- Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309206417
感想・レビュー・書評
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翻訳が上手いおかげかテンポよく読むことができた。ヒトラー流のレトリックはここが戦場で鬼気迫る状況ではないかと思わせるものだ。あの場に自分がいたらどうなるだろうか。そんなことを考えた小説だった。
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この小説を面白く読めてしまうことが恐ろしい。歴史上、様々な「独裁者」と呼ばれている人物のカリスマ性は覆い隠せるものではない...。著者の人物解釈は読み手を唸らせるものがある。
また、周囲の登場人物も現代を風刺する様々な役割を与え、読み手を“そうだそうだ”とグイグイ引き込んでいく力がある。終わり方は少々、言い訳めいた物言いになっており、業を薄めている印象は否めない...。 -
強いヒトラー、ズレているけどドイツの事を考えているヒトラー。
リンチされても警察などに頼らず、
事態を裁く権利は、私のこの拳が握っているとのセリフが、印象的だった!
その為、報復しなかったので反暴力、平和主義にみられて、人気があがった!
ドイツの歴史とかの話が、ちょくちょくでて、解りづらい部分もあったので、日本版とかあれば、なお楽しいのかな?と思えた。 -
伝わらないというかあまりにもコミカルすぎた。ドイツで発表された風刺小説。2012年の発表から2015年の8月には映画公開という恐ろしいスピードの出世作。ただ、これをよくドイツで発表できたなと思う。日本では興行成績は2億7000万に終わっている。
「帰ってきたヒトラー」
タイムスリップしたヒトラーがなぜかテレビ番組の人気者に、そして現代社会に訴える表現や言動は限りなく過去と同じようになのでしょうけれど、引き込まれる。現代にマッチしている。ただ、文字にはまるで臨場感がないため、普通の作品となっている。
映画を見てしまった人間にしてみると普通の風刺小説かもしれないが、やはり題材が題材なだけに好き嫌いは否めないかと -
2011年8月。ヒトラー目覚める。
タイムスリップした彼を、周りは『ヒトラー芸人』に仕立て上げるのだった。
すげー怖いよ。
ヒトラーがヒトラーとして考え、話し、動いているのに周囲がどんどん(自分たちに)いいように祭り上げていく。
その様は面白いんだけど、それ故にゾッとする。
気がついたら戻れないところにいるんだよ、絶対に。
最後に再生したヒトラーにTVプロデューサーが与えたスローガンが恐怖感にとどめを刺してくれる。
風刺小説ってよりホラーでしょ、これ。 -
読み終わって、「痛快で面白かった!」と思ってしまった自分に驚いた。
何も知らずに読んだなら、ヒトラーが格好良く、紳士的で、責任感の強い大政治家に感じるだろう。
同じ人物でも、語られ方一つでこうも印象が変わってしまうとは……。
自分の知っていることなんて、どこか一つの視点から見た偏った事実に過ぎないのだろうと考えさせられた。
また、ドイツの歴史をもっと深く知っていれば、より楽しめただろうなと惜しく思った。 -
作者のこだわりらしい,そう異常ではない,むしろ魅力のある人物だからこそあの権力を手にできたことを伝えたいという意図は成功している.そして,今の日本を考える.
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あまりの「らしさ」に、あまりの「ピュアぷり」に、あまりの「まじめさ」に、読み進むうちに彼に可愛さまで感じてしました。そこがこの本の怖い所です。まるでミッキーマウス。そう、ヒトラーがキャラ化しているのです。そして、異形をキャラにしてしまうのは異形の側ではなくて、大衆の側なのです。この構図は彼が台頭してきた構図と同じ構図であり、それこそがこの本のテーマなのでは?と思ったりもしました。