ぬくもりの旋律

  • 河出書房新社 (2024年6月14日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (264ページ) / ISBN・EAN: 9784309031910

感想・レビュー・書評

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  • Amazonの紹介より
    「あの日、私を救ってくれてありがとう」
    現日スポーツの記者・直生は、栄神タイガースの抑えのエース・宮城峻太朗に絶大な信頼を置かれている。ある日彼は、宮城がフリーエージェント権を行使して、メジャーへ挑戦することを内々に知らされる。その挑戦を喜ぶと同時に、少しだけ羨ましく思う直生。いつか自分も独立して海外で取材がしたい……彼には二人の娘がいるのだが、次女の奏が自閉スペクトラム症で、子育てを妻の栞に任せきりだった。そんな中、奏が怪我をして入院することに。緊張の糸が切れたように崩れ落ちる栞を前に、直生は何一つ声をかけることができない。深まる溝、先の見えない未来。後悔の中、彼は思う。そもそも自分は、なぜ、この仕事を選んだのか……すると、中学時代に出会った先輩・佐々倉美琴の姿が脳裏に浮かんできた。 いま、小さな再生の物語(ドラマ)が幕を開ける。



    作者が元々スポーツ関係のライターの経験もあることから、スポーツライターとしての苦悩といったことが丁寧に描かれていて、色々な出来事に直面するのですが、切ない気持ちになりましたし、温かい気持ちにもなりました。

    仕事に熱心ながらも、家庭では妻に任せっきりで、娘がスペクトラム症ということで、どうコミュニケーションをとればいいのかわからない状況に波乱の展開を予想させます。そんな状況に色んな「なぜ?」が思い浮かび、過去を振り返ります。

    章が変わるごとに、登場人物の視点が変わっていきます。主人公の直生や先輩の美琴、妻の栞など視点が変わることで、知らない一面も垣間見ることができるのですが、その苦悩はそれぞれ様々です。
    色んな人の苦悩を読んでいると、人間誰しも悩みを抱えているんだなとしみじみ思いました。

    「表」では見えていなくとも、「裏」では様々なものを溜め込んでいます。沸々と自分の中で含まらせるだけでなく、周りと悩みを共有することも大切だと感じました。

    途中、先輩との思い出ということで、21年前の青春時代が描かれているのですが、こちらも苦い青春が詰まっています。

    登場人物それぞれが抱える悩みは、なんとも胸が苦しい気持ちになりましたが、唯一救いといいましょうか、癒されたのが、長女の詩でした。詩視点の物語はなかったのですが、詩にも悩みはあります。それでも、大人達を支えてくれるような存在や言動にしっかりしているなと感心してしまいました。

    長い暗いトンネルをどう抜け出していくのか?一気に開けることがまずないながらも、ちょっとずつちょっとずつ進もうと、もがきながらも前へ進む描写に今迄苦しかった分、段々と緩んでいき、優しい気持ちやジーンとした気持ちになっていきました。

    ただ、気になったのが、この作品、どの部分を主張したいのかが気になりました。
    娘のスペクトラム症なのか、先輩の隠された秘密なのか。この2つが柱があることで、背景に奥行きが生まれていくのですが、どっちが前面に出したいのかブレブレになった印象でした。

    おそらく直生の家族を中心にした物語かと思いますが、先輩のキャラクターを丁寧に描きすぎたのか、秘密に対する衝撃も強かったためか、同じ立ち位置にいるような感覚がありました。もう少し、先輩像を抑えめにしてもよかったのかなと思ってしまいました。

    人生、甘く苦い青春もあれば、モヤモヤする現実もあります。どうすればいいのかわからない状況に切ない気持ちになりましたが、なにか糸口が見えたことで開けていく状況に温かい気持ちにもなりました。

  • 読了

  • 森沢さんが帯の文を書かれていたので手に取りました

    我慢するということは、相手を思いやっているようで実はそうじゃない

    そんなことを、今までにも感じたことがあります
    自分が我慢をさせている、そういうことに負い目や引け目を感じてしまうんですよね
    自分のせいで、と思うことで言いたいことがどんどん言えなくなっていくのは悲しいことだと思います

    傷つけるかもしれないし、勇気がいることだとも思うけれど
    たまには本音をぶつけ合える、そんな関係が築けるのならそれは素晴らしいことなんだと思えます

  • 切なく暖かくなるような小説

    我慢することって、愛情表現じゃない

  • 自分の気持ちを押し殺してまで人を気遣うことが大切なことなのか考える必要があるなと感じた。自分を大切にしながら、人を思い遣ることができるようになりたいと思う。
    いつものルーティンはやはり大事。少しの慢心が信頼を一瞬で失うこともある。気をつけなきゃ!!

