死に山: 世界一不気味な遭難事故《ディアトロフ峠事件》の真相

  • 河出書房新社
3.95
  • (101)
  • (145)
  • (97)
  • (10)
  • (1)
本棚登録 : 1344
感想 : 180
  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309207445

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 9人のトレッカーが雪山で不可解な遭難をしたディアドロフ峠事件。その真相を調べるために、関係者への聞き取りや、実際の現場に赴いて調査してたどり着いた真相とは?
    実際にあった事件を元にした映画をまとめた本で知ったディアドロフ峠事件。極寒の雪山で、裸足で薄着や頭蓋骨陥没、舌だけがなくなるなどの遺体が見つかり、更に通常よりも高い放射線が検出されたことから、謎の事件とされている。
    著者は丹念にトレッカーたちの後を追う。後半に実際の状況を想定して記録のように記述しているところがあるが、それまでに調査した結果があることから、真実味の増した記載になっている。実際、事件前に撮った写真や日記があり、現地までの工程は、かなりわかっている。著者はさらに実際にいくことで、現地の様子から改めて事件の原因について考察して、発生しない原因を削除していき、原因を絞って行った。インタビューの様子、雪山への挑戦など、それぞれの内容も戸惑いや紆余曲折の過程、フレンドリーになっていく様子など、著者の苦労と喜びが見えるのがよい。
    記述は、1959年の事件に絡んだトレッカーの行動、捜索隊の行動と2012年の著者の調査の行動が互い違いに書かれており、著者が事件を辿るようになっているのが、おもしろい。また、1959年の記述では、ソビエト連邦下での様子も伺え興味深い。
    辺地での調査も含め、丹念に調べて結果を導き出した著者に敬服したい。

  • 久々に読書の醍醐味を味わえた1冊でした。
    なぜ経験豊かな9人の若い登山家たちが、マイナス30度の極寒の冬山で薄着で靴も履かずテントからかなり離れた場所で死んだのかという謎に迫ったドキュメンタリー、まさに事実は小説より奇なりを地で行く展開は上質のミステリーです。
    これから読む人のために、著者の下した結論(推論)には触れませんが、本書で繰り返されるように、「不可能をすべて消去したら残された可能性が真実だ」というシャーロックホームズの言葉を借りてもなお「消去したら何も残らなかった」事態には対処の仕様がないわけで・・
    1959年に起こった未解決の事件を2013年に現地に赴き関係者の話を聞いて書き上げた本書は、あくまでも真相を知りたいという人間の本能的な好奇心にチャレンジした意欲的な作品になっています。
    本書には多くの写真や図表が掲載されていますが、唯一9つの死体の位置関係の図だけがなかったのが残念でした。

  • 今から50年前に起こったロシア(旧ソビエト)で9人もの死者が出た遭難事故。それは謎に満ちたものであった。なぜ極寒のなか全員が裸に近い姿、それも外で靴を履いてなかったのか?なぜ一人は舌がなく、骨折し、低体温で死んでいたのか?そしてなぜテントは外側でなく内側からナイフで切られていたのか?現代と過去を交互にゆきつつ検証してゆく様はまるで上質のミステリーを読んでいるよう。限りなくフィクションに近いノンフィクション。買ったその日に一気に読破。それほど面白かった。結局人間は自然には勝てないとゆうラスト。当時推察された核ミサイルの実験でもUFOの仕業でも、雪崩でもない驚きの真実。著者のドニー・アイカーはドキュメンタリー映画作家とゆうこともあって立派なエンターテイメントにし上がってる。ちなみに読んでる間、BGMに「Xーファイル」(懐かしい!)のサントラをかけてたらよけいにドキドキした。今年に入って1番読み応えのあった1作。オススメ!

