21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考

  • 河出書房新社
4.16
  • (131)
  • (133)
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本棚登録 : 2394
レビュー : 162
  • Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309227887

作品紹介・あらすじ

いま何が起こっているのか――?
すべての現代人必読の21章
1 幻滅――先送りにされた「歴史の終わり」
2 雇用――あなたが大人になったときには、仕事がないかもしれない
3 自由――ビッグデータがあなたを見守っている
4 平等――データを制する者が未来を制する
5 コミュニティ――人間には身体がある
6 文明――世界にはたった一つの文明しかない
7 ナショナリズム――グローバルな問題はグローバルな答えを必要とする
8 宗教――今や神は国家に仕える
9 移民――文化にも良し悪しがあるかもしれない
10 テロ――パニックを起こすな
11 戦争――人間の愚かさをけっして過小評価してはならない
12 謙虚さ――あなたは世界の中心ではない
13 神――神の名をみだりに唱えてはならない
14 世俗主義――自らの陰の面を認めよ
15 無知――あなたは自分で思っているほど多くを知らない
16 正義――私たちの正義感は時代後れかもしれない
17 ポスト・トゥルース――いつまでも消えないフェイクニュースもある
18 SF――未来は映画で目にするものとは違う
19 教育――変化だけが唯一不変
20 意味――人生は物語ではない
21 瞑想――ひたすら観察せよ

感想・レビュー・書評

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  • 【感想】
    ハラリ博士の3部作、「ホモ・サピエンス」「ホモ・デウス」に続く3作目。
    先行きが見えない時代において、今「何」が起きていて、これから「どう」生きればいいのかを導いてくれる本との事でしたが・・・
    前2作と同様で、かなり難しかったので理解しきれなかった(笑)

    要点をまとめると、以下の3点です。
    ①AIやバイオテクノロジーの発達の影響で殆どの仕事が取って代わられ、今後は人類の雇用や暮らしに大きな影響を及ぼす。
    ②沢山の情報が行き交うこの世の中で、虚構や物語に惑わされず、自身の判断によって人生の意味を見つけよう。
    ③自身の判断力を高めるためには情報収集ではなく、瞑想を基本とした「自分との対話」を大切にしよう

    1つ目に関しては、自分じゃどうしようも出来ない時代そのものの流れですよね(笑)
    仕事がAI等に取って代わられてゆく時代を、自分も渡って行くにはどうするのか?今から何を準備するのか?というのが大切なのでしょう。

    2つ目と3つ目については、世の中に蔓延する色んな情報を、自身できちんと取捨選択する必要があるという事でしょう。
    「(誰かが創った)物語を生きるな」とは本当に良い言葉で、世間や周りの情報に振り回されずに生きれたらどんなに良いことか。
    僕自身、ミーハーではないと自負しつつも、やっぱり結構周りの目を気にしちゃってるな~と思う事も多く、そしてそれが自分にとってマイナスになっているので・・・・

    上記の通り、本当に難しい本で、中々理解しきれませんでした。
    「読書」の域を超えている本ではないのでしょうか?もはや「勉強」の域に達しちゃってるよ、こんな難解な論文だと(笑)
    この本がベストセラーだという事は、この本をちゃんと理解できた人が世の中には沢山いるという事なのですね。
    それも「虚構」なのかな?笑

    何にせよ、僕にとっては難解な1冊でした!


    【内容まとめ】
    0.過去2作品と本作品のまとめ
    ・サピエンス全史
    ⇒人間の過去を見渡し、ヒトという取るに足らない霊長類が地球という惑星の支配者になる過程として、「人類は虚構(ウソ)を信じる事が出来た」という結論に至る。
    ・ホモ・デウス
    ⇒遠い将来を探究し、「データ(アルゴリズム)が神である」という予測の元、データを操作する少数の支配者たち「ホモ・デウス」と、情報にただ踊らされる多数の奴隷に別れるという人生を辿る。
    ・21 Lessons
    ⇒「今、ここ」にズームインし、「現時点で何が起こっているのか?何に注意を向け、重要な課題や選択が何なのか?」といった事を考察する。

