死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相
- 河出書房新社 (2018年8月25日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309207445
感想・レビュー・書評
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9人のトレッカーが雪山で不可解な遭難をしたディアドロフ峠事件。その真相を調べるために、関係者への聞き取りや、実際の現場に赴いて調査してたどり着いた真相とは?
実際にあった事件を元にした映画をまとめた本で知ったディアドロフ峠事件。極寒の雪山で、裸足で薄着や頭蓋骨陥没、舌だけがなくなるなどの遺体が見つかり、更に通常よりも高い放射線が検出されたことから、謎の事件とされている。
著者は丹念にトレッカーたちの後を追う。後半に実際の状況を想定して記録のように記述しているところがあるが、それまでに調査した結果があることから、真実味の増した記載になっている。実際、事件前に撮った写真や日記があり、現地までの工程は、かなりわかっている。著者はさらに実際にいくことで、現地の様子から改めて事件の原因について考察して、発生しない原因を削除していき、原因を絞って行った。インタビューの様子、雪山への挑戦など、それぞれの内容も戸惑いや紆余曲折の過程、フレンドリーになっていく様子など、著者の苦労と喜びが見えるのがよい。
記述は、1959年の事件に絡んだトレッカーの行動、捜索隊の行動と2012年の著者の調査の行動が互い違いに書かれており、著者が事件を辿るようになっているのが、おもしろい。また、1959年の記述では、ソビエト連邦下での様子も伺え興味深い。
辺地での調査も含め、丹念に調べて結果を導き出した著者に敬服したい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久々に読書の醍醐味を味わえた1冊でした。
なぜ経験豊かな9人の若い登山家たちが、マイナス30度の極寒の冬山で薄着で靴も履かずテントからかなり離れた場所で死んだのかという謎に迫ったドキュメンタリー、まさに事実は小説より奇なりを地で行く展開は上質のミステリーです。
これから読む人のために、著者の下した結論(推論)には触れませんが、本書で繰り返されるように、「不可能をすべて消去したら残された可能性が真実だ」というシャーロックホームズの言葉を借りてもなお「消去したら何も残らなかった」事態には対処の仕様がないわけで・・
1959年に起こった未解決の事件を2013年に現地に赴き関係者の話を聞いて書き上げた本書は、あくまでも真相を知りたいという人間の本能的な好奇心にチャレンジした意欲的な作品になっています。
本書には多くの写真や図表が掲載されていますが、唯一9つの死体の位置関係の図だけがなかったのが残念でした。 -
今から50年前に起こったロシア(旧ソビエト)で9人もの死者が出た遭難事故。それは謎に満ちたものであった。なぜ極寒のなか全員が裸に近い姿、それも外で靴を履いてなかったのか?なぜ一人は舌がなく、骨折し、低体温で死んでいたのか?そしてなぜテントは外側でなく内側からナイフで切られていたのか?現代と過去を交互にゆきつつ検証してゆく様はまるで上質のミステリーを読んでいるよう。限りなくフィクションに近いノンフィクション。買ったその日に一気に読破。それほど面白かった。結局人間は自然には勝てないとゆうラスト。当時推察された核ミサイルの実験でもUFOの仕業でも、雪崩でもない驚きの真実。著者のドニー・アイカーはドキュメンタリー映画作家とゆうこともあって立派なエンターテイメントにし上がってる。ちなみに読んでる間、BGMに「Xーファイル」(懐かしい!)のサントラをかけてたらよけいにドキドキした。今年に入って1番読み応えのあった1作。オススメ!
