憑かれた鏡 エドワード・ゴーリーが愛する12の怪談

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309204659

感想・レビュー・書評

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  • ディケンズ「信号手」を読み比べたくて手に取った。最後の下り、岡本綺堂のやや古めかしくも格調高い訳も素敵だったが、柴田訳の方がラジオで話していた通り効果的、自分にも現代文の方ががしっくりくる。他の作品は、冒頭の「空家」だけはやや怖かったが、他は怖いというより考えて読むようなものが多く、ホラー物が苦手な自分でもこれは夜に読書ができて読み通せた。

  • 禍々しくも気品ある恐怖の世界

    何者かが蠢く空家、背筋が冷たくなる偶然、邪悪な秘法など、モノクロの線描で特異な世界を表現するエドワード・ゴーリーセレクトの12話からなる怪談アンソロジー。

    どの話にも扉にゴーリーの挿絵がついている。モノクロの線描で表現されたそれらは、各話のイメージがゴーリーの独特な作風で集約されている。このため、著者が異なり恐怖の味わいはそれぞれであるのにもかかわらず、全体として禍々しくも気品のあるゴーリーホラーワールドとなっている。

    以下は私的感覚的各話の感想。

    「空家」
    「一目見ただけで邪悪だとわかる建物」は内部も期待を裏切らない…きゃー!

    「8月の炎暑」
    全く縁のない場所で自分の墓石見つけちゃったら…ぞわわ

    「信号手」
    事故を招くそのしぐさに…ぞわー

    「豪州からの客」
    楽しそうに歌う子供たちと童謡の歌詞の内容のギャップが…ぞわわ

    「十三本めの木」
    恨まれ続けて300年の屋敷。庭の石壁の笠木の上で「こんもりと横に広がり、壁をよじ登ろうとしている人間の上半身にそっくりの形をしていた」黒っぽいツタ…自分の本書一番のぞわーポイント。

    「死体泥棒」
    雨の夜、死体を盗み出して逃げる馬車の揺れが招く恐怖…ぎゃあ〜!

    「大理石の軀」
    教会で大理石の石像として封じ込まれた邪悪な騎士のお出かけ先は…きゃー!

    「判事の家」
    判事はいるんです。今もこの家に…ぎゃあ〜!

    「亡霊の影」
    ストーカーまがいの医者が北極探索で犯した罪の報い…ぞわわ

    「猿の手」
    奇怪な「猿の手」のまじないによって死んだ息子は、同じく「猿の手」のまじないによって生き返ったが…ぎゃあ〜!

    「夢の女」
    ゴーリーの描いた扉の女が怖いんですけど…きゃー!

    「古代文字の秘法」
    その秘法の威力にもまして姿の見えない敵意が怖い…ぞわー

    恐怖レベル
    ぞわわ …レベル1
    ぞわー …レベル2
    きゃー! …レベル3
    ぎゃあ〜!…レベル4

    ちなみに1と2は心理的に、3と4はビジュアル的に。

  • 実はエドワード・ゴーリーのことはほとんど(と言うか全く)知らず、色んな作家のホラー作品がまとめて読めるならそれはそれで好いか、ぐらいの軽い気持ちで買った本。想像してたよりバラエティに富んでいた上、一番長い作品でも30ページぐらいしかないということも手伝って、あっという間に読了。

    ハリウッド辺りは発想が貧困なので、「ホラー作品」イコール「死人やら怪物やらが主人公たちを追っかけてきて、それをショットガンで迎撃しないといけない」みたいなルールがあるらしいですが、さすがに小説世界なのでそういう頭の悪い設定はなし。
    むしろ、最後までタネ明かしや明確な結末が提示されない作品もあって、ホラー作品集を読んでいる感じはあんまりしませんでした。

    とは言え12の作品を読んでみて、やはりそれなりに多用されるテーマや舞台設定はあるんだな、ということは感じました。多いのはやはり「夜」と「亡霊」。それぞれ8作品がこのテーマを使ってました。ついで「古めかしい曰くつきの館」や「絵画」、「呪いの品」なんかも人気。面白いところでは「母親の子供(息子が多いのは、異性の子供の方が愛しいと思うからか、出版当時の男尊女卑的な考えからか)への愛情」などというテーマも、共通して出てきます。

    こんな感じで共通するテーマで括っていくと、唯一W・F・ハーヴィの『八月の炎暑』だけ、該当するものがまったくない(ように思われる)作品として残ってしまいます。タイトルからしても、あまりホラーっぽさは感じない作品。ごく短い10ページぐらいの作品ですが、妙に記憶に残りました。

    各作品、それぞれに面白いですが、ここから興味を持った作家(何せ12人も選択肢がある!)の他の作品に飛んでいくのも好いでしょう。誰かが一つのテーマでまとめた作品群を一気に読むのは、そういう時に大いに役に立ちます。

