本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784309039244
作品紹介・あらすじ
読むこと、書くことを通してことばを見つめ、ひろい場所で呼吸を続ける現代詩作家、荒川洋治。
本書では、随筆家、編集者、文学賞の選考委員と、
50年以上も多彩な立場で活躍を続ける著者が生んだ4000編以上のエッセイから、
「文章を書く」ことついて記した55作を選りすぐって収録。
■武田砂鉄さん推薦■
自分はずっと書いている。
ずっとずっと書いてきた人の言葉はずっと尊い。
ずっと届かないのがとてもいい。
【目次】
はじめに
第1章 暮らしのなかで書く
春とカバン
まね
畑のことば
おかのうえの波
他の人のことなのに
メール
夢のふくらみ
青年の解説
自分の頭より大きな文字
これからの栗拾い
小さい日記
すこしだけ、まわりとちがう
一本のボールペン
言葉がない
第2章 詩のことば
かたわらの歳月
散文
蛙のことば
ファミリー 詩の誕生日
山林と松林
目覚めたころ
希望
論文の「香り」
詩の山々
きょう・あした・きのう
いまも流れる最上川
詩の形成
涼やかな情景
キアロスタミと詩と世界
第3章 文学をよむ、書く
峰
かたちが光る
短編と短篇
高見順
遊ぶ
おおらかな写実
毒と神秘と
いつも何かを書いている
風景を越える
書きもの
暗くなったら帰るだけ
『島村利正全集』を読む
悲しみ、楽しむ
第4章 書く人が知っていること
しら浪
子どものときにつくる本
美しい砂
夢と光の日々
形にならない心へと向かう
悲しいもの
自転車で歩く人
太郎と花子
ホームズの車
東海林さだお『スイカの丸かじり』
底流にあるもの
道の影
上のほうから来た人
これから
おわりに
みんなの感想まとめ
読むことや書くことの本質を深く考察したエッセイ集で、著者の豊かな経験と独自の視点が光ります。荒川洋治が50年以上にわたり、4300編以上のエッセイを生み出してきた成果が詰まった本書は、単なる読み物では...
感想・レビュー・書評
-
敬愛する現代詩家・荒川洋治さんが新聞や雑誌に寄せた文章にまつわる短編、若き頃80年代のものもある。
この本はそのような成り立ちであるからこそ一気に読むべきではなく、常に手元に置いて、深く気ままに読むべきなのかもしれない。室生犀星の編は、書き写したい。 -
■あらすじ
谷崎や三島ら文豪の『文章読本』は〈名文とは何か〉〈文章とはこう書くべきだ〉いう規範的指南がメイン。本書はそれらとは一線を画す。
主題は『自分はどう書いてきたか』。その中で、文章の在り方や考えを浮かび上がらせる。よって文章の指南書ではない。
著者は現代詩作家であり、名うてエッセイストでもある。本書は『エッセイスト 荒川洋治 全仕事』というべき、50年間で4000編以上のエッセイより『文章を書く』をテーマに綴った55作を選りすぐって収録。
中身は4章構成で〈暮らしのなかで書く〉〈詩のことば〉〈文学を読む、書く〉〈書く人が知っていること〉を通じて、“自分はどう書いてきたか”を語る。
…では、私説『荒川洋治の文章作法』へ。
■荒川洋治の文章作法 4つの視点
荒川洋治のエッセイのファンで、それなりの著作を読んできたので、私説考察。
①平易さの中に緊張感を忍ばせている
誰にでも読めるが、どこかで「おや?」と立ち止まらせる言葉の配置。
②形容をとにかく削ぎ落とす
過剰な比喩や形容詞を控え、名詞と動詞の力で押す。
③反復効果を熟知
似た言葉や構造をあえて繰り返し、安定感と余韻と印象を生む。
④書きすぎず、余韻を残す
読者に委ねる余白を大事にする。『説明』より『残響』を重んじる。
■詩と散文の距離
そうそう、触れとかないといけないのは、詩と散文の違い。著者は自身の創作活動に照らし、〈散文〉というテーマで語っている。
〈散文は多くの人に伝わるようにと念じて書く。詩は、個人が感じたものをそのまま表す。他人にわかる必要はない。共感してくれる人だけが付いてくればいい〉…と語る。
