぐるみとしゃべる。

    『たのしいことに水と気づく』
    ↑↑↑似たような話。

    『バスタオルの映像』
    ↑↑↑同じような話

    痛ましい出来事やニュースを当事者のように受けとめてしまう。相手の悲しみに感情移入しやすい。
    「共感疲労」っていうんですね。
    そういう短編集でした。
    とくに表題作は、一人称と三人称が入り交じり
    ひらがなも多く使われていて 読みずらかったのもあるし…とにかく合わなかった。人に読まれることを想定していない独りよがりの日記を読まされているような気分。

    最後の『だいじょうぶのあいさつ』は、
    現実と非現実的の境があいまいで、意味わからなくて これは面白かった。
    何も映らないパソコンの向こう側と「交信」
    する引きこもりの兄
    崖っぷちに建つ我が家は、ベランダに人が集まれば 崖下へと墜落するのではないかと心配する妹
    自分の体をミイラのようにテープでグルグル巻にする兄。毎日 兄のテープを剥がす妹。
    ある日 テープの中に 兄の姿はなかった。

    書いてても意味わからんすぎてまとめられない笑

    • ゆーき本さん
      土瓶さんのレビュー読んできました。
      大絶賛(ノ*°▽°)ノ
      土瓶さんのレビュー読んできました。
      大絶賛(ノ*°▽°)ノ
      2023/04/20
    • おびのりさん
      おはようございます。
      土瓶さんの読んできました。なんか、まだ好青年みたいなレビューでした。怒られそう。。。
      みんみんさんは、宮部みゆき読んど...
      おはようございます。
      土瓶さんの読んできました。なんか、まだ好青年みたいなレビューでした。怒られそう。。。
      みんみんさんは、宮部みゆき読んどるねえ。
      私は、それほどでもないんだわ。なんでも書くからねえ。
      2023/04/20
    • みんみんさん
      おびさんおはよ〜♪
      宮部ミステリーは昔「火車」からダァーっと読んで
      時代物のとっかかりに簡単なやつからって事で
      宮部みゆき読み始めたのよ。
      ...
      おびさんおはよ〜♪
      宮部ミステリーは昔「火車」からダァーっと読んで
      時代物のとっかかりに簡単なやつからって事で
      宮部みゆき読み始めたのよ。
      宮部みゆきの時代物はとにかく読みやすい笑
      2023/04/20
  •  恋愛って、みんながするのがあたりまえなものらしい。自分ひとりだけ参加できていないことに七森はもやもやしてた。

     高校生まではホモソーシャルな会話が苦手でも、周りの下品な笑いに合わせてた。その下品な笑いに傷ついた人もいたんじゃないか。大学生になり、七森はそういう男友達から自由になれた。

     大学のぬいぐるみサークルでは、各々が集まって気に入ったぬいぐるみとしゃべる。話をぬいぐるみに聞いてもらう。話したい人は話せばいいし、話をしなくてもいい。ぬいサーはそんな自由で優しいサークル。

     人に迷惑をかけたくない。心配をかけたくない。でも一人でいるほど強くはない。

     人との関わりは欲しいな、と思うけど、それがすぐに彼氏彼女となるのがわからない。友達よりも、彼氏彼女との関係が優先されてしまうのがわからない。

     「つらいことがあったなら、話を聞くよ。話を聞かせて?僕もきみに話すから。ひとに話すのがまだしんどいなら、ぬいぐるみが話を聞いてくれる。みんな、やさしいんだよ」

    「気の合うひととただ同じ空間にいたいときってない?別に話したらしなくていい。むしろ、お互いにひとりでいるような感じでだれかといたいときってない?」

     今、話を聞く、聞いてもらう、ということに興味があり、そんな中で勧められたこの本。みんな優しくて、人との関わりにとても敏感で、気を遣っていて、それが疲れちゃって。社会での出来事に自分が傷ついちゃって、怖くなり、勇気が出せなくなる人もいる。

     自分がやさしいと思ってることは、誰にたいてのやさしいなんだろうか?

