犬の心臓 (KAWADEルネサンス)

  • 河出書房新社 (2012年1月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (228ページ) / ISBN・EAN: 9784309205878

みんなの感想まとめ

人間の思考と本質を問い直す物語が展開されます。犬が人間の脳を持つことで、下品さや粗野さが浮き彫りになり、読者はその滑稽さに引き込まれます。ロシア革命やボリシェビキ政権に対する批判が背景にあり、新しい人...

感想・レビュー・書評

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  • 死んだ若い男の脳下垂体を犬に移植したら、犬が人間化したという。SFのような怪奇小説のような、面白怖い作品。
    ただ、これが革命直後、レーニン時代に書かれたということを解説で読んだ。新しいソ連体制に真っ向から立ち向かう作品ではなく、多くの非リアリズム的で幻想的な作品が書かれた時代、これもその中に含まれる。
    ブルガーコフは時代の風俗を風刺したこのような滑稽さも含めた作品で何とか息を継ぎ、レーニンから舞台の仕事をもらったとか。本音とは矛盾した生活は彼にとって不幸な時代ではなかっただろうか。1989年になるまで出版はされなかったらしい。
    極貧と貴族的富裕が混在する、革命後間もない時代の作品が見せる背景を多少は理解することはできた。

    参考にと「中野京子さん」のロシアの怖い絵を読んでみたがメインになっている時代の話が、この作品の時代の少し前でおわっていた。それでもロシアという特殊な成り立ちの国と、蓋を開ければ何処も同じ、何も変わってはいない人間の歴史にはまってしまった。といっても、ロマノフ家崩壊の後がすこし少し重なっていたので理解には役立った。

    死んだ酔いどれの若い男の脳下垂体を、「シャリフ」(一般的な犬の名前)と呼ばれている野良犬に移植する
    医者は若返り手術の権威で数々の実績を上げていた。
    犬は熱湯を脇腹にかけられて死にかけていた。飢えてもいた。親切ごかしに暫くは天国のような暮らしをした後、粗野で無教養の男の脳下垂体と陰嚢を埋め込まれる。

    犬は元の素朴さを失い、人間に徐々に変化する。二足歩行から言葉を覚えていくが、男の下品な本性も受け継いでいた。

    この経緯を助手は研究のために記録しているが、少しずつ人化していく段階はSF的で面白い。だが現実はてんやわんやで、若返り自体は世間に受け入れられ医師の商売は繁盛しているが、この実験で日常が破壊されていく。

    最後の手段でもとに戻すことになった、頭に傷のある犬の穏やかな日常が戻ってきた、医師は傍で腰を下ろし、スチームの効いた部屋でくつろいでいた。犬もなんとなく幸せ。

    何度も挫折した代表作の「巨匠とマルガリータ」は読了出来るだろうか。

    変容といえば以前筒井康隆の「メタモルフォセス群島」が面白かったのも思い出した。突然変異した生物の島は、人工的ではない。それは進化の過程を切り取ったものだったかもしれない。記憶は薄れているが思い出したのでそのうち本を探してみよう。

  • 犬が人間になる。それも人間が下品と思う部分を多分に持ち合わせている人格に。この手の小説は苦手だけれど、物語として面白い。最後の締めくくりも予想外で最後までハラハラした。

  • ロシア革命、ボリシェビキ政権を痛烈に批判したとのこと。旧体制下のブルジョアを排除し、新しい人間として生きることを推奨。物語は犬に死んだ人間の脳下垂体を移植する。そもそも生き延びるかわからない手術であった。次第に犬は喋り出すが、元来の人間の粗野な部分が反映される。犬の肉体を持つから粗野ではなく、人間の持つ思考が粗野だったという。著者はわざわざ皆の前で朗読したらしく、原稿は没収。犬は犬に戻されたが、それが作者の願いなのだろう。

  • 大怪我をした野良犬が道端に転がっている。このまま何も食べられず死んでいくのか…と絶望していた犬の目の前に、一人の救世主が現れる。
    その男は医学の教授で、彼に引き取られた犬は怪我の手当をしてもらい、食事を与えられ、「なんて幸せな犬なんだろう」と思い始める。しかし…。

    酔っ払いの人間の脳下垂体と精巣を移植された犬は、その後不思議な変化を遂げる。

    お話自体は面白そうなのに、読んでいてちっとも面白くないのはなぜ?
    ロシア文学って、ユーモアがあるんだか、ないんだか???

