サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

制作 : 柴田裕之 
  • 河出書房新社
4.33
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本棚登録 : 3675
レビュー : 313
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309226729

感想・レビュー・書評

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  • 上下巻ともに目から鱗が落ちっぱなし。凄まじい面白さである。どうすればユヴァルさんのように考えることが出来るのだろうか。心から尊敬する。本書を読んで、自分自身が興味のあること、もしくは知っていることについて述べられている箇所は関心を引かれたが、恥ずかしながら現在の自分では理解しきれない部分も数多くあり、自身の無学さをあらためて感じた。本書をより深く広く楽しむために、勉強してもう少し知識をつけてから読み直したいと思う。

  • 近年多い、人間の「全史」を俯瞰的に、全体を追った歴史本の一つ。何故多いのか?背景には、生物学やテクノロジーなどサイエンスの発展に基づく新発見、従来説の見直しが、人類の起源から現在まで、もう一度再検討しようという機運の高まりがあるように思う。
    そして「暴力の人類史」「繁栄」「銃・病原菌・鉄」他の大作著作は、それぞれの著者がそれぞれの異なる視点で全体を捉え、それぞれに発見がある。
    著者ユヴァル・ノア・ハラリの立場はいわゆるリベラル的。反グローバリズム、ルソー的な反文明主義、自然に還れ的な、狩猟時代より現代人は不幸、と考える立場からの「人類史」である。(反論はあるだろうが、これは本のプロモーションを兼ねた著者のインタビューを読んで補強された)。

    正直、本書はツッコミどころが多い。著者の「思想」に沿って全体が解釈されるが、根拠となる細部は強引な部分も目につき、明らかに歴史的事実の間違いでは?というところも散見され、不遜な言い方だがそこは著者の知識・研究不足なのでは?とも思える。
    サピエンス支配が「誇れるもの」を何も生み出さなかったというのも著者の価値観のうちであり、何を価値と考えるかによって見方は変わるだろう。農耕革命からのテクノロジーの発展が、人類を不幸にしたという観点は彼の「解釈」であり、価値を見出す側からは逆の「解釈」の主張も成り立つだろう。そして幸福と不幸は科学的に判断し得ない個の価値観の領域でもあるとも思う(統計的に数値する手法もあるにはあるが)。
    畜産の現状に対しての残酷さの主張(工業製品を生産するかのような生物の扱い)についても、 自然界にある捕食動物の「残酷さ」の凄まじさを見れば(生きながらハイエナの群れに食われる草食動物、雄ライオンの子殺し等々)動物好きな私から見て、自然の非情さに対する著者の認識、知識はどの程度のものだろう? との疑問も感じた。

    神話や宗教だけでなく、国民国家、貨幣や法制度、人権や自由までも人間の価値は虚構だと指摘する著者に、訳者は解説で「私たちの価値観を根底から揺るがす」と語る。しかしこれは吉本隆明の共同幻想論よりもはるか前から、西欧の認識で見れば19世紀末にニーチェが「神は死んだ」と宣言し、宗教への幻想が消えた100年以上前から現在に直接つながるカタチで、すでに「実は裏主流」である考えだ。また著者は価値観の虚構性を語りながら、自分の価値観からの批判という自家撞着に陥っているところもある。

    個人的には最後の部分での指摘が、全体の白眉であり、粗雑さ不備を補ってあまりあるものになっていると思う。著者はそこで科学の高度化が自らを含む生物を操作する「特異点」にまで達し、今現在(ニーチェ流にいえば、)これまでの旧サピエンスと新サピエンスの分ける新旧の「彼岸」にまで達していると論じる。
    この著者が指し示す、これまでサピエンスの先にあるもの、それは恐ろしい故にに興味津々だ。19世紀末の「超人」は哲学的な思索の産物だが 、21世紀から始まる「超サピエンス」はサイエンスによって現実に現れ著者の批判する畜産のように大量生産される……

    ニーチェでいえば、「ツァラトゥストラ」のような大きな地殻変動をもたらす完成形というより、処女作「悲劇の誕生」のように欠点を持つが得体の知れないパワーのある書のように思う。本の魅力は完成された既知の話より、ツッコミどころは多いがスリリングな知的刺激のある本のほうが勝る、そう感じされる一冊。プロフィールを見ると著者は1976年生まれだから35歳のときの著。若い本だ

