- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309207452
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クリストファー・ナイトという人間の人生。
年は20歳だった。
家族も、仕事も、新車も後にしてナイトは世捨て人になった。
ひと張りのテントと、バックパックだけを持って。
それから27年間、生活に必要なものは不法侵入と窃盗によって入手しながら、ナイトは生き抜いた。
この生き方に対しての肯定否定に意味はない。
なぜ孤独の道を彼は選んだのだろう?
本書が書かれた時点では、その答えに本人も到達していないようだ。
過去には多くの人が隠者となる道を選んだ。
それは宗教上の儀式であったり、実験であったり、厭世的なものもあった。
数ヶ月のうちに精神を病み、自殺した者。
偶然自分に隠者としての適正がある事に気付き、自由を手にした者。
孤独からくる恐怖、反面静謐で深い黙想から得られる喜び。
ナイトはその両方を感じていたようだ。
おそらくナイトは隠者というカテゴリに分類される人間ではなく、
カテゴリそのもの、つまり天性の隠者だったのではないだろうか。
孤独という道を選んだ事に確かな理由など存在しなかったのかもしれない。
結果的に現在、彼は雑多な情報が蔓延し、喧騒の多い現代社会に再び留置されることになった。
色々な考えがあると思うけれど、僕は、彼の生活が彼にとって平安で、穏やかなものであるように願っている。 -
隠者、アコガレル。覚え書きに記された隠者文学にも触れていこう。
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誰とも接触せずに、27年森に潜んでいた話。実話。
食べ物やその他生活必需品は盗んでいたので、やはり人間は単独で存在するのは難しいのだと思う。
でも、複雑な生活、人間関係、それを全て捨て去ってどこかへ行きたいと思ったことがない人なんていないだろうと思う。
ただひたすら、穏やかに本を読み続けるなんて、理想的。一週間で飽きそうと思う自分もいるけど。
彼のやったこと、考えが、自分の気持ちと重なったりして引き込まれた。
別荘被害者はなんとも気の毒。 -
【さよなら,世界】ある日ふと思い立ち,そこから27年の長きにわたって森の中で孤独に暮らしたクリストファー・ナイト。ある事件をきっかけとして逮捕された彼が語る,孤独を求めた理由と生活の様子とは......。著者は,自身も孤独を好む傾向にあると語るジャーナリストのマイケル・フィンケル。訳者は,英米文学の翻訳を多く手がける宇丹貴代実。原題は,『The Stranger in the Woods: The Extraordinary Story of the Last True Hermit』。
想像を超えた物語でありながら,同時に誰しもに考えを促す物語であったように思います。人間社会の「煩わしさ」について思い至ったことがある方であれば,ナイト氏の考え方や姿勢に共感を覚える面もあるのではないでしょうか。
〜さて,いよいよ,わたしが問いかける番が来たようだ。原野で大いなる洞察は得られましたか,とナイトに尋ねてみた。…(中略)…「じゅうぶん睡眠をとること」と彼は答えた。〜
この話自体が読者の思いも寄らぬ方向に進んでいく点も☆5つ