石灰工場

  • 河出書房新社 (2024年9月24日発売)
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本 ・本 (256ページ) / ISBN・EAN: 9784309209128

感想・レビュー・書評

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  • モノクロのタイトルが暗示するとおりの陰鬱な小説(ベルンハルトに陽気さを求める人もいないと思うが)。論文を書くために石灰工場に住む男がいかにして妻を殺すに至ったのか、という話を又聞きの形で記述していくが、展開されるのはむしろ、いつまで経っても論文を書き始められない男の果てしない逡巡。論文を書き上げるためにはどんな努力も犠牲も厭わないのに、肝心の執筆を前にすると恐れをなしてしまう男の姿は、成功を夢見ながら自分の才能を信じきれない市井の人々を見ているようで、どこまでも切実で実感がこもっていると思った。短編「縁なし帽」は読みやすかったが、徹底的に狂気的な長編がやっぱりこの人の本領なんだと思う。



  • 読み出したら後戻りできない焦りと読むごとに漣が常にあり、また来たと額を押さえたくなる緩やかな轍が繰り返す。"間接話法"が疑心暗鬼と相まって沸々としつつ読み耽った。止められなくなるのは答えを見つけたい一心で読了で得る。

  • 石灰工場という閉鎖空間と隙間がほぼないくらいにびっちりと埋め尽くされた文字。読んでいて頭が痛くなってくる作品だった。夫はなぜ石灰工場で妻を殺すに至ったのか?

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著者プロフィール

Thomas Bernhard, 1931-1989
20世紀オーストリアを代表する作家のひとり。
少年時代に、無名の作家であった祖父から決定的感化を受ける。音楽と演劇学を修めつつ創作をはじめ、1963年に発表した『凍』によってオーストリア国家賞を受賞。一躍文名を高める一方で、オーストリアへの挑発的言辞ゆえに衆目を集めた。
以後、『石灰工場』『古典絵画の巨匠たち』『消去』『座長ブルスコン』などの小説・劇作を数多く発表。1988年に初演された劇作『英雄広場(ヘルデンプラッツ)』でオーストリアのナチス性を弾劾するなど、その攻撃的姿勢は晩年までゆるがなかった。
1975年に発表された『原因』のあと、『地下』、『息』、本書『寒さ』、『ある子供』が続けて刊行され、自伝的五部作をなした。1989年、58歳で病死。

「2024年 『寒さ 一つの隔離』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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