  • 科学革命:500年、「進んで無知を認める」。「観察と数学を使う」、「理論だけでなく力、即ちテクノロジー」、
    神に挑戦するのは不遜(バベル、イカロス)から進歩志向へ。
    科学には金がかかり、常に経済的。政治的、宗教的干渉を受ける、帝国主義と資本主義。

    帝国主義:ヨーロッパの帝国主義と科学は相性がいい、ともに無知から出発して未知の領域へ(それまでは文化を広める)、飽くなき野心、遠征には科学者を同行、言語学、植物学、歴史学。科学的に自分たちの優位性を証明しようとした、人種差別理論化。

    資本主義:成長は善という確信、1500年の550ドルが8800ドルに。将来を信頼、クレジットの誕生、将来の収入を使って現時点のものを生み出す、それ以前は過去が優れていた、

  • 『サピエンス全史』と柄谷行人
    (柄谷行人を読んだことがない人にはわからない話ですみません。上下通したレビューは上巻の方に書きました)

    この本を読んで改めて柄谷行人という哲学者の射程がどこにあるのかがわかったような気がする。人類の歴史を描いた『サピエンス全史』と柄谷行人の『世界史の構造』が扱うテーマがかなり重複しているのだ。

    『世界史の構造』では、特徴的な四つの交換方式の重点の推移によって世界史の変遷を説明しようとしたという印象が強く、それはひとつの分析として素晴らしいのだが、やや無理筋であると感じるところも多かった。しかしながら、それまでの柄谷行人の関心を持ったテーマを『サピエンス全史』とともに振り返ると、彼が「人類の歴史」- つまりわれわれがなぜ今このような形としてここにあるのか、ということをずっと問いとして持っていて、答えとなるべきものをずっと提示しようとしてきたのだということがわかるような気がする。そのことを、「サピエンス全史 文明の構造と人類の幸せ」というタイトルの本とのテーマの合致を見て初めて気づくことになった。そして、その合致は偶然ではなく、彼の関心領域から導き出される必然でもあると感じた。

    『マルクスその可能性の中心』などにおける「貨幣」への注目。『NAM21』の活動では地域通貨の実践にまで踏み込もうとした。『探究I』におけるコミュニケーションへの注目。『探究II』における「世界宗教」への注目。『帝国の構造』などの近年の「帝国」への注目。『世界史の構造』では「農業革命」にも注目している。カントの永遠平和の考え方も、『サピエンス全史』に出てきた資本主義のグローバル化における世界平和に関する考え方も実は似ていたりもする。

    もう少しじっくりと柄谷行人の仕事について、『サピエンス全史』に沿った形で整理するようなことをしてみたい。それほど、読んでいて柄谷行人のことを思い出すことが多かった。それが、きっと柄谷行人という思想家をより深く理解することにつながる予感がする。

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    『サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福』
    http://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/430922671X

  • 今までの人類が歩んできた歴史を一気に読むことができ、視野が広がる感じがします。まあまあ長いですが、難しい言葉も少なく読みやすくまとめてくれているのでありがたいです。今までの歴史から今後科学が進歩していった先の予測をみながら、今後自分が何を望むのか、考えるいい機会になりました。

    今の世の中ってどうなんだろう?これからどうなっていくんだろう?みたいな不安のある人とか、歴史と比較しながら考えられるのでいいかと。幸福についての研究や考察もためになります。

    個人的には今より長生きができるように医学が進歩するまで健康に過ごして、できるだけ先の未来まで観てみたいなあと思いました。

  • 人類は繁栄しているようで、実はそうではないのかと感じた。豊かになっているようで、みんながそうではないのと同じように。地球規模でいくと戦争は少なくなってきているが、その犠牲になっているひとよりも、自殺者のほうが死亡数が高いという現実。人類は本当の幸福は掴んでないし、テクノロジーの進化の享受はあるけれど、もしかしたら破壊へとつながっているのかもしれない。とにかく人類は生かされていると思う方がいいのかなと思った。

  • サピエンス全史、下巻は、より近代にフォーカスしたストーリー。特に科学が人間に与えた影響について語っている。

    近代、この2〜3世紀程度で、世の中は産業革命が起こり、大きく変わった。エネルギーを、人の身体を使わずに、より効率的に、爆発的に増やす方法を見つけることに成功したからだ。
    それが、蒸気の力を使う発見であり、石炭、石油、そして新たな太陽光のような自然エネルギーを使うといういまの流れを作っている。私には、産業革命とは結局なんだったのか、がピンときていなかったが、つまりエネルギー革命なのか、と理解できたことがとても面白かった。

