サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

制作 : 柴田裕之 
  • 河出書房新社
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レビュー : 298
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309226729

感想・レビュー・書評

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  • 上巻も面白かったが敢えて4つ星評価としてた。それが正解!下巻はさらに面白く、最上級の5つ星評価とした。
    認知革命→農業革命を経て、いよいよ500年前から科学革命が始まった。文明は人間を幸福にしたのかを考察し、最終章「超ホモ・サピエンスの時代へ」。途中からは1つの文章を繰り返し読むくらい熟読した。
    人類、というかホモ・サピエンスに対する認識が深まる一方で、畏怖を伴う責任感のようなものを感じた。
    「今日、ホモ・サピエンスは、神になる寸前で、永遠の若さばかりか、創造と破壊の神聖な能力さえも手に入れかけている(p264)」

  • 現代の世界がいかに作られたかを、宗教、産業、国(国民)、消費など様々な観点から読み解いてくれる。

  • 現生人類であるホモ・サピエンスは、認知革命で他の人類種と差をつけ、農業革命で繁栄し、科学革命でそれまでの限界を越えて急拡張した。

    特に前半の認知革命がおもしろかった。認知革命とは、虚構を信じることで協力し合えるようになったこと。宗教、国家、通貨…などは、物理的に実態がなかったり、ただの金属だったりするが、共通に信じることで、会ったこともない人とも大きなコミュニティを作れ広く協力できる。
    ネアンデルタール人はそれがなかったためにホモサピエンスに敗れた。

    全体的に筆者の切り口が新鮮。

    以下は上巻も含めた読書メモ:


    1部 認知革命
    1章 唯一生き延びた人類種
    人類種の中で唯一生き延びたのがホモ・サピエンス。
    ヨーロッパにいたネアンデルタール人は、体が大きく環境に適応していた。ネアンデルタール人の一部のDNAがサピエンスに残っている。

    2章 虚構が協力を可能にした
    サピエンスは、会社、宗教等、現実にないことで協力し合うことができた。それが認知革命。
    認知革命以前のすべての人類種の行為は生物学に属していたが、認知革命以降は歴史と呼ぶ。

    3章 狩猟採集民の豊かな暮らし
    農耕以前。
    いろいろなものを少しずつ食べるしかないので、農耕以後の特定の食べ物(米とか)をたらふく食べるのより豊かだった。
    アニミズムは一つの具体的な宗教ではない。

    4章 史上最も危険な種
    サピエンスが移住すると大型動物は絶滅する。オーストラリア大陸の大型有袋類、シベリアのマンモス、アメリカ大陸のサーベルタイガーや大型のナマケモノ…

    2部 農業革命
    5章 農耕がもたらした繁栄と悲劇
    サピエンスは小麦を栽培化したのではなく、小麦に家畜化された。狩猟をしていた頃より惨めな暮らし。
    種の進化上の成功はDNAの複製の数で測られる、たとえ生活水準が落ちても。農業革命で以前より劣悪になったがより多くの人を生かすことになった。
    贅沢品は必需品になり新たな義務を生む。
    家畜化されたニワトリと牛はこれまで生を受けた生き物のうちで極端なまでに惨め。

    6章 神話による社会の拡大
    キリスト教や民主主義、資本主義といった想像上の秩序を信じさせることにより、見知らぬ人どうしが協力する。
    共同主観的
    想像上の秩序から逃れる方法はない。

    7章 書記体系の発明
    不完全な書記体系=税制等の数理的データの記録←→話し言葉
    完全な書記体系
    新しい不完全な書記体系=アラビア数字の発明
    コンピュータ処理の二進法の書記体系

    8章 想像上のヒエラルキーと差別
    想像上のヒエラルキーは悪循環でさらに拡大する。
    生物学的な性別(セックス)と社会・文化的な性別(ジェンダー)
    農業革命以降の人間社会で女性より男性を高く評価する理由は何か。

