ヴォイス (西のはての年代記 2)

制作 : 谷垣 暁美 
  • 河出書房新社
4.29
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本棚登録 : 188
レビュー : 33
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309204789

感想・レビュー・書評

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  • またしても超名作!
    ほんと泣ける!
    しかしオレックが普通な感じで登場したのには戸惑った
    結局ギフトはどうなったんだろう…

    海辺の街の戦争 古書の番人

  • 「西のはての年代記」三部作の二作目。
    ル・グウィンが80歳近くなってから書き始めたシリーズで、若々しい知性とパワーに圧倒されます。

    一作目から20年後、南の国アンサルの首都が舞台。
    オルド人に侵略され、見る影のない荒廃した姿になったアンサル。
    砂漠地帯で一神教を信じるオルド人は、武力に優れた民で、口承のみで文字を持たないのです。
    アンサルの都は交通の要衝で、かっては大学や図書館でも有名でしたが、駐留するオルド人は文字は邪悪な魔物として、本をすべて水中に投じます。

    ガルヴァ館に住む少女メマーは、オルド人の落とし子。
    ガルヴァ館の娘だった母がオルド人の兵士に襲われて生んだ子で、もしゃもしゃの羊のようなオルド人の髪とアンサル人の黒い目を持っていました。
    事情をよく理解していない幼い頃から隠された図書館に出入りし、「読み手」として「道の長」の教えを受けながら成長します。
    お告げの家であるガルヴァ館はアンサル人の精神的な支柱だったのでした。

    前作の2人がすっかり大人になって登場。
    著名な存在となっているオレックとグライはオルド人にも一目置かれ、民人の尊敬を集め、反乱の指導者に担ぎ上げられそうになりながら、慎重に場を選んでいきます。
    一途なものを秘めたメマーはまだ男の子のようでさばさばした良い子だし、才能溢れるオレックとりりしいグライの夫婦が素敵。
    緊迫した情勢の中でも次第に、親のないメマーと彼ら(それにハーフライオン!)が仲良くなっていくのは切ない幸福感があります。

    一作目の「ギフト」では家に伝わる超能力が問題でした。
    家を継ぐようなギフトではない才能のあるオレックが詩の語り手として自らの人生を見い出した今、民族全体が抑圧された状態で育った17歳のメマーは、お告げの家の役割を知るのです。
    アイルランドや古代ローマを合わせたような構造の世界ですが、お告げ(ヴォイス)のファンタジックな意味合いはル・グウィンならでは~圧巻です。
    前作の民話的でもあり荘重でもある雰囲気とはまた違って、社会が変わっていく活気と希望があり、グウィンにしてはわかりやすい方の作品といえるでしょう。
    オルド人も一枚岩ではなく、アンサル側にも考えを異にする色々な人がいる…
    安易な押しつけや暴力への根強い「NO!」の意志が感じられます。

  • ヴォイス (西のはての年代記 2)

  • 大変風刺的、オリジナルで読むほうがよかったか、、。とはいえ、図書館では置いていないので残念ながら類推するのみ。文字を否定する一神教の国に侵略されて征服された、武力を持たないアカデミック民主主義国。拷問を受けて障害者となった元指導者とその孫メムーの話でスタートする。メムーは、侵略時に兵士に強姦されてできた”あいのこ”というディープな設定。植民地となり人々は奴隷として扱われて17年後、オレックとグライとハーフライオンのシタールがやってきて、色々と動き出す。おばさん?になったグライがまたまたいいキャラに成長。オルド人のシメはオリジナルではやっぱりハウフィンチなんか?とそんな妙なところばっかり気にかかってしまう。やっぱりオリジナル見つけたら買おうとおもう

  • 血のしがらみ、土地のしがらみ、与えられた恩寵はけして輝かしいだけのものではなくて、自分の力ではままならない恐怖もはらんでいる。自分たちを押さえつけ、蔑んでいた征服者をわかりやすく罰して打ち滅ぼしたいと思っていた若い主人公と、分別ある大人たちが下した現実的な落としどころが対照的だ。考え方や重きを置くものが違う人たちが、こんなふうに少しずつでも歩み寄れたらいいのに、と思う。生活のにおいのする、ル=グウィンのファンタジーが本当に好きだ。

  • 「ギフト」の意味も(才能、贈り物、たまもの)といったように1巻とは大分変わってきます。

    そして本、文字、読むこと、書くことへの敬意がシリーズを通じた対象かな。

  • ル=グウィンはやはり素晴らしい。敵対する民族が共に生きていくために大事なこと、お互いを知ること、敬意を持つこと、そんなことかな。受け継いでいくことについても、一世代受け継がれなかったら次の世代はそんなことがあったことさえ知らない。たくさんのことを考えさせられました。

  • 自由を求める革命。聡明で勇敢な少女が、世界を知り、信頼する者に出会い、自らの意志と
    力で未来を切り開いていく様に感動した。若くてみずみずしく、希望の光に溢れている。また、前作『ギフト』の主人公だった二人が、成熟した魅力ある人間になって登場したことが嬉しかった。

