帰ってきたヒトラー 上

制作 : 森内 薫 
  • 河出書房新社
3.70
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本棚登録 : 1035
レビュー : 100
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309206400

感想・レビュー・書評

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  •  終戦直前に自殺したはずが突然現代に蘇ったヒトラー。彼はヒトラーをまねて振る舞う芸人としてテレビに出ることになるが。。。(レビューは上下巻まとめて)

     これはすごい作品である。大戦時の信念のまま現代に適応したヒトラーは時にズバズバと筋の通ったことを言い、人間として、オピニオンリーダーとして魅力的ですらある。
     もちろん、ヒトラーの負の部分にもしっかりヒトラー本人を向き合わせている。全体主義が時に心地よく、時にその暴走した姿に恐怖を覚える。
     おそらくこの作品のヒトラーの様に、本物のヒトラーも怪物ではなかったのではないか。だが、それは怪物ヒトラーが第二次大戦を起こしたと考えるよりもずっと怖いことだ。
     
     ラストで、ヒトラーがかつて自分が倒そうとしたユダヤ人の姿をいわゆる1%の富裕層に見て、彼らの打倒を誓うのは少し痛快でさえあった。

     衝撃的な一冊。世界中の人に読んでもらいたい。

  •  突然違う時代に蘇り幾多の困難な状況に直面しつつ、それでも自分の信念を貫き通そうとする総統の健気なまでの純粋さについつい感情移入して、「ヒトラーって案外いい人じゃん」などと思ってしまうかなり危ない本です。

     ドイツの歴史や政治の知識がないので面白さが理解出来ない場面があるのが残念!

  • 古すぎず、新しすぎず、若すぎず、年寄りすぎずな人物のタイムスリップもの。
    タイトル通りで、ニヤニヤ。
    感想は下巻で。

  • これクスってくるけど、同時になんかぞっとする。
    どっちがおかしいんだ、ろ。

  • 2011年8月。ベルリン。
    突然、あのヒトラーが目を覚まし、この世界で再び活動し始めたら・・・。
    そんな「if」を通して、著者なりの理解によるヒトラーの人間性と、現代の社会風刺をユーモラスにかつ鋭く描く。

    復活したヒトラーは60年間の間に生じた変化に対して、かなりのジェネレーションギャップに遭遇するものの、冷静かつ超前向きに現実を受け止め、素早いけど若干ズレている理解で現実に適応し始める。
    そんな彼を、テレビのプロダクション会社が「ヒトラーのそっくりさんを演じるコメディアン」として拾い上げるところから、再びヒトラーは世の中に対して発信を始める。

    ヒトラーのやり方は往時と同じで、現実の社会や政治の不条理や、人々の不満を発見し、「敵」を設定して徹底的に攻撃することで自らの地位を明確にしていくことである。
    でもこれが案外でたらめでなく、人々の生活をしっかり観察し、突撃インタビューを実施するという、地に足ついた方法で進めていく。
    往時と同じように、「庶民の不満の代弁者」として徐々に庶民の支持を取り付けていく。
    こうして段々と民衆が魅せられていき、マスコミもそれを煽って、彼をヒーローに仕立てていく・・・。往時、なぜ彼が公正な選挙を通して政権を掌握できたか、という疑問に対する答えを、読者は民衆の一人として追体験できるというのが本書の特徴の一つ。

    もう一つの特徴は、何といっても、時代錯誤だけど至って大真面目なヒトラーと、登場人物とのズレてるんだけど何故かかみ合う会話という全編に行きわたるユーモアにある。
    例えば、彼が主張する政策は、ドイツ民族の優等性という歪んだ理念が大本にあるものの、表面的には(将来の兵士になるから)子育てを優遇する社会を推進し、(将来のドイツ国民の土地とするために)自然を保護しエコを推進することを提唱するのだから、案外現代の要望に適合してしまったりする。
    サインを頼まれて、服の上に鍵十字を書いてしまい、廻りの人間はキツいブラックユーモアとして喝采するものの、本人は至って大真面目だったり。
    「かみ合わない」笑いというのは、ドイツでもやっぱり受けるんだなと実感できる。

    ヒーロー(独裁者)が誕生する過程を知る面でも、ユーモアの面でも、かなり上手くいっているし、大変読みやすいため、実にお勧めしやすい一冊になっている。

  • 上下巻とも読みました。

    『我が闘争』が発禁となっているドイツで、ベストセラーになった小説です。あのヒトラー本人が、現代によみがえって再度帝国の覇権を目指すお話。
    ドイツ人でもヨーロッパ人でもないなら、深く考えずに
    楽しむことも出来ると思います。

    上巻が既に手元にないので正確な引用ではないですが、「最初はヒトラーを笑っていたはずの読者は、いつの間にかヒトラーと一緒に笑っていることに気づくだろう」と冒頭にありました。その通りでした。

    思考や政治的思想はともかくとして、ヒトラーという男は、国民をあれほど熱狂させるだけの魅力と表現力を持っていたわけです。彼がもし数百年に一度現れるレベルの「人を惹きつける力を持った人間」だとしたら、そんな力を持たない普通の政治家たちは、かつても今も、太刀打ちできるはずがない。

    かつてヒトラーがやったことは肯定できませんが、全否定して目をそむけてしまっては彼があれだけの力を持てた理由が分からないし、分からなければ同じ轍を踏む可能性が人間にはあります。

    なぜ彼は現れたのか。なぜそこまでの人気を得られたのか。なぜ止められなかったのか。
    それを理解するための小説だと思いました。
    そしてもし正しく理解できていたとしたら、そこはかとなく薄ら寒いような気がします。

  • 現代のベルリンに突如よみがえったアドルフ…ヒトラー。奇想天外な設定のこの小説は、ユーモアの中に深い恐怖と警鐘を潜ませている…はずである。下巻へ。

  • この手の話は漫画でも結構あるので既視感はあった。しかし、ヒトラー本人が実際に話しているという設定と話し方を完全に再現している文章、そして現代社会の意外なところに興味を示すところ、アンジャッシュのネタを彷彿とさせるすれ違いが非常に面白い。
    ナチスや現代ドイツ事情に精通していなくても面白く読めると思います。

  • 現代のベルリンに突如蘇ったアドルフ・ヒトラー。接する人たちは彼の振る舞いをブラックジョークだと勘違いして、コメディアンとしてデビューする……。

    「もし現代に○○が生きていたら」という“if”の物語は決して珍しくありません。むしろ、陳腐化しているきらいがあるぐらいかも。ただ、人間味溢れるヒトラーの描き方にドイツでは社会問題化したそうです。その上で、同国で130万部のベストセラーになり、38カ国で翻訳が出版。映画化まで決まっているのだとか。書評を見て社会風刺小説としても面白そうだと思い、手に取った次第です。

    今日読み終わったのは、上下巻のうちの上巻。ヒトラーと現代の人のやり取りの面白さに加え、今のドイツ社会の雰囲気も行間から伝わってきて、なかなか楽しくページが進みました。引き続き下巻も読んで、まとまった感想はその後に書こうと思います。

  • ヒトラーが現代によみがえったら!?ちょっと現実離れしている話ですが、それはそれで面白い話になっています。

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著者プロフィール

1967年、ドイツのニュルンベルク生まれ。エルランゲン大学で歴史と政治を学ぶ。ジャーナリストとしてタブロイド紙〈アーベントツァイティング〉紙や雑誌などで活躍。ゴーストライターとして4作品を刊行。

「2016年 『帰ってきたヒトラー 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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