    3部 人類の統一
    9章 統一へ向かう世界
    人工的な本能のネットワークを「文化」という。
    平等と個人の自由は互いに矛盾する。フランス革命以降の政治史はすべて、この矛盾を解消しようとする一連の試み。
    全世界と全人類を想像できる普遍的秩序 貨幣←貿易商人、帝国←征服者、普遍的宗教←預言者

    10章 最強の征服者、貨幣
    物々交換には限界 貨幣は簡単に安価に富を他の物に変えたり保存したり運んだりできる。
    貨幣は最も普遍的で、最も効率的な相互信頼の制度。
    宗教的信仰に関して同意できないキリスト教徒とイスラム教徒も、貨幣に対する信頼に関しては同意できる。宗教は特定のものを信じるように求めるが、貨幣は他の人々が特定のものを信じていることを信じるように求めるから。

    11章 グローバル化を進める帝国のビジョン
    帝国の定義は、文化的多様性、変更可能な国境
    紀元前200年頃から人類のほとんどは帝国の中で暮らしてきた。帝国を悪だと否定しても、その前の非征服者も帝国だった。


    12章 宗教という超人間的秩序
    宗教は超人間的な秩序の存在を主張する。
    宗教は超人間的秩序に基づいて規範や価値観を確立し、それには拘束力があると見なす。

    多神教、一神教
    善と悪の二元論
    混合主義
    人間至上主義の宗教 自由主義的人間至上主義 社会主義的人間至上主義 進化論的人間至上主義

    13章 歴史の必然と謎めいた選択
    歴史はどの時点でも分岐点、人間に利益のためになされるのではない。

    4部 科学革命
    14章 無知の発見と近代科学の成立
    科学研究は宗教やイデオロギーと提携した場合にのみ栄える。イデオロギーは研究の費用を正当化するのと引き換えに、科学研究の優先順位に影響を及ぼし、発見された物事をどうするか決める。

    15章 科学と帝国の融合
    科学は社会構造、社会組織と結びついて発展する。西洋以外にもテクノロジーの発明はあったが西洋は資本主義があって勝利した。
    科学者は帝国主義の事業に道具を与へ、帝国は科学者に援助した。

    16章 拡大するパイという資本主義のマジック
    奴隷貿易
    暴走した資本主義

    17章 産業の推進力
    産業革命 熱を運動に変えた 蒸気機関
    農業の工業化
    消費主義
    投資せよ! 買え!

    18章 国家と市場経済がもたらした世界平和
    近代産業は時計、時間表が必要
    家族と親密な地域コミュニティの衰退
    想像上のコミュニティ
    これほど平和が広がった例はない。

    19章 文明は人間を幸福にしたのか
    幸福とは何か。幸福=主観的厚生
    心理学者は質問票を記入してもらい調べる。生物学者は単に脳内のセロトニンの濃度だとする。
    仏教では外部の条件でもなく、内なる感情の追求もやめ、あるがままを受け入れることによる安らぎ。
    歴史書は各人の幸せや苦しみにどのような影響を与えたかに言及していない。

    20章 超ホモ・サピエンスの時代へ
    人類は遺伝子操作などで新しい生命を作れるようになった。技術的には新しい人類も作れる。
    サイボーグ 有機的な器官と非有機的器官を組合せた生物

  • 途中でちょっと違う本を読んだりして、ブランクがあったけど、資本主義の記述あたりから面白くなり、一気に読了。
    上巻を大分忘れてしまったので再読予定。
    人類は国対国の全面戦争は選ばなくなったというけれど、これが書かれているのは2014年。
    イスラム国の記述もないし、トランプ氏もまだ大統領にはなっていない。そして、北朝鮮の動向もさほどニュースにはなっていなかったろう。
    原爆の恐怖を世界に知らしめたという功績でオッペンハイマーとメンバー達にはノーベル平和賞を与えるべきだったというジョークがあったが、日本人には面白くない冗談。
    どこまでご存じかわからないトランプ氏と北朝鮮。
    原爆の悲惨さを伝えるべき日本の役割を改めて感じた。

    興味深かったのは資本主義の原理と成長過程の記述。良く知らなかったので勉強になった。
    果たしてポスト資本主義はあるのだろうか?
    家畜の惨めな状況、科学の動向も気になる。