    1.我々は、物語を失ってしまった。
    20世紀はじめは「ファシズム、共産主義、自由主義」と3つの物語があったが、世界大戦や冷戦を経て、自由主義が主要かつ将来への不可欠の手引きと思われた。
    ところが、2008年の金融危機以来、世界中の人々は自由主義の物語に次第に幻滅し、移民や貿易協定への抵抗が強まり、壁やファイアウォールの人気が回復した。
    今日、中国共産党が歴史の流れに逆行していると自信を持って言い切れる人は殆どいない。
    中でも、主にグローバル化に関わる部分への信頼を失った。

    2.ITとバイオテクノロジーが融合、何十億もの人が雇用市場から削除される。
    あらゆる権力がごく少数のエリートの手に集中し、大半の人は搾取ではなく無用化に苦しむ。

    3.当惑の時代を生き抜くには「強さ」が必要。
    武力ではなく、「レジリエンス(復元力)」のこと。(=教育)
    重要なのは、以下の2点。
    ・情報の意味を理解したり、重要なものとそうでないものを区別できる能力。
    ・大量の情報を結び付けて、世の中を幅広く捉える能力。

    4.物語を生きるな!
    私たちは人生の意味を探し求め、「自分はどんな役割を果たすのか」を説明してくれる物語を欲したがる。
    しかし、物語はあくまで物語。虚構であるので、それに振り回されてはいけない。
    正確な情報のない中で、虚構に振り回されるな。「あくまで虚構だ」と割り切ってしまうのがいい。



    【引用】
    21lessons


    「サピエンス全史」では、人間の過去を見渡し、ヒトという取るに足らない霊長類が地球という惑星の支配者になる過程を詳しく考察した。
    「ホモ・デウス」では、生命の遠い将来を探究し、人間がいずれ神となる可能性や、知能と意識が最終的にどのような運命を辿るかについて、入念に考察した。

    本書では、「今、ここ」にズームインしたい。
    遠い過去や未来についての見識が、現在の問題や人間社会が抱える差し迫ったジレンマを理解する上で、どう役に立つのか?
    現時点で何が起こっているのか?
    何に注意を向け、重要な課題や選択が何なのか?


    p17
    ・幻滅
    20世紀はじめにファシズム、共産主義、自由主義の3つの物語があったが、第二次世界大戦や冷戦を経て、自由主義が主要かつ将来への不可欠の手引きかのように残された。
    ところが、2008年の金融危機以来、世界中の人々は自由主義の物語に次第に幻滅し、移民や貿易協定への抵抗が強まり、壁やファイアウォールの人気が回復した。
    今日、中国共産党が歴史の流れに逆行していると自信を持って言い切れる人は殆どいないだろう。

    我々は、物語を失ってしまったのだ。


    p28
    トランプとブレグジットに票を投じた人の大半は、自由主義のパッケージをそっくり拒絶したわけではなく、主にグローバル化に関わる部分への信頼を失っただけだ。
    民主主義や自由市場、人権、社会的責任の価値は依然として認めているが、これらの素晴らしい関係は、国境止まりにしうると考えている。

    中国は国内政策を自由主義化にするのには慎重であるが、米国や英国のは好対照で、外の世界に対しては遥かに自由主義的なアプローチを採っている。
    自由主義と国際協力に関しては、習近平はオバマの真の後継者のように見える。

    ロシアは軍事力こそ再建したものの、イデオロギー(社会的、社交的)な面では破綻しており、グローバルな価値観を持っていない。
    要するに次から次へと外部的な危機をでっち上げ、国民の視線を(架空の)外部の脅威へと逸らし、いつまでも支配を続ける事ができるのだ。


    p40
    AI革命とは、コンピュータが速く賢くなっただけの現象ではない。
    自慢の「人間の直感」などの選択はすべて謎めいた自由意志ではなく、実際には何十億のニューロンによってなされる「演算」にすぎない。
    優れた銀行家や弁護士も、投資や交渉についての魔法のような直感を持っているわけではなく、繰り返し現れるパターンを認識してより良い選択肢をチョイスしているだけだ。


    p45
    医療にしろ、交通にしろ、自動化にする事で得られるメリットしかない。
    何かルールが変わったり知識(新しい疫病や新薬開発など)が刷新された際も、すべてを瞬く間にアップデートできるからだ。
    また、医療事故や交通事故はえてして人的ミス(それもかなり注意力散漫なもの)であるため、機械化にする事によって死亡者の数を激減させることは容易である。

