アウシュヴィッツの囚人写真家

制作 : Luca Crippa  Maurizio Onnis  関口 英子 
  • 河出書房新社
4.38
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本棚登録 : 89
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (357ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309226538

感想・レビュー・書評

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  • 図書館の本 読了

    内容(「BOOK」データベースより)
    被収容者の肖像写真を撮り続けた恐るべき体験!5万枚にものぼる写真に込められた心の叫び。政治犯として収容された青年ブラッセが見たものとは?

    ブラッセが語ったことを物語り形式に組み替えてあるためだとは思うけれど、悲惨さがソフトに伝わる作品となっていた。
    近頃アウシュヴィッツにはユダヤ人以外の囚人がいたという視点のものにおおくめぐり合うのはそういう時期なのか。
    愛があったとしても、それは傷を癒しはしないのね。

    Il fotografo di Auschwitz by Lucia Crippa & Maurzio Onnis

  • ノンフィクション

  • まず巻頭の口絵写真を見ていただきたい。筆舌に尽くしがたい恐怖に怯えながら、レンズを見つめる少女たちの澄んだ眼差しを。

    ナチスはアウシュヴィッツの収容者を厳密に管理するため、一人につき3ポーズの写真を撮影し管理していた。撮影者は同じ収容者、ポーランド人ヴィルヘルム・ブラッセ。政治犯として収容された彼は、写真家としての技術とドイツ語に堪能であった点を買われて名簿記載班に任命され、解放まで約4年間、ナチスの蛮行と犠牲者たちの姿を記録し続けた。
    ブラッセの生前のインタヴューや資料をもとに、当時のようすを物語として再現したドキュメンタリー=フィクション。

    アウシュヴィッツに収容される者は一人残らずブラッセのレンズの前を通り、記録された。

    欧州各地から次々に送り込まれてくるユダヤ人、「ジプシー」と呼ばれ差別されていたロマ民族。 “ドイツ化”不能、政治犯等のレッテルを貼られたドイツ系の人々。さらには、人体実験の現場、丸太のように積み上げられ焼かれる人々、コレクションされた人体の一部。
    それだけではなく、クラウベルクやメンゲレなどナチスの幹部たちのポートレートさえも。
    その写真を見れば、史上最悪の虐殺行為をおこなっていた者たちも、ごく普通の人であったことがわかる。
    そして犠牲者たち。彼らも同じ、ごく普通の人であって、決して、あんな仕打ちを受けるべき人々ではなかったはずだ。

    ブラッセは苦悩しながらも撮影を続け、1945年、ソ連軍による開放間近の混乱のなか写真やネガを命がけで守った。
    その写真が、当時から現在に至るまでアウシュヴィッツの実態を世に知らしめるうえで果たした役割は計り知れない。

    ここに地獄があり、ここに現実がある。
    いかに悲惨なものであろうと、私たちは彼の撮った写真から目を逸らしてはならない。

    ブラッセは戦後故郷に戻り、ふたたび写真家としての仕事を始めようとしたものの、断念した。
    撮影しようとした少女の背後に、無数の収容者たちの目が亡霊のように浮かんで見え、どうしてもシャッターを切ることができなかったという。
    彼ほど広範囲、長期間にわたってナチスの非人道的行為を見続けたものは多くない。

    『記憶を消し続ける。前日に目にしたことを日々忘れていく。過ぎていく時間をことごとく切り捨て、闇に葬り去る。未来に対しても固く目を閉ざす。夢も見ないし、幻想も抱かない。』

    決して忘れることを許さず、記憶を留める写真を撮影しながら、正反対の掟を自分に課して生き延び、そのぶん戦い続け、苦しみ続けた彼の人生もまた本書の主題として注目したい。
    ブラッセはアーリア人の血筋をひいていた。その気になれば、収容所からいつでも解放されたはずなのだ。しかし彼は、最後までポーランド人として生きることをやめなかった。

  • ★4.0
    まさに百聞は一見に如かず。今に残る写真1枚1枚が語る真実は、限りなく重く、その功績は大きい。アウシュヴィッツ収容所の写真家・ブラッセの主な仕事は、死へと向かう人たちを撮影すること、医師の人体実験を記録すること。収容所内での彼の待遇は恵まれていたけれど、シャッターを押す度に心が擦り減ったことは容易に想像がつく。中でも、少女に対して施された実験手術の一部始終は、あまりにも想像を絶するもので言葉がない。犠牲者数を考えると僅かではあるものの、彼・彼女らが生きた証に少しでも触れることが出来る貴重な1冊。