  • どこまでもどこまでも繊細な人たちの、生きることのつらさがこれでもか!とつまった短編集。
    表題作は特につらい。つらいし痛い。心が痛い。
    誰かに何かつらかったことを話せば、その話を聞いた人はその話を聞いてしまったことで傷ついたり悲しい思いをするかもしれない、だから人ではなくぬいぐるみに話をしよう、という「ぬいぐるみサークル」。もうここだけでこの物語に出てくる人たちの繊細さがわかるだろう。どこまで相手のことを考えているのか。
    自分話すこと、自分がすること、いや、自分の存在自体が相手を傷つけたり、脅威になったりするかもしれない、と考えて自分自身悩み続け傷ついていく。つらい、つらすぎる、その繊細さが。
    主人公七森くんは背が低くてかわいい。だから女性にとって「脅威」にはなりにくい。でも、それでも自分が男だというだけで女性にとっては脅威になるかもしれないと、悩み外に出られなくなる。
    ほかの「友人」たちのように恋人を作ったり別れたり、簡単に恋ができたらいいのに。それができなくて、また傷つく。彼が安心して一緒にいられる麦戸さんの悩みは繊細ではあるけれどまだ現実的。そして七森くんに新しい一歩を踏み出せたきっかけとなった白城さんの存在が物語をぐっとリアルにしてくれている。
    ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい。ちょっと変わった人たちのゆるくてほんわかしたおもしろ話かと気軽に手に取るとあまりの繊細さにページをめくる手先も優しくなる。
    読み終わってから、この本を読んでよかったとものすごくものすごく思っている。
    繊細さに苦しむ人にとって救いになるかもしれないし、ならないかもしれない。でも繊細さに苦しむ人が自分のそばにいるかもしれない、という繊細でない人にとっての提言にはなる。だから読んでよかったとものすごく思っている。
    表題作以外の3編もみんな繊細さに苦しんでいる人、生きにくさを持て余している人の物語。みんなにぬいぐるみがあればいいのに。

  • わかりすぎて辛かった。表題作を読んでから、2時間くらいずっと泣くのをこらえていた。
    読んでない人にはわからないし、読んだ人にはわかってもいいから言うと、実は私も七森や麦戸ちゃんくらいのときに似ようなことになったことがあった。久しぶりにそれを思い出していた。あのときの気持ちは一生忘れない。当時はTwitterに書いてたと思うけど、ぬいぐるみや水としゃべる、というのは間違ってない選択。人に聞いてもらうことは申し訳ないけど、一人では処理しきれない感情というものは、ある。
    「恋愛じゃなくていいからそばにいたい」が通じる関係性も羨ましくて辛かった。人間の先に男女があるという考え方と、男女の先に人間性があるという考え方は全く違う。私が選んだ地獄の正体が少し見えてしまった。

    生きづらさ満載の私には心底衝撃だった作品ですが、口コミの評価はそれほどでもなく、賛否も両論。「そういう人」かどうかでこの本の評価は大きく変わるんだと思った。衝撃過ぎて感想読みあさったら、ここにある「やさしい」は、人によっては=弱いとか逃げてるになってしまうことがわかった。間違ってる、と言われているみたいで悲しい。
    と同時に、これの前に読んだジェンダー(フェミ)の研究者の本に、「自分が無自覚に加害者であったことに気づかされると人は不快感を覚える」と書いてあったことを思いだし、なるほど「ジェンダー文学」だなあとも思った。久々に良い令和に出会えて嬉しかった。

  • 不思議な小説です。ファンシーな表紙と題名ですが中身はファンシーではないし、むしろ不気味な感じすらする。
    人から見える優しさと繊細さというのは表裏一体です。いわゆるメンタルが強い人から見ると、繊細で慎み深いと思われる人は自滅しているように見えるんだろうなあ。僕はいわゆる繊細さんとは違うと思うのですが、それでも結構理解できる所があります。
    傷つくという事は個人的な事なので、人から見て攻撃をされているように見えない限り普通分からないですが、素振りや立ち振る舞い、目線や雰囲気から勝手に相手の心を推察して傷ついたり落ち込んだりする人は一定数います。
    そんな人々の気持ちを描いていると思います。

  • 表題作の最後の一文…!
    言葉にすることとしないこと、それぞれの意思や選択、葛藤がフラットに描かれていて、
    それは優しくて安心できる視点なのに、とても苦しくなった。
    自分の想像力が及ぶ範囲でしか、人は尊重し合えない。
    優しい人しか存在しない世界だったとしても、他者と関わる限り、相手を踏みにじってしまうことは避けられないのかも。
    当たり前のように割り切れる人は、きっと強い。
    しかし割り切れない人は弱いんじゃなくて、しんどくても自分の思う正しさを信じる意思の強さがある。
    強さの対極にあるのは、別の種類の強さだ。

