破局

著者 :
  • 河出書房新社
3.09
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本棚登録 : 2149
レビュー : 228
  • Amazon.co.jp ・本 (148ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309029054

作品紹介・あらすじ

【第163回芥川賞候補作】2019年文藝賞でデビューした新鋭による第2作。

感想・レビュー・書評

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  • レビューを拝見させていただくと、「主人公に共感できない」というものが多く、できればわたしは共感しながら読みたいものだなあと思って読み進めた。
    結果、共感できなかった。

    物語を追って、場面を浮かべることはできる。
    そして主人公が言っていること、その内容は理解できる。
    ただ、この主人公が何を考えているのか、最後まで読んでも、彼の人間性が、わたしにはつかめなかった。

    主人公の陽介は、公務員試験を目指している(慶應)大学4年生。後輩のラグビーの指導を手伝っていて、彼女もいる。彼は、セックスだけでなく、ひたすら下半身のことを考えてる。陰毛について半ページを割いたり、自慰やトイレの描写が多かったり。
    部員に対する厳しさ、それがどこからくるのか。彼の人間性がつかみきれない以上、彼の声を追っていくしかないのだけれど、追っていても書いてない。
    そして、倫理観のこと。
    「右の女はショートパンツを穿き、脚を露出させていた。席と席が近いことにかこつけて、私はこの女にわざと脚をぶつけようとした。が、自分が公務員試験を受けようとしていることを思ってやめた。公務員を志す人間が、そのような卑劣な行為に及ぶべきではなかった」であるとか、亡くなった父が女性には優しくするように言っていたから優しくする、であるとか、倫理観の発信源が体裁や親にあって、結局主人公の意思ではなく、他者にある。
    この点も、彼の人間性のつかめなさに加担している。そしてこの「彼という人間性のつかめなさ」、主体性が自分ではなく相手に委ねられているという点が、この作品が描こうとしている「虚無」なんだろう。

    部屋でふいに見かけるちぢれ毛にふと思いを馳せたり、自分の悪口を言っている人を見かけた時に、全く関係のない、自分が勝手に「悪」とみなした人に当たろうとしたり、きれいな人にぞくぞくしても、捕まるのを恐れてしなかったり。
    人の心は、そうした、日常でふと思ったことや、瞬時に感じ取った強い感情、つきまとう倫理観、そういうものがぐるぐると回っていて、だから心の声をずっと垂れ流していたらぐじゃぐじゃで、言葉にしたら支離滅裂なことなんていっぱいある。その瞬間の感情を掬いとった、そんな描写が拡がっている。

    やっぱりわたしには芥川賞作品を理解するのは難しいのかもしれない。
    だから又吉さんの「火花」とかも読んでない。
    今回手に取った理由が、遠野さんがイケメンで話題だったから、というのは大きな声では言えません…。

  • 芥川賞!

    主人公・陽介の中味がなさすぎて、感情の移入のしようがなく…
    とんでもないものを読んでしまった、という感想。

    陽介は(おそらく)慶大生で公務員目指してるのだけど、こういう人が官僚になるのかな?
    出来の良い頭、ラグビーで鍛えて健康な身体、親の言いつけを守る素直な心、自分を厳しく律することができる。女性にもモテる。でもとっても空っぽ。

    ー 私はもともと、セックスをするのが好きだ。なぜなら、セックスをすると気持ちがいいからだ。

    ー 悲しむ理由がないということはつまり、悲しくなどないということだ。

    ヤバくないですか?
    一人称でこんな浅いことが語られている小説って…
    読み進めながら、違和感がどんどん大きくなり、不安になっていった。

    だから、結末はタイトルどおり破局なんだけど、逆になんだかほっとした。

    【2020.11.2追記】
    作者の遠野遥さんは、ロックバンドBUCK-TICKのボーカル・櫻井敦司さんの息子だそうです。

    • naonaonao16gさん
      たけさん

      こんにちは^^
      いつもありがとうございます。

      この作品、先日読み終え、改めてレビューを拝見させていただきました!
      ...
      たけさん

      こんにちは^^
      いつもありがとうございます。

      この作品、先日読み終え、改めてレビューを拝見させていただきました!

