推し、燃ゆ

  • 河出書房新社 (2020年9月11日発売)
3.11
  • (772)
  • (2040)
  • (3505)
  • (1629)
  • (501)
本棚登録 : 31497
感想 : 3473
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (128ページ) / ISBN・EAN: 9784309029160

みんなの感想まとめ

死と再生をテーマにした物語は、主人公の少女が“推し”を通じて自己を見出し、孤独と生きづらさに向き合う姿を描いています。彼女は社会や周囲から理解されず、ただの趣味として見なされる推し活動が、実は自分を保...

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最近、女子高生の自殺が増えているという。
    https://www.jiji.com/jc/article?k=2021021500805&g=soc
    「小中高生の自殺、過去最多 コロナで大幅増、女子高生突出―文科省」
    2020年に自殺した児童生徒は過去最多の479人。前年度より140人の増加。女子高生は前年の2倍以上に増加しているという。
    わたしは今の仕事をする上で、どんなに悩んでも絶対にぶらさない軸がある。
    それは、10代の子に、死を選んでほしくない、自殺してほしくない、ということだ。そのために、その子の人生を一緒に考えてゆける存在でありたい。
    正論は、彼女たちを苦しめる。誰よりも、その正論を自分にぶつけ、それができないことで苦しんでいるからだ。
    人が生きるということは、社会と接するということだ。
    そして社会で働いて収入を得て、それで生活するということだ。
    親に家賃を補助してもらっても、親はいつか死ぬ。
    現実というのはそういうことだ。
    そして、これはただの、正論だ。

    仕事中、自分でも引くほど正論吐いてんなと思う。一方で、プライベートの自分なんか正論の反対側にいる。仕事の休憩時間は、仕事とプライベートの、ちょうど狭間。だから、そういう時間に読んでいると、やきもきとしてくる。
    作中の姉や母のように、「推すことはできるのに課題はできないんかい!」と思えてくる瞬間が、どうしてもある。正論と、うまいことできない主人公への共感、両方が、わたしの心の中で、渦巻く。
    自分の人生含めて正論ばっかで上手くいくわけはないのに、教育機関という仕事柄、どうしても生徒にやらせないといけないことはあって、そういう時の自分の正論の吐き方は、我ながら当惑する。
    単純に舐め腐ってるやつもいるけど、そうしたいけどできない、って子だってたくさんいるわけで、そういう子の力になりたいと思っているのに、どうしてこんなに正論ばかりが口をついて出てくるんだろう。

    推すこと、やるべきことをやること、それらをバランスよくやれればよいのだけれど。
    アンバランス。あまりにも。みんながみんな、そんなに器用に生きてゆけるわけがない。
    その不器用さのひとつとして作品の中に描かれているのが、「発達障害」だ。明確に発達障害であると記載はされていないけれど。そしてこの不器用さは、村田紗耶香さんの「コンビニ人間」を彷彿とさせる。「普通」というものに対して問題提起したあの作品は以前、直木賞を受賞した。今回、この作品は芥川賞を受賞。「コンビニ人間」では、コンビニという場所では安心して生きてゆける主人公がいた。本作品では、推しという存在があってのみ、生きてゆける主人公がいる。

    この「推し」という存在。理解できる人とできない人がいるだろう。でも、例え推しの感覚が理解できなくても。それでもこの作品は、作者の訴えたいことがしっかりと伝わってくる。推しという感覚的なものに加えて、生きること、前を向くこと、さらには最近の子ども(若者)の生きづらさが、全力を尽くして描かれている。生きづらさを抱えながらも必死に足掻いている主人公の姿はとても痛々しく、時に顔をしかめながら読んだ。先に挙げた女子高生の自殺の増加。彼女たちも、必死に足掻いていたんだろう。気付いてあげられなくて、ごめんね。いや、もしかしたら。気付いていたのに、聞こえないふりをして、見ていないふりをしていたんだ。本当に、ごめんね。

    でも一方で、こうも思うのだ。
    生徒の中にはオーバードーズやリストカットをしたと彼氏や大人に訴える子がいる。わたしは彼女たちにそんなことをしてほしくない。それをしてほしくないと、素直に正論をぶつけて何が悪い。
    だって、わたしは彼女たちに、死んでほしくない。ましてや自分から死を選ぶなんて絶対にしてほしくない。確かに薬の量は、致死量ではないかもしれない。傷の深さは、浅いかもしれない。それでも。一回くらい、正論をぶつけさせて。
    「わたしはあなたに、死んでほしくない。」
    それは、彼女たちの、あなたのまわりを取り巻く環境があなたをそうさせているのであって、あなただけがそんなに辛い選択をする必要なんて決してない。もっと、あなたができないって思うことを、周りの、人のせいにしていい。あなたにはみんなができることができないかもしれない。でも、あなたにしかできないことだってある。だから、できないことだけに目を向けて、自分を追い込まないで。

