クレイ

  • 河出書房新社
3.25
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本棚登録 : 128
感想 : 22
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  • Amazon.co.jp ・本 (300ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309204772

作品紹介・あらすじ

これが正真正銘、本物のモンスターのつくり方だ、デイヴィ。生と死の間で引きずりまわして、苦しませて、怖がらせる-町へ越してきた少年スティーヴンのいうままに粘土男に生命を与える儀式を手伝ったデイヴィ。その直後に憎んでいたけんか相手が死んだと知って、とんでもない怪物をつくり出してしまったと気づき…。善と悪の境目を問いかける、現代版『フランケンシュタイン』カーネギー賞、コスタ賞(旧ウィットブレッド賞)受賞作家、最新作。

感想・レビュー・書評

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  • 〜感想の前にどうしても叫びたい〜

     ぬおお! たぶんこれいい作品なんだと思うんだよ! 思うんだけどね!! 「あいよ」の連呼がね! 「あいよ」が出てくるたびにわたしゲンナリするんだよね!!!!!
     原文は知らんけどさ! 金原さーん! なんで「あいよ」にしたん!? 主人公の口癖かと思ったら結構みんな言うし! なに!? あいつら全員江戸前寿司職人なのーーーーー!?

    〜ココロの叫び・終了〜

     というわけで、「あいよ」と、「もち」(=もちろん)以外はいい作品だったしいい翻訳だった。ふるくさっ。三十がらみのわたしでも言わんて。変に若者言葉を取り入れようとせずに、文部省認定みたいなきれいな日本語で書いたほうが作品の寿命が伸びるんじゃないかと思うんだけど……。
     金原さんを最初知ったときは新進気鋭の若手翻訳家っていうイメージだったのに、若干さびしい気持ちになってしまった。

     ディヴィッド・アーモンドは『肩甲骨は翼のなごり』につづいて二作目なんだけど、YAにしてはけっこう難しい部類の人だと思った。ちょっとモヤっとした書き方。粘土男クレイを作り出すデイヴィとスティーヴンの描写は、現実なのか空想なのか曖昧で、しばらく疑いながら読んでた。信じるか、信じないかは、読む人次第ってことかもね。こないだ読んだ『ぼくはお城の王様だ』も、どれだけ子どもを信じてあげられるか、っていう問いを投げかけてた気がするんだけど、この作品もそうなんだと思う。少なくとも、年を取ったわたしたちにとっては。

     そういえばスティーヴン・ローズの真の望みは、果たしてあんな暴力的なことだったのだろうか。
     「信じるよ」
     この言葉があれば、本当は十分だったんじゃないかな。

     あと、「わたしたちは幸せだ、神様に感謝しなくちゃ」的な言葉が何度か出てきたけど、この言葉、いやだな。他人を不幸と決め付けて、ひそかに安心して、優越感にひたってるみたいに思える。
     五体満足で健康に生まれたことに感謝しましょうっていう大人が、昔からいやだったのを思い出したわ。

    原題:Clay

  • 純粋で感化されやすいけど根は善良な主人公(デイヴィ)と、狂気的で自分は無と闇から生まれたと信じているスティーヴン。少年2人が粘土でモンスターを造ったという話。

    神様が人間を無から造った。そしてそれを真似るようにして少年達はクレイを造った。クレイがひたすら主人公に「命令をください。ご主人さま」と縋るけど、デイヴィは「何もしてほしくない。消えてほしい」と願う。このあたりは神様も実は祈りを捧げてくる人間たちに「死んでくれ」と思っているのかも・・と思わせる描写に感じた。結局クレイは何も有益な命令をされず、寂しく土に還る。このあたりはどんなに神に祈っても救われない報われない人間のように感じられて切なかった。

    主人公デイヴィはスティーヴンにクレイを無慈悲に殺したことや友人の死を願ったことを責め立てられ、闇にのまれかけるけど、ガールフレンドのマリアがひたむきに話を聞いて傍にいてくれたおかげで、深い憂鬱から逃れることができた。

    スティーヴンにもそんな話を聞いてくれる人が1人でもいたら、闇にのまれることはなかったんだろうなと思う。周りから「悪魔だ」と言われ、信じ込むようになっただけで、生まれた時から悪ではないのではとも思う。友人や自分の父親を殺したというのは、どこまで現実なんだろう。

    読み終わってみるとモンスターは人を殺さなかったし、暴力的な描写など激しい表現はないけど。心に残る作品だった。

  • 粘土から命あるものを作り出す。
    モンスターを。
    スティーブンキングのホラーものっぽいなあっと思いつつ読む、が、結局のところ、これといって(人は死ぬけど)なんか、あっまり盛り上がりのある話ではなかった。
    けど、ひしひしと不安感がつのっていくお話でした。
    特に、主人公が心の中で止めてほしい、気づいて欲しいと
    思っていても、結局誰も気づかないし、誰も助けに来てはくれなかったところが、
    なんとゆーか、そーだよなーって感じ。
    それでも、デイヴィは向こう側に行ききることはなく、
    マリアってゆう救いも得て、よかったのう、っとほっとする。