      たけさんが表現されている
      「一人称でこんな浅いことが語られている小説」
      すごくわかります。わたしも読み進めて、このままの状態で終わったのでびっくりしました(笑)

      わたしはこの部分「特に面白かったわけではないけれど、私は少し笑った。こちらが笑うのを期待しているような話しぶりだったから、笑うのが礼儀だと思った。彼女も笑顔を見せてくれたから、笑ってみてよかった」が、言いようのない寂しさを感じましたね。礼儀というものを知っており、それを見につけているのだろうけれど、行動は間違っていなかったのだけれど、それでいいのか?っていう、虚しさのようなもの。

      「破局」というインパクトのあるタイトルですが、破局したことよりも、違和感や虚しさの方が強く印象に残る作品でした。
      2020/09/26
    • naonaonao16gさん
      たけさん

      こんにちは^^
      いつもありがとうございます。

      この作品、先日読み終え、改めてレビューを拝見させていただきました!
      ...
      たけさん

      こんにちは^^
      いつもありがとうございます。

      この作品、先日読み終え、改めてレビューを拝見させていただきました!

      たけさんが表現されている
      「一人称でこんな浅いことが語られている小説」
      すごくわかります。わたしも読み進めて、このままの状態で終わったのでびっくりしました(笑)

      わたしはこの部分「特に面白かったわけではないけれど、私は少し笑った。こちらが笑うのを期待しているような話しぶりだったから、笑うのが礼儀だと思った。彼女も笑顔を見せてくれたから、笑ってみてよかった」が、言いようのない寂しさを感じましたね。礼儀というものを知っており、それを見につけているのだろうけれど、行動は間違っていなかったのだけれど、それでいいのか?っていう、虚しさのようなもの。

      「破局」というインパクトのあるタイトルですが、破局したことよりも、違和感や虚しさの方が強く印象に残る作品でした。
      2020/09/26
    • たけさん
      naonaonao16gさん、こんにちは!

      コメントありがとうございます!

      naonaoさんの指摘された部分も、あっさいですよね〜。ペラ...
      naonaonao16gさん、こんにちは!

      コメントありがとうございます!

      naonaoさんの指摘された部分も、あっさいですよね〜。ペラペラ笑。
      真の意味での人でなしだなぁと、改めて思いました。

      きっと、このような虚しさや違和感を最後まで読者に抱かせたまま終わっちゃう小説を、描き切っちゃったところに、芥川賞受賞の理由があるんでしょうね。

      僕は地味〜な衝撃を受けたので、この小説結構好きだなぁ。、

      遠野さんは今後も追いかけていきたいと思ってます。そのうちもっととんでもない小説を書いてくれるのではないか、と期待しています。
      2020/09/26
  • 共感できない。と言っている人が多いから共感してみようと思いつつ読んだけどやっぱり出来なかった。
    理解しようとすればするほど分からなくて、何を伝えたくて、何を受け取ればいいか分からなかった。主人公も、父親が女性には優しくしろと言っていたから優しくする。など、行動に違和感を抱くことが多かった。陽介が、ゾンビになったと思えば、痛みも悲しみも感じない。と言っていたが、そう自分に言い聞かせることで世間から自分を守ってきたのではないだろうか。陽介の行動は何だか不気味で、違和感を湧くことが多かったけれど、最後にこういう人もいるんだな。と納得できることが多くて、なんとも言えない気持ちになった。
    まだ私には分からないから、なんとも言えないけど、大人の汚い部分を見てしまった気がした。私も空が青いことに気づかないようになってしまうのだろうか。きっと主人公みたいな生き方をしている人は沢山いて、その人たちの何気ない日常を見ている感じだった。だからこそ、破局という題名に納得したし、納得せざるおえなかった。芥川賞は難しい。成人すれば、共感ができるのだろうか。

  • 先に読んだ『首里の馬』より面白かったです。
    私は人気小説が手に入ると
    次に母にまわすんだけど
    うーん、どうしようかなぁ。
    すごく早く読み終わってしまったので
    返却日まで余裕があるし、
    せっかくだからまわしましょうか。

    私がもし中高生だったら、
    きっと母は読ませたくなかっただろうな、と思う。
    慶応卒のイケメンで平成生まれ初の芥川賞
    となれば、中学の女の子が読むこともあるでしょう。