    みんな、死なないで。
    死を近しく感じている全ての、特に、若い人たちへ。
    ここに、一緒に、あなたの生きづらさに寄り添ってくれる作品がある。
    この作品が、あなたの、あなたたちの傍にあることを、切に願います。

    • りーさん
      naonaonao16gさん

      そうですよね。ふとした自分の気持ちや考えを伝えることは、思わず誰かを傷つけてしまうかもしれなくて、そう思...
      naonaonao16gさん

      そうですよね。ふとした自分の気持ちや考えを伝えることは、思わず誰かを傷つけてしまうかもしれなくて、そう思うと難しくてとどまってしまうこと、私もいっぱいあります。お気持ちとってもわかります。。

      note拝見しました。naonaonao16gさんの想いが痛烈に伝わってくる、素敵な文章でした。

      これからも、naonaonao16gさんの想いを書き続けてほしいです。
      2021/03/28
    • naonaonao16gさん
      りーさん

      noteも見てくださり、ありがとうございます!
      何かを誤解されずに伝えるのって難しいですよね。
      昨日村上春樹氏が、表現することを...
      りーさん

      noteも見てくださり、ありがとうございます!
      何かを誤解されずに伝えるのって難しいですよね。
      昨日村上春樹氏が、表現することを恐れるな、読む側も違う意見だとしても受け入れる力を、的なことを仰っていてなんだかグッときました…

      これからもぼちぼちですが続けていこうと思います!
      是非また遊びに来てくださいね( ¯꒳​¯ )ᐝ
      2021/03/28
    • りーさん
      naonaonao16gさん

      はい、ぜひ!

      これからも拝見したいです☺︎
      naonaonao16gさん

      はい、ぜひ!

      これからも拝見したいです☺︎
      2021/03/28
  • 死と再生の壮絶な物語。これは新たなる宗教の形なのか?

    主人公の彼女を発達障害だなんだとラベリングするのはカンタンだが、それで「ハイおしまい」に出来るほど、主人公の、そして我々の現実は甘くはない。

    私自身は「推す」という感覚が薄いので、主人公である彼女に寄り添い、理解するのはやや難しくはあった。

    しかし、自分の現状やいわゆる社会的生活も、何だか危ういバランスの上にあるのかもしれない、という感覚はある。
    だから自分という存在が、何かちっぽけなキッカケで崩壊する可能性も存在するはずだ。

    彼女にとってはそれが推しの炎上だった。
    世界は新たな時代を迎えたのか?SNSによって、それぞれの「推し」という身近な「神」を崇める時代を。

  • 推しを推しまくる、他人には理解できないほど推しまくる、そんな話だと思っていた。確かにそうなんだけれど、作者が伝えたいのはそんなことじゃない気がする。
    推しを推すこと以外、何もしないのではなく、できない少女。そう、少女なのだ。
    できないことをただ指摘する大人。病名だけを伝える大人。
    そこから一歩踏み込んで何か少女のために動いてあげられなかったのか、好きなことにはこんなに一生懸命になれる少女の特性を活かして生活に結びつけてあげることはできなかったのか‥‥と側から見ている分には言えるのかもしれない。実際に隣にいたら遊んでいるようにしか見えなくてイライラしてしまうのかもしれない。
    ただ一つ分かったのは、少女の心の内。できないことが自分でも分かっている、そしてそれを責められていることもわかっている、その心の中。それが痛いほど伝わってくる作品でした。
    ずっしり響きました。

    • みきさん
      こんにちは!
      この本を最近読んだのですが、そういった少女を取り巻く環境については深く考えていなかったので、違う見方を知れました♪
      私もそこま...
      こんにちは!
      この本を最近読んだのですが、そういった少女を取り巻く環境については深く考えていなかったので、違う見方を知れました♪
      私もそこまで深く考察できるようになりたいです。
      人によって感想が違うのがやはり読書の面白いことだなと改めて実感できました!
      2023/03/13
    • こっとんさん
      みきさん、はじめまして♪
      コメントありがとうございます。
      同じ本を読んでも人によって感じ方が様々で面白いですよね。
      そして、それを皆んなで共...
      みきさん、はじめまして♪
      コメントありがとうございます。
      同じ本を読んでも人によって感じ方が様々で面白いですよね。
      そして、それを皆んなで共有し合えるこのブクログの場、ありがたいです。
      これからもどうぞよろしくお願いしますね♪
      2023/03/13
  • 努力のベクトルが違うだけで、人はこんなにも孤独になると衝撃を受けた。

