- Amazon.co.jp ・本 (96ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309205779
感想・レビュー・書評
-
文字の無い絵本『アライバル』の著者による、独特な人生観・世界観で溢れる絵本の短編集です。
以前ご紹介した『エリック』も収録されています。
不可思議な雰囲気はそのままに、十代から大人向けと思える暗い内容のお話も少々盛り込まれています。
著者の内面が正直に表現されている一冊なのでしょうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
どの話も、どこか懐かしくて、温かくて、ちょっと哀しくて。絵を眺めているだけでも、いい。
不思議な世界感なんだけど、それを当たり前に受け入れられる感じは、あ、村上春樹だ。
これは手元に置いておきたい本だなぁ。
-
大人の絵本 イラストがとても丁寧で、細かいところにもこだわりがあるので、見るたびに発見がある
表表紙と裏表紙の内側にびっしり描かれたヨシタケシンスケ風の落書きのようなイラストが楽しい おまけのようで得した気分!
短編集の中での私のお気に入りは、「 エリック 」と「 備えあれば 」「水牛」等々
異次元からのちっちゃな留学生「エリック」
この国の面白いことを教えてあげるんだ とはりきるぼく
ある朝、突然行ってしまったエリックが残していったものは??
次のページを開いて、びっくり!
「 備えあれば 」
一家に一基、大陸間弾道ミサイルが配備されるご時世、政府から通知があり、トラックでミサイルが次々と、届けられるというなんともブラックな話
でも、人々はそのミサイルをいろんな物に変え、楽しむ
今の危うい社会を反映しながらも、それを逆手にとった市民のたくましさを感じさせる痛快な話
街中に煙突のようにカラフルなミサイルが突っ立っているイラストは、なんともシュールだけど、美しい
-
文字のない絵本『アライバル』の絵本作家ショ-ン・タンが、〝幻想という名のおもちゃ箱〟をひっくり返したような不可思議な世界を語った『遠い町から来た話』の なんと饒舌なことか。 表紙のイラストは、15篇あるエピソ-ドのひとつ「壊れたおもちゃ」に登場してくる。 19世紀オーストラリア西海岸に現れた真珠採りの日本人潜水夫が背景にいた、いうことが翻訳者のあとがきから判るという具合で、作者の物語る異次元の世界に翻弄され続けた広大無限の物語。
-
何なのでしょうか、この本の読後感は?
怒りも喜びも悲しみも湧いてこない。ただただ唖然。
しばらくの時間ページを何度もめくり直して「何を伝えたいの?」と考えてみたがさっぱりわからない。
それじゃあ「何を感じたか?」と自問してみた。
この本では絵として描かれている異形のものや奇抜な世界が、(目には見えないが)現実社会に潜んでいるということ。
切手の目次はとても気に入ったし、好きな感じの絵も沢山あった。
ただ、絵からメッセージを読み取る能力が乏しいので、原田マハさんの解説を聞いてみたい。 -
ショーン•タン作品初体験。読んでると不思議な気分になる。
『水牛』、『壊れたおもちゃ』(表紙の絵)、『ぼくらの探検旅行』の三篇が印象深い。
どうやって作品の構想を得るのか、まったく想像が付かない。。
-
不思議なお話が詰まっている絵本。短編集。
ひとつひとつの作風がお話の内容に合わせるかたちで異なっているのが見どころの一つ。
作者の絵を描く技術の高さが高いからこそできることなんだろうなと思いました。
お話はどれも不思議な非日常感がありますが、実は日常の中にあって普段は何もなかったかのように蓋をしているような事柄が引っ張り出されて出てきたようなお話が多いように感じました。
読んだのは日本語に訳されたものですが、作中の言葉も作品の一部になっているものが多いので、訳者も大変な作業だったと思います。私には違和感なく、作品として観ることが出来ました。 -
とりとめのない、おもちゃ箱をひっくり返したような構成がとても楽しい。それもそのはず、これはショーン・タンがスケッチブックに書きとめた何気ないいたずら書きから生み出された物語なのだ。
「お祖父さんのお話」は、昔の婚礼はひどく面倒だった。婚礼前に二人でいくつもの試練を乗り越えながら、リストのものを全部見つけなければならない。
「壊れたおもちゃ」はちょっとしんみり。訳者あとがきを読んで理解した。19世紀オーストラリアの真珠産業を支えた大勢の日本人潜水夫たちの悲話が元になっている。
かと思うと「地区ボランティア会だより」なんてのに、「ペットを手作りしてみよう!」という特集もある。原料は粗大ゴミ。鉛酸バッテリー、放射性廃棄物は不可なんて注意書きも。
一番かわいくて心に残ったのは「エリック」。
エリックはとてもちっちゃな交換留学生。ぼくたちはあれこれエリックのためにもてなしをしたが彼が喜んでいるのかさっぱり分からない。突然去った彼が残したものは…。
イラストもストーリーも全部好き。
ショーン・タンの父がマレー系というのもあるのか分からないが、絵のどこかしらに親近感を覚えるのは、アジア的なニュアンスを感じとっているからかも。