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Amazon.co.jp ・本 (272ページ) / ISBN・EAN: 9784309209203
作品紹介・あらすじ
ビデオゲームのマップに入り込み、アフガニスタンの故郷で殺されようとしている叔父を救出に向かう少年(「きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイする」)、配達され続ける息子の肉片を縫い合わせていく母親(「差出人に返送」)。パレスチナの囚人解放を求めてYouTubeでハンガー・ストライキを拡散する大学生たち(「ハラヘリー・リッキー・ダディ」)。いつまでも死ねない老女を見守る天使と地球(「ヤギの寓話」)。サルに変身し反乱軍を率いることになった青年の数奇な運命(「サルになったダリーの話」)??。
9・11以後の数多の瓦礫をさまよう亡霊を、神話的な笑いで紡ぐ戦争文学の新地平。最注目作家による傑作短篇集。
みんなの感想まとめ
戦争や文化の背景を深く掘り下げた短編集で、アフガニスタンの現実とビデオゲームの世界が交錯する独自の視点が魅力です。特に表題作では、戦争に巻き込まれた少年が「メタルギアソリッド」の舞台で叔父を救うという...
感想・レビュー・書評
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カオスな政情が続くアフガニスタンにルーツを持ち、アメリカで育った著者による、12編の短編。どの話にもイスラム文化や戦争が通底している。
表題作は、戦争で父親や叔父を傷つけられた少年が主人公。「メタルギアソリッド」の新作を純粋に楽しみにしている一方で、その舞台の当事者でもある、というアイデンティティのねじれが特に強く印象に残った。
ゲームとしてプレイすれば、敵を排除しミッションをクリアすることに達成感がある。それは自分が普段感じているゲームの楽しさと同じはずなのに、この作品の中では、そこに別の感情が同時に存在している。
考えてみれば、実在する国が舞台である以上、その出来事を実際に経験した人がいるのは当然のことなのに、「当事者がそのゲームをプレイする」という状況はこれまでほとんど想像したことがなかった。
だんだんとゲームの世界に入り込んでいく少年。
現実の中に違和感なく“ありえないこと”が入り込むマジックリアリズムの手法によって、そのねじれはより際立つ。強い言葉で何かを主張するわけではないが、その構図がじわじわと痛ましく感じられた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
まずジャミル・ジャン・コチャイは、アフガニスタン系アメリカ人の作家であり、原書のタイトルは、"The Haunting of Hajji Hotak and other Stories"(巡礼者(ハッジ)ホタクの呪い)であり、メタルギアの文字はないが、日本で売るなら、このタイトルにするのは納得で、本文の言葉を借りるなら"チクショウ、だってコジマだぜ、メタルギアだぜ"である。
といった感じの文体で書かれており(上手くできているかは甚だ怪しいが)、とっつきにくい感じがするものの、読みにくくはない。
本短編集は、十二編の短編が含まれており、そのほとんどの舞台がコチャイ一族ゆかりの地であるアフガニスタンのロガール州とアメリカ カリフォルニア州サクラメントである。主人公もアフガニスタン系アメリカ人が多く、どうあってもアメリカ人の目線から見たアフガニスタンなんだと思う。
表題作の『きみはメタルギアソリッドV:ファントムペインをプレイする』は、The New YorkerのWeb版に原文が掲載されている。過去にタイトルに惹かれて読もうとしたが、あまりの一文の長さに文意が取れているのか心配になり挫折した。あぁ英語力よ。下に原文の一文を引用しておくので雰囲気を見てほしい。この原文が二人称の文体になって生き生きと書かれており、翻訳者はほんとにすごいなぁと感心するばかり。
別の短編『もういい!』になると11ページ!にもわたる一文が登場する。これはちょっと読むのが辛かった。どの短編も実験的で形式が様々、文体もバラバラと読み始めはとっつきにくい印象を持つかも知れない。個人的には一番長い『サルになったダリーの話』が癖が少なく、かつ面白く読めたと思う。次点は『ハラヘリー・リッキー・ダディ』かな。この辺を最初に読むのにオススメである。
この短編集では、登場人物が様々な動物に変身する。これは外国人がどのようにみられているかの比喩なんだろう。マジックリアリズムというジャンルの小説らしく、やはり慣れてないとちょっとびっくりする感じ。
本書を読んでみて、アフガニスタンのことは知らないし、アメリカに住むアフガニスタン人の境遇はもっと分からないし、そんな彼らがプレイするメタルギアへの思いなんて想像もつかない。というわけで、分からないことが分かったのですが、そんな分からないことに対して知りたいという興味は持てたので、読んでよかったなと。一度、アフガニスタンやイスラム圏についての本を読んでから、もう一度読みたいなと感じたのです。
“First, you have to gather the cash to preorder the game at the local GameStop, where your cousin works, and, even though he hooks it up with the employee discount, the game is still a bit out of your price range because you’ve been using your Taco Bell paychecks to help your pops, who’s been out of work since you were ten, and who makes you feel unbearably guilty about spending money on useless hobbies while kids in Kabul are destroying their bodies to build compounds for white businessmen and warlords—but, shit, it’s Kojima, it’s Metal Gear, so, after scrimping and saving (like literal dimes you’re picking up off the street), you’ve got the cash, which you give to your cousin, who purchases the game on your behalf, and then, on the day it’s released, you just have to find a way to get to the store.”