  • インターネットによって
    世界の大方の秘密が暴かれてしまった現代に残された
    最後の(?)大いなる謎「ディアトロフ峠事件」に魅せられた
    アメリカ人ドキュメンタリー映画作家が、
    オカルトや陰謀説を排除して、
    筋の通った説明を求めて現地を探訪し、
    書き上げた渾身の事件簿。

    草木が生えないことに由来すると言われる、
    ソビエト連邦ウラル山脈北部、
    先住民マンシ族の言葉で「死の山」を意味する
    ホラチャフリ山を目指した
    ウラル工科大学のトレッキング隊9名が帰還せず、
    1959年2月、捜索隊が動き出した。
    彼らが目にした異様な光景は……。

    事件時、トレッキングメンバーは10名、
    リーダーの名からディアトロフ隊と呼ばれた。
    うち、1名は腰痛の悪化でやむなく途中で引き返し、
    9名が不可解な死を遂げた場所は
    後にリーダーの名を取って
    ディアトロフ峠と称されるようになった。
    解剖の結果、死因は低体温症、もしくは
    頭部の強打などであることが判明したが、
    ディアトロフらは何故、
    過酷な山中において最も安全な場所であるはずの
    テントを脱出したのか。
    暴漢に襲撃されたか、あるいは何かしら
    見てはならぬものを目撃したために抹殺されたとでもいうのか、
    UMAかUFOか……と、奇怪な説も乱れ飛んだが、
    著者は現場を確認すべく、2012年、
    万難を排してホラチャフリ山へ。
    GPSと写真測量法を用いて
    ディアトロフ隊のテントが設置された場所を精確に割り出し、
    そこに到達して気づいたことは――。

    という、実際に起きた悲惨な事件の話なので
    不謹慎な言い方になってしまうが、
    大変スリリングで面白い読み物だった。

    謎は謎のままにしておいてもいいのだが、
    読み解こうとするなら非合理的な考えを弄ぶより
    科学的に検証すべき、という著者の方針に、
    大いに共感する。
    山を愛するあまり命を捧げる格好になってしまった、
    聡明で朗らかな学生たちへの哀悼に満ちた、
    素晴らしいルポルタージュ。

  • 納得できる一冊。

    1959年に冷戦下のソ連で起きた不可解な遭難事故。
    50年経てもなお翻弄させられるこの事件ともいうべき事故の謎に挑んだノンフィクション作品。
    最初から最後までとにかく読み応えあり。
    遭難者各人についての記述や写真はもちろん、現地に実際足を運び体験し、綿密な調査と共に謎に挑んでいく過程は読んでいて飽きなかった。
    特にこの時代背景、光の目撃証言からの仮説はかなり興味深く読めた。
    そして到達した、著者のある一つの結論。これは想像とは違っても充分納得できるものだった。

    あの時あの場所にたしかにいた…その証とも言える笑顔に満ち溢れた写真が哀しみを誘う…。

  • 面白くて一気に読み終わった。

    カルマン渦列による超低周波が本能的な恐怖と混乱を呼び起こした、という説明はなかなかに説得力があって納得できた。

    現代音楽のオーケストラに超低周波を紛れ込ませ聴取に聞かせて感想を聞くと、聴取は悲しい気持ち、不安定な気持ち、頭痛、過去のトラウマのフラッシュバックを感じた。
    超低周波はイスラエルがデモ隊を解散させるのに使ってる。ナチスドイツはヒトラーの演説を聞く聴取に超低周波を浴びせることで、恐怖や悲しみの気持ちを増大させた。

    という記述が面白い。

    ヒトラーのエピソードは、「あいちトリエンナーレ」に出展してた、タニア・ブルゲラの作品を思い出す。
    「この室内は、地球規模の問題に関する数字を見せられても感情を揺さぶられない人々を、無理やり泣かせるために設計されました。
    (作品である部屋の中に充満しているミントの霧によって)涙が誘発されたことによって、私たちの自覚のない感情が明るみに出る場合もあるでしょう。この作品は、人間の知覚を通じて「強制的な共感」を呼び起こし、客観的なデータと現実の感情を結びつけるよう試みているのです。」
    ってテーマの作品。

    人間の感情、感覚、理性は、我々が思ってるより外的要因に左右されるんだな。


    とくに最終章の、事件当時の彼らの行動の推測章は、さまざまな遺体の不審な点を納得いく理由で説明してたのでなるほどと思う。


    ・事件に至るまでのディアドロフ一行
    ・ディアドロフ一行を捜索するチーム
    ・ディアドロフ一行の調査をする筆者

    の3つの視点が交互に挟まることによって、リズミカルで、引き込まれる構成になってるのが面白い。(小説、「バーティミアス」シリーズの構成と似てる)

