すべての、白いものたちの

  • 河出書房新社
4.09
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本棚登録 : 758
感想 : 63
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309207605

感想・レビュー・書評

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  • 紙好きにはたまらない装丁の本でした。
    表紙のモノクロ写真。産着の白さが放つ哀しみ。(読むと分かるのだが…)
    見返しも前と後ろでは紙が違う。本扉の前に挟まれた小さな紙、本文も何種類もの紙に綴られている。純白に何らかの別の色がほんの少し混じった感じの白。オフホワイト。その色合いも手触りも違う、さまざまな表情を持った白い紙たち。
    紙を撫でながら読んだ。

    「白いものについて書こうと決めた」から始まるこの話。おくるみ、うぶぎ、しお、ゆき、こおり…白いものを取り上げながら、その白に別の色がほんの少し混じるようにハン・ガンの想いが混じり、哀しみが漂う。

    あとがきを読んで納得した。
    「私の母語で白い色を表す言葉に『ハヤン(まっしろな)』と『ヒン(しろい)』がある。清潔な白「ハヤン」とは違い「ヒン」は、生と死の哀しみをこもごもたたえた色。私が書きたかったのは「ヒン」についての本だった。」とあった。

    すべての白いものたちの中に、祈りを求めているように感じた。

  • 『すべての、白いものたちの』読了。
    雪が降り続く連休に読んだ。詩的な内面描写に引き込まれた。
    生まれて2時間で死んだ姉と、戦争で廃墟となり再生した都市を重ねていく。
    無かったことには出来ない記憶をいつの間にか継承し身体に魂が宿っていくのかもしれない。死んだ人を思う色の話でした。
    「しなないで しなないでおねがい。」が何度もあった。母親が死んだ姉に発した言葉に魂が宿り、私へと受け継がれていった。
    生と死の寂しさが白いものに宿る。そこで彼らは何をみてきたんだろうな…なんとなく、そっと、そばに寄り添ってくれているような気がする。どうか、生きてと。

    2021.1.12(1回目)

  • 大好きな作家さんが大好きだというので興味をひかれました。
    読んで良かったです。今が冬なのも、幸運でした。

    静かで柔らかな文章が描き出す、凛と冷たい空気。
    「霜」で佇む固いものたちも、「天の川」の星雲も、「白木蓮」の炎も忘れがたい。
    張りつめたものを壊してしまわないようにじっと息をひそめて読み進んだのに、最後には溢れてしまって、その時想いは散り散りのようでも羽ばたくようでもありました。

  • 色や手触りの違う数種の白い紙が折り合わされて作られているこの小さな白い本は、様々な白にまつわる詩のような祈りのような小さな文章の連なりで構成されている。
    わかりやすいストーリーはないが、「白いものについて書こうと決めた。」から書き始められる思索的な文章を読んでいるうちにはっきりと浮かび上がってくるものがある。
    いつのことだったか、深夜の住宅街でしんしんと雪が降り続く中を道路脇に高く積まれた雪山に囲まれて歩いているうち、何か違う世界に来たような気がしたときのことをふと思い出したりもした。
    静かなところでゆっくりと読みたい本でした。

    #ハンガン #すべての白いものたちの #河出書房新社 #斎藤真理子
    #読書 #読書記録2021 #読書記録 #本

  • 韓国を遠く離れ、ワルシャワで〈白いものたち〉に思いを馳せる「わたし」は、いつしか母が産み落としてから2時間後に亡くなった〈姉〉が生き得たかもしれない時間を、自分自身のそれと重ね合わせてみる。シルトックのように綺麗な顔をして、白いおくるみのなかで息を引き取った〈姉〉。さまざまな白の白さに関する断章からなる、散文詩のような祈りの物語。


    戦争の傷をそのままに遺す冬のワルシャワの空気を吸いながら、故郷と歴史、出会うことのなかった〈姉〉と母を哀悼するという、何層にも折り重なった連想を〈白さ〉というキーワードでまとめている。「わたし」と「彼女」の物語は同じようで少し違う。あなたが生きていたらきっとわたしはいなかった、と思いながら顔も知らない〈姉〉を思うとは、粉雪を頰に受けるような感触のある経験なのだろうか。 断章形式で語られるエッセイとも私小説ともつかない物語は、雪のように降り積もり、溶けていく。
    実際の作者がどのような方かは知らないし実像と関係もないが、「すごく痩せている人の書いた話だな」と思った。読者の私が想定する〈モデル作者〉として、細い手首をした姿勢のよい女性の姿が浮かび上がってくる。

  • しんしんと降り積もる雪のように、静かで、穢れのない、無垢な世界が広がっていた。ページをめくる度、その真っ白な世界に、さく、さく、っと音を響かせながら足を踏み出すような感覚がずっと続いていた。切ないでも苦しいでもない無の感情が湧き上がる。

  • なにものだろう。

    本来、日本語には「黒」「赤」「白」「青」の四色しか「色」を示す言葉はない。
    当然、自然界にはそれですべてを表現できるものではない。
    だから様々な物や現象、状態などでその違いを表す。
    「黄」「緑」「紫」「灰」「紅」「橙」「藍」……。

    「白」は難しい。
    他の色と少しでも混ざると、少し薄まるが「そちらの色」になってしまう。
    でも「白」に言わせれば、「彼らのとげとげしさを少し和らげてあげてる」っていうかも。

    全ての絵の具を混ぜると暗い灰色になる。
    それを救うのは白で、潰すのは黒。

    文章と翻訳の妙もさることながら、
    紙質の変化、挿入されたモノクロ写真、段落と余白
    これら合わせて「すべての、白いものたちの」という作品ができている。

    残念ながら、
    読んですぐ感動できるほど、もう若くない。
    読んですぐ理解できるほど、まだ人生を達観していない。

    また雪の日にでも読むことにしよう。

  • 2回目だけど、ページの色に印刷的な工夫があって面白い本になっている。

  • "寒さが兆しはじめたある朝、唇から漏れ出る息が初めて白く凝ったら、それは私たちが生きているという証。私たちの体が温かいという証。冷気が肺腑の闇の中に吸い込まれ、体温でぬくめられ、白い息となって吐き出される。私たちの生命が確かな形をとって、ほの白く虚空に広がっていくという奇跡。"(p.91)

  • 「흰」とハングルで示された原題、祈りのような散文詩、紙選びも装丁も含め総てで表現されたアートインスタレーションのような作品。
    美しい白いものを通して祈りの言葉を紡ぐ、静謐で圧倒的な「喪」の本。黒ではなく白に喪を込めたことで、喪の幅を広げてくれる。

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著者プロフィール

1970年韓国・光州生まれ。2016年『菜食主義者』でアジア人初の国際ブッカー賞を受賞。その他の著書に『少年が来る』、『ギリシャ語の時間』『すべての、白いものたちの』『回復する人間』など。

「2022年 『あなたのことが知りたくて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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