ある世捨て人の物語: 誰にも知られず森で27年間暮らした男

制作 : 宇丹貴代実 
  • 河出書房新社
3.93
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本棚登録 : 138
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309207452

作品紹介・あらすじ

孤独は究極の幸せだ! 社会のしがらみを捨てて森で一人で生きていたい……。孤独や自由、幸福とはなにかを考える全米ベストセラー!

感想・レビュー・書評

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  • 20歳で唐突に失踪し、その後の27年間を森で人知れず暮らしていた人物の伝記です。
    道具や食料を他人の別荘から盗み続け、捕まらずに伝説的な存在となっていた“隠者”。
    純粋な自給自足による生活ではないにしろ、27年間を社会から隔絶し会話も無い環境で生活した彼は、人間の肉体的・精神的な限界に挑戦したと言えます。
    彼にとっての最高の人生は間違いなくこの期間で、強制的な社会復帰が正しいものか疑問です。
    まるで見世物にされた後に同化させられる先住民を彷彿させる一冊。

  • 20歳から27年間、誰にも会わずアメリカ・メイン州の森に潜むように暮らしていた一人の男性(クリストファー・ナイト)の実話。

    当然だかこのような男性が人と接することを好むわけもなく、唯一近づけたと言えるのがこの本を書いたジャーナリストの著者である。
    それは友情と呼ぶには、濃さが足りないかもしれない、親交とは言えるかもしれない。

    本人は嫌悪するであろうが、この「隠者」の存在だけを語るのではなく、同じように隠者と呼ばれた人々の話や孤独を愛した人のいろんなエピソードが盛り込まれているのも興味深い。

    私には野生の動物が、ある日突然その生活を奪われ、動物園の檻に入れられてしまったように思え、後半の近づくになるにつれて読んでいて苦しくなってきた。

    誰にも理解されない生きづらさを抱えた人が生きていくにはこの世界はあまりにお節介な世界のようだ。

  • 冬には氷点下の日も珍しくないアメリカ メイン州の森でで、主人公ナイトは27年間もの長い間、一人きりでどのように暮らしていたのか…。人間存在意義に問いかけるような一冊。

  • アメリカ合衆国メイン州の森で27年間、誰とも会わず一人で暮らした男のお話し。

    彼が暮らしていた森の周辺は別荘地で、食料品や生活用品を調達するため不法侵入を繰り返していた。付近の住民からは森の隠者と呼ばれ半ば都市伝説化していたのだが、ついに地元の猟区管理官に捕らえられてしまう。

    冬は氷点下30℃近くにもなる野外で、27年間も一人で生活するなんて常軌を逸しているように見えるが、社会生活や人間関係のわずらわしさから逃れて、十分幸せな暮らしだったのだと思う。作品中の印象的な一節を記しておきたい。

    「あらゆる願望の成就ではなく、願望の排除によって人は自由となる」
    「人は悟れば悟るほど、悟るべき事が何もないのを悟る」

  • 森の中に逃げ込んで、捕まるまで27年孤独に暮らした男、クリストファー・ナイトの話。捕まったのは食料や生活必需品を近所の留守の別荘で泥棒して手に入れていたからで、ゲーム機や本、ラジオなんかも盗んできて楽しんでいたという。これって、森の代わりに自分の部屋、泥棒の代わりに親からの援助?でやっていたら、ただの引きこもりだ。本書には数行程度、日本の引きこもりについても触れられているけれど、アメリカにはいないのだろうか?

    隠者に憧れる気持ちはわかる。程度の差こそあれ、一人になりたいと思ったことのないひとはいないだろう。だがナイトの物語から、なにかの教訓や箴言を引き出すのは難しい。ナイトは泥棒についてずっと罪の意識を感じていたと話していて、それでも社会に戻れなかった(戻らなかった)彼の選択は痛ましいとは思う。でも27年泥棒され続けた別荘の持ち主たちはそうは思わないだろう。