なるほど…要は、詩は「自分ファースト」でOK。ゆえに独自の美意識を貫くことができる。総括すると、読み手に伝わるように書くのが散文、自身の心の琴線に触れたものを忖度なく綴るのが詩。
その持論から導かれることは、詩人として培われた感覚〈音の配列・言葉の引き算・余白を残す感覚〉が、荒川洋治のエッセイの背骨になっているんでしょうな。
…と書いたものの、僕は荒川洋治の詩どころか、これまでまともに詩を読んだことがない。中原中也も知らないし、詩で思いつくのは、宮沢賢治の〈雨ニモマケズ〉や、三好達治の〈雪-太郎を眠らせ、太郎の屋根に雪ふりつむ〉ぐらい。
まぁ、それでも今回の読書で、散文と詩の違いをを知ったのは収穫。詩に関心を抱かなかったのは、〈その独創性に付いていけない、鋭敏な感受性をひけらかされているところに鼻持ちならない〉と漠然と感じていたのは、まんざら間違いじゃなかったので、少し安堵。
■最後に
著者のエッセイを読まれる方にオススメしたいのは『音読』。平易な言葉で綴られた文章は滑らかで、音読することで文章の妙味を堪能できます。
現代は黙読、解釈に重きを置く時代。それに少し背を向け、音読してみると、あら不思議…『余白』『余韻』の大事さに気付かされます、マジで。 -
50年間に4300編以上のエッセイを書いてきたという詩作家のエッセイ集である。「おわりに」にもあるようにすなおなことばの羅列が、そのすなおさ故に心に刺さる。
「作品を読むことはいい。でもいつまでも読む立場に甘えていると、ものごとのほんとうの理解は得られない。本を書くことは、責任のある仕事だけに、大きな意味を持つ。」少なからず文章を書く人間として、強く背中を押された気分だ。
この本は読み終わるまでかなり時間をかけたが、著者の心がしっかり込められているせいだろうか。強烈にわかりやすい面白さがある本ではないが、じっくり楽しめる良い本であった。 -
ぶっきらぼうといえば、そうなんだが、でも味はいっぱいする。荒川さんの文章は、なかなか真似しにくい。
あらすじというか、要約というか、その本の要諦を示す巧みさ。
何回読んでも情報は頭に残らないが、共感で満たされる。たとえ読んだことない本だったとしても。 -
「……『ぼくの文章読本』は、文章を書くことについて書いた、ぼくの文章を収めたものだ。全部で、五五編。このなかの一二編は、主に最近発表したもので、この本が初収録となる。」(「はじめに」より)
荒川洋治は詩を書く人だから、やはり詩の文章について書いたものが心に響く。と言っても詩のことばは特別なものではない。この本は、そういうことを教えてくれる。
「詩は、散文の対極にあるものと思われているが、そうではない。そう思うのは、気のせいである。散文をたどるように、詩を、すなおに読んでいくと、たどっているその道が、少しちがうなと感じる。こちらとはそれていくなと感じる。/それは、詩のことばが個人のルートをたどるからだ。険しい道、人には伝わりづらい小径。でも確実に胸のうちに存在し、実感できるものを、詩は映し出す。ひろく瞬時にして伝わる、通りのよい散文も、いうまでもなく大切だ。でも、個人を濃厚に感じさせる詩のことばは、思った以上に、個人の現実に即したものだ。散文と同じように、近しいものなのである。」(第2章「詩のことば」より)
「文章読本」とは言っても、勉強のための本ではない。エッセイ集である。読んでいると、いつの間にか「文章ではないどこか」に引きこまれている自分に気がつく。
著者プロフィール
荒川洋治の作品
本棚登録 :
感想 :

<書評>『ぼくの文章読本』荒川洋治 著:東京新聞デジタル(2025年1月19日 有料会員...
<書評>『ぼくの文章読本』荒川洋治 著:東京新聞デジタル(2025年1月19日 有料会員限定記事)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/380067?rct=book