    昨年ソニー生命が中高生に行った
    「将来なりたい職業」アンケートで
    「作家」は女の子の上位にはいっています。
    そういう彼女たちがこの本を読んで
    どんな影響を受けるんだろう。

    ちなみに個人的には、灯について
    男性作家による都合の良いキャラクター
    つまりAVにおける女性のような…
    そういう印象を受けました。

  • 遠野氏作品2冊目。相変わらず装幀がシンプルで潔い。(作者のセンスというかこだわりみたいなものがあって、毎回こういう路線と決めてデザインしてもらっているのかな。とても気になる。)

    「破局」か……。なるほど納得。本能と理性。欲望や衝動を抑圧して常にベストな状態を保ちつつ、他人に同じものを求めてしまう主人公の陽介。表面温度と内部温度の差が激しい主人公の屈折しているところが面白い。読んでいると主人公の何かが周囲と微妙にずれている様な気がした。(主人公の陽介は)自分はきちんとリカバリー出来るはずと立て直しを図ろうとするが……。じわじわとねじれていく。

    読んだ後いつも清々しい気持ちになるのはなぜだろう。不思議な読み心地だなと思う。新しい虚無とよく言われているらしいけど、イマイチピンと来ない。ニューニヒリズムというのはどうだろうか。カッコイイんじゃないだろうか。

    【メモ】
    『改良』でも書かれていた→便座が上がっているのに憤りを感じる。
    灯は性依存症・不安症なのではないだろうか。陽介は父の不在、エディプスコンプレックス、ナルシシズムとか…。目に見えないものにぶつかって屈折しているように感じた。

    【本つながり】『改良』『坊ちゃん』『日本史快刀乱麻』

    • naonaonao16gさん
      まっきーさん

      こんばんは~

      この作品、読まれましたかー!
      実はこの作品、わたしは全く?ほとんど?共感できなかったので、まっきー...
      まっきーさん

      こんばんは~

      この作品、読まれましたかー!
      実はこの作品、わたしは全く?ほとんど?共感できなかったので、まっきーさんが納得されてたり清々しくなってたりしてるのを羨ましく思います(笑)

      「改良」も気になっていたのに、「破局」を読んだ後に急に読む気をなくしてしまって…
      でも、「改良」に描かれているこの作品との共通点はとても気になりました!
      特にエディプスコンプレックスとナルシシズム。
      あと「改良」でもトイレ出てくるんだなって(笑)
      2021/02/28
    • まっきーさん
      naonaonao16gさん、コメントありがとう!嬉しいです。

      naonaonao16gさんがバンプ好きなように
      私はBUCK-TI...
      naonaonao16gさん、コメントありがとう!嬉しいです。

      naonaonao16gさんがバンプ好きなように
      私はBUCK-TICKが好きでして…気になって
      それで僭越ながら遠野さんの作品を手にしてみたんです。

      遠野さんはBUCK-TICKのボーカル櫻井さんと親子なんですよ。
      (詳しくは検索してね)

      フィールドは違っても言葉を扱う職なので
      この二人が曲の歌詞と、本でキャッチボールをしているように
      感じるんです。
      遠野さんの作品のセリフや心の声にドキッとしてしまったり
      逆にBUCK-TICKの歌詞を見て曲を聞いて、あーそういうことか…と思ったり。
      愛憎というか何というか…言葉にするのは難しい…親子ならではの見えない何かを
      やりとりしてるなぁ…と。
      (良からぬ詮索と言われてしまうかもしれませんが…)

      あとミュージックPVを見ているように遠野本を読んでしまうというか…
      うまく言えないけどそんな感覚で読んでしまいますね。

      トイレの便座の件は『改良』でもその描写があって
      私は、何度も同じことを書いてる作家さんに誠意みたいなものを感じてしまうので
      遠野さん面白いなぁ…と感じてしまうのかもしれません(^^)


      ところで…
      バンプは「ファイター」がすごく好きで感動して泣いてしまいます。
      確かくるりの曲もnaonaonao16gさんに教えてもらいました。
      今はTHE SIXTH LIEがお気に入りで聞いてます。けど路線変更して爽やかな感じになってしまって
      ちょっと残念です。
      また素敵なバンドとか音楽教えてくださいね~
      2021/02/28
    • naonaonao16gさん
      まっきーさん

      こんばんはー!