    勿論、現時点でAll自動化はまだ先の話ではある。
    だが、人間の仕事を守るためだけに、交通や医療分野での自動化を妨げるのは愚行だろう。
    最終的に守るべきなのは、職ではなく人間なのだから。

  • 世界中で大ヒットした『サピエンス全史』『ホモ・デウス』を著したユヴァル・ノア・ハラリ教授の最新刊である。
    この本も非常に興味深く読むことができた。

    ハラリ教授の本の特色は、今まで漠然と「そうだろうな」とか「どうなんだろう」という漠然とした認識や疑問に対して、数多くの理論や証拠を取り出して、ピシッと明らかに明文化して僕たちの前に具体的に示してくれるところが素晴らしいのだ。
    このような体験は名著『銃・病原菌・鉄』を記したジャレド・ダイアモンド氏の著作のように「目から鱗が落ちる」というような新たな知識を与えてくれるというのは違うのだが、この疑問や認識をしっかりと明文化して表してくれるというのもハラリ教授のすごい才能だろう。

    ハラリ教授は、イスラエル人であり、ユダヤ人であり、ヴィーガン(厳しい菜食主義者)であり、男性の配偶者を持つゲイの人物であるが、そういったことを賛美することも卑下することもなく、そういったことも含めて極めて公平かつフラットに、そして誰にでも納得できるような形でまっとうに文章を書いてくれるので、読んでいて小気味よい。
    特に大多数の日本人のようにあまり宗教的な感覚を持っていない人々にとっては、ハラリ教授のユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教等の宗教に対する考察は、非常に分かりやすく腑に落ちるものだ。

    本書を含め『サピエンス全史』『ホモ・デウス』の3作のハラリ教授の著書を読んでいると、人間の歩んできた道や、これから進んでゆくであろう道がなんとなく想像できるようになる。
    まさに頭を使って考えさせられる本である。
    そして、上質な人類学の講義を聴いているような、そして自分が有名大学の聴講生であるかのような、素晴らしい経験ができるのだ。

    数百年以上前の世界であれば、一人の人間の生まれてから死ぬまでの間に、社会の仕組みや制度はそう変化はしなかった。
    親が農業をやっていれば子供も農業を引き継げば良かった。あるいは、職人であれば、子供に同じ職人の仕事を引き継がせればよかったのだ。

    しかし、産業革命以降、人間の生活は目まぐるしく変化していった。
    親のやっていることを子供がそのまま倣えばよかった時代ではなくなったのだ。
    産業革命後、機械や蒸気機関が発達したおかげで、馬車は姿を消し、自動車が社会の主役になった。
    それでは馬車の御者は仕事を失ったのだろうか?
    そんなことはなかった。
    幸いにも、馬車の御者はタクシーの運転手になることができた。

    だがハラリ教授は、今後の社会の変化をこのように危惧している。
    AI時代が発展すると、人間の仕事の根本的な部分で変化が起こる可能性が高いという。

    産業革命の際には、人間は他の職業に転職が可能だった。
    馬車の御者がタクシーの運転手になることができたようにだ。
    しかし、見かたを変えると産業革命で馬車の御者は職を失わなかったが『馬』はその職を失ったのだ。

    将来、人間がこの『馬』と同じ立場にならないと誰が言うことができるのだろうか。
    これと同じことがAI時代には起こる可能性が高いのだ。
    いままで人間が歩んできた過去の歴史を見ると、人間の社会は数百年という長い単位でじわりじわりと変化していった。狩猟生活から農耕生活、そして中央集権的集団という形へだ。

    しかし、今の時代、10年、いや5年という短いスパンで劇的な変化が生じている。
    例えばiPhoneが2007年に発売される以前の通勤通学電車内の風景と現在の通勤通学電車内の風景の違いを考えてみれば一目瞭然だろう。スマートフォンが無かった時代は通勤通学電車内ではみな文庫本や新聞、そして『少年ジャンプ』などの漫画雑誌を読んでいたのだ。
    今では誰もが手の平に乗る光る板をのぞき込んでいる。

    あの時からまだ15年も経っていない。
    それでは今から15年後にはどのような社会になっているのだろう。もしかしたら、語学や各種知識を『学ぶ』という必要性すらなくなる社会が来るのかもしれない。

    こういったことを考えさせてくれるということ、これこそが知的好奇心を満たしてくれるということだろう。
    本書を読んでいると、どんどん新しい分野の知識を知りたくなる、そして自分の目の前の道の先を見通してみたくなるのだ。

    そして本書を読み終わった後、再度『サピエンス全史』『ホモ・デウス』を読みたくなった。

  • サピエンス全史では過去,ホモ・デウスで未来に焦点を当ててきた著者が,著者が現代について記した一冊.