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インターネットによって
世界の大方の秘密が暴かれてしまった現代に残された
最後の(?)大いなる謎「ディアトロフ峠事件」に魅せられた
アメリカ人ドキュメンタリー映画作家が、
オカルトや陰謀説を排除して、
筋の通った説明を求めて現地を探訪し、
書き上げた渾身の事件簿。
草木が生えないことに由来すると言われる、
ソビエト連邦ウラル山脈北部、
先住民マンシ族の言葉で「死の山」を意味する
ホラチャフリ山を目指した
ウラル工科大学のトレッキング隊9名が帰還せず、
1959年2月、捜索隊が動き出した。
彼らが目にした異様な光景は……。
事件時、トレッキングメンバーは10名、
リーダーの名からディアトロフ隊と呼ばれた。
うち、1名は腰痛の悪化でやむなく途中で引き返し、
9名が不可解な死を遂げた場所は
後にリーダーの名を取って
ディアトロフ峠と称されるようになった。
解剖の結果、死因は低体温症、もしくは
頭部の強打などであることが判明したが、
ディアトロフらは何故、
過酷な山中において最も安全な場所であるはずの
テントを脱出したのか。
暴漢に襲撃されたか、あるいは何かしら
見てはならぬものを目撃したために抹殺されたとでもいうのか、
UMAかUFOか……と、奇怪な説も乱れ飛んだが、
著者は現場を確認すべく、2012年、
万難を排してホラチャフリ山へ。
GPSと写真測量法を用いて
ディアトロフ隊のテントが設置された場所を精確に割り出し、
そこに到達して気づいたことは――。
という、実際に起きた悲惨な事件の話なので
不謹慎な言い方になってしまうが、
大変スリリングで面白い読み物だった。
謎は謎のままにしておいてもいいのだが、
読み解こうとするなら非合理的な考えを弄ぶより
科学的に検証すべき、という著者の方針に、
大いに共感する。
山を愛するあまり命を捧げる格好になってしまった、
聡明で朗らかな学生たちへの哀悼に満ちた、
素晴らしいルポルタージュ。 -
納得できる一冊。
1959年に冷戦下のソ連で起きた不可解な遭難事故。
50年経てもなお翻弄させられるこの事件ともいうべき事故の謎に挑んだノンフィクション作品。
最初から最後までとにかく読み応えあり。
遭難者各人についての記述や写真はもちろん、現地に実際足を運び体験し、綿密な調査と共に謎に挑んでいく過程は読んでいて飽きなかった。
特にこの時代背景、光の目撃証言からの仮説はかなり興味深く読めた。
そして到達した、著者のある一つの結論。これは想像とは違っても充分納得できるものだった。
あの時あの場所にたしかにいた…その証とも言える笑顔に満ち溢れた写真が哀しみを誘う…。
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旧ソ連・ウラル山脈で遭難した9名の学生たちは、
何故テントから、ろくな装備も着けずに極寒の中へ出て、
「未知の不可抗力の死」に至ったのか?
1959年に起こった《ディアトロフ峠事件》真相は如何に?
アメリカ人ドキュメンタリー映画作家が謎の究明に挑む。
登場人物の一覧・トレッカーの時系列・捜査の時系列有り。
学生たちの遺した日誌、写真、事件に関する資料、
生存者や関係者へのインタビューを元に、
また、実際に厳寒の現地にも訪れ、
・学生たちの遭難するまでの動向
・捜索隊の動向
・著者の探求の動向
以上の三つの視点を織り交ぜて、事件の謎解きが進行します。
当時の旧ソ連の状況、庶民や学生たちの生活の様子も窺え、
それが事件の謎が複雑化するのにも影響を与えています。
最終的には、著者が諸説を一つずつ否定し、ある結論に達する
のですが、ドキュメンタリーと謎解き、それに再現ドラマと、
読み進めさせる構成はなかなかなもの。翻訳も良いと思います。
現代の気象研究と科学で一つの結論に辿り着きましたが、
事件当時なら「未知の不可抗力の死」と考えられたのも、
さもありなん。
2019年、ロシア検察が事件を再調査していることを明らかに
したとの報道がありました。果たしてどういう結果になるのか? -
ディアトロフ峠事件、冷戦時下ロシアの工科大学大学生たち9人が遭難、不可解な死をめぐる真相を現代から考察するノンフィクション。取材から推定される被害者の行軍と捜査、現在の著者が実際にディアトロフ峠へ向かう状況がパラレルに展開する構成で、ゆっくりと確信へと近づいていく感覚が面白い。しかし確信も本当に終盤までぼんやりとしたもので、改めて考察に入ってからの急展開、最終的に最悪な場所が彼らを死に至らしめたこと、読後感は独特の重さがあった。
話から伝わる当時のソビエトの状況、彼らの様子が生き生きと描かれているところも面白かった。
不可解かと思っていたことも最終的には科学的な考察で腑に落ちる形にまとめ上げるところ良い。フィクションのような世界観で、着地点があることで逆に興奮が冷めていくような感じもあり、少し新鮮な感覚ある。 -
図書館の本。
インパクトあるタイトル。
ミステリー小説ではなくノンフィクション。
ウラル山脈で起きた、9名の登山チームの不可解な死。
極寒の地でアウターなど着ておらず、靴も履いていない。
外傷あり、うち一人の女性には舌がない。
放射能も検出され。。。
これは読むしかないな、と手に取り読了。
著者プロフィール
ドニー・アイカーの作品
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