  • 文学

  • 面白すぎる! しかも本書が1925年(昭和元年)に執筆されたというのだから驚きだ。昨日、平山夢明によって執筆された、といっても誰もわからないのではないか。ロシア語の知識は全くないのでよくわからないが、水野忠夫先生の訳も凄いのではないか。本書の初版が1971年であるから既に45年が経過しているが、日本語としても全く色あせていないのが凄い。

  • 新しい人間が生まれ、上昇し、怯えさせ、転落する話。

  • 野良犬に人間の脳下垂体と精嚢を移してみたら、だんだん人間らしくなってきた(この時点ですでに皮肉が入っているが)。しかもアパートの住人に思想の影響まで受けてしまい……という話。実験してはみたものの手に余る存在になっていく展開や、犬人間のどこか憎めないダメっぷりが、当時のソ連の政治体制への風刺と絡んで、笑っちゃいけないんだけど笑ってしまう。欲を言えば、出だしで書かれていた犬の気持ちを、人間へ変貌していく中でも読んでみたかった。

  • 物凄い熱量を感じた

  • かなり面白かった。
    まずタイトルで度肝を抜かれるのだけど、次の犬の独白で心を鷲掴みにされる。内容は犬が人間化していくという、しかもかなり下品な人間になり、それに振り回される人々を描いた奇想天外な話。しかし、動物実験という形でこのような手術がどこかで実際に行われているのだろうなと思わされる。

    この本が書かれたのが1925年。当時のソ連の時代・体制からよく書けたな、というのが素直な感想。
    今までロシア文学に接する機会というのは絵本に限られていて手に取ったことがなかったのだが、これからはいろいろと読んでいきたいと思えた。

  • 脳を移植された犬が人間として生活するという内容。

    なんとも不思議な感じ。
    最後はあっさりと収拾したかと。

  • 色褪せないで残るということを考える。
    再び日の目を見るということを考える。

    どちらも結局は良いものでないと残らないのかな。

    1925年に書かれたものが日本では1971年に出て、ほいで2012年に復刊された、と。これはどういうことなのだろう?なんでもええから物珍しそうなもの掘り返してきたよってのでこういう本が出てくるのだろうか。それとももはや人間の作り出したもののアーカイブは途方もない量になっており(アーカイブを残しておく為の技術革新とかもあってね)玉石混淆は自然淘汰され上澄みはきっと良いものだと判断されているが故に残っているもの見直されているものはすべからく良いものだと思っていいのか、それともなにかしらの操作があってこその生存復活なのか、いろいろ考えるのだけれども、結局はまあ読んで面白かったのだし、まあいいかと思う。でもやっぱりこの本のどこを読んでどこに共感して面白かったのだろうか、自分で自分に細部を聞いてみたい気もするがだいたいそういうときは答えが容易されていないのだ。なんて駄目なやつ。このまま内容に触れることなくレビューを終わる。面白かったんだ。

  • 「巨匠とマルガリータ」と同じくアイロニーと幻想にまみれた小品。野良犬がたどり着いた数奇でグロテスクな運命。

  • 犬が人間に変身してしまう話、と言ってしまえば陳腐ですが、終盤にもう一回ドンデン返しになっています。それにしても、移植して新たな生物(?)が生まれるってことを、そのこと自体には何の疑問も差し挟まずに接している登場人物が非常に不思議です。この作品が革命直後のソ連社会を痛烈に風刺していると解説にはありますが、そんな予備知識はなくとも十分楽しめますし、そんな知識を必要としないからこそ、現在にも読み継がれているのではないでしょうか?

  • Михаил Афанасьевич Булгаков (1891-1940)
    •Собачье Сердце (1925)

    ヴィルノ(ヴィルニュス)はロシヤ語ではヴィリノになるのかと、そんなマージナルな所に感心してしまった。
    ロシヤ名Вильна(ヴィリナ)
    ポーランド準拠ロシヤ呼称Bильно(ヴィリノ)
    リトワニヤ準拠ロシヤ呼称Вильнюс(ヴィリニュス)
    ポーランド語のŁを「暗いL」と言ったのが誰だったかは忘れてしまったけど、本来それは後続母音を伴わないЛ音を表記するための文字だったはずなのだ。そして「沼野充義 巻末解説」で使用されてるセリフ付きキリル文字フォントがどえらく格好良いのだ。
    本当にどうでもいいことですね。すいません。

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著者プロフィール

1891年、キエフで生まれる。ロシア革命の動乱のなか、モスクワで文学活動を開始。1925年、長篇『白衛軍』を雑誌発表、短篇集『悪魔物語』を刊行するが、反革命的との批判を受け、戯曲も当局による上演中止が相次ぐ。失意の中、発表の当てのないまま 『巨匠とマルガリータ』『劇場』等の作品を書き続け、1940年死去。1966年に遺稿『巨匠とマルガリータ』が初の活字化、各国語に翻訳されて劇的な復活を遂げる。

「2017年 『劇場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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