(https://www.newyorker.com/magazine/2020/01/06/playing-metal-gear-solid-v-the-phantom-painより) -
「メタルギアソリッド×マジックリアリズム」という宣伝文句で手に取った本だったけど、思ったてたようなポップな内容ではなく、むしろ繊細な感性を持った書き手によるテクノロジーとカルチャーと戦争についての文学、という趣きだった。
つまり、世界を取り巻く”痛み”に対しての鋭敏な感覚がどの短編にも通底してあるのだ。物語だけでなく実験的な文体によってその痛みは視覚的に伝えられ、無力感と絶望感はよりリアルなものとして読者を襲うだろう。
同じ名前の登場人物が繰り返し登場し、その都度違うかたちで異なる痛みを経験していくそれは、痛みを反復することで、読者へと伝え、拡散させているかのよう。
だから、これはきっと、作者が抱く「救えなかった」という幻肢痛の痛みを言葉として刻み、刻み込むことで忘れがたいものとしようとした本、なのだと思う。
話ごとにそれぞれ技巧を凝らしているためやや読みにくさを覚える短編もあるが、総じてレベルが高く、一冊としてのまとまりも良い。各要素へ無理に意味を持たせ、下手につなぎ合わせるようなことはせず、しかしどこかで関係性を感じさせる「名前」や「地名」や「職業」の置き方は、つながりを諦めない姿勢のように感じられた。
個人的には、2015年当時『メタルギアソリッドV:ファントム・ペイン』を少年と同じような心持でプレイしていたこともあり、少年の興奮や、ゲームの中へ耽溺していく感覚、そして敵兵との「殺す/殺される」関係性に対する恐れは他人事とは思えなかった。あの怒号も、無力感も、暴力への嫌気も、確かにリアルなものとして存在していたし、それを実際の――アフガニスタンという場所へつなげることも、何らおかしなことではないと言われている気がして。
そして「きみ」という二人称の文体は、「ゲームをプレイする」ことで他者になりきる行為と非常に相性がいいのだなと『きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイする』を読んで感じた次第。
その他の収録作だと、文体のいびつさが夫婦の不安と焦燥感をダイレクトに表現している『差出人に返送』。ゴドーを待ちながらのオマージュである『ガルブディンを待ちながら』。リッキーの愛がSNSを通して世界へ伝播していく様子を第三者視点からつづった『ハラヘリー・リッキー・ダディ』が記憶に残った。
でもどの短編がいちばん好きというよりも、この本の場合一冊の本としてトータルで見てどう感じるか、というふうに読んだ方が作者の伝えたいこと(私は”痛み”だと思う)がより伝わってくるんじゃないかな。 -
それなのに、あなたがたはどこへ行くのか?