  • 人類史にとって何が本質的だったのかを、定説や後付けを排除して読み解く。この独自の視点が面白く、常識の縛りからの解放感が心地よい。

    第3部 人類の統一
    第12章 宗教という超人間的秩序

    社会主義やナチスの優性思想も宗教として分析。こういう大胆な(あちこちから文句がきそうな)一般化を行うのが本書の特徴。
    全能の一神教の神。善と悪とが対立する二元論。あっさり「人類には矛盾しているものを信じる素晴らしい才能がある」と、論理的に不可能なことを肯定してみせる。

    第13章 歴史の必然と謎めいた選択

    歴史が決定論的でなく偶然の積み重ねだとわかれば、現在の階級や秩序(ときに差別的)が必然ではないとわかるという。なるほど、いろいろ自由になれる視点だ。特に劣等感に襲われたときなど。

    第4部 科学革命
    第14章 無知の発見と近代科学の成立

    科学も宗教ではないかと。そして科学の目標として不老不死が視野に入っていると。たしかにまじめに追求する向きはないんだけどそれは確かにある

    第15章 科学と帝国の融合

    科学技術は世界を既知ではなく未知と認識したことから発展したとの仮説。大航海と征服、植民地化を描き、帝国主義と科学技術は一体だったとする。
    西欧諸国にその気性があったのはなぜ?ダイヤモンドがいうように小国乱立して争いばかりしていたから?そこへの回答は書かれず

    第16章 拡大するパイという資本主義のマジック

    経済成長の概念は近代までなかった。スペイン、オランダ(法治の確立)、フランス(ミシシッピ会社株のバブル)、イギリスと海洋帝国が移り変わったのは資本市場が原因だとする。VOC、英東インド会社による植民地支配、奴隷貿易など、資本家が世界を動かしたとする。

    第17章 産業の推進力

    家畜の悲惨な境遇。科学でその感情などもわかってきた。この虐待もそのうち過去のものになるのだろうか

    第18章 国家と市場経済がもたらした世界平和

    国家は福祉を保証することで家族とコミュニティーを崩壊させた。しかし安全を提供している。国家経済がグローバルに依存しあうことと全面核戦争へのためらいで戦争もおきにくくなったのが現代。

    第19章 文明は人間を幸福にしたのか

    幸福論。主観質問表で測る幸福度は生化学で決まる。人生の意義に照らして測る方法(カールマン)も。いずれにしろ歴史は幸福度を高めなかったと。死後の世界を信じれた幸せ。人類の知への貢献さえ妄想かもしれない。
    幸福度が高いから幸せな結婚生活が出来るんだという解釈は目からうろこ。

    第20章 超ホモ・サピエンスの時代へ

    生物工学、サイボーグ、非有機体生命。
    ちょっと唐突な章。新たに手にした技術が、サピエンスの歴史だけでなく、地球の生命の歴史まで終わらせ(新しく始め)ようとしている。
    その後継者、未来の支配者はかけ離れすぎて理解不能なのでSFでも描かれることはないという。

  • ものすごいボリュームでとても1度読んだだけでは消化しきれない。印象に残ったのは、私たちは壮大な虚構の中に生きているという見方。

  • 『サピエンス全史(下)』
    まだまだ、辿り着けない深い場所があるのはわかるのに、そこにはまだ近づく力がないことを感じさせられる。しかし、いまの自分で感じとれるすべてを出し切って探検してきた読後感がある。
    静かな森のなかの小さな沼の横で、カラダを乾かしながら、永い人類の過去とこれからも続くであろう未来を、今現在の自分を起点に想像している。
    『マクロ歴史学』という言葉が想像させる、“歴史”を俯瞰したうえで、再度歴史の様々な事象に可能な解釈を施し、未来への物語りを紡いでいく壮大な試み。
    それは著者が言葉にした「歴史を研究するのは未来を知るためではなく、視野を拡げ、現在の私たちの状況は自然的なものでも、必然的なものでもなく、したがって私たちの前には、想像しているよりもずっと多くの可能性があることを理解するためなのだ」という定義を前提にしている。