      なるほど、BUCK-TICKがお好きでしたら遠野さんには興味津々になりますよね!

      それを伺う...
      まっきーさん

      こんばんはー!

      なるほど、BUCK-TICKがお好きでしたら遠野さんには興味津々になりますよね!

      それを伺うと、言葉でのキャッチボール、父との関係性などなど様々な想像をするのはすっごくわかります。
      (わたしも最近出したBUMPの新曲は活動休止中のちゃまに向けたものだと勝手に詮索しているところ)

      わたしはまだ遠野氏の面白さに気付けていません…
      でも、トイレの便座の話を聴くと、この作品の「虚無」の印象とは逆の、軸というか、ぶれない強さのようなものを感じて興味がわきました。

      このコメント見させていただいた後に改めて「ファイター」聴いてみました。歌詞がいいですね、弱ってる時に前を向けそう。
      くるりの曲のことなんてすっかり忘れてました(笑)
      THE SIXTH LIE、お初のバンドです。聴いてみますね!
      もう解散してしまいましたが、「plenty」というバンド。BUMPの歌詞がお好きでしたが、plentyの歌詞も刺さるかもしれません。
      少し落ち込み気味の時などに聴いてみてください。
      2021/02/28
  • 「破局」 遠野遥(著)

    2020 7/3初版発行 (株)河出書房新社
    2020 8/15 8刷発行

    2020 8/8 読了

    自意識過剰な人が
    ナルシストを主人公の小説を書いたんだろう。

    でもきっとこの自意識過剰な作者は
    「破局」もいくつか経験したんだろう。

    大きな帯に自身の写真を載せたのは
    さすがに不本意だと思っていると信じたい。

    芥川龍之介賞を受賞するに相応しい作者
    作品でした。

    まあそもそも
    作家なんてみんな自意識過剰だろうしねー。

  • 元ラグビー部員としてラグビーをコーチし、同時に公務員試験にきっちり備える、文武両道をいつも突っ走っているような男。
    でも、快活さやエネルギッシュとは対極的な、このゾンビ感はなんだろう。
    よく肉を食べ、よくセックスをする、若い男。
    健康的であるはずなのに実質は不健康。
    男の心が見えてこない。

    ロールキャベツ男子という言葉があったが、その逆をいくのかな、陽介は。
    熱い肉が冷めた心を包んでいる。
    灯の手は冷たく感じる。(熱い肉)
    一方、性欲の増した灯に辟易する。(冷めた心)
    陽介は、ゾンビになることを回避しようとしてか、ラグビーのコーチの後、たくさん肉を食べて、そして日々肉欲に溺れる。
    でも心は鍾乳洞のように虚ろでひんやりしたまま。

    心の中で、笑いに手を打つ場面が何度もあった。
    芸人志望の膝より、きっと、陽介の着眼点は笑いをとれる。
    一般人が、十分滑稽に生きているということなんだろう。
    陽介、この男は、ゾンビのように何度も復活するだろう。
    こういう人は、きっと自殺なんかしない。
    リビングデッドユース。
    わりとたくましい。


    大団円が近づくにつれ、中村文則の『銃』がチラつく。
    不幸へのアクセルがかかり真っ逆さまに堕ちるという共通点。
    『銃』は、銃を手にしてから男が主体的な人生を歩み始めたが、どこまでも銃という武器に支配され破滅に向かう物語だった。
    かたや『破局』では、男の鎧は、こじんまりとした正義と秩序、そして僅かながらの筋肉である。

    男には、この鎧がブカブカである。
    心も身体もそれぞれ自分のものとして制御できないからだ。
    しかしながらそれを冷徹に認識して、悲観もしない。
    突発的に泣きたくなるが、なぜ自分が泣くのかわからないということを、よく理解している。
    そのような男の振る舞いは空々しく、
    おそらく他者からは演技のようにみえていたことだろう。
    だからこそ演技できない局部(=陰茎)に向かって話しかける灯がいる。