──クルアーン 81章26節
YouTubeチャンネル『けんご小説紹介』でスケザネさんが紹介していた本作。
そのタイトルのキャッチーさに興味を擽られ購入。
いざ、読んでみると…世界観を理解するのがなかなか難しい短編集でした。
表題作になっている『きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイする』と『サルになったダリーの話』は個人的に好き。
だけど、全作イスラム文化圏をバックグラウンドにした短編集であり、それらの文化や宗教観、そしてイスラム圏の寓話なども用いているということで、それらをある程度知っている方が読みやすそう。
アフガニスタン側から見た、戦争文学とも呼べるような作品の数々。
最後の翻訳者による解説を読むと、結構納得することが書いてありますね。理解というか納得というか…ページを読み進めていくのに些か時間がかかりました。
イスラム・マジックリアリズム。いやー、ちょっと特殊だったな。
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〈メタルギアソリッドV〉と一族の戦禍の歴史が解け合う魔術的冒険ほか、痛みと笑いに貫かれた新世代イスラム・マジックリアリズム短篇集。全米図書賞最終候補、O・ヘンリー賞受賞。
ビデオゲームのマップに入り込み、アフガニスタンの故郷で殺されようとしている叔父を救出に向かう少年(「きみはメタルギアソリッドⅤ:ファントムペインをプレイする」)、配達され続ける息子の肉片を縫い合わせていく母親(「差出人に返送」)。パレスチナの囚人解放を求めてYouTubeでハンガー・ストライキを拡散する大学生たち(「ハラヘリー・リッキー・ダディ」)。いつまでも死ねない老女を見守る天使と地球(「ヤギの寓話」)。サルに変身し反乱軍を率いることになった青年の数奇な運命(「サルになったダリーの話」)⋯⋯。
9・11以後の数多の瓦礫をさまよう亡霊を、神話的な笑いで紡ぐ戦争文学の新地平。最注目作家による傑作短篇集。 -
作品に惹きつける力が強く熱中して読んだが、鬼の読解力を必要とするため、読んでる途中で睡眠を10分×3程度挟まないと脳がパンクするかと思った。
東野圭吾の本みたいに分かりやすいファンタジーをイメージして手にしたが、とんでもなく高度な社会派文学。「差出人に返送」が悲しく美しくやるせなく特に好きだった。
作者のコチャイ氏の才能も凄まじいが、これを翻訳して下さった矢倉喬士氏にも心から感謝する。訳者あとがきによると、パシュトー語やペルシャ語が使われており原作ではそれらがアルファベット表記のみで、英語しか理解できない者には意味がわからないようあえて設計されていたらしい。それを邦訳ではすべてわかるように訳したと。矢倉士はそれを罪としているが、私は感謝しかない。
もっと世界のことを、戦争のことを、異文化を勉強しなくてはと心が引き締まる。 -
タイトルから、ゲーム絡みかと興味を失くすのはもったいない。なぜなら、ふたを開けてみれば戦争で荒らされたアフガニスタンの実情を軸にした短編集だからだ。マジックリアリズムの内容もさることながら、文章の形式もあまりなじみがないもので、決して読みやすいとは言えない。特に句点がない『もういい!』は本当に読むのがきつかったが、そのぶん痛みも強く伝わってきた。また表題作と最終話の視点もよい。エンタメと思って手を出すと期待をはずすかもしれないが、祖国にとどまろうと移住しようと抱え続ける彼らの傷心が胸に響く一冊だった。
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1992年生まれのアフガニスタン系アメリカ人、ジャミル・ジャン・コチャイによる連作短編集。
ゲームが好きならこのタイトルと表題作は惹かれるものがある。かくいう自分もここ数年はゲームはめっきりプレイしなくなったが、かつては結構なゲーマーであった。
当然『メタルギアソリッド』シリーズも熱中した口で『ファントムペイン』発売時には寝る間も惜しんでミッションをこなしていた。
この表題作は、アメリカに住むアフガニスタン系アメリカ人の少年が、無職の父を助けるために貯めていたバイト代を、その日発売日だった『メタルギアソリッドV』に充ててしまう。早速帰ってプレイすると、広大でリアルな世界が彼の眼の前に開かれ、熱中してプレイしていく。だが次第にミッションが亡くなった少年の叔父を助けるものへと変わっていき、というもの。
マジックリアリズムな表現の面白さと、アフガニスタン系の作者だからこそ感じるゲームで描かれるイスラム系の扱われ方、描かれ方、その受け止め方が新鮮だった。
『メタルギア・ソリッドⅤ:ファントムペイン』はまた違うのだが、エドワード・W・サイードの『イスラム報道』は欧米メディアによるステレオタイプなイスラム系のイメージを批判していたが、映画やゲームの世界でもその影響は結構強いのかもとか思ったりした。
他に気に入ったのは『ハラヘリー・リッキー・ダディ』という作品。
ボンクラな大学生リッキー・ダディが同じ大学のパレスチナ人女子ナビーラに恋をする。彼女のことを知るためにパレスチナ問題を調べまくっていく。
