サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福

制作 : 柴田裕之 
  • 河出書房新社
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レビュー : 297
  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309226729

感想・レビュー・書評

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  • 近年多い、人間の「全史」を俯瞰的に、全体を追った歴史本の一つ。何故多いのか?背景には、生物学やテクノロジーなどサイエンスの発展に基づく新発見、従来説の見直しが、人類の起源から現在まで、もう一度再検討しようという機運の高まりがあるように思う。
    そして「暴力の人類史」「繁栄」「銃・病原菌・鉄」他の大作著作は、それぞれの著者がそれぞれの異なる視点で全体を捉え、それぞれに発見がある。
    著者ユヴァル・ノア・ハラリの立場はいわゆるリベラル的。反グローバリズム、ルソー的な反文明主義、自然に還れ的な、狩猟時代より現代人は不幸、と考える立場からの「人類史」である。(反論はあるだろうが、これは本のプロモーションを兼ねた著者のインタビューを読んで補強された)。

    正直、本書はツッコミどころが多い。著者の「思想」に沿って全体が解釈されるが、根拠となる細部は強引な部分も目につき、明らかに歴史的事実の間違いでは?というところも散見され、不遜な言い方だがそこは著者の知識・研究不足なのでは?とも思える。
    サピエンス支配が「誇れるもの」を何も生み出さなかったというのも著者の価値観のうちであり、何を価値と考えるかによって見方は変わるだろう。農耕革命からのテクノロジーの発展が、人類を不幸にしたという観点は彼の「解釈」であり、価値を見出す側からは逆の「解釈」の主張も成り立つだろう。そして幸福と不幸は科学的に判断し得ない個の価値観の領域でもあるとも思う(統計的に数値する手法もあるにはあるが)。
    畜産の現状に対しての残酷さの主張(工業製品を生産するかのような生物の扱い)についても、 自然界にある捕食動物の「残酷さ」の凄まじさを見れば(生きながらハイエナの群れに食われる草食動物、雄ライオンの子殺し等々)動物好きな私から見て、自然の非情さに対する著者の認識、知識はどの程度のものだろう? との疑問も感じた。

    神話や宗教だけでなく、国民国家、貨幣や法制度、人権や自由までも人間の価値は虚構だと指摘する著者に、訳者は解説で「私たちの価値観を根底から揺るがす」と語る。しかしこれは吉本隆明の共同幻想論よりもはるか前から、西欧の認識で見れば19世紀末にニーチェが「神は死んだ」と宣言し、宗教への幻想が消えた100年以上前から現在に直接つながるカタチで、すでに「実は裏主流」である考えだ。また著者は価値観の虚構性を語りながら、自分の価値観からの批判という自家撞着に陥っているところもある。

    個人的には最後の部分での指摘が、全体の白眉であり、粗雑さ不備を補ってあまりあるものになっていると思う。著者はそこで科学の高度化が自らを含む生物を操作する「特異点」にまで達し、今現在(ニーチェ流にいえば、)これまでの旧サピエンスと新サピエンスの分ける新旧の「彼岸」にまで達していると論じる。
    この著者が指し示す、これまでサピエンスの先にあるもの、それは恐ろしい故にに興味津々だ。19世紀末の「超人」は哲学的な思索の産物だが 、21世紀から始まる「超サピエンス」はサイエンスによって現実に現れ著者の批判する畜産のように大量生産される……

    ニーチェでいえば、「ツァラトゥストラ」のような大きな地殻変動をもたらす完成形というより、処女作「悲劇の誕生」のように欠点を持つが得体の知れないパワーのある書のように思う。本の魅力は完成された既知の話より、ツッコミどころは多いがスリリングな知的刺激のある本のほうが勝る、そう感じされる一冊。プロフィールを見ると著者は1976年生まれだから35歳のときの著。若い本だ

  • サピエンス全史、下巻は、より近代にフォーカスしたストーリー。特に科学が人間に与えた影響について語っている。

    近代、この2〜3世紀程度で、世の中は産業革命が起こり、大きく変わった。エネルギーを、人の身体を使わずに、より効率的に、爆発的に増やす方法を見つけることに成功したからだ。
    それが、蒸気の力を使う発見であり、石炭、石油、そして新たな太陽光のような自然エネルギーを使うといういまの流れを作っている。私には、産業革命とは結局なんだったのか、がピンときていなかったが、つまりエネルギー革命なのか、と理解できたことがとても面白かった。