  • 四編収録されていて、後半の二編が特に良かったなぁ。
    表題作は文章のクセに慣れずに入り込み切れなかったところがあるのだけど、意図的なんじゃないかと思うし、意図してなめらかすぎないようにするのもまたいいと思う。
    初読みなのだけど、色んなことをしてみてほしい作家さんだと思ったので、他の作品も読んでみたい。

  • 去年、この作品の映画を観に行ったんだけどコンディションの影響で少し寝てしまって、それが悔しくてなにか取り戻したい気持ちで本を買って、なのに読み進めてる途中で眠くなってしまったまま一度寝かされていた本。今思うと、体や心が無意識に深いところへ入り込もうとするのを避けていたゆえの眠気だったのかもしれない…というのは都合の良い捉え方すぎるかもしれないけど。
    読んでいる途中からずっと、この本についての意見を求められたら自分は何を言えるんだろうか…という指先くらいの不安を抱えながらヒリヒリしていた。自分のスタンスは多分白城が一番近くて、世の中では目や耳を覆いたくなるようなことが毎日のように起こってる、悪い感情を向けられてしまった人たちが我慢したり泣いたりしているわけだけど、その全てに共感なんてしようものなら心が一瞬でぺしゃんこになるから、自分の中でシャットアウトする壁を適宜コントロールしている。でも同時に、七森や麦戸のような「他者への共感に心を細やかにできてしまうやさしい人」たちの気持ちにも少なからず共感を覚えてしまうので、解説文にあったけど、真綿のようにやわらかな文体や雰囲気ではありつつも、それが物語の中にぎちぎちに詰め込まれているので、窒息しかけるところだった…という感覚になる。
    星5にさせてもらったのは娯楽として面白い、つまらないという物差しではなく、自分が普段目を背けたり、無意識に視線を外したりしていることを思い出させられることへの重みというか、優しく突きつけられる感覚への敬意というか…特に最後の「だいじょうぶのあいさつ」は世にも奇妙な物語のハイコンテクストバージョンという感じで「これは笑っていいのか…?いや、違う、てか怖いけど怖いって思ったらこの兄貴に悪いかな…」みたいな、最初から最後までず~っと感情が不安定にぐらぐらしながら本を読むという感覚はなかなか味わえるものではなくて、紛れもなく新しい目線をくれた一冊なのでありがとうの気持ちを込めたものでした。
    …読んでいる途中でずっと不安だったのは、自分を守るために普段見えないふりをしていることが、ひとつひとつ丁寧に剥がされていってしまう「やめよう…もうやめるんだ…」みたいな感覚と、自分も20歳前後の頃は作中に出てくる成人式の時のヤナみたいな振る舞いをしていたかもしれない…という居心地の悪さがあったからかもしれない。普段本を読んでいて、作中に出てくる人があまり好ましくない行動をしていたり、改める部分を持っていたりした時「いるよなこういう奴…まさにこういう奴にこの本を読んでほしいんだけど、本人が読んだところで自分のことのように捉えて反省したりはできないんだろうな…」と思うことがあるけど…自分がまさにそこに…当てはまってしまうのだとしたら…。。。ちょっと全身にマスキングテープ貼るか…。

  • 最後の2つの話が怖かった。
    主要人物達は、自分が言ったことで相手を傷つけないようにすることに執着しているように感じた。
    傷つけないために選んだ相手がそれぞれぬいぐるみ、水、バスタオル、相手なしだと感じた。

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著者プロフィール

1992年生まれ。著書に小説『回転草』『私と鰐と妹の部屋』(書肆侃侃房)、『ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい』第38回織田作之助賞候補作『おもろい以外いらんねん』(河出書房新社)、宮崎夏次系氏との共作絵本『ハルにははねがはえてるから』(亜紀書房)など。最新刊に初の長編小説『きみだからさびしい』(文藝春秋)、児童書『まるみちゃんとうさぎくん』(絵・板垣巴留、ポプラ社)がある。

「2022年 『柴犬二匹でサイクロン』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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