    「努力しているのに、誰にもわかってもらえない」
    そんな気持ちがよぎったことのある人に、この小説は静かに刺さります。

    宇佐見りん『推し、燃ゆ』は、推し活小説という枠を超えて、“推す”とは何か、生きづらさとは何かを真正面から描いた物語だと思いました。

    主人公・あかりは、学校にも家にも居場所がなく、自分という輪郭が常にぼやけている少女。
    ただ唯一、“推し”だけが彼女をこの世界につなぎ止めてくれる。
    推すという行為は、あかりにとって単なる趣味ではなく、自分を保つための努力そのもの なのです。

    対照的なのが、姉の存在。
    姉は社会が“正しい努力”と認める方向にまっすぐ進み、評価される形で人生を積み上げていく。
    どちらも努力している。
    ただ、ベクトルが違うだけ。
    それなのに、理解されるのは姉だけで、あかりは“怠け”とみなされてしまう。
    この構造的な不公平が、あかりの孤独をさらに強めていきます。

    本作の魅力は、こうした 現代的な生きづらさの正体 を、推しという“個人的な物語”を通して描き切った点にあると思いました。
    宗教・家族・国家といった“大きな物語”が弱まり、
    「私は何者として生きるべきか」が個人に丸投げされた時代。
    自分を支える軸が見つけにくい今、推しはただの趣味ではなく、自分を生かすための生命線 にもなりうるのです。

    では、救いはどこにあるのか。
    そのヒントは、本作の行間にそっと置かれています。

    それは、努力の形は一つではないと認める想像力を、社会が取り戻すこと。
    そして、自分を支える“物語”を、自分で選んでいいと知ること。

    読後、あかりの痛みは決して彼女個人のものではなく、現代を生きる多くの人が感じている“不安の影”とつながっていると気づかされます。

    『推し、燃ゆ』は、推し活を描いた若者小説というより、現代の孤独と努力を言語化した、静かな現代批評 のような一冊。
    読み終えたあと、自分自身の“推し”や“生き方”を改めて見つめ直したくなる作品でした。

    • ななみさん
      この作品、気になっているのですが、まだ手にしていません。積読本の山が少し解消されたら読んでみたいです。
      私の姪も推し活していますが、日々の生...
      この作品、気になっているのですが、まだ手にしていません。積読本の山が少し解消されたら読んでみたいです。
      私の姪も推し活していますが、日々の生活に張りが出て仕事も頑張れるならアリだなと私は思っています(^^)
      2025/12/06
    • なりすけさん
      ななみさん、コメントありがとございます!
      私は積読の山崩しが終わって本書を手にしました。
      私も推しがあるのって素敵だと思います!何より楽しい...
      ななみさん、コメントありがとございます!
      私は積読の山崩しが終わって本書を手にしました。
      私も推しがあるのって素敵だと思います!何より楽しいでしょうしね。
      2025/12/10
  • うわ、これ、めっちゃ解る、と思ってしまった。(←読んでいる間だけだった。)

    自分の推しを「神」と言う人たちがいらっしゃるが、その人たちの気持ちが少し解るような気がした。

    私には神も推しもいないけれど。

    あかりは推しの一挙手一投足を「解釈」する。
    彼の発言を記憶し、グッズを集め、部屋中も頭の中も推しだらけにする。

    そうしないと「現実」が押し寄せてきて、身体中を侵食し、立っていられないからだ。

    推しはあかりを人間的にも性的にもジャッジしない。
    推しはあかりを視ない。
    しかし、身も心も捧げていれば、それ相応か、それ以上の、幸福のリターンがある。

    「推し活」にもいろいろあって、推しと直接交流したり、あわよくば恋人になりたいと思う人もいるそうだが、あかりはそういうのじゃないらしい。

    あくまで影になり推しの幸せを願い、推しと一体化することで、自分を保っている。

    「普通の」人はやじろべえみたいにバランスを取って生きている。
    あかりもそうだ。
    片方が重いからこそ、もう片方も重くしているだけだ。

    その片方をいきなり外されたら、どうなるのだろう。

    あかりを見ていると、何かこう、愛しさと切なさが込み上げる。

    ラストまで読み終わったら、なぜだか安心して、ブワッと涙が出そうになった。

    大丈夫、とはとても言えないけれど、きっとあかりはどんな形であろうとも、生きてくれるだろう、と思った。

    娘(いないけれど)ぐらいの年齢の女性の書いたものに、こんなに共感させられるとは思わなかったです。
    宇佐見さんの文章は普段は平易なのにここぞという場面で濃度粘度がグッと強まる。
    その緩急のつけかたが素敵で虜になってしまいます。

