- Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309203843
作品紹介・あらすじ
自由を求めて孤児院を抜け出し、筏に乗り込んだ3人の子どもたち。川を下ってたどり着いたのは、真っ黒な泥が広がるブラック・ミドゥン。そこには、両手に水かきのある女の子と奇妙な老人が、二人きりで暮らしていた。黒い黒いその泥のなかには、たくさんの秘密と悲しみと、「奇跡」が埋まっていた…。月の明るいその晩に、あたしたちは、ヘヴンアイズを見つけた-カーネギー賞、ウィットブレッド賞受賞作家、『肩胛骨は翼のなごり』の著者が放つ、待望の新作!やさしく美しく純粋な、冒険の物語。
感想・レビュー・書評
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『肩甲骨は翼のなごり』が衝撃的だったアーモンドの作品。
こちらも『肩甲骨――』同様、独特の幻想的な世界。
光と影、昼の世界と夜の世界、そのコントラストが美しい。
影は濃く暗い場所に手招きして怖ろしいが、夜の世界はどこまでも優しく幻想的に魅力的に描かれる。
エリンとジャニュアリーは孤児院ホワイト・ゲートのこども。
責任者のモーリーンのことが嫌いで、何度か脱走の経験あり。
今回はジャニュアリーが作った筏で川を下る脱走計画をたて、年下のマウスも加わり、3人で出航する。
ところが出航して間もなく、筏は泥のたまった場所に座礁。そこはブラック・ミドゥン(黒い泥沼)と呼ばれる廃工場地帯の一画だった。
そこで水かきのある可愛らしい女の子と、彼女と暮らす老人グランパと出会う。
女の子の名前は「ヘヴンアイズ」。
水かきのあるヘヴンアイズに周りの子どもも大人も驚いたりしない。見た目の奇異さよりも、ヘヴンアイズの純真さ善良さが、接した人にすぐわかるからかな。
エリンがママを感じ、見て、会話する場面の数々、聖人がグランパを連れて川に帰っていくところ、など幻想的な場面はたくさんあるけれど、印象深かったのは帰りの筏の上で「人々の目にみえる世界に戻ってきた」とエリンが感じるところ。
本当にそれまでは「幽霊」である人々には見えてなかったのかもしれないな、なんて。
モーリーンは、最初のほうは善意という名の押し付けばかり感じられるが、最終章での彼女は違う。
悪気がないのはもちろん、こどもたちのことを思う気持ちは本物のよう。方向性が大人目線すぎて押し付けになってしまい、そこにエリンは反発してしまうのだろうけど。
最後は、お互い心が近づきつつある、今までと違う、と感じたエリン。
物語では描かれていないその後の世界で、少しずつわかりあえているといいなと思った。 -
デイヴィッド・アーモンドの本を見つけると、内容を確かめることもなくすぐ買ってしまいます。ジャンルとしては児童文学に分類されているようですが、彼の作り出す物語を子供だけに独占させるわけにはいきませんからね。
孤児院を抜け出し、手作りの筏に乗って旅に出た3人の子供たち。語り手のエリンは幼いころ親を亡くしたみなし児です。あとの2人は、物心つかないうちに親に捨てられた男の子。川を下って彼らがたどり着いたのは、真っ黒な泥が溜まったブラック・ミドゥン。その川岸はかつていろんな工場が立ち並んでいた場所で、いまはどの建物も廃墟となっていました。そこで出会ったのが、グランパと呼ばれる頭の壊れた歳老いた警備員と、愛らしい小さな女の子。2人は朽ち果てた印刷工場跡で暮らしていました。少女は、世の中のどんな苦しみや悲しみからも天国を見出せる目を持っていることから、ヘヴンアイズと呼ばれていました。素直で人なつっこく、とても可愛らしい女の子なのですが、その手足には水かきがついていました。ブラック・ミドゥンで穴を掘り続ける管理人と、外の世界をまったく知らない幼い少女。2人はいったい何者なのでしょう?警備員グランパは、泥の中に何を探し求めているのでしょう?2人の築き上げた世界と、3人の子供たちが持ち込んだ現実が溶け合っていきます。泥の中に埋まった、悲しみと奇跡の美しい物語。
ひとは誰しも〝傷を負った子供〟なのかもしれませんね。ぼくらは小さい。世界はこんなにも広いのに。世界は悲しみに満ちている。けれど世界には奇跡があふれている。 -
神秘的な世界観。キャラが全員可愛い。ヘヴンアイズの独特な話し方が物凄く好きだ。エリン・ローの「私達って何で私達なんだろう、最悪だよね」は私の中で名科白。
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デイヴィッド・アーモンドのYA向け著作。幻想的な世界観は健在。