    正直に告白します.挫折しました,,,毎日30~60分の読書を一週間程度継続したにも関わらずこの本は半分超えたくらいにしかなりませんでした.

    歴史学者でもある著者の考察や視点は多くの示唆を与えてくれるものかもしれません.しかし,あまりに難読であると同時に長い.この本もそうですが,多くの洋書には同様の特徴があると感じています.

    自分には「結論ベースで短くシンプルに」まとめられている和書の方が合っていると感じました.話はズレますが,「邦書」という言葉は存在しないようです.邦画,邦楽,洋画,洋楽という言葉があり,洋書もあるのに不思議な話ですね.

    さて,中でも印象に残った部分と自身の行動を以下に示します.

    ○私たちは貿易相手よりも敵のことをはるかに気にする.
    →利益を与えてくれる相手よりも,損害を与えてくる相手の方がよっぽど人間にとっては注意を払うべき対象という意味でしょう.行動に移すべきことがあるとするなら,利を与えてくれる人を軽んじることが無いように感謝することではないかと思います.言い換えるなら日常の中で自分が気づかないうちに享受している利益があると知ることです.
     書店で本を渡してくれる人,荷物を配送してくれるドライバー,飲食店で給仕してくれるバイターなど,多くの人々の与えてくれる「利」は気づきにくいこともあると思います.そんな当たり前に思える利に気づいて,感謝を口にしたいと思います.

    ○グローバルな政治の原理を拒絶する集団が,それなりの広さの領土を継続的に支配できたことはこれまで一度も無い.
    →ISSがそうであるように,そして規模は違えどデモ行進をしたところで政治が(大きく)変わることがないように,結局の所は内側に入って改革を行うことでしか継続的な影響力は保てないのではないかと感じました.外から吠えるのではなく,変革したければ組織の中で影響力を持って,堂々と進言する.これが変革の一番の近道なのかもしれない.今後は(といっても今までも無かったと思いたいけれど)外から吠えないようにします.

    ○人々は自国の選手が金メダルを獲得して国旗が掲揚されるときに,国民として大いに誇りを感じるものの,人類がこのような催しを計画できることにこそ,はるかに大きな誇りを感じるべきなのだ.
    →東京五輪は延期になってしまって多くの日本国民が残念に感じているところでありますが,この指摘はもっともだと思いました.確かに社会通念も価値観も,何もかも違う人々であってもオリンピックの金メダルを授与されることに対しては名誉に感じると思います.これがいかに「当たり前でない」かを歴史学者が問いている.こんなところにも,「当たり前に思える利」があることに気づきませんでした.
     国際オリンピック委員会は1894年に設立されたようです.わずか約120年でここまでの式典に成長させてくれた先人たちに感謝したいですね.

    最も印象に残った言葉は,
    「自らの信念を真理と取りちがえるな。世界が悲惨さに満ちているなら、その解決策を考えよ」

  • 『サピエンス全史』『ホモ・デウス』を世界的ベストセラーにした、イスラエルの歴史学者・哲学者の最新作。
    前2作と合わせた〝人類史三部作〟の完結編という位置づけだそうだ。

    人類史を鳥瞰した『サピエンス全史』、人類の遠い未来までを見据えた『ホモ・デウス』に対し、「本書では、『今、ここ』にズームインしたいと思っている」と、著者は「はじめに」で述べる。
    すなわち、前2作で人類の過去と未来を論じたハラリが、満を持して人類の現在を論じた書なのである。

    現在を論じるといっても、ハラリがたんなる時評の本を書くわけがない。言い換えれば、「『今、ここ』にズームイン」しても、歴史や未来に目を向けないはずがない。
    本書は、人類が現在直面するさまざまな課題を取り上げつつも、それを歴史的視座から論じ、未来への処方箋を提示する内容なのだ。

    具体的には、各章ごとに「雇用」「平等」「コミュニティ」「ナショナリズム」「移民」「テロ」「教育」などの大きなテーマが掲げられ、計21のテーマに即して人類の現在と未来への展望が論じられる。