  •  長女と同い年の宇佐美りんさん、恐るべき才能だというので、避けていたのだけれど。
    「かか」を読みたくてブックオフで手に取ってみたら、まだ、1000円以上。芥川賞受賞の「推し、燃ゆ」はもっと高いだろうと思ったら、220円。
    じゃ、こっちにしようっと(^ω^)。
     うん、確かにすごいのだけれど、「好き」ではない。筆致はすごい。例えば、友達の顔が、一瞬、スマホの笑顔のスタンプに見えた時の描写とか、プールの授業を見学した時に、プールから溢れてくる水の独特の気持ち悪さの描写とか。
     気がついたのは普通の「推し」について書いた小説ではないということ。一般に思われているような、健康的で「チャラい」「追っかけ」ではなく、本当にそれが無いと生きて行けない「背骨」的な「推し」であるということ。
     主人公は発達障害か何かの問題があり、学校の勉強や部屋の片付けや普通の人が頑張れば出来ることを頑張っても出来ない。生きづらい中で、「推し」という一つの光明を見つけ、生きる目的が「推し活」になっていった。「推し活にかまけて勉強しない」ではなく、「生きるためには推し活しか無い」だったのだ。
     そんな人もいるのだと思った。けれど、「推し活」をしている人がそんな人ばかりではないだろう。
     今流行りの「推し活」について詳細に書き、「発達障害」など、これもまたここ何年か注目されている事柄を絡ませている。21歳のアンテナがキャッチした上手い小説だと思った。こういうのが芥川賞を取るのだろう。
     けれど、私はなんか引き込まれない。「発達障害」か「推し」かどちらかに焦点を当てて書いてほしい。
     でも、「かか」は読みたい。


  • この本を読み終わって最初に思ったのは「何で表紙がピンクなんだろう…」だった。でも、中身は期待通りの真っ青だった。そのチグハグさが、内と外に思えた。

    読んでるうちに、自分の推し活遍歴を思い出す。
    私も割と推し活する派だった。推し活し過ぎて、それが人生を左右した。

    高校の卒業文集に推しと結婚すると書き残したし、推しを追いかけて音楽学校(裏方)に進学し、結果テレビ局のディレクターになった。

    当時の私は今と違って40㌔も無いくらいに痩せていて、渋谷を歩けばモデルにスカウトされ、新宿を歩けばキャバ嬢にスカウトされた。テレビ局内を歩いていると「芸能人かと思ったら、お前かよ」と後ろから同僚に言われたこともあった。

    推しと仕事をするようになり、会話も出来るようになった、ライブはタダで観れ、CDも買わなくても手に入るようになった。

    けど、あっさり結婚したのは、推しと同じ誕生日を持つ他局のディレクターだった。

    自分は推し活の最上級を攻めたと思っていたが、結局現実との境があったのだ。近づきすぎた。

    全てだ、とは言えなかった。

    主人公のあかりとは、環境も境遇も違うけれど、どれほど打ち込めば、そこまでになれるのか、少し羨ましいとも思った。

    推してる間はとにかく楽しい。生きている価値を与えてくれる。尊い。世界が変わるし、視界も変わる。

    でも近づきすぎは良くない。
    努力しないで成り立ってしまう推し活は、真実の萌えを生まないと学んだ。

    ちなみに私の今の最推しは、二次元の男だ。

    どんなに努力しても永遠に近づくことが出来なくなった。

    それもまた現実。

  • 164回芥川賞受賞作品!
    文学的な表現で語られた物語ですが、この手の表現ってついていけないのよね(笑)

    この年になると「推し」って何なのか、よくわかんないんだよな。って思っていて、アイドルの推しを究極まで推し続けるポジティブな物語と思っていたら、とても重いお話でした。

    主人公のあかりの「推し」の真幸がファンを殴って炎上した!
    というところから、物語は始まります。

    あかりの「推し」の活動。
    「推し」ってそういうことをするんですね。すごい。

    彼女の生活のすべてが、「推し」につながっています。
    一方、彼女は発達障害と思われる行動・生活様式。
    家族にも理解されないまま、「推し」にすべてを注ぎます。辛い..「推し」に推しまくる。

    彼女が求めるものはいったい何だったんでしょう?
    自分の人生のすべて?

    「推し」のリアルを理解しました!