    あたまのなかに永い人生をかけて蓄積されてきた既成のテンプレートを、もう一度無限のピースに砕いて再構築させてくれたような感覚が、いま目の前の世界を映している。
    2017/06/03

  • (2017.05.08読了)(2017.05.01借入)(2017.02.02・14刷)
    副題「文明の構造と人類の幸福」
    上巻は、献本で読むことができたのですが、下巻をどうしようかと思っていたときに、図書館で見つけたので借りて読むことにしました。
    歴史は、人々のやってきたことを後からたどることなのですが、人々のやってきたことにはいろんな側面があるので、色んな切り口があることに改めて気づかされました。
    社会制度、宗教、政治、経済、科学、いろいろありますね。
    断片的な事しか記憶に残っていないのですが、
    コロンブスは、自分の辿り着いたところが新大陸だとは思っていなかったので、「コロンブスの新大陸発見」というのは、間違っている。
    コロンブスの後、続々と新大陸に渡っていく人たちがいたのですが、「インディアンは、人間か?」ということが問題になった時期があります。
    この本では、そのあたりは言及していないようです。あまり関心がなかったのでしょう。
    スペイン人たちが、続々とアメリカ大陸方面に行くことによってカリブ海の島々に住んでいた人たちは、過酷な労働とヨーロッパから持ち込まれた病気によって壊滅しました。
    それと同じことが、クックの遠征の後に続いた人たちによって、オーストラリア、ニュージーランドでも、同じことがあったことは知りませんでした。
    フランス革命は、ミシシッピ会社株の暴落に原因があるという話も、初めて聞いたような気がします。
    1945年8月に日本に、二発の原爆が投下され、多くの人たちが亡くなり、後遺症に苦しみました。これ以後、大きな戦争が起こっておらず、平和が続いている、と記してあります。
    原子爆弾の脅威が、平和をもたらしたのでしょうか? 局地的な紛争については触れていますが、イスラエルが戦っている中東紛争については、著者がイスラエルの人のためか、触れられていないようです。
    原子力発電は、低コストであると言っているようですが、廃棄処理やチェルノブイリや福島の事故後の処理についての費用も含めて考えたコストなのでしょうか?
    現在の経済は、金融商品という妙なものがあって、実態とリンクせず非常に危なっかしい状態のような気がします。経済の論理を突き詰めてゆけばいずれ行きつくものなのでしょうけど、制御するすべを見つけてほしいものです。
    金融商品も、原発みたいなもので、制御の仕方がわからないまま、世の中の勢いに流されて、どこに行きつくのか、人類の破滅に行きつくのか、恐ろしい限りです。

    【目次】
    第3部 人類の統一
    第12章 宗教という超人間的秩序
    第13章 歴史の必然と謎めいた選択
    第4部 科学革命
    第14章 無知の発見と近代科学の成立
    第15章 科学と帝国の融合
    第16章 拡大するパイという資本主義のマジック
    第17章 産業の推進力
    第18章 国家と市場経済がもたらした世界平和
    第19章 文明は人間を幸福にしたのか
    第20章 超ホモ・サピエンスの時代へ
    あとがき ―神になった動物
    謝辞
    訳者あとがき
    原註
    図版出典
    索引