  • 3部作の中で、この巻が一番好きでした。
    自由への渇望、民主主義の尊さがよく描かれていると
    思います。

  • 待ちに待ったル=グウィンの新作。それも、あの『ゲド戦記』の跡を襲うハイ・ファンタジーである。先に『ギフト』を読み、すぐ続きが読みたくなった。『ゲド戦記』とは、一味も二味もちがうが、紛れもなくル=グウィンの刻印が捺された、長く読まれ、語り続けられるだろうファンタジー文学の傑作の誕生である。

    ゲドの物語が、アースシーという架空の多島海を舞台にしていたように、今回もル=グウィンは、入り組んだ海岸線を持つ詳細な地図を用意してくれている。それによると、今回の物語は、東方に広がる砂漠と山脈や丘陵で区切られた、海に面した都市国家群が舞台になっている。多分に西欧を思わせる配置だが、人種や宗教はそれをなぞらない。物語の舞台になる土地には、その土地固有の信仰や容貌が与えられている。そうすることによって、金髪碧眼で白い肌を持つ男女が主人公になるのが当然のような西欧中心主義を回避しているからだ。

    そればかりではない。作家自身が『ゲド戦記』の中に発見した男性中心主義もまた慎重に回避されている。ただ、ゲドの時のように傷ましい回心めいた色ではなく、より成熟し余裕に満ちた書きぶりで。主人公メナーの声を借りて、物語の中に日々の食事の事が語られていない不満を言うあたりや、面子にこだわって本音で話し合えない男たちの愚かしさに女二人が苦笑を共有するあたりに、恢復したル=グウィンの穏やかな微笑みを見る思いがする。

    そう。一口に言って、この物語の色調は仄かな明るみに充たされている。ゲドの戦いが光と影の世界を往還するものであったとすれば、メナーの物語は、隠された闇の奧臥から清澄な光の中に噴き上げる水のように祝祭的な光景に象徴されている。

    交易によって栄えた商業都市アンサルは、大きな図書館や大学を持つ文化都市として周辺の都市国家の間でも知られていたが、急激に力をつけてきた砂漠の民であるオルド人によって攻撃を受けた結果、今では、図書館は壊され、厖大な書物は破棄され、民衆はオルド人の支配下にあった。オルド人が奉じる一神教の火の神アッスが本や文字を魔物扱いするため、アンサルの町では本は交易を司る「道の長」の住むガルヴァ館に秘かに隠されていた。

    主人公はメナーという少女。母はガルヴァの血筋を引き、道の長の下で館を切り盛りしていたが、オルド人に暴行されメナーを生む。母の死後、少女は館の仕事を手伝いながら道の長の教育を受けて育つ。オルド人に復讐を誓うメナーだったが、高地から来た「語り人」オレックと、その妻グライに出会うことで、敵であるオルドの王ガンド・イオラスの威厳に気づく。

    オルド人の支配から脱するためのアンサルの反逆の烽火が上がると同時にイオラスの息子の裏切りが発覚し、物語は佳境を迎える。一神教と多神教、パロールとエクリチュール、一極支配と多極化、と対立する命題を輻輳させて物語は終焉を迎える。

    9.11以来の世界の寓意とも取られかねないアレゴリカルな作品世界だが、これを寓話として読むのは愚の骨頂だろう。架空世界でありながら、隅々まで意匠を考え抜かれた街路や建築、食物は勿論のこと作中で吟じられる物語や詩を存分に愉しむよう作者は心をくだいている。その中から一つだけ挙げるなら、グライが護身用に連れ歩くシタールという名のハーフ・ライオン。動物を描かせたらル=グウィンは巧い。特に猫は好きらしくよく作品に登場するが、まるで大きな猫のような仕種をしてみせるこの小型の獅子が何とも愛らしい。

    『ヴォイス』は「西のはての年代記」シリーズの第二巻だが、三部作の各巻がそれぞれ別の町、別の主人公の物語として設定されているので、この巻から読んでも、特に問題はない。言い忘れたが「語り人」のオレックは、第一巻『ギフト』の主人公の成長した姿。オレックの物語を語る力やグライの持つ動物と言葉が交わせる能力が賜物(ギフト)と呼ばれるものである。このギフトと呼ばれる力こそ年代記を統べるモチーフなのだが、それでは、メナーのギフトとは何か。ヒントは題名にあるとだけ言っておこう。

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著者プロフィール

アーシュラ・クローバー・ル=グウィン(Ursula K. Le Guin)
1929年10月21日-2018年1月22日
ル・グィン、ル=グインとも表記される。1929年、アメリカのカリフォルニア州バークレー生まれ。1958年頃から著作活動を始め、1962年短編「四月は巴里」で作家としてデビュー。1969年の長編『闇の左手』でヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。1974年『所有せざる人々』でもヒューゴー賞とネビュラ賞を同時受賞。通算で、ヒューゴー賞は5度、ネビュラ賞は6度受賞している。またローカス賞も19回受賞。ほか、ボストン・グローブ=ホーン・ブック賞、ニューベリー・オナー・ブック賞、全米図書賞児童文学部門、Lewis Carroll Shelf Awardフェニックス賞・オナー賞、世界幻想文学大賞なども受賞。
代表作『ゲド戦記』シリーズは、スタジオジブリによって日本で映画化された。
(2018年5月10日最終更新)

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