  • 娘が「カラフルピーチ(youtuber)」にハマっています。そのカラピチグッズを買うために一緒に3時間も並びました。数百人の長蛇の列。待っている間に本一冊を読みきって、それはそれで充実してました……ではなくて、なぜこれほどの労力を掛けて、推せるものなのでしょうか。
    古くは江戸時代にすでにフィギュアがありましたし、歌舞伎の「推し」役者の浮世絵が飛ぶように売れました。また「かぶきをどり」のような、今で言う野外フェスも一般市民の間で大流行しました。裏には幕藩体制への不満があったと言います。いつの時代も人間というものはそんなに変わらないのだと思います。

    さて、本作は「推し」を推すことに全てを捧げ、生活までも崩れていってしまう女子高生あかりの物語です。推し活をする事を自分の業とまで言い切ります。
    極めて現代的な点は、現実の生活に満足感や自己肯定感を得ていないところにあります。
    アニメにハマりすぎたり、声優を目指す夢を語る人の中に少なからず存在しています。もちろん全然そうじゃない人が大多数ですが。
    推しを推すことで、推しに自分を重ねることで、自分を保っていける、そんな鬼気迫るものを感じました。あかりの描写の中にも保健室登校や心療内科に通っていることをうかがわせるものがあります。
    でも、あかりは全然駄目なんかじゃない。アルバイトだってしているし、ブログの文章なんかもかなり上手。コミュニケーションもどうしてなかなか。ここがどうにもならなくなっている人との違い。本気になれば推しのことを詳細に調べてすごい量のファイルにまとめることができる。世の中で生きていくストロングポイントは十分にある。
    「推し」を失ったことが、あかりにとって本当のスタートになるのだと思います。
    少しずつ現実とも折り合いをつけていって、いつかあんなこともあったっけな、と振り返れる日が来るのではないでしょうか。
    あかりの持ち味にはやく気づいて、リアルな世界の方でも充実感をつかんでほしいと思いました。

    「推し活」のリアルをはじめて知りました。今のアニメ文化は秋葉原だけでなく、池袋がすごいそうなのですね。私もちょっと見に行こうかなと思いました。

  •  昔読んだけど内容忘れちゃったのでもう一度読みました。
     テーマは「推し活」主人公のあかりの推し、真幸がファンを殴って炎上したその後から物語は始まります。あかりの情熱が最初から最後まであったという印象でした。私も前に推しがいたのですが(いまは推し活してません)その時に読んだらもっと感情移入できたかと思いました。

  • 著者、宇佐見りんさんは、ウィキペディアによると、次のような方です。

    ---引用開始

    宇佐見 りん(うさみ りん、1999年〈平成11年〉5月16日[2] - )は、日本の小説家。静岡県沼津市[2]生まれ、神奈川県育ち[3]。


    で、本作の内容は、BOOKデータベースによると、次のとおり。

    ---引用開始

    推しが炎上した。ままならない人生を引きずり、祈るように推しを推す。そんなある日、推しがファンを殴った。第164回芥川龍之介賞受賞。

    ---引用終了


    本作は、164回芥川賞受賞作品になりますので、受賞時期の他の受賞作品を見ておきます。

    第161回 「むらさきのスカートの女」 今村夏子
    第162回 「背高泡立草」 古川真人
    第163回 「破局」 遠野遥 
    第163回 「首里の馬」 高山羽根子 
    第164回 「推し、燃ゆ」 宇佐見りん
    第165回 「彼岸花が咲く島」 李琴峰
    第155回 「貝に続く場所にて」 石沢麻依

  • 164回(2020年度下半期)芥川賞を受賞作品。2021年本屋大賞では9位を獲得。

    アイドルとは偶像であり、その偶像を崇拝(≒推し)するということは宗教的なことを示唆しているのだろうか。途中、「業」などという言葉がいかにも意味ありげに使われてもいたし。

    読んでいて、同じく芥川賞受賞作品の「コンビニ人間」を思い出した。肉と骨が表と裏、「こちら」と「あちら」という感じだろうか。

    また、文体で言えばゆるい感じからギアチェンジした時の迫力は凄い。引き込まれていく感じがたまらない。

    • 5552さん
      TAKAHIROさん、はじめまして
      5552と申します。
      フォローありがとうございます。

      「ギアチェンジ」ってうまいこと言うなあ、...
      TAKAHIROさん、はじめまして
      5552と申します。
      フォローありがとうございます。

      「ギアチェンジ」ってうまいこと言うなあ、と思いました。
      自分のレビューで舌足らずにしか書けなかった宇佐見さんの文体の魅力を、上手く表現しているなあ、と。