    どーも気になったのが
    「あいよ」
    訳し方、これしかなかったのだろーか?
    うーんなんとなくニュアンスがあるんだろうが、
    どーも違和感

  • 途中どうなるのか盛り上がったものの、終わり方が曖昧だった。

  • そのころ僕と親友のジョーディは、敵対する少年グループのリーダー・モウルディへの対応に苦慮していた。モウルディはまだ16歳なのに体がでかくて、大人と同じように酒を飲み、そして恐ろしく凶暴だった。
    彼がフェリングにやってきたのは、くっきりと晴れた凍てつくような2月の朝だった。
    名前はスティーヴン。神父になるための学校を放校になり、父親が急死し、精神を病んだ母親が入院し、この町に住む叔母クレイジー・メアリーの下へ身を寄せたのだ。
    スティーヴンは粘土で動物や人間を作り、それに命を吹き込んで動かすことができるという不思議な力を持っていた。
    スティーブンは僕にも同じ力があると囁く。
    そして、僕は彼と秘密の場所で一体のモンスターを作り上げてしまった。
    名前は「クレイ(粘土)」。
    …それほど昔のことじゃない。けれど、今とはもう違う時代の話だ――。

    寂れた田舎町に不思議な力と暗い過去を持った少年がやってくることではじまる死と暴力と狂気が、善と悪の狭間、暗闇の淵で惑う主人公デイヴィの回想で綴られてゆきます。
    苦しいほどに闇を感じるストーリーですが、最後の最後は胸の詰まるような優しい場面で締め括られます。既刊『星を数えて』『ヘヴン・アイズ』を書いた、いかにもアーモンドらしい美しい情景です。

  • 町にやってきたスティーヴン・ローズ、
    主人公であるディヴィッドは粘土で作ったものに生命を吹き込むことができるというスティーヴンと付き合うようになる。
    ある日ディヴィッドに「キリストの血と体を盗んでこい」という。
    そして粘土男に生命を与える儀式が行われ・・


    スティーヴンの狂気に惑わされていく主人公、
    じわじわと怖いですね。
    何度も告解に行っていて、その語る話の変化も興味深い。

    ラストの情景は美しいですね。

    短い章でわけられているので、読みやすく、
    新たな『フランケンシュタイン』な物語です。


    翻訳の金原さん、この作家の作品を気に入っているようで、他の作家の翻訳のあとがきでも、ちらっとデイヴィッド・アーモンドという名前が出てきたりします。
    その通り、他の作品もとても面白い。

  • 転校生に影響され、悪いほうへずるずると引き込まれる主人公のデイヴィ。その気持ちに読者までもがひっぱられぐいぐいと物語に入っていってしまう。
    そして粘土の人形を造り、魂を込めようとする二人…
    粘土の感触が感じ取れそうな描写もすごい。

  • 神学校を追い出された少年スティーブンと出会い、影響を受けて行く主人公デイヴィ。
    黒魔術的な世界に取り込まれ、泥人形に命が吹き込まれ…と不気味で不可思議な物語でした。

    主人公の葛藤、スティーヴンの歪んでしまった思考、そして二人に作られた泥人形の『クレイ』のそれぞれに思いを馳せると物悲しい思いになってしまう。
    スティーヴンの告白はどこまでが真実でどこからが虚構なのか。姿を消したことと言い、最後まで謎でしたが謎の残す終わり方が良かった。
    生み出され死を命じられた従順な『クレイ』が何だか可哀そうでした。

    読み終わって『撰集抄』にある西行が泥人形に命を吹き込み…の話を思い出した。これも結末は寂しかったなぁ。

  • デイヴィッド・アーモンドの「狭間」で揺れる子供の描き方が堪らなく好きである。大人と子供、狂気と正気、神と人間・・・。ある日、主人公デイヴィの近所のいかれたおばさんの家にいかれた少年スティーヴンがやってきて粘土で作られた人間に魂を込める。二人で命を吹き込んだ「クレイ」動き出し、対立していた青年が死ぬ・・・、現実か、幻想か。神は人間を見放したのか?

  • クレイの存在感が強い 凄いお話だったなぁ…人間の内にあるものが出てくる瞬間をみたかんじ。衝撃

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著者プロフィール

1951年生まれ。イギリスの作家。1988年『肩胛骨は翼のなごり』でデビューし、この作品でカーネギー賞受賞。ほかの作品に『星を数えて』『ミナの物語』『パパはバードマン』などの作品がある。国際アンデルセン賞受賞作家。

「2018年 『ダム―この美しいすべてのものたちへ―』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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