    人類が人類以上のものに変わるかもしれない遠未来が扱われていた『ホモ・デウス』に対し、本書は現在と、そこから垣間見える近未来が扱われているのだ。

    〝人類史三部作〟を通読して思うのは、やはり『サピエンス全史』は別格に出来がよいということ。
    それに比べれば本書も『ホモ・デウス』も、『サピエンス全史』の長大な「補論」のように見える。

    とはいえ本書も、詰め込まれた圧倒的な情報量、随所にちりばめられた深く鋭い考察によって、再読三読するだけの価値ある書になっている。

    たとえば、「ポスト・トゥルース」という章。
    そこでは、「ホモ・サピエンスはポスト・トゥルースの種であり、その力は虚構を作り出し、それを信じることにかかっている」(これは『サピエンス全史』からおなじみのテーマ)とし、人類史を鷲づかみにする壮大なポスト・トゥルース論が展開されている。ハラリならではの考察といえよう。

    また、前2作と本書を分かつもう一つの特徴は、ハラリが自身について率直に語っていることだ。たとえば、同性愛者であることをオープンにしたのは、本書が初めてだろう。

    あまりに幅広いテーマが扱われているので、正直、私にはピンとこなかった章もある。
    それでも、全体としては読み応えある良書であった。

  • 『サピエンス全史』、『ホモ・デウス』という二冊の世界的ベストセラーを世に出し、人類史の新しい分野を切り拓いたとも言えるユヴァル・ノア・ハラリの新作が『21世紀の人類のための21の思考』である。その数を21にしたのは、当然21世紀に掛けたものである。各章のつなぎ方もそうだが、こういったところで軽い趣向を凝らすのも著者の特色でもある。
    『サピエンス全史』が過去、『ホモ・デウス』が未来についての本であるのであれば、この本は今ここについての本だと著者はいう。出来栄えや本の価値から評価すると『サピエンス全史』や『ホモ・デウス』の方に軍配が上がる。本書の位置づけとしては、前二著、特に『ホモ・デウス』に対する長い補足と言ってもよいかもしれない。また、後で見るが、これまでの著作では表に出ていなかった著者個人の歴史についても敢えて表現された本と位置付けてもよいかもしれない。彼自身にとっても今ここに関する著作であるのかもしれない。

    著者は、前二作が歴史に関する本であるのに対して、この本は「一連の考察」であるという。まずは、その一連の考察を追いかけていこう。

    論を進めるにあたり、現在について考察するための基本的前提としてのテクノロジーの急速な進化について言及する。具体的には、情報(IT)テクノロジーとバイオテクノロジーの双子の革命のことだ。

    「ITとバイオテクノロジーの革命はまだ始まったばかりであり、現在の自由主義の危機の責任を、本当はどこまでその革命に帰せられるかは、議論の余地がある」

    これらの革命は、直接的に雇用にも影響するが、もしかしたら政治にこれまでにない大きな影響を与えるものであるかもしれない。多くの分野・領域がこの革命なしに語ることができないし、当然人類の生命倫理や道徳にも影響を与えるかもしれない。それは、それほど先のことではない。

    「生命を設計し直し、作り変える力を、AIとバイオテクノロジーが人間に与えつつある。程なく誰かが、この力をどう使うかを決めざるをえなくなる - 生命の意味についての、何らかの暗黙の、あるいは明白な物語に基づいて」

    まずは短期的な影響としてコミュニティ、グローバル化、国家、移民などの政治的危機について語られる。その根底には自由主義の危機がある。現代は、新しい社会モデルや政治モデルを考案する時代になるのかもしれない。自由主義の道義的基盤となっていた自由意志が科学的な知見から覆されるとともに、合理性の理由となっていた内面性がビッグデータ技術によって、その人自身より上手く処理される可能性が見えてくるにしたがって、それらを基盤とすることでワークしていた自由主義が危機にさらされるという主張は『ホモ・デウス』の主張の繰り返しでもある。「今やアルゴリズムはあなた個人を差別しかねないし、あなたにはその理由が想像もつかない」というとき、現在の中国のことを闇に言っていると考えてもよいのではないか。中国共産党が歴史の流れに逆行していると自信を持って言い切れる人はほとんどいないだろう。そして、それは中国に限らない。

