ブロの道: 氷三部作1 (氷三部作 1)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309206868

感想・レビュー・書評

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  • マッチングアプリのチャットで勧められて、夢中で読んじまったよ…なんて経験ありますか(≧∇≦)
    ソローキン初読でまたまた不勉強を恥じつつ、引き込まれた。
    裕福な少年がロシア革命で何もかも失った青年となっていく冒頭から、ツングース隕石探求の旅で宇宙からもたらされた「氷」に出会い、原初宇宙からの存在「光」としての自らを取り戻し、仲間を探し出して光に戻ろうと長い道のりに踏み出す。
    徐々に徐々に人間としての自我を失っていく何十年の歩みの中で、侵略者(どっちかっつーと厳密には創造者)の目からはこんなふうに見えるのかと、人の性質から歴史までを新たな視点で見られるのも大変な知的刺激だが、豊かな筆致で細かく丁寧に描かれるのが「人としての」→「光としての」喜び、幸福である点がとても…せつない。その両者の幸せが同時に成立しないから。だけどどちらも仲間を得、そのために生きることが至上であるという共通点が。
    2作目、3作目も楽しみだけど、その前に『三体』だな。

  • 読み始めてしばらくは『ロマン』風だったおかげで逆に期待が高まった。最初に心臓で語り出した男女が特別な力で仲間を増やしていく過程が描かれていて、後の世代のメンバーが聖典として読みそうな内容。

    兄弟姉妹たちの在り方が、拠り所がなかったり独りぼっちで迷っていたりする人の願望を具現化しているようで、切ない気持ちになる。なぜだかわからないままに運命に導かれたいし、強く飢えない身体と留保なしに信じられる仲間が欲しいし、感情を解放したいし、じぶんを普通の人間より上位の存在だと思いたい。なんでソローキンはこんなにあからさまな書き方をしたんだろうか。その辺の納得感は第三部を読まないとなんとも言えないのだが。

    終盤、ブロの世界の見え方が変わったあとの表現が面白くて、ただただ読みふけってしまった。「鉄卵」とかね、ああなるほど、という面白さ。人間を別種族として見る視点も面白かったのかもしれない。

    しかしカルト教団の成長の背景として描写されるソ連の社会システムが実におっかない。その辺の知識があるともっと面白く読めるのかもしれないけれど、あまり詳細に知りたくない怖さがあった。

著者プロフィール

1955年ロシア生まれ。83年『行列』でデビュー。「現代ロシアのモンスター」と呼ばれる。2010年『氷』でゴーリキー賞受賞。主な著書に『青い脂』『マリーナの三十番目の恋』『氷三部作』『テルリア』など。

「2023年 『吹雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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