  • ラジオで静岡出身の作家さんと聞き、読んでみました。
    はっきり伝えないでモヤモヤしたまま離れて行ってしまうもどかしさ、学生の頃はそんなもんですよね。
    美しい記憶は、現実の生活が上手く行かないとより輝いてしまう。最後は、家庭が壊れずにいい方向にに行きそうで安堵しました。
    人生、諦めた事があってもそれは自分の決断ですよね。

  • 静岡書店大賞受賞。
    みんなが我慢しない方法をちょっとずつ探していこう。
    新聞記者、独立したい直生、自閉症の娘に付きっきりで、もう一度仕事したい妻、メジャーに行きたい宮城、直生に学生時代救われた、末期癌の美琴。
    我慢して今を生きているが、みんなどこかで誰かに助けられて、繋がっていた。
    じんわり、暖かくなるストーリー。

  • 登場人物が抱えるそれぞれの心の迷いや葛藤。
    友人の助言を受けて、結局は自分らしく生きることが、自分以外の人にとっても大切だということを知る。
    切なさありつつ、ほんのり心も温まる物語でした。
    身近な静岡の地名が出てきて親近感が湧きました。

  •  ジャーナリストの佐々倉美琴とスポーツ新聞社のライター月ヶ瀬直生。同じ中学の先輩と後輩で、お互い知り合い以上の感情を持っていたのだけれど、、縁とタイミングだなあ…と改めて思う。
     中学生の美琴の思いが切ない。どうすることもできなかったのもよくわかるけれど…。直生から「かっこよくいてほしい」と言われた美琴はその後の人生しんどくなかったのかな。栞には「我慢するな」って言ったのに。直生の成長なのか、そういう対象なのか、、今ひとつわからなかった。
     静岡書店大賞受賞作。良く知った地名がたくさん出てきたのが楽しかった。

  • 何かを選択したら、それが自分にとってベストなシナリオだったとあとからちゃんと思えるように、自分で人生を紡いでいく
    我慢することって、愛情表現じゃない。自分が自分らしく生きていないと、結局まわりを傷つける。

    最後、直生は琴美に会えなかった
    間に合わなかった

  • スポーツ新聞記者月ヶ瀬直生を中心として、その家族や人生で関わった人たちをめぐる物語。
    いろんな要素を詰め込みすぎて、それぞれはちょっと浅くなってしまっているような印象はあったが、人とのつながりのまさに「ぬくもり」を感じさせてくれる読後感の良い小説だった。

  • 静岡書店大賞受賞。読みやすい文章で、ただちょっと盛り沢山過ぎるかなあ、という印象は受けたかな…。でも、2時間ドラマのような読後感の良さがありました。

  • 静岡書店大賞2024で知り読了。地元朝霧高原からの富士山をリアルに想像しながら読んだ。(宝永山が見えなくて正面が大沢崩れが荒々しくてっぺんが真っ平らでワイルドで強い印象)富士山といえば、なだらかな斜面で美しい印象が一般的だと思うが、男性的で強いこの形の朝霧高原から見える富士山を作品の題材にしたのは意図的なのか偶然なのか。富士山は見る場所によって見せる顔が違う。朝霧野外活動センターの富士山ライブカメラを見て余韻を味わってもらえたらなぁと思うhttps://live.fujigoko.tv/?n=28&b=0

  • 実家の最寄り駅が表紙のモデルとなっているので購入しました。地元が出てくるので、あれこれ想像しながら読むのが楽しいです

  • 直生、何やらいろいろと自分に投影して考えさせられる。彼のように注目される有名人と懇意にしてるわけでもなければ、若きころに彼女と将来への思いを語り合った記憶もないのに。障害をもつ子どもとの接し方、こっちの思うようになんてならないと知りながら上手く向き合えないジレンマ。何度か自分の心を変えようという転機があって、一歩踏み出してみるんだけど、いつしか元の状態に陥ることの繰り返し。美琴や宮城ほどでなくても、ぬくもりの旋律を奏でてくれた人たちはいたはずだけどなぁ。今さらながら、常に「一歩前へ」の気持ちは保ちますか。

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著者プロフィール

フリーライター/陸上自衛隊予備官/防衛省オピニオンリーダー。
1977年、福岡県生まれ。同志社大学工学部中退。陸上自衛隊予備自衛官補(一般)に志願し、50日間の教育訓練を経て予備自衛官に任官。全国の陸海空自衛隊各部隊を取材し「女子高生にも分かる国防」をモットーに執筆活動を行う。著書に『いざ志願!おひとりさま自衛隊』(文春文庫)、『誰も知らない自衛隊のおしごと~地味だけれど大切。そんな任務に光あれ』(扶桑社)がある。

「2020年 『自衛官になるには』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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