楽園の奴隷

制作 : Borge Madsen  中田 和子 
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309203225

感想・レビュー・書評

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  • 6月26日から27日にかけて、久留米市の某精神病院へ病院見学へ。
    前日に院長、副院長から病院の基本コンセプト、治療理論についてのレクチャー。我々は精神科急性期病棟〜早期退院、退院後支援を精神力動的治療に基づいて実施いているという所にシンパシーを感じて見学に行ったのだが、彼らの実現している世界は我々の想像を遥かに凌駕していた。

    対象関係論的な発達理論に基づいた、乳児期から青年期までの成長発達過程をダイレクトに治療に直結している大胆さとシンプルさ。誰もが共有出来るわかり易さ。治療過程に完全にリンクした病棟構造。完璧なアメニティー。そして徹底した全スタッフによる情報共有。そしてその中心となる、徹底したグループワーク。

    集団精神療法のもつ強烈なダイナミズムを、徹底して治療、そしてスタッフ自身のワークに導入している。退行させない力、成長を促進させる力への信仰に近いほどに信頼。それがこの病院の真の力であった。
    精神分析を利用したコミュニティについてはヘルマン・ニッチェやオットー・ミュールが参加したフリードリッヒスホーフを描いた楽園の奴隷

    楽園の奴隷
    ビョーエ マッセン, Borge Madsen, 中田 和子 / 河出書房新社(1999/09)
    うな危惧を、勿論この病院は有さない。
    それは誠実に教育分析をうけたものが持ち得る、中立性のバランス感覚に基づいているからだろう。
    グループは毎日朝に必ず行われる、全入院〜全社会復帰施設〜全デイケア患者(!!!)のカンファレンスを中心に完全に中央集権的にヒエラルキーが作られ、そこから相似形を描くように各部署、患者の治療グループまでが広がる。その情報は全スタッフが常に参照出来る電子カルテにまとめられ、共有化される。

    そして実際のグルーワークを通じて患者やスタッフの課題は成長してゆくことを求められてゆくわけだが、その先にあるのは信仰や、神や超越ではなく、「社会復帰/社会適応」という一点に集約されてゆくのだ。そこが凄い。カリスマは強烈な求心力を持って全員の希望を自身に集約させるが、最後の合一の瞬間にその姿を一瞬で翻し、患者それ自身に彼を成らしめるように仕向ける、といったら良いだろうか。

    見学している我々も、いくつかのグループワークに参加する事となった。グループの大変さ、強烈さを味わい、またスタッフのグループを運営して行く労力の大変さに驚かされる事になった。
    そしてこの施設は、急性期、救急病棟の基準の在院日数を、圧倒的に短縮した期間で実際に満たしているのだった。

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