    また、近代ヨーロッパでは、科学を推奨するが、それは帝国主義と相性が良かったことが功を奏している。なぜ自然科学や言語学、医学の進歩に投資したのか?それは帝国主義で、まだ未知の世界を掌握したいという探究心を時の権力者が持っており、その考え方と科学者たちの考え方が合っていたこと、そして発見の結果、帝国主義へ還元できるものが大きかったことがあげられるそうだ。
    最近、インドの最も古い図鑑類を見に行ったが、まさにイギリス植民地時代に作られており、このヨーロッパの科学志向が反映された結果となっている。

    そして、地球の地図が明らかになり、科学の進歩により、結局略奪により国を支配するより、知的な人間をいかに確保するかが大事な世の中となった。だからこそ、お互いに取引をして投資をする平和のほうがベネフィットがうまれ、ここ数十年は人類史上最も平和な時代になっている。そして、究極的に資本主義として全員が消費者になるゆえ、「個」の時代となった。

    では、幸せになったのか?人はゲノム工学で人間すら作り変えられるようになってきているが、なにを望んでいるのか?その本質が問われる時代となっている。

    沢山の生物を意図せずに絶滅に追い込み、強奪し、また家畜類を交配による遺伝子操作で大人しくさせ、太らせてきた人間。そして、最近の研究では、動物たちにも感情があることがわかっている。そういう生物達を犠牲にして生きている現代。さらに遺伝子操作により、サピエンスを超える何かを作り出しかねないいま。

    地球で、私たちは一体なんのために生きているのか?それを問われると感じる一冊だった。
    上下巻、本当に、読んで良かった。

  • 19章の幸福論が興味深い。
    仏教がフォーカスされている。

  • 「自分が何を望んでいるかもわからない、不満で無責任な神々ほど危険なものがあるだろうか?」

    普段こういったジャンルを読まないので推測だけど、様々な学問分野を跳び回って纏め上げ、専門家でなくても読み物として面白い(面白いと思うか冗長だと思うかは好みで分かれそうだけど。私は面白かった)だけでなく、「じゃあ科学の発展とは、資本主義とは、幸福なんだろうか?」という問いを加えたところが新鮮なのだろうなぁ。
    自分が幸福だと感じていると思っていても、為政者や高所得者にとって都合のいい社会を保てるよう幸福だと思わされているのかも知れない。
    無自覚だったことを色々と自覚できる本だった。
    次のも読もうー。

  • やっと読み終わった。上巻読んで次にいこうと思ったら、家に見当たらない。息子が友達に貸してしまったらしくって(息子の本だし)下巻読むのに半年ぐらい待たされた。だいぶ忘れてたけど下巻もゆっくり楽しんだ。普段本読んでるときは、早く読了しなければとあせりがちになるんだけど、この本は各ページとても面白く勉強になるのでゆっくりと落ち着いて楽しめた。認知革命、農業革命、科学革命と人類の歴史が自分にとっては初めての視点ですっきりと再整理されていた。虚構の共有、小麦による人間の奴隷化、人間至上主義の課題、無知の発見からの無限の成長の始まり、エネルギー変換の発見。人類の歴史上の重要なポイントとてもわかり易く整理されてる。自分の知識ではこの本が学説的にどうなのかは判別ないが、とんでも本に分類されてる「神々の指紋」を読んだときの興奮に近いものを感じた。壮大な物語としてよくできていて楽しかった。新作も読みたい。

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著者プロフィール

ユヴァル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)
1976年生まれのイスラエル人歴史学者。専門は世界史とマクロ・ヒストリー。
オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻して博士号を取得し、エルサレムのヘブライ大学歴史学部で終身雇用教授として歴史学を教える。軍事史や中世騎士文化についての著書がある。オンライン上での無料講義も行ない、多くの受講者を獲得している。
著書『サピエンス全史』は世界的なベストセラーとなった。2015年にヘブライ語で"Homo Deus: A Brief History of Tomorrow"を出版。その翻訳書『ホモ・デウス』が2018年9月に刊行される。

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