ある日ナビーラにはパレスチナで抵抗運動をしている恋人ユスフがいることを知る。リッキー・ダディはユスフのこともツテを使って調べていく。するとユスフはイスラエルの刑務所に罪状もなく収監されていることがわかる。ユスフはイスラエルに罪状を要求するためにハンガーストライキを実行するのだが、リッキーもハンガーストライキを行う。次第にハンガーストライキが大学のイスラムコミュニティから、アメリカ全土、世界と広がっていく、という話。
大学寮でバカ騒ぎをしてるだけだったリッキー・ダディが恋をしたことで想像もできないところへ連れて行かれる作品で、その飛躍も含めて素晴らしかった。
どの作品もそこまで長さはないのだが、短くまとまった中にそれぞれ光るものがあり、そして痛みがある短編集だった。 -
争いが絶えない地に住む、或いはそこで生まれた人間達の日常を、たまにファンタジー込みで描写した短編集。
表題だけ見て俗っぽい作品なんだろうなと思い購入はしていなかったのですが、Twitterであらすじが流れてきたのでふと拝見したところ、あまりにも面白そうすぎたので慌てて購入し読みました。予想通りかなり面白かったです。
表題にもなっている"きみはメタルギアソリッドV:ファントムペインをプレイする"は作品のテーマが面白い上に文章も素晴らしく、何よりも最後の一文が素晴らしい。その他、"もういい!"では一生続くんじゃないかと思う区切りの無い文章の羅列をアッラーへの信仰で区切ることで読みやすくしており、溜まりに溜まった主人公の鬱憤の爆発が見事でした。
全体的に仄かな悲しみが漂っている作品群で、時に救いがあったり無かったりするのが写実的なように感じ、遠い国で起こっている地続きの現実という感想を抱きました。海外文学の中では比較的読みやすく、内容も相当面白いと感じましたので様々な人に勧めやすい一冊ですが、やはり悲哀を常に纏っているように感じますので、とりわけロシア文学が好きな方には相当刺さるのではないでしょうか。是非読んでみてください。 -
ゲームはやらないのでタイトルがなんのことかはわからないが、アフガニスタン系作家による戦禍のアフガニスタンを中心に、パレスチナ問題などイスラム社会、アメリカのイスラム系移民を描く骨太の短編集だ。語り手や語り口はバラバラだが、ロシアとの戦争で若くして死んだ叔父、アメリカに移住し仕事で体を壊した父など、内容には一貫性があり、ある家族の歴史にアフガニスタンの現代史が重なる。
ゲームと現実の交差、切れ目のない一文での作品、職務経歴書で語る一生、サルに変身するなど、あの手この手の表現で読ませる。技法の全てが面白かったわけではないとはいえ。アフガニスタンがタリバンの支配下にありつつも日本での報道がなく関心も薄れ、パレスチナで虐殺が止まらない中で、次の作品が出れば読みたい。 -
短編集
アメリカからアフガニスタンへの思いをのせて,いろんな形での文章,文体のアプローチが面白い.
現実のゲームプレイが妄想と混ざり合って進む表題作,どんどん届く宅配便の「差出人に返送」突然サルになった息子と母を描いた「サルになったダリーの話」が良かった. -
パキスタン・ペシャワールの難民キャンプで生まれ、カルフォルニアに移住したアフガニスタン系アメリカ人作家による短編集。特に表題作と、猿になっちゃう話と、バラバラになった子どもの肉片が次々送られてきて、それを裁縫で繋ぎ合わせる話が、なかなかに新しい読後感で、読み応えがありました。
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イスラム・マジックリアリズム短篇集。なんちゅータイトルや。ほぼ全作品において舞台はアメリカ/登場人物はイスラム系。現代的で読みやすくもあるけど、イスラムネタや用語がかなり多くてとかく目が滑り、内容が頭に入らなかった。
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『きみはメタルギアソリッドV:ファントムペインをプレイする』ジャミル・ジャン・コチャイ
読了。
表題から「FF14 光のお父さん」のような作品なのかなと勝手に想像していたが真逆でアフガニスタン系アメリカ人の著者によるリアルと虚構を組み合わせた不思議な作品だった。
現代の戦争と地続きのテーマが若手作家の手により生々しくもシニカルに描かれる短編集。 -
アフガニスタン系アメリカ人作家による短編集。
小説表現としては実験的なものが多い。二人称で語られていたり、長い長い一文で構成された話があったり。
一筋縄では読めない現実感の曖昧になる表現で、アフガニスタンの現実が突きつけられる。
出来事が事件や物語として綺麗に語られるのではなく、言動を通して人物の憤りややるせなさなど強い感情が流れ込んでくるような話が多かった。
アフガニスタン関係の本はまとめて複数冊読む方が自分には良い気がする。知らないことが多すぎて。またその時に再読したい。 -
ハラヘリーの最後1行はインパクトが凄いね。あの1行でマジ泣きした
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購入しました、たのしみ。
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