    筆者は当時のソ連の様子や、舞台になっている土地の歴史的背景にも触れてるので、その町の様子や、町がまとう雰囲気についてありありと思い浮かべることができた。

    落書きだらけのペルヴォウラリスクの街。

    ロマノフ朝時代の新古典建築とソビエト時代の四角い機能的な建築の混ざり合うエカテリンブルク。

    ソ連時代から変わらない塗料で壁を塗られてる、41区の小学校。

    ディアドロフ一行が生きた時代と、我々が生きている時代が繋がり交錯している。だから歴史って面白い。


    ディアドロフたちが生きたのが、雪解け後、若者たちが無料で高等教育を受けられ、未来に希望を抱いていた時代、ってのも面白かった。

    途中で引き返して生き残ったディアドロフ隊はインタビューで、ソ連時代を「あの頃は良い時代だった。スターリンは良い政治家だった」と懐かしむ。(通訳は訳しながら全力で首を横に振ってた、ってのが面白い)

    ディアドロフの妹の話。「兄が望遠鏡を自作してくれたおかげで、私たち兄弟は、家の屋根の上に寝転がって、あのスプートニク号が打ち上げられるのを見た」

    ディアドロフの妹も、ディアドロフも前歯の間にすこし間がある隙歯。妹が変わり果てたディアドロフの遺体を見分けられたのもこの歯があったから。

    工科大学の学生が、レコード盤を違法に作成するのが得意だったこと、ソ連時代ビニールは高級品だったこと、当時を感じさせる面白いエピソードが沢山あった。ディアドロフ隊のことを、面白くて怖い未解決事件のキャラクターではなく、かつて生き、不可解な死でこの世から去った、生きた人間として認識できた。

    ディアドロフ隊の撮影した写真が本の随所に散りばめられてるのもその効果を強めた。
    まさかあんな最期を迎えるとは知らず、ディアドロフ一行はその最期の日まで、山岳行の写真を撮っている…

  • 旧ソ連・ウラル山脈で遭難した9名の学生たちは、
    何故テントから、ろくな装備も着けずに極寒の中へ出て、
    「未知の不可抗力の死」に至ったのか?
    1959年に起こった《ディアトロフ峠事件》真相は如何に?
    アメリカ人ドキュメンタリー映画作家が謎の究明に挑む。
    登場人物の一覧・トレッカーの時系列・捜査の時系列有り。
    学生たちの遺した日誌、写真、事件に関する資料、
    生存者や関係者へのインタビューを元に、
    また、実際に厳寒の現地にも訪れ、
    ・学生たちの遭難するまでの動向
    ・捜索隊の動向
    ・著者の探求の動向
    以上の三つの視点を織り交ぜて、事件の謎解きが進行します。
    当時の旧ソ連の状況、庶民や学生たちの生活の様子も窺え、
    それが事件の謎が複雑化するのにも影響を与えています。
    最終的には、著者が諸説を一つずつ否定し、ある結論に達する
    のですが、ドキュメンタリーと謎解き、それに再現ドラマと、
    読み進めさせる構成はなかなかなもの。翻訳も良いと思います。
    現代の気象研究と科学で一つの結論に辿り着きましたが、
    事件当時なら「未知の不可抗力の死」と考えられたのも、
    さもありなん。
    2019年、ロシア検察が事件を再調査していることを明らかに
    したとの報道がありました。果たしてどういう結果になるのか?

  •  もう半世紀以上も前のロシアでの山岳事件(事故)だ。
     1959年2月、ソ連のウラル山脈で大学生ら男女9名の登山パーティーが遭難。遺体はテントから離れた場所で、全員靴も履かず薄着という状態でバラバラに発見された。さらにテント内は荒らされた様子もなく、ソ連当局は「未知の不可抗力による死」との結論で捜査を終了した。

     近年、ロシア関係サイトで、新説発見とか、映像化等の話題で見かけることも増えたが、ゴルバチョフ時代のグラスノスチの80年代まで捜査資料も非公開で、その後徐々にロシア国内、ロシア関係者に知れわたり、近年のインターネットの発展で、一気に人口に膾炙したという良い例だろう。
     実際、この著者もインターネットで事件のことを知り、

    「盛んにインターネットめぐりをしたものだ。そうこするうちに、信頼できるものもあやしげなものも、簡単に入手できるオンラインの資料はあっというまに漁り尽くしてしまった。」