    ぼくも付き合いの悪いほうなので、ナイトや引きこもりの気持ちはわかる。ちょっとうらやましいと思うことすらある。でもその一方で、ずりぃ、と思ったりもするのである。

  • H.D.ソローを酷評している、という事に興味を持ち、読んでみた。

    ドストエフスキー「地下生活者の手記」を誰もが連想する行為であり、本書の主人公、クリストファー・ナイト自身が共感を述べても居るのだが、私はどちらかと云えばチェーホフの「賭け」を思い浮かべながら読んでいた。
    しかし、最後にはそれが「六号室」や「黒衣の僧」にあまりにも似ている事に気付いて震撼した。
    私は彼にチェーホフを読ませたい。

    公房「箱男」も再読したくなったし、何だか彼はグレン・グールドを思わせる様な所もある。

    ともあれこれは文学行為とでも云うのだろうか。彼を文学とでも呼べば良いのであろうか。

    狩猟採集とは人間という種の都合だけで勝手に自然の持ち物を盗んでいるのであり、そういう意味では彼の「窃盗」と呼ばれる行為は狩猟採集者として何の不思議も無い。
    また彼が通常の人間と、有る意味違う種、違うチャンネルに属するものであるのならば彼に果たして我々と同じ理屈を通用させても良いものだろうか、というモラルの問題を強く感じる。
    それが我々に問うものは強く大きい。我々の実は偏っているだけの正常さや常識を異化し無化する恐ろしさ。言わば世界にただ一人、完全に他者の目を持った人間。

    最後は悲しく、苦しく、辛かった。最初から最後まで、自分の問題として読んだ。

    彼の方法はプルーストの逆、私を時から失わせる、とでも云うのか、トスールプとでも云うのか。しかしたどり着く場所はもしかしたら同じ場所である様にも思える。完全なものになりたいのだ。

  • クリストファー・ナイトという人間の人生。

    年は20歳だった。
    家族も、仕事も、新車も後にしてナイトは世捨て人になった。
    ひと張りのテントと、バックパックだけを持って。

    それから27年間、生活に必要なものは不法侵入と窃盗によって入手しながら、ナイトは生き抜いた。

    この生き方に対しての肯定否定に意味はない。

    なぜ孤独の道を彼は選んだのだろう?
    本書が書かれた時点では、その答えに本人も到達していないようだ。

    過去には多くの人が隠者となる道を選んだ。
    それは宗教上の儀式であったり、実験であったり、厭世的なものもあった。
    数ヶ月のうちに精神を病み、自殺した者。
    偶然自分に隠者としての適正がある事に気付き、自由を手にした者。

    孤独からくる恐怖、反面静謐で深い黙想から得られる喜び。
    ナイトはその両方を感じていたようだ。


    おそらくナイトは隠者というカテゴリに分類される人間ではなく、
    カテゴリそのもの、つまり天性の隠者だったのではないだろうか。
    孤独という道を選んだ事に確かな理由など存在しなかったのかもしれない。

    結果的に現在、彼は雑多な情報が蔓延し、喧騒の多い現代社会に再び留置されることになった。

    色々な考えがあると思うけれど、僕は、彼の生活が彼にとって平安で、穏やかなものであるように願っている。

  • これが真実なら羨ましすぎる。共感する人は多いと思う。(これを羨ましいと思わない人もまた、別の意味で羨ましい。)しかし、世を捨てるのはずばぬけた能力が必要で、みんなそこで泣く泣く諦めるしかない。
    世の中世捨て人ばっかりだったら、私は今ここにいないだろうけど。

  • 大昔に読んだブルーハイウェイとかもそうだけど、たまに出てくるアメリカ人のちょっと変わった人の生き様みたいなの、好きなんだな。
    完全に孤独な暮らしを自分が出来るかは分からないけど、憧れはある。そもそも本当か嘘かも分からない曖昧さも含めていい本だった。

  • 隠者、アコガレル。覚え書きに記された隠者文学にも触れていこう。

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著者プロフィール

50以上の国から報道記事を書き、『ナショナルジオグラフィック』『ローリング・ストーン』『エスクァイア』『ヴァニティ・フェア』『アトランティック』『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』各誌に寄稿している。

「2018年 『ある世捨て人の物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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