      いきなりのコメント失礼しました。
      2022/03/26
    • TAKAHIROさん
      5552さん、コメントありがとうございま〜す。
      コロナ禍でブクログ初めて2年にして祝初コメントいただきました!
      ギアチェンジって仕事での私の...
      5552さん、コメントありがとうございま〜す。
      コロナ禍でブクログ初めて2年にして祝初コメントいただきました!
      ギアチェンジって仕事での私の口癖なんですよ‥よって深く考えたコメントではございません(笑)
      5552さんのレビュー今後も楽しみにしとります。
      2022/03/26
  • 主人公あかりは、地下アイドルの推し活をしている。その活動は、彼女の背骨だとする。
    推しを崇拝するが如く、彼女達は、その活動を支える。そして、その対象となる、仕事学校等を業と名付ける。
    若い作家さんで、他作を読んでいないので、作風がわからないのですが、現実の社会生活に馴染めない、納得していないという状況を具体的に書いていきます。そのような状況は、その時代やその年代で表現されてきて、シンパシーを得ています。
    あかりは、病名が二つついたという設定ですが、最後までそれを明らかにはしません。
    彼女は、日常生活は破綻気味でも、背骨を持った推し活は現実的で計画的とさえ思える行動をとります。
    病気かどうかは、不要であったように思う。読者に任せてもよかったのではとも思う。
    彼女の推しは、人を殴りSNS上で炎上する。そして、グループ解散結婚であっけなく消滅する。
    彼女は、最後に 投げた綿棒を骨に見立てて拾う。
    彼女の中で推しも燃え尽き、次の生活に進もうとすると読んだが、違うかもしれない。

  • 「推し」にのめり込む気持ちはよく分かる。
    ちょっとこれは行き過ぎてるけど、気持ちはとても理解できる。うん、かなり行き過ぎてるけど。

    「推し」がテーマなので楽しい話だと思っていたのに、全体的にかなり暗くて、文章も読み辛かった。
    普段と同じスピードで読み進めると、意味がわからないまま過ぎていってしまう。
    ゆっくり、情景を思い浮かべながら読むべき本。
    こういうのを純文学というのかな。
    私は長ったらしくて読みにくいな、と感じてしまった。

    それにしてもこの家族、みんな冷たすぎる。
    もっと寄り添って、理解してあげなきゃ。

  • 祝、芥川賞。
    宇佐見りんさん、史上三番目の若さでの受賞とのこと。

    芥川賞作品は短いので、何がしかの待ち合いに読むのにマッチする(笑)
    この本の場合は歯医者さんの診察待ちで読んだ。

    「推し」についての小説。

    全般に不安定でスマートには進まない。
    つまづきながら歩む。
    時に二本足歩行もできなくなる。
    主人公のあかりはそんな女の子だ。

    あかりの推しのアイドル真幸は、ある時ファンを殴って炎上する。
    そんな行動に幻滅するファンも多い中、あかりは真幸を解釈し続ける。まるで、自らが生き続けるための証を探し続けるかの如く。

    というお話だが、

    うーん、

    「推し」のことはよくわからない!

    なんだか、新しい世界に出会ってしまいました。

    とても若い作家さんなのに、主人公も若いのに、小説から若い熱量を感じないのが不思議(笑)

    • naonaonao16gさん
      こんばんは!

      いやいや、なんというか。
      文面だとニュアンスが伝わらなくて、難しいですね。

      わたしは、最近の「スペクトラム」とい...
      こんばんは!

      いやいや、なんというか。
      文面だとニュアンスが伝わらなくて、難しいですね。

      わたしは、最近の「スペクトラム」という潮流というか考え方が好きで。
      みんな、得意不得意や、気質や体質、あると思っていて、ついでに言うと、みんな何かしらの依存症だとも思っています。
      つまり、みんな発達障害の総称の中に挙げられる特性の中にあるだろうし、何かしらに依存しながら生きてるんじゃないの?というのが個人的な持論です。ちょっと極端に言ってますが。

      作品だと、あかりが推しを推すことはできて生活が回らないことを発達障害で片付けている気がして、それこそわたしは乱暴だと、そう感じたんですね。
      人間「偏り」くらいあるじゃないですか。そこが個性の愛すべきところで。
      だから、あかりは発達障害って設定だったけど、あかりという人間性、でよかったと思うんです。
      そういう意味で、たけさんの言葉は、わたしにはふさわしいように感じたんです。

      同時に、その発達障害という彼女の特性が、推しというものへの理解の一助になっているのかなとも思うのです。あかりほどの熱量でもって推せるのってすごいことでしょうし。
      また、作品の中の彼女の生きづらさは想像を絶します。その生きづらさの想像を補う存在としての発達障害だったのかな、と。
      うん、やっぱりうまく言葉にできません(笑)