    また、近代ヨーロッパでは、科学を推奨するが、それは帝国主義と相性が良かったことが功を奏している。なぜ自然科学や言語学、医学の進歩に投資したのか?それは帝国主義で、まだ未知の世界を掌握したいという探究心を時の権力者が持っており、その考え方と科学者たちの考え方が合っていたこと、そして発見の結果、帝国主義へ還元できるものが大きかったことがあげられるそうだ。
    最近、インドの最も古い図鑑類を見に行ったが、まさにイギリス植民地時代に作られており、このヨーロッパの科学志向が反映された結果となっている。

    そして、地球の地図が明らかになり、科学の進歩により、結局略奪により国を支配するより、知的な人間をいかに確保するかが大事な世の中となった。だからこそ、お互いに取引をして投資をする平和のほうがベネフィットがうまれ、ここ数十年は人類史上最も平和な時代になっている。そして、究極的に資本主義として全員が消費者になるゆえ、「個」の時代となった。

    では、幸せになったのか?人はゲノム工学で人間すら作り変えられるようになってきているが、なにを望んでいるのか?その本質が問われる時代となっている。

    沢山の生物を意図せずに絶滅に追い込み、強奪し、また家畜類を交配による遺伝子操作で大人しくさせ、太らせてきた人間。そして、最近の研究では、動物たちにも感情があることがわかっている。そういう生物達を犠牲にして生きている現代。さらに遺伝子操作により、サピエンスを超える何かを作り出しかねないいま。

    地球で、私たちは一体なんのために生きているのか?それを問われると感じる一冊だった。
    上下巻、本当に、読んで良かった。

  • 「自分が何を望んでいるかもわからない、不満で無責任な神々ほど危険なものがあるだろうか?」

    普段こういったジャンルを読まないので推測だけど、様々な学問分野を跳び回って纏め上げ、専門家でなくても読み物として面白い(面白いと思うか冗長だと思うかは好みで分かれそうだけど。私は面白かった)だけでなく、「じゃあ科学の発展とは、資本主義とは、幸福なんだろうか?」という問いを加えたところが新鮮なのだろうなぁ。
    自分が幸福だと感じていると思っていても、為政者や高所得者にとって都合のいい社会を保てるよう幸福だと思わされているのかも知れない。
    無自覚だったことを色々と自覚できる本だった。
    次のも読もうー。

  • ホモ・サピエンス=取るに足らない動物がなぜ現在に至るまで生き延び過去類を見ない程に繁栄することになったのか、という仮説が面白い。

  • 夏休みの宿題のつもりで上下巻をチャレンジ
    文章としては難解ではありませんが、理解が進まず、読み切るのに時間がかかってしまった!
    かなり疲れた!!

    そして下巻です
    普遍的秩序の3つ目の宗教について語られています。
    キリスト教、イスラム教、仏教、そして、人間至上主義の宗教が語れれています。
    すなわち、自由主義や共産主義、ナチも宗教だとしています。ここも面白いポイントでした。

    いよいよ「科学革命」です
    そのきっかけは、自らの無知を認めることから始まったというところが面白いです。
    科学が無知を前提に、知ることで知識を得ていったとの事。
    その科学の発展、知識の追求において、ポイントが帝国主義と資本主義で、
    「帝国、科学、資本」のフィードバックループが歴史を動かすためのエンジンだったと解説しています。

    さらに帝国に支配された科学技術の発展に伴って、今よりも豊かになるという将来の信頼が生まれ、拡大するパイとしての資本主義の発展につながっていく

    このサイクルがうまくいったのがヨーロッパで、アジアは技術的に遅れたわけではなく、探検と制服の精神構造、価値観、神話、司法、社会政治体制が不足してたとの
    とのこと。

    そして、文明は人類を幸福にしたのか?
    著者はさまざまな観点から語っていますが、ここで仏教の教えが出てきます。
    その辺の仏教本よりわかりやすく語ってくれるのが秀逸(笑)

    そして、今後どのような世界に向かうか?
    最新の科学技術を紹介するとともに、特異点に至ると言っています。

    最後の一文は
    --
    私たちが自分の欲望を操作できるようになる日は近いかもしれないので、ひょっとすると、私たちが直面している真の疑問は、「私たちは何になりたいのか?」ではなく、「私たちは何を望みたいのか?」かもしれない。
    この疑問に思わず頭を抱えない人は、おそらくまだ、それに十分考えていないのだろう。