    男の着眼点は滑稽。
    ふいに出現する陰毛にとらわれたり、麻衣子の服が食べ物の色にみえる。
    この着眼点は、どんな事象にでも無意味に意味づけしようとする人間らしさの表れ。
    この男の着眼点が描かれなければ、肉を食らい肉に溺れるだけのケモノのような生活しか男には残らない。

    陽介の生活は、瑣末なことにとらわれ一喜一憂、アップダウンしながらも、全体的にはフラット。
    それは近くでみるとさざ波だっているが、遠くでみると一枚の鏡のような海だ。
    底になにが潜むやもわからない海。
    心も身体もここに在らずで肉のみをひたすら求めるリビングデッドユースはこの海に漂うが、背面泳ぎをしていれば、「もっと早く見るべきだった」空に気づいたであろうに。

    不特定多数の現代の若者のひとりを切りとっているのだが、
    読後、読み手の中でいいたいことが膨れ上がる、そんな小説だった。

  • 芥川賞受賞作ということで、受賞が報道された日に買って読んだ。

    話の流れはスムーズで文章もテンポが良くて、どんどん先に進む。

    そして主人公の虚無的な雰囲気も良かったし、性的描写も決して欲情的な感じではなく、淡々と書かれていて好きな雰囲気だった。

    だけど、この話が何を表現したかったのか、私には理解できなかった。

    所々、伏線っぽいエピソードや設定なんかが出てくるのだけど、結局それらは回収されずに物語が終わってしまう。元カノが幼少期に負ったトラウマとか、今カノのカフェラテの設定とか、佐々木の部活より家庭を優先させた話の先とか…

    全ては読む人の想像に委ねられるということか? 良くも悪くもの純文学だった。

    読み終えてから「ぇ、なに、どういうこと?」となる。これは後からジワジワと読後の感情が滲み出てくるのか?

    だけど、読了後の感想は「ぇ、なに、どういうこと?」で、1日経った今も「ぇ、なに、どういうこと?」である。

    他の人がこの本をどのように読んだのかを知りたいと思った。芥川賞受賞するくらいなのだから、きっと何かがあるのだろう。

    何ががあるのだろうけど、残念ながら、私には見つけることができなかった。

  • 大学4年生の〈私〉こと陽介は筋トレと公務員試験の準備に打ち込む日々を送っている。出身校のラグビー部で後輩を指導するのも大切な役目だ。政治家になることを目指して邁進している恋人の麻衣子とはあまり会えないでいるが、代わりに灯という1年生が彼に好意を示してきた。順調過ぎるほどに順調な陽介の日々が奇妙な視野角から描かれていく。

    「明け方の若者たち」を読んだ後だったので、奇しくも就活タイミングの若者の物語となった。しかし「破局」で描かれる主人公は儚い。ラガーマンであり。筋肉質で恵まれた体躯に、彼女も絶やさない。容姿は描かれないが、きっとイケメンなのだろう。そんな男が女で地に落ちる。

    フリは確かに冒頭から散りばめられていた。痴漢をした警察官の事件に憤り、正義感をかざす。電車の中で酒を飲む男を詰めるように見下し、謝らせる。そんな男が正義感をかざしてきた男にキレてしまう。

    警官に捕まり、睡魔に襲われるところで小説は終わるが、この後陽介は公務員には慣れないだろうし、ラグビー部に教えにいくこともなくなるだろう。その後の想像まで至らせるエンディングは素晴らしいのだろう。

    芥川賞の評価は難解なため、個人的には直木賞の方が合っていると思う。この「破局」しかり。

  • 主人公の青年に共感できるかどうかが決めてでしょう。
    なんだよコイツとは思いましたが、自分の子どもでも方向性は異なるものの、自分とはことなる価値観を持っていることに驚くことがあり、この主人公も極端に自分とは異なっているだけだと思いました。
    そこが自分の中で解消できれば、主人公の置かれている立場を思いやって、その一部が描かれていると理解できると思います。
    全てのエピソードが完結していないので、フラストレーションの溜まる人もいるかと思いますが、私はいろいろ想像できる、これくらいの材料の提供のしかたの方が過ぎです。

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著者プロフィール

1991年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学法学部卒業。東京都在住。2019年『改良』で第56回文藝賞を受賞しデビュー。

「2020年 『破局』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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