    「二十世紀の独裁政権にとっての最大のハンディキャップだった、あらゆる情報を一か所に集中する試みは、二十一世紀には決定的な強みになるかもしれない」

    さらに認識していなければならないのは、その変化に対して著者が決して価値評価をしていないことだ。変化は起こる。それをどう受け止めるのかは、あなた次第である。大事なことなので繰り返します、とばかりに自由主義の危機が強く主張されるのは、彼の著作を読む人に対してさえ、それが届いていないことの裏返しであろう。世間では、著者は自由主義の危機を知らせる預言者であり、それを擁護する旗手であるというイメージを持っている人もおそらくは多かろう。もちろんそういう人は彼の本をある意味では読んでいないのだが、それが世間一般がいわゆる現代の知識人に要求するステレオタイプであるからでもある。彼がトランプを批判するが、決して自由主義やヒューマニズムを擁護しないのであり、それこそが彼の思想の価値であるのだ。

    「バイオテクノロジーとITが融合したら、民主主義国家は現在のような形のままでは生き延びられない。民主主義がまったく新しい形に自らを仕立て直すか、さもなければ、人間が「デジタル独裁国家」で生きるようになるかの、どちらかだ」

    さらに自由に続いて、現代において絶対の価値を付与されているように思われる平等も危機にある。「AIが普及すれば、ほとんどの人の経済価値と政治権力が消滅しかねない。同時に、バイオテクノロジーが進歩すれば、経済的な不平等が生物学的な不平等に反映されることになるかもしれない」というのがテクノロジーと平等に対する著者の見方だ。

    ひとまず現代の目の前にある問題として、ナショナリズム、グローバリズム、国家、宗教について語る。
    「まず指摘しておかなければならないが、今日の国民国家は、人間の生態の不変の要素ではないし、人間の心理の避けようのない産物でもない」

    「長期的には、そのような筋書きどおりになれば、上位のカーストが「文明」を自称するものの中に集まり、壁や堀を建設して、外の「野蛮人」の群れからその文明を隔絶し、世界は非グローバル化することさえあるかもしれない」という言葉は、ミシェル・ウエルベックの『ある島の可能性』に描かれた世界と符合する。移民の話やテロの話を語るハラリがウエルベックの小説を読んでいると想像するのは決して的外れの話ではない。『セロトニン』は、ウエルベックのアンサーノベルなのかもしれないと想像してしまう。

    日本は、宗教的には無宗教の人が多いと言われているが、決して例外ではない。少なくとも支配の仕組みとして「宗教」が核をなしたのは、時期的にはまだ100年ほど前の近代日本のことである。

    「その目的を達成するために、日本は固有の宗教である神道を日本のアイデンティティの土台にした。実際には、日本という国は神道を徹底的に作り直した」

    今の宗教原理主義者の自爆テロを全く想像できないという観点で排除する人は次の文を読んでほしい。
    「神道国家の成功の象徴としてもっとも有名なのは、日本が他の大国に先駆けて、精密誘導ミサイルを開発した事実だ。アメリカがスマート爆弾を実戦配備するよりも何十年も前、そして、ナチスドイツがようやく初歩的な慣性誘導式のV2ロケットを配備し始めていた頃、日本は精密誘導ミサイルで連合国の艦船を何十隻も沈めた。このミサイルは、「カミカゼ」として知られている。...このような任務に就く意欲は、国家神道に培われた、命知らずの自己犠牲精神の産物だった」

    そして、日本ではあまり大きく問題視されていないのが、「移民」の問題である。トランプがメキシコ国境に壁を作るなどと言っているが、欧州における移民の問題は、彼らの過去の歴史と倫理のためにより複雑な問題となっている。「普遍的な自由主義の価値観を実現するという約束の上に築かれたEUは、統合と移民という難問のせいで、崩壊の瀬戸際にある」ー 移民問題を取り上げた『西洋の自死』でも語られている通り、西洋の人権主義と移民流入の実態が大きな矛盾を起こしている。そこにはグローバル化や国境を越えたデジタルによるネットワーキング、それとは対極にあるテロを含めた宗教対立によって「国家」という概念が危うくされているのである。