      でも、おっしゃる通り、環境ですよね。
      あかりはたぶん、飲食店のアルバイトよりも、別のアルバイトの方が向いているような気がしました。

      こちらこそ、もやもやさせてしまってたら、すみません。
      そして駄文長文、まことに失礼いたしました。
      2021/02/25
    • たけさん
      naonaonao16gさん。

      なるほど!
      乱暴に言うと、この作品に対してnaonaonao16gさんと僕は同じようなことを感じていた、と...
      naonaonao16gさん。

      なるほど!
      乱暴に言うと、この作品に対してnaonaonao16gさんと僕は同じようなことを感じていた、ということですね(笑)

      まあ、個性なんですよ。結局。
      「発達障害」という言葉は、その人の生きづらさを除去するためにあるのであって、周りが偏見を持つためにあるのではない、ということかな。乱暴にまとめると。
      2021/02/25
    • naonaonao16gさん
      たけさん

      そうです!たぶん同じこと感じてます!(笑)

      生きづらさの除去。
      いいこと仰いますね~
      本当にそうだと思います。本人がその言葉を...
      たけさん

      そうです!たぶん同じこと感じてます!(笑)

      生きづらさの除去。
      いいこと仰いますね~
      本当にそうだと思います。本人がその言葉を名付けられて、生きやすくなれればよいのです。
      2021/02/26
  • 私は19歳あたりから熱中できるぐらい何かを好きになることができなくなって、もちろん今も推しなんてなく。
    だから推しがいる人の気持ちが今ひとつ分からなかったんだけど、なるほどこんなかんじなのか…と。
    背骨になってくれるような存在がいるっていいなあ
    (“生き甲斐”というありきたりな言葉じゃなくて、“背骨”と表現しているところもいいなあと思ったし、納得感があった)
    思いっきり愛を注いでぶつけることができる存在がいたら満たされるんだろうなあ
    でも自分の身近な人ではなく遠くの世界の人を好きになるというのは、不祥事や炎上なんかである日突然 彼/彼女を失うこともあるんだなあというのもしみじみ思いましたね…
    特に芸能界引退というのは今後どうやってもその人と関わるどころか姿を見ることさえ断絶されるわけだからどうしようもないね…
    そう思うと夢や憧れだけではない危うさもある道なのかもなぁ…

    “推す”というのは、恋に近い感情なんじゃないかな
    推し方は人それぞれ、かつ実際は恋とは別物であったとしても、推しへ向ける熱やエネルギーを構成する元素のようなものは恋愛における片思いと似てる気がする

    主人公が、推しを追う活動以外の生活では何もできなくて、きっとその焦燥感からどんどんセルフネグレクトしていく様はなんか分かる…と思ってしまった
    本当にどうしようもない時、落ちるところまで落ちて自分を粗末に扱ってしまいたくなるというか。

    『泣いた自分がくやしかった。肉体にひきずられ、肉体に泣かされるのがくやしかった。』
    ここもめちゃくちゃ分かる〜〜〜
    宇佐見りんさんの文章よかったな…
    血の通った生々しい人間のどうしようもない心情を愚直に書いたかんじ
    ストレートに響いて私はすごく好きだったし、すらすら読めるのに本を閉じた後もずっと頭に残っていてずっと考えてた


  • 芥川賞受賞の作品。
    21才の若手作家(でさらに可愛い気がした笑)とのことで気になり購入、読了。
    前作は三島由紀夫賞を最年少で受賞されているそう。

    いやー、コレは面白いですねーーー( ̄∇ ̄)
    めちゃ良い作品…天才の予感がする作家さんですね。

    上手く言い表せないんですが、文章に魔力めいたものを感じるというか…(笑)
    読み手をぐっと惹きつける、のめり込ませる不思議な魅力があるように思いました。

    「アイドルを『推す』」という最近(ちょっと前からかもしれませんが…)特有の文化。
    現実世界で埋められない心の穴を、そこで代替してしまうほどにのめり込む。
    まさに「今」を切り取った文学だなと。

    朝井リョウさんの帯の一文、「未来の考古学者に見つけてほしい時代を見事に活写した傑作」がまさに言い得て妙だと思いました。

    本作は、他に類を見ないほど「リアリティ」、「臨場感」が突出しているのでは無いかと思います。
    すぐそこにある事実のように、明確にイメージできるレベルですっと入ってくる感覚があります。

    「アイドルを推す」という自分にとっては未知の領域も、その心情が巧みに表現されています。
    推しエピソードの手数も多く、それが圧倒的な「熱量」を伝える要素として効いているのでは無いかと。

    上手くいかない家族との関係性も、辛辣なほどリアルに描かれています。
    母、父、姉、あかり、誰かが一方的に悪いというわけではない…でも、どこか歯車が噛み合わない。
    幸せになれない。
    こういう家庭って実際にあるんだろうなと。