  • アウシュビッツに囚人として収監され、記録写真を撮影する部署である名簿記載班で強制労働をさせられたブラッセ氏の体験を元にしたノンフィクション小説。

    どうして、同じ人間に対してこれほどおぞましいことが出来るのか。

    これまでこういった本の写真に写っている人々に想いを馳せることはあったが、この写真を撮った人がどういう人物であったかを考えたことがなかった。
    兵士か誰かが撮ったものだと思っていたからだ。

    いままで、ホロコーストを生き延びた人々の本をいくつか読んできたが、それも当日10代であったとか、小さな子供であったとかいうものが多かったので、本書のように、当時大人(と言っても20代前半)であり、すでに自分の言葉で何かを語ることができた人の経験を読んだのはもしかしたら初めてかもしれない。
    自分に能力があったからそれを活かして生き延びることができたブラッセ氏だが、それに伴う自責の念などは想像しても想像しきれない。

    本書の冒頭にある写真を見ただけで、その瞬間に生きていた人が確かに存在していたと感じ涙が出てきた。

    文章だけでも目を背けたくなることばかりなのに、実際にそれを目撃し、記録しなければならないということがどれだけ辛いことか。
    写真を撮って、すぐに殺されてしまうということがわかっていたから、最高の出来にしようと思っていたところから、ある種の抵抗と、人間の尊厳を少しでも守り、残そうとしたブラッセ氏の心を感じました。

    思い出すことも辛い経験を話してくれた人に対して、戦争を知らない私に出来ることは、事実を知り、もう二度とこのような恐ろしいことが起きないように考えることだと強く思った。

  • Original titile:IL FOTOGRAFO DI AUSCHWITZ.
    Author:Luca Crippa, Maurizio Onnis.

    4月に『THE SEVENTH MILLION The Israelis and the Holocoust.(七番目の百万人)』を読んだ時に解らなかった"auschwitzで生き延びたユダヤ人の実態"が理解出来なかったのですが、この本で理解出来ました。

    此処では収容されていたのはユダヤ人だけだと思っていたのですが、ドイツ帝国に帰属しない同族人やイタリア人、ソヴィエト人も収容されている事、元々は"ドイツ帝国に帰属しない同族人"をドイツ帝国人にする為の再教育施設だったそうです。

    この本の主人公はドイツ帝国に帰属する事を拒否したポーランド人男性ヴィルヘルム ブラッセです。
    政治犯として収容されて、彼の撮影技術で"皆が冷徹人間"と思っていたSSが彼に撮影される時は笑顔で撮影される姿がとても印象的です。
    人種の垣根を越えて、此処に居る者は誰であれ助け合う事を信条とし、過去を振り返らず未来を期待せずに只1時間1日を生き延びる。
    これはソヴィエト軍がauschwitzを占領し収容者が解放されるまで続きまで続きます。

    要所要所で衝撃的な展開がありましたが特に衝撃的だった事は、幾ら敵と言っても此処まで行うとは…と感じたソヴィエト人収容者の殺人方法です。
    ブラッセ氏が棟から棟への移動中に息も絶え絶えな男性収容者が「Ich bin nain Kommunist.(私は共産主義者ではない。)」と手を触れた瞬間に地面に倒れ息絶えた姿です。

    それから双生児のユダヤ人少女を栄養失調状態にさせたり、左右で瞳の色が異なる女性を衰弱させ乍ら生かしたり…。

    残念だと思った事は、物語の最後にブラッセ氏が収容所で愛し合った女性Annaが戦後、彼に再会した時に写真を渡され見て、彼を恐怖で睨んだ事です。
    結ばれる事を期待して読んでいただけに残念です…。

  • アウシュヴィッツについて書かれた本は多々あるが、これはいままでにない視点からのものだった。
    なぜ写真が残っているかわかった。
    ユダヤ人以外の収容者、しかも長期間

  • 戦争の悲惨さを皆さんにも共感して欲しく選書しました。(byワッサン)
    (866366/973/Cr/大学図書館)

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著者プロフィール

哲学と神学を修めたあと、編集者および出版コンサルタントとして活躍している。歴史小説、ノンフィクション、評論など幅広く活動。

「2016年 『アウシュヴィッツの囚人写真家』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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