    そう、十分に考えていません...(笑)

    訳者あとがきを読むことで、本書を振り返る事ができます。これもまたよいです。

    読み応え十分な上下巻でした。

  • 兎にも角にも第20章がぶっ飛んでて面白い。上巻と比べて下巻はやや退屈だったが最終章でそれも吹っ飛んだ。この章限定だがレイ・カーツワイル氏の『The singularity is near』を読んだときに近い興奮を覚えた。

    ハラリ氏の語る未来観は実は新しいようで古い。非有機的生物という発想はホーガンの名作『未来の二つの顔』で記されたものであるし、ハラル氏の認知革命や超知性体生命はキューブリックのモノリスと類似する考え方だ。つまり、それらはSFの中に限り存在した。とうとう妄想力を実体化する「認知の外部変換」の時代に突入した感がある。

    我々がネアンデルタール人を駆逐し他種をUnder controlとしたように、新生生命体も我々を同様の扱いとするだろうか?AI脅威論同様に悲観的未来は幾らでも描けるだろうが、楽観主義者である私は『未来の二つの顔』のような未来が待っているように思う。いずれにせよシンギュラリティ後の世界は想像できないだけに、想像することはとても楽しい。

  • ホモ・サピエンスの歴史を360度全方位から明らかにした素晴らしい本。しかもとても分かりやすい文章と論理展開だから、凡人でも最後まで脱落せずについていけた。

    宗教、科学、資本主義、エネルギー、時間、こう並べてみると何の関連もなさそうだけど、実はサピエンスの歴史の中では全てが関連している。
    偶然か必然かは議論が分かれるが、現在の地球そして人間社会が今の形であるのは、これらの事柄が絶妙なバランスで歴史を重ねてきたからだ。

    サピエンスの20万年歴史の中の直近200年位の間に、武力から科学、家族・地域から個人、侵略から平和へと大きなパラダイムシフトが起きた。

    そして今や人間は、従来は神の領域とされた部分について、かなり多くの部分をコントロールすることができるようになった。
    しかし、人間は神のように絶対的な判断能力は持っていない。だからこそ私たちは今『私たちは何を望みたいのか』真剣に考え始めなければならない。さもないと、神の力を持った制御不能な人間自身によって破滅を呼ぶことだってことありえる。

  • ベストセラーとなった理由として、分かりやすく、簡単すぎず、幅広いジャンルに対して触れている事が挙げられるだろう。経済から歴史、心理学から人類の本質(精神)まで網羅する事で、少しくどくなった辺りでテーマをコロコロ変えるのが秀逸。また転換も不自然でなく世界を俯瞰してる感覚を持たせる筆者、訳者の筆力は素晴らしい。

  • ものすごいボリュームでとても1度読んだだけでは消化しきれない。印象に残ったのは、私たちは壮大な虚構の中に生きているという見方。

  • (2017.05.08読了)(2017.05.01借入)(2017.02.02・14刷)
    副題「文明の構造と人類の幸福」
    上巻は、献本で読むことができたのですが、下巻をどうしようかと思っていたときに、図書館で見つけたので借りて読むことにしました。
    歴史は、人々のやってきたことを後からたどることなのですが、人々のやってきたことにはいろんな側面があるので、色んな切り口があることに改めて気づかされました。
    社会制度、宗教、政治、経済、科学、いろいろありますね。
    断片的な事しか記憶に残っていないのですが、
    コロンブスは、自分の辿り着いたところが新大陸だとは思っていなかったので、「コロンブスの新大陸発見」というのは、間違っている。
    コロンブスの後、続々と新大陸に渡っていく人たちがいたのですが、「インディアンは、人間か?」ということが問題になった時期があります。
    この本では、そのあたりは言及していないようです。あまり関心がなかったのでしょう。
    スペイン人たちが、続々とアメリカ大陸方面に行くことによってカリブ海の島々に住んでいた人たちは、過酷な労働とヨーロッパから持ち込まれた病気によって壊滅しました。
    それと同じことが、クックの遠征の後に続いた人たちによって、オーストラリア、ニュージーランドでも、同じことがあったことは知りませんでした。
    フランス革命は、ミシシッピ会社株の暴落に原因があるという話も、初めて聞いたような気がします。
    1945年8月に日本に、二発の原爆が投下され、多くの人たちが亡くなり、後遺症に苦しみました。これ以後、大きな戦争が起こっておらず、平和が続いている、と記してあります。
    原子爆弾の脅威が、平和をもたらしたのでしょうか? 局地的な紛争については触れていますが、イスラエルが戦っている中東紛争については、著者がイスラエルの人のためか、触れられていないようです。
    原子力発電は、低コストであると言っているようですが、廃棄処理やチェルノブイリや福島の事故後の処理についての費用も含めて考えたコストなのでしょうか?
    現在の経済は、金融商品という妙なものがあって、実態とリンクせず非常に危なっかしい状態のような気がします。経済の論理を突き詰めてゆけばいずれ行きつくものなのでしょうけど、制御するすべを見つけてほしいものです。
    金融商品も、原発みたいなもので、制御の仕方がわからないまま、世の中の勢いに流されて、どこに行きつくのか、人類の破滅に行きつくのか、恐ろしい限りです。