  • 表紙含めて各話の挿絵が豪華。しかし図書館で借りたので裏表紙の絵が一部見えない・・・!
    扉絵が怖い。タイトルもいい。

    (同行者が一番怖い。同行者がいるほうが怖い。この人にもウェイクフィールドにもそういう話があったような。)
    「空家」 A・ブラックウッド 小山太一訳

    驚いたことに、私はその話に乗ったのだ。(不気味。結末はわかりやすいのに不気味。)
    「八月の炎暑」 W・E・ハーヴィ 宮本朋子訳

    (やっと読めた。二人がしゃべってるときの雰囲気とか場所が読んでて良い)
    「信号手」 C・ディケンズ 柴田元幸訳

    (子供の遊びとホラーは意外と怖くなかったりするけども、これはいやだ。ラジオ聞いてる場面が大好きだ。歌は1984年にも出てきた)
    「豪州からの客」 L・P・ハートリー 小山太一訳

    (すっきりしないあたりがいい)
    「十三本目の木」 R・H・モールデン 宮本朋子訳

    通り過ぎようとしたそのさなかに、フェティーズが彼の腕をぐいと掴んで、ひそひそと、しかし痛いほどはっきりと、「あんた、またあれを見たか?」と言ったのである。(スティーブンソン面白い。エンターテイメント。共犯関係。よろよろした極悪人。)
    「死体泥棒」 R・L・スティーブンソン 柴田元幸訳

    (のどかかと思ったら全然そんなことなかった。最後のあたりの描写が嫌でいい。アイルランド訛りは大阪弁。)
    「大理石の軀」 E・ネズビット 宮本朋子訳

    さまざまな灯りや松明が現れ、やがて群衆は押し黙ったまま現場に向かった。(周囲はわかってただろうというのが一つ、家政婦のおばさんはよくあの絵が平気だったなというのが一つ、あとは鼠は手下じゃなく過去の被害者なんじゃないかと思ったら気味悪い感じが増した。)
    「判事の家」 B・ストーカー 小山太一訳

    (挿絵は一番好き。艦医が最初から肖像画に怯えているのがいいと思った。)
    「亡霊の影」 T・フッド 小山太一訳

    (別の訳で一回読んだ。初読では終わったんだと思ったけど、今回実は終わってないんじゃないかと思った。これからどうなるんだ。と思ったら怖い)
    「猿の手」 W・W・ジェイコブズ 柴田元幸訳

    「誰にもわからんよね」と私は言った。(予想とは全く違う方向の怖さがあった。まだ終わってない話、はこわい。構造も好み。あと主人公の描写が酷薄というかなんというか。)
    「夢の女」 W・コリンズ 柴田元幸訳

    (さくさくと、なのにうっすら怖い。逃げ切ってお返ししたのに安心感が全然ないのは締めのせいか。そういう意味でいい話。)
    「古代文字の秘法」 M・R・ジェイムズ 宮本朋子訳

  • ゴーリーの絵と、各作家の身も震える小説世界に浸れる、なんとも贅沢な一冊だった。
    特に好みだった五作品。

    『八月の炎暑』
    奇妙な巡り合わせによって、自分の死の日が分かってしまったかもしれないという、あり得そうな感じが良かった。そしてそれが予言になるのかただの偶然なのか、結果が分からないまま不穏なラストを迎えるのがたまらない。

    『信号手』
    物語の始まりからして惹きつけられる。具体的に何が起きているのか分からず、登場人物の二人も探り合いをして不安に思っているのがこちらまで伝わってくる。
    亡霊は危険を知らせてくれているのに、なぜか怖い。静かな話で、絶妙なタイミングでゾワっとさせてくる。
    この不思議な出来事の主たる人物は信号手じゃないのだと思うとまた怖い。何かの現象が自分に分かりやすい形になっているとは限らない。こういう運命って実際にあるかもと思うと面白かった。

    『亡霊の影』
    人妻に恋慕してその夫を殺す話だが、その亡霊が影となって付き纏っているのが不気味で良い。

    『猿の手』
    ただ戯れにお金を願っただけなのに、息子を失ってしまう悲痛なラストが印象的。

    『夢の女』
    印象的な台詞やフレーズが多い。主人公アイザックにはどことなく自分と似通った性質を感じて、夢の女からいつか解放されることを願う。

  • 何作か昔読んだ短編が入っていて
    懐かしい気持ちになった。
    そんなトーンで、なんだか全体的に
    懐かしい雰囲気。

  • エドワード・ゴーリーセレクションの怪談アンソロジー。

  • きんきんに冷えたお話たち

  • かの有名なW・W・ジェイコブズの「猿の手」を収録
    怖いよ~~

  • 『空家』
    不穏な噂のある家に探検に行った叔母とショートハウス。
    その家では、目にこそ見えないが現実に起きた殺人が再現されていた。

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