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アーモンドの小説は、どれもすごいとは思いつついま一つ生理的な違和感のようなものを感じていたのだけど、これはとてもよかった。女の子が主人公だったからかもしれないし、アーモンド世界に不可欠の「未知なる存在」のうち禍々しさを秘めた部分がヘヴンアイズでなくグランパに分かれて存在していたからかもしれない。アーモンドにしては多少楽観的な雰囲気が漂っているからかもしれない。
グランパを含め、登場人物がほんとに魅力的。中でもやはりヘヴンアイズが。彼女の天使的な発言と独特の言い回しに魅了された! それからジャニュアリー。少年らしさがかっこいいね! 自由だ!と叫ぶ場面は思わず映像で見てみたいと思ってしまった。 たくさんの人に読んでほしいおすすめの1冊。 -
孤児院を筏で脱走したエリンとジャニュアリーとマウス。黒い泥の湿地帯で座礁。そこへ、小さな女の子が表れる。ヘヴンアイズとなのる女の子は、工場の跡地に管理人のグランパと二人で暮らしている。ここはいったいどこなのか。二人はいったい何者なのか。
エリンとジャニュアリーは謎をといてゆく。
アーモンドの作品は、なんでこんなに美しく切ないのあなあ。 -
「肩甲骨は翼のなごり」を書いた人、なので期待大、だったのだが、
全くそれを裏切られなかった。
いやー素晴らしい。
なにかなー、実際にはちょっと先に脱走しただけ、なんだけど、
確かに違う世界にいってたような感じ。
雰囲気がある作品。表紙の色合いもとても綺麗。
そんな劇的な展開があるわけでもないんだが、目がはなせない、
とゆーか、いい緊張感がずっとある感じ。
最後に戻る前に筏に文字を刻み込むシーンがイチバン好き。
「この世のはてまでいっしょに行ける友達を」
うーん、胸にくるねえ。これは子どものころに一度読みたかったなあ。
いいお話、だ。うん。
モーリーンに対するエリンの態度が、理解はできるんだけど、
どっちかってゆーと自分がモーリーンに近いから、ちとツライ、とゆーか、
わあ、痛いなあっと思っていたんだが、最後ヘブンに救われたので
よかった。あのまんま突き放さないでくれた展開に感謝。ありがとー。
自分が小さい、取るに足らない存在のようで、目の前の世界が
怖くてたまらなかったり、自分にできないことなんてなんにもないような
、怖いものなんてなんにもないような気がしたり、
そんな正反対の気持ちをもったままゆらゆらゆれながら、進んだり、戻ったり。生きてるってそんなことの繰り返し。
だけど、こーゆーお話と出会えると、まあ、それでもいいのかなあっと思ったり。
好きだなー、この話。
魅力的な本ですね。
映画化しても良さそうな感じがします。
こういう作品に出会うと、キャスティングをあれこれ考えてひ...
魅力的な本ですね。
映画化しても良さそうな感じがします。
こういう作品に出会うと、キャスティングをあれこれ考えてひとりで楽しんでしまうワタクシ。
すごく残念なことに、「肩甲骨は・・」が未読なのですよ。
やはりそちらを先に読んだ方がいいかしら?
それにそれに、作者さんは英国の児童文学作家さんじゃありませんか?!
どうして今まで読まなかったんでしょうね。
現在一生懸命覚えている最中の素話がありまして、それが完璧に終了したら(笑)さっそく読んでみますね。
ありがとうございます!
コメントありがとうございますっ。
勝手にキャスティング。
やっちゃいますよねぇ(笑)
わ...
コメントありがとうございますっ。
勝手にキャスティング。
やっちゃいますよねぇ(笑)
わたしもたびたび意識が妄想の旅に出ます(もどってこーい!)
『肩甲骨は――』とは、お話にリンクがないので、読む順番はどちらからでもよいと思いますー(*^-^*)
でも、アーモンドさんを初めてお読みになるのでしたら、やはり『肩甲骨』のほうからがいいかもしれません。
なんか……衝撃的な作品だったので。
すごく幻想的なのですが、それがまた独特の世界なんですよ!
nejidonさんがお読みになった暁には、いろいろお話したいです(*^-^*)
>英国の児童文学作家さん
nejidonさんも英国児童文学がお好きそうで嬉しいです(*´∇`*)
きっとわたしの何倍もお詳しいので、ぜひぜひ、おススメをたくさん教えていただきたいです!
ちなみに、わたしの児童文学(おもにファンタジー)の原点は、ジョージ・マクドナルドさんなのです♪ 次に神宮輝夫さん♪
素話、すごいです……!!
どうにもこうにも「暗誦」ができないので、尊敬しちゃいます。
できるなら、こどもに戻ってnejidonさんのお話会に参加したいなあ(* ̄∇ ̄*)