    【目次】
    第3部 人類の統一
    第12章 宗教という超人間的秩序
    第13章 歴史の必然と謎めいた選択
    第4部 科学革命
    第14章 無知の発見と近代科学の成立
    第15章 科学と帝国の融合
    第16章 拡大するパイという資本主義のマジック
    第17章 産業の推進力
    第18章 国家と市場経済がもたらした世界平和
    第19章 文明は人間を幸福にしたのか
    第20章 超ホモ・サピエンスの時代へ
    あとがき ―神になった動物
    謝辞
    訳者あとがき
    原註
    図版出典
    索引

    ●二元論(22頁)
    二元論が非常に魅力的な世界観なのは、人類の思想にとって根本的な関心事の一つである、有名な「悪の問題」に、それが短くて単純な答えを出せるからだ。「世界になぜ悪があるのか? なぜ苦しみがあるのか? なぜ善い人に悪いことが起こるのか?」一神教信者は、世界にこれほどの苦しみが起こるのを全知全能の、完璧に善い神が許す理由を説明するのに四苦八苦する。
    ●近代科学(61頁)
    近代科学は、最も重要な疑問に関して集団的な無知を公に認めるという点で、無類の知識の伝統だ。
    広範な科学研究を何世紀も重ねてきたにもかかわらず、生物学者は脳がどのようにして意識を生みだすかを依然として説明できないことを認めている。物理学者は何が原因でビッグバンが起こったかや、量子力学と一般相対性理論の折り合いをどうつけるかがわからないことを認めている。
    ●統計学(69頁)
    統計学の講座は今では物理学と生物学だけではなく、心理学や社会学、経済学、政治学でも基本的な必修科目になっている。
    ●進歩(76頁)
    科学革命以前は、人類の文化のほとんどは進歩というものを信じていなかった。
    多くの信仰では、いつの日か救世主が現れて戦争や飢饉にすべて終止符を打ち、死さえなくすと信じられていた。だが、人類が新しい知識を発見したり新しい道具を発明したりしてそれを成し遂げられるという考えは、滑稽というだけでは済まされず、不遜でさえあった。バベルの塔の話やイカロスの話、ゴーレムの話、その他無数の神話は、人間の限界を超えようとする試みは必ず失望と惨事につながることを人びとに教えていた。
    ●壊血病(91頁)
    クックの遠征の恩恵を被った分野の一つが医学だった。当時、遠距離航海に出かける船では、半数以上の乗組員が航海中に亡くなることが知られていた。
    それは壊血病という不思議な病気だった。
    16世紀から18世紀にかけて約200万の水夫が壊血病で亡くなったと推定される。
    水夫たちに柑橘類を食べるように指示した。壊血病の一般的な民間療法だった。
    ●アボリジニとマオリ人(93頁)
    クックの遠征に続く100年間で、オーストラリアとニュージーランドのもっとも肥沃な土地がヨーロッパからの入植者によって先住民から奪われた。先住民の人口は最大で九割も減少し、生き残った人々も苛酷な人種的迫害にさらされた。オーストラリアのアボリジニとニュージーランドのマオリ人にとって、クックの遠征は大惨事の始まりで、彼らは今もなおそれから立ち直れずにいる。
    ●鄭和(108頁)
    多くの学者によれば、中国の明朝の武将、鄭和が率いる艦隊による航海は、ヨーロッパ人による発見の航海の先駆けであり、それを凌ぐものだったという。鄭和は1405年から1433年にかけて7回、中国から巨大な艦隊を率いてインド洋の彼方まで行った。なかでも最大の遠征隊は、三万人近くが乗り込んだ300隻弱の船で編成されていた。彼らは、インドネシア、スリランカ、インド、ペルシア湾、航海、東アフリカを訪れた。
    ●信用(131頁)
    信用という考え方は、私たちの将来の資力が現在の資力とは比べ物にならないほど豊かになるという想定の上に成り立っている。