    ●二元論(22頁)
    二元論が非常に魅力的な世界観なのは、人類の思想にとって根本的な関心事の一つである、有名な「悪の問題」に、それが短くて単純な答えを出せるからだ。「世界になぜ悪があるのか? なぜ苦しみがあるのか? なぜ善い人に悪いことが起こるのか?」一神教信者は、世界にこれほどの苦しみが起こるのを全知全能の、完璧に善い神が許す理由を説明するのに四苦八苦する。
    ●近代科学(61頁)
    近代科学は、最も重要な疑問に関して集団的な無知を公に認めるという点で、無類の知識の伝統だ。
    広範な科学研究を何世紀も重ねてきたにもかかわらず、生物学者は脳がどのようにして意識を生みだすかを依然として説明できないことを認めている。物理学者は何が原因でビッグバンが起こったかや、量子力学と一般相対性理論の折り合いをどうつけるかがわからないことを認めている。
    ●統計学(69頁)
    統計学の講座は今では物理学と生物学だけではなく、心理学や社会学、経済学、政治学でも基本的な必修科目になっている。
    ●進歩(76頁)
    科学革命以前は、人類の文化のほとんどは進歩というものを信じていなかった。
    多くの信仰では、いつの日か救世主が現れて戦争や飢饉にすべて終止符を打ち、死さえなくすと信じられていた。だが、人類が新しい知識を発見したり新しい道具を発明したりしてそれを成し遂げられるという考えは、滑稽というだけでは済まされず、不遜でさえあった。バベルの塔の話やイカロスの話、ゴーレムの話、その他無数の神話は、人間の限界を超えようとする試みは必ず失望と惨事につながることを人びとに教えていた。
    ●壊血病(91頁)
    クックの遠征の恩恵を被った分野の一つが医学だった。当時、遠距離航海に出かける船では、半数以上の乗組員が航海中に亡くなることが知られていた。
    それは壊血病という不思議な病気だった。
    16世紀から18世紀にかけて約200万の水夫が壊血病で亡くなったと推定される。
    水夫たちに柑橘類を食べるように指示した。壊血病の一般的な民間療法だった。
    ●アボリジニとマオリ人(93頁)
    クックの遠征に続く100年間で、オーストラリアとニュージーランドのもっとも肥沃な土地がヨーロッパからの入植者によって先住民から奪われた。先住民の人口は最大で九割も減少し、生き残った人々も苛酷な人種的迫害にさらされた。オーストラリアのアボリジニとニュージーランドのマオリ人にとって、クックの遠征は大惨事の始まりで、彼らは今もなおそれから立ち直れずにいる。
    ●鄭和(108頁)
    多くの学者によれば、中国の明朝の武将、鄭和が率いる艦隊による航海は、ヨーロッパ人による発見の航海の先駆けであり、それを凌ぐものだったという。鄭和は1405年から1433年にかけて7回、中国から巨大な艦隊を率いてインド洋の彼方まで行った。なかでも最大の遠征隊は、三万人近くが乗り込んだ300隻弱の船で編成されていた。彼らは、インドネシア、スリランカ、インド、ペルシア湾、航海、東アフリカを訪れた。
    ●信用(131頁)
    信用という考え方は、私たちの将来の資力が現在の資力とは比べ物にならないほど豊かになるという想定の上に成り立っている。
    ●ミシシッピ・バブル(150頁)
    1717年、フランスが勅許を与えたミシシッピ会社は、ミシシッピ川下流域の植民地化に着手し、その過程でニューオーリンズという都市を建設した。その野心的な計画に資金を供給するために、ルイ15世の宮廷に強力なつてのあったこの会社は、パリの証券取引所に上場した。
    ミシシッピ会社株は天井知らずに跳ね上がった。
    恐慌が始まった。投機家の中に、株価が実態を全く反映しておらず、維持不可能だと気付いたものが出たのだ。
    フランスの中央銀行はミシシッピ会社株を買い支えたが、自ずと限度があった。
    フランスの金融界全体がバブルに巻き込まれた。
    1789年、ルイ16世は不本意ながら、フランスの議会にあたる三部会を一世紀半ぶりに招集し、この危機の解決策を見つけようとした。これを機にフランス革命が始まった。
    ●大資本(153頁)
    政府が大資本の言いなりになった悪名高い代表例は、イギリス・中国間の第一次アヘン戦争(1840~42年)だ。19世紀前半には、イギリス東インド会社とさまざまなイギリスの実業家が、麻薬、とくにアヘンを中国に輸出して大儲けした。厖大な数の中国人が中毒となり、中国は経済的にも社会的にも衰弱した。
    19世紀後期には、中国総人口の一割にあたる約4000万人がアヘン中毒だった。
    ●国内標準時(187頁)
    1880年にはついにイギリス政府が、同国におけるすべての時間表はグリニッジの時刻に準ずることを定めた法律を制定するという、前代未聞の措置を採った。歴史上初めて、一国が国内標準時を導入し、各地の時刻や日の出から日の入りまでのサイクルではなく、人為的な時刻に従って暮らすことを国民に義務づけたのだ。
    ●保甲制度(191頁)
    中国の明帝国(1368~1644年)では、保甲制度と呼ばれる制度で民を組織した。10世帯を一つにまとめて一「甲」とし、10「甲」で一「保」を編成した。「保」の成員の一人が罪を犯すと、同じ「保」の成員たち、とくに「保」の長老たちが罰せられた。税も「保」ごとに徴収された。各世帯の状況を査定し、税額を決めるのは、国の役人ではなく「保」の長老たちの責任だった。