    ここでも、宗教が新たな課題として立ち昇ってくる。著者自身はユダヤ教の出自であり、ユダヤ教の家族、コミュニティの中で育ってきた。それにも関わらず、宗教的価値観からは現代においては個人的には自由であるべきだと考えている。「私が宗教をフェイクニュースと同一視したために腹を立てる人も多いかもしれないことは承知しているが、それがまさに肝心の点だ」ー「とはいえ、私が宗教の有効性や潜在的な善意を否定していないことに注目してほしい。むしろ、その逆だ。良くも悪くも、虚構は人間の持つ道具一式のなかでもとりわけ効果的だ。宗教の教義は、人々をまとめることによって、人間の大規模な協力を可能にする」

    もちろん自身のユダヤ教も含めて宗教がこの後の世界において支えになるとは考えられない。著者は次のように書く。
    「どこの神殿も訪れず、どんな神も信じないというのも有力な選択肢だ。過去数世紀を振り返ればわかるように、道徳的な生活を送るためには、神の名を持ち出す必要はない。必要な価値観はすべて、世俗主義に提供してもらうことができるのだから」

    しかしながら世俗主義も現代の根本的な問題に対して開かれている。それは、『ホモ・デウス』でも何度も繰り返された「自由」に関する疑義だ。
    「サピエンスは一人残らず「意見の自由に対する権利」を生まれながらにして与えられており、したがって、検閲は何らかの自然の法則に違反すると信じるなら、私たちは人類についての真実が理解できていない。あなたが自分を「不可侵の自然権を持っている個人」と定義しているかぎり、自分が本当は何者かはわからないし、あなたの社会やあなた自信の心(「自然権」が存在するというあなたの信念も含む)を形作った歴史的な力を理解できない」
    その通り、「自然権」は歴史的に何ものかに対抗するために必要に駆られて人工的に作られたものなのだ。そして、それらが独占していた領域に侵犯する新しいテクノロジーに対して対抗する術を失いつつあるのかもしれない。

    最初に述べたテクノロジーの進化により、さらに違った意味でも「自由」は制限されることとなる。
    「バイオテクノロジーと機械学習が進歩するにつれ、人々の最も深い情動や欲望を操作しやすくなるので、ただ自分の心に従うのは、いっそう危険になる」

    そういったことすべてを考慮した上で、著者が他者に対して、そして自分自身にも求めるのは、謙虚さだ。合理性や個人性についても、それが神話であり、人工的な構築物であることをまず認めることだ。真実や正義をかざすときにわれわれは躊躇いをもたなくてはならない。

    「この世で屈指の虚構は、世界が複雑であることを否定し、無垢の純粋さ vs. 悪魔のような邪悪さという絶対的な構図で物事を考える、というものだ」
    世界を複雑なままで捉えようと努力をする。それが究極的にはほとんど不可能であるとしても、である。

    21章からなる本書の最後から二番目に置かれた章は、「意味」である。
    「私は何者か?人生で何をするべきか?人生の意味とは何か?人間は太古からこうした問いかけを投げかけ続けてきた。どの世代も新しい答えを必要とする。なぜなら、何を知っていて何を知らないかは、変わり続けるからだ」
    しかしながら、「哲学も宗教も科学も、揃って時間切れになりつつある。人は何千年にもわたって人生の意味を論じてきたが、この議論を果てしなく続けるわけにはいかない」のだ。

    真の疑問は、私たちは何を望みたいのかかもしれないと『サピエンス全史』で看破した著者は、ここでも次のようにその主張を繰り返す。「もし「自由意志」という言葉を、自分が欲することをする自由という意味で使うなら、たしかに人間には自由意志がある。だが、「自由意志」という言葉を、自分が欲することを選ぶ自由という意味で使うなら、人間に自由意志はない」

    もっと当惑せよ、とハラリは言っているだ。それが謙虚さだ。一方、絶望したり、パニックに陥るのは傲慢だと言う。なぜなら、自分がこの世界がどの方向に行っているのかわかっているとうぬぼれているからだ。
    「過去ときっぱり訣別し、古い神々や国家ばかりか、自由と平等という現代の核心的な価値観さえも超越する、完全に新しい物語を生み出す時がきたのだろうか?」

    最後の章は「瞑想」だ。著者は、ヴィパッサーナー瞑想に信を置き、読者にもある意味では勧めようとしている。それを否定はしないのだが、この章を最後に置くことが、全二著とは異なる点として、個人の歴史に踏み込んでいる点だ。個人的な話としては、自らがユダヤ教のコミュニティで育ったことや、その宗教や信