ブロの道: 氷三部作1 (氷三部作 1)

  • 河出書房新社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309206868

感想・レビュー・書評

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  • 『青い脂』に比べたら格段に読みやすかったです。御光の知恵、というんですか、困ったときには超自然的な力が働いて問題が解決されていくようなご都合主義的な話は好きではないのですが、この本はあまりにブッとび過ぎてるせいか、特にひっかからずに読了できました。ハンマーの作り方が妙に詳しく定義されるあたりで「これは宗教の始まりの物語なのかな」と思ったのですがそんなこともなく。語るのが脳でなく心臓というのも面白いですね。続きが気になります。ところでクリークさんてあのあとどうなったのか、言及ありましたっけ?

  • マッチングアプリのチャットで勧められて、夢中で読んじまったよ…なんて経験ありますか(≧∇≦)
    ソローキン初読でまたまた不勉強を恥じつつ、引き込まれた。
    裕福な少年がロシア革命で何もかも失った青年となっていく冒頭から、ツングース隕石探求の旅で宇宙からもたらされた「氷」に出会い、原初宇宙からの存在「光」としての自らを取り戻し、仲間を探し出して光に戻ろうと長い道のりに踏み出す。
    徐々に徐々に人間としての自我を失っていく何十年の歩みの中で、侵略者(どっちかっつーと厳密には創造者)の目からはこんなふうに見えるのかと、人の性質から歴史までを新たな視点で見られるのも大変な知的刺激だが、豊かな筆致で細かく丁寧に描かれるのが「人としての」→「光としての」喜び、幸福である点がとても…せつない。その両者の幸せが同時に成立しないから。だけどどちらも仲間を得、そのために生きることが至上であるという共通点が。
    2作目、3作目も楽しみだけど、その前に『三体』だな。

  • 1908年6月30日、ツングースカ大爆発が起こった同じ夜にアレキサンドル・スネギリョフが誕生する。成長した彼はツングースカ探検に帯同し、そこで大爆発の際に空から落ちてきた巨大な氷塊に触れてブロとして覚醒する。その時ブロは自らの使命を思い知る。すなわちそれは、地球上にばらばらになって散らばった23,000の光の兄弟たちを一人残らず見つけだすこと。そして再びひとつになって原初の光を再現すること(そうなると人類も地球も一瞬で消滅する)。
    ブロは特殊な能力を使って、兄弟たちを次々と発見し覚醒させる。彼らは兄弟団を組織し、ソ連共産党、ナチスドイツなど権力を利用しながら地盤を固める。また資金を順調に増やして組織をより強大にしていく。
    しかしやがて独ソ間で”大祖国戦争”が勃発し、多くの兄弟たちが戦闘に巻きこまれ犠牲となる。ブロ自身も能力の使いすぎが原因で肉体が酷使され、アレキサンドル・スネギリョフとしての今生を畢える。
    光の兄弟たち全員を探しだすという遠大なプロジェクトは、フラムら後継者に委ねられた……。
    ――――――――――――――――――――
    ■『ブロの道』では、最初に氷に触れて覚醒し兄弟団の礎を築いたブロの生涯を描く。時代は1908年から1950年まで。歴史的におなじみの出来事が物語の背景にずっとあって、その点非常に臨場感がある。
    ■ブロの口から”肉機械”が語られる。世界中で”肉機械”同士が終わりのない殺戮に明け暮れている。”肉機械”は効率的な殺戮のために”鉄機械”を新調してそれを大量に製造する。そのことによって殺戮はより凄惨に、より大規模になっていく。……ぼくは読んでて、ぼく自身が一介の”肉機械”であることがだんだん辛くなってくる。そして、”肉機械”なんか地球上から全員いなくなったらいいのにと、宇宙は最初の完璧だった光の世界にもどればいいのにと、さえ思うようになる………。

  • 初見が『青い脂』だったから身構えてたが、普通に理解可能な文章、親しみやすい面白さでびっくりした。まあ内容はぶっとびなんだけど、、ツングースカ大爆発の時に落ちた隕石の中身は実は氷で、その氷で胸を殴打すると原初の光の記憶が蘇るという内容。真名ブロことアレクサンドルが姉妹フェルと共に、地球に散らばった23,000の光の兄弟姉妹を探し出す物語。二万三千以外の人間は「空っぽのクルミ」であり、後半では肉機械と呼ばれる。人間を徹底して客観的に描写することで、その動物性が曝け出される。みんな感極まると放屁する。

  • 読み始めてしばらくは『ロマン』風だったおかげで逆に期待が高まった。最初に心臓で語り出した男女が特別な力で仲間を増やしていく過程が描かれていて、後の世代のメンバーが聖典として読みそうな内容。

    兄弟姉妹たちの在り方が、拠り所がなかったり独りぼっちで迷っていたりする人の願望を具現化しているようで、切ない気持ちになる。なぜだかわからないままに運命に導かれたいし、強く飢えない身体と留保なしに信じられる仲間が欲しいし、感情を解放したいし、じぶんを普通の人間より上位の存在だと思いたい。なんでソローキンはこんなにあからさまな書き方をしたんだろうか。その辺の納得感は第三部を読まないとなんとも言えないのだが。

    終盤、ブロの世界の見え方が変わったあとの表現が面白くて、ただただ読みふけってしまった。「鉄卵」とかね、ああなるほど、という面白さ。人間を別種族として見る視点も面白かったのかもしれない。

    しかしカルト教団の成長の背景として描写されるソ連の社会システムが実におっかない。その辺の知識があるともっと面白く読めるのかもしれないけれど、あまり詳細に知りたくない怖さがあった。

  • 革命で語り手の家族が死にまた散り散りになるまでと、なってからの飛躍がすごかった。
    幼年時代は表現がユーモラスで楽しめたが、それ以後の奇想天外な展開は、設定を演繹することに忙しくてちょっと退屈だった。

  • 読むのに数ヶ月かかった。
    第二部『氷』を読んでからなので、話の大筋みたいなものは知っているのですが、最初の人間『ブロ』がどのように目覚めるかまでは面白かったものの、その後の仲間集めは第二部と同じで退屈な感は否めない。(ここで読むのが躓いた)
    ただ、主人公(ブロ)の視界が変化してからの描写・文体の変化は大変面白かったので、もっとそちらに分量を割いてくれれば良かったのになあと思ってしまう。
    第三部は間を空けずに読みたい…できれば。

  • 心臓(こころ)で語った結果、23000の原初の光に戻ってしまう。
    後半における天丼と個々人の差異が認識できなくなったことによる展開加速文体が見事。

  • 【選書者コメント】著者のソローキンは早稲田大学で講演したとき「あなたの作品には人のクローンがよく出てくるがなぜか」という質問に対し「みなさんは自分のドッペルゲンガーとかみないのですか」と聞き、静まり返った観衆をみて「日本人はみな精神的に健康らしい」と答えていました。すごいなあと思いました。
    [請求記号]9800:235:1

  • 前作(『氷』)ほどグロくなくてよかった。というかこの文体に慣れたか?ああ、そうですか、最終作も読みましょ、って感じ。

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著者プロフィール

1955年ロシア生まれ。83年『行列』でデビュー。「現代ロシアのモンスター」と呼ばれる。2010年『氷』でゴーリキー賞受賞。主な著書に『青い脂』『マリーナの三十番目の恋』『氷三部作』『テルリア』など。

「2023年 『吹雪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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