    ●ミシシッピ・バブル(150頁)
    1717年、フランスが勅許を与えたミシシッピ会社は、ミシシッピ川下流域の植民地化に着手し、その過程でニューオーリンズという都市を建設した。その野心的な計画に資金を供給するために、ルイ15世の宮廷に強力なつてのあったこの会社は、パリの証券取引所に上場した。
    ミシシッピ会社株は天井知らずに跳ね上がった。
    恐慌が始まった。投機家の中に、株価が実態を全く反映しておらず、維持不可能だと気付いたものが出たのだ。
    フランスの中央銀行はミシシッピ会社株を買い支えたが、自ずと限度があった。
    フランスの金融界全体がバブルに巻き込まれた。
    1789年、ルイ16世は不本意ながら、フランスの議会にあたる三部会を一世紀半ぶりに招集し、この危機の解決策を見つけようとした。これを機にフランス革命が始まった。
    ●大資本(153頁)
    政府が大資本の言いなりになった悪名高い代表例は、イギリス・中国間の第一次アヘン戦争(1840~42年)だ。19世紀前半には、イギリス東インド会社とさまざまなイギリスの実業家が、麻薬、とくにアヘンを中国に輸出して大儲けした。厖大な数の中国人が中毒となり、中国は経済的にも社会的にも衰弱した。
    19世紀後期には、中国総人口の一割にあたる約4000万人がアヘン中毒だった。
    ●国内標準時(187頁)
    1880年にはついにイギリス政府が、同国におけるすべての時間表はグリニッジの時刻に準ずることを定めた法律を制定するという、前代未聞の措置を採った。歴史上初めて、一国が国内標準時を導入し、各地の時刻や日の出から日の入りまでのサイクルではなく、人為的な時刻に従って暮らすことを国民に義務づけたのだ。
    ●保甲制度(191頁)
    中国の明帝国(1368~1644年)では、保甲制度と呼ばれる制度で民を組織した。10世帯を一つにまとめて一「甲」とし、10「甲」で一「保」を編成した。「保」の成員の一人が罪を犯すと、同じ「保」の成員たち、とくに「保」の長老たちが罰せられた。税も「保」ごとに徴収された。各世帯の状況を査定し、税額を決めるのは、国の役人ではなく「保」の長老たちの責任だった。

    ☆関連図書(既読)
    「コロンブス航海誌」コロンブス著・林屋永吉訳、岩波文庫、1977.09.16
    「古代アステカ王国」増田義郎著、中公新書、1963.01.18
    「インカ帝国探検記」増田義郎著、中公文庫、1975.09.10
    「キャプテン・クック」ジャン・バロウ編・荒正人訳、原書房、1992.10.25
    「ダーウィン先生地球航海記(1)」チャールズ・ダーウィン著・荒俣宏訳、平凡社、1995.06.23
    (2017年5月15日・記)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    文明は人類を幸福にしたのか? 帝国、科学、資本が近代をもたらした!現代世界の矛盾を鋭くえぐる!

著者プロフィール

ユヴァル・ノア・ハラリ(Yuval Noah Harari)
1976年生まれのイスラエル人歴史学者。専門は世界史とマクロ・ヒストリー。
オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻して博士号を取得し、エルサレムのヘブライ大学歴史学部で終身雇用教授として歴史学を教える。軍事史や中世騎士文化についての著書がある。オンライン上での無料講義も行ない、多くの受講者を獲得している。
著書『サピエンス全史』は世界的なベストセラーとなった。2015年にヘブライ語で"Homo Deus: A Brief History of Tomorrow"を出版。その翻訳書『ホモ・デウス』が2018年9月に刊行される。

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