     と語る。こうして当事国でない者が事件を掘り返し、その謎に迫る。実に現代的なノンフィクションだと感じる。著者が「信頼できるものもあやしげなものも」あるとするオンライン情報。ゆえに、著者は実際に現地を訪れるという行動に出たところが、本書の白眉だ。
     解説で写真家の佐藤氏が「いたずらに言及者だけが増えつづけ、伝言ゲームで出来事が複雑化、肥大化していくことはネット以降の社会のあらゆる場面で見られること」と言うように、便利な世の中になったとはいえ、実のある果実は、自分の足で動き、その手でつかみ取らないと価値はないという好例が本書。

     ドキュメンタリーの映像作家だという著者。もちろん行動を起こしたのは、そのドキュメンタリーをものしてやろうという野心もあってのことだろう。興味半分の趣味の域を越えているのは当然のことだ。
     本書の内容も、おそらく著者の頭の中にあったろう、映像作品としての見せ方を踏襲したものになっていると思われる。章立てが、①遭難に遭うパーティー=イーゴリ・ディアトロフを中心とした山岳グループの行程(1959年1月末~2月1日)、②遭難後の捜査の行方(1959年2月1日以降) ③著者によるディトロフ一行の旅路のトレース(2012年)と、この3種類の内容が交互に記載されている。映画で場面が切り替わっていくのが見えるようで、読者を飽きさせない良い工夫だ。

     映像的な内容と、ネット情報や資料だけに頼らず、実際に現地に赴いた③の成果もあり、著者なりの「真相」に迫っていく筆致が実にお見事。
     そして最終章は、たどり着いた真相の仮説に基づいた、①の再現フィルム仕立てだ。この最終章、映像作家であれば、CGも駆使し、しっかり役者を使って再現したくなるだろうなあと、ワクワクしながら読める。実にドラマチックで映像的な文章となっている。

     こうして、構成、筆致、実地調査の結果を踏まえた迫真の読み応えあるノンフィクションが出来上がったが、なにより1950年代のソ連時代の若者たちのありのままの生態が描かれている点が、実は素晴らしいところでもある。
     恐らく若い著者は、ソ連時代や冷戦構造といった、米ソ(米ロ)間の確執の影響の少ない世代なのかと拝察。故に、謎の大国ソ連(ロシア)というイメージ先行でストーリーを組み立ておらず、また単なる興味本位での謎解きに終始せず、実際に生ある9人の若者たちが、如何に暮らし、如何に青春を謳歌し、そして「死の山」に自分たちの足跡を刻むことになったのかを真摯に描いていて好感が持てる。好著也。

  • ディアトロフ峠事件、冷戦時下ロシアの工科大学大学生たち9人が遭難、不可解な死をめぐる真相を現代から考察するノンフィクション。取材から推定される被害者の行軍と捜査、現在の著者が実際にディアトロフ峠へ向かう状況がパラレルに展開する構成で、ゆっくりと確信へと近づいていく感覚が面白い。しかし確信も本当に終盤までぼんやりとしたもので、改めて考察に入ってからの急展開、最終的に最悪な場所が彼らを死に至らしめたこと、読後感は独特の重さがあった。

    話から伝わる当時のソビエトの状況、彼らの様子が生き生きと描かれているところも面白かった。

    不可解かと思っていたことも最終的には科学的な考察で腑に落ちる形にまとめ上げるところ良い。フィクションのような世界観で、着地点があることで逆に興奮が冷めていくような感じもあり、少し新鮮な感覚ある。

  • 図書館の本。

    インパクトあるタイトル。
    ミステリー小説ではなくノンフィクション。
    ウラル山脈で起きた、9名の登山チームの不可解な死。
    極寒の地でアウターなど着ておらず、靴も履いていない。
    外傷あり、うち一人の女性には舌がない。
    放射能も検出され。。。

    これは読むしかないな、と手に取り読了。

全180件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

フロリダ生まれ。映画・テレビの監督・製作で知られる。新しいところでは、MTVの画期的なドキュメンタリー・シリーズ『The Buried Life』を製作。カリフォルニア州マリブ在住。

「2018年 『死に山』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ドニー・アイカーの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
中村 文則
三浦 しをん
ヴィクトール・E...
今村 昌弘
宮部みゆき
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×