    ☆関連図書(既読)
    「コロンブス航海誌」コロンブス著・林屋永吉訳、岩波文庫、1977.09.16
    「古代アステカ王国」増田義郎著、中公新書、1963.01.18
    「インカ帝国探検記」増田義郎著、中公文庫、1975.09.10
    「キャプテン・クック」ジャン・バロウ編・荒正人訳、原書房、1992.10.25
    「ダーウィン先生地球航海記(1)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1995.06.23
    (2017年5月15日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    文明は人類を幸福にしたのか? 帝国、科学、資本が近代をもたらした!現代世界の矛盾を鋭くえぐる!

  • 上巻では、フィクションが人類を発展させたエンジンになったことが指摘されたが、下巻では「帝国主義、科学主義、資本主義」の3つのフィクションが現代世界を形作っていると解説する。未来は現在よりも良くなり、パイは拡大するというフィクション。向上心や競争、新発明を生み、病気や災害を減らす一方で、格差を生み、生物の絶滅を生んだ。世界はかつてないほど平和で安全な時代に入ったが、今後人類はどのように進んでいくのか。筆者は生物工学的発展、サイボーグ的発展、非有機的生命的発展の3つの選択肢を示す。どれもわずかながら実現されているところが説得力を感じる。どれになったとしても、その後の人類は現在のものとは想像もできないほど変化していると考えると、そら恐ろしい気になるが。

  • 数ある生物種の中でホモ・サピエンスのみが文明を構築し、地球を支配するに至った理由を、
    ・地域、国家、企業、宗教などの共同体を組成させ、安全な生活基盤の構築に繋がった「認知革命」
    ・狩猟採集生活に比べて個々人の生活の充実度は下がったものの、数量の増加を実現した「農業革命」
    ・他の生物種を圧倒しながら、生活の利便性を向上させることに成功した「科学革命」
    という3つの革命から説明する歴史書。下巻では「科学革命」の歴史と、今後行き着く革命の姿が描かれる。

    下巻の白眉は、
    ・科学の発展は、資本主義と帝国主義の発展と3つどもえの関係性になっていること
    ・近現代が圧倒的な経済発展を遂げたのは、その関係性の中で「成長」が信用に値するものとしてみなされ、「投資」が促進されたこと
    を平易な語り口で明らかにする点にある。

    近代以前の社会においては、社会が「成長」することへの期待感は低く、むしろ「投資」という行為はリターンに見合わない行為とみなされていた。しかし、科学による「進歩」の概念と、科学による副産物として得られる「技術」は、リスクを引き下げ、リターンを向上させる方向へ寄与する。その結果、消費ではなく「投資」が促進される、というロジックである。

    本書は人類の歴史を、極めて広範なパースペクティブから語るものでありつつ、科学、宗教、経済等、固有の歴史についても要点がまとめられており、あらゆる人にお勧めできる一冊。

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著者プロフィール

ユヴァル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)
1976年生まれのイスラエル人歴史学者。専門は世界史とマクロ・ヒストリー。
オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻して博士号を取得し、エルサレムのヘブライ大学歴史学部で終身雇用教授として歴史学を教える。軍事史や中世騎士文化についての著書がある。オンライン上での無料講義も行ない、多くの受講者を獲得している。
著書『サピエンス全史』は世界的なベストセラーとなった。2015年にヘブライ語で"Homo Deus: A Brief History of Tomorrow"を出版。その翻訳書『ホモ・デウス』が2018年9月に刊行される。

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