    読んでいて、ずっともやもやもした行き場のない感情があったのはそこなのかなと。
    解決の糸口が見えない、その閉塞感が影響していたような気がしました。

    ラストは様々な解釈があるように思います。
    個人的には希望のある終わり方なのかなと。

    あかりは自分を受け入れ、自らの力で歩いて行く決断をした。
    そんな風に解釈しましたが…

    自分もあまり器用な方では無いですが、自分なりに逃げない、ズルしない、自分に恥じない、そんな生き方をしたいなと。
    漠然とですが、そんなことを思いました。

    二足歩行は向いてなかったみたいだし、体は重い。
    でも、やるしかない。

    <印象に残った言葉>
    ・触れ合えない地上より触れ合える地下(P5、成美)

    ・推しは命にかかわるからね(P6、あかり)

    ・やらなくていい、頑張らなくてもいいから、頑張ってるなんて言わないで。否定しないで(P57、姉)

    ・携帯やテレビ画面には、あるいはステージと客席には、そのへだたりぶんの優しさがあると思う。相手と話して距離が近づくこともない、あたしが何かをすることで関係性が壊れることもない、一定のへだたりのある場所で誰かの存在を感じ続けられることが、安らぎを与えてくれるということがあるように思う。(P62、あかり)

    ・二足歩行は向いてなかったみたいだし、当分はこれで生きようと思った。体は重かった。綿棒をひろった。(P125、あかり)

    <内容(「Amazon」より)>
    【第164回芥川賞受賞作】
    「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい」

    朝日、読売、毎日、共同通信、週刊文春、
    ダ・ヴィンチ「プラチナ本」他、各紙誌激賞! !

    三島由紀夫賞最年少受賞の21歳、第二作にして
    第164回芥川賞受賞作

    ◎未来の考古学者に見つけてほしい
    時代を見事に活写した傑作
    ――朝井リョウ

    ◎すごかった。ほんとに。
    ――高橋源一郎

    ◎一番新しくて古典的な、青春の物語
    ――尾崎真理子

    ◎ドストエフスキーが20代半ばで書いた
    初期作品のハチャメチャさとも重なり合う。
    ――亀山郁夫

    ◎今を生きるすべての人にとって歪(いびつ)で、でも切実な自尊心の保ち方、を描いた物語
    ――町田康

    ◎すべての推す人たちにとっての救いの書であると同時に、絶望の書でもある本作を、わたしは強く強く推す。
    ――豊崎由美

    逃避でも依存でもない、推しは私の背骨だ。アイドル上野真幸を“解釈“することに心血を注ぐあかり。ある日突然、推しが炎上し——。デビュー作『かか』は第56回文藝賞及び第33回三島賞を受賞(三島賞は史上最年少受賞)。21歳、圧巻の第二作。

  • 主人公のあかりはアイドル・上野真幸を推す。その推しのために日常生活が困難になる程の熱狂ぶり。でも主人公は2つの病名を持つ。推しがファンを殴り一気に人気がなくなる。推しが結婚指輪をつけたグループ解散会見するといった普通の人間だった、という内容、で、合ってるかな?・・・心配。芥川賞作品って、薄っぺらな内容をこれでもか!というほどに文章をひねり倒し、高級感漂わせるように書き、ちょっとした比喩表現を巧妙に挿入することにより受賞できるんだ⁉読友さんの評価が高く、読み方が悪かったかなぁ?作者は絶対に狙ったでしょ。。①

  • 文学的な表現をしようとしてるのか、最初、そんなこと思うわけないだろうと言う言葉選びが多く、頭に入ってこない。後半は、そういうテクニックに走る事が消えて読み易くなる。推しと自分のどうしようもない現実が共鳴したような活動が終わっても、生きていかなければならない。最後、自死に向かわなくてよかった。

  • 推しがいる人には刺さりまくるのでは?
    ただ、そこがまたリアルで苦しい。

    主人公はまさに推しがいることで生きている状況。
    推しに対する思い、言動がわかる一方で
    どんどん周りと距離も生まれている感じがきつかった。

    作品自体は短く読みやすく、
    活字が苦手でも推しがいる人なら共感しながら読める作品だと思う。

全2941件中 1 - 20件を表示

この本が好きな人におすすめの本

著者プロフィール

1999年生まれ。2019年、『かか』で文藝賞を受賞しデビュー。同作は史上最年少で三島由紀夫賞受賞。第二作『推し、燃ゆ』は21年1月、芥川賞を受賞。同作は現在、世界14か国/地域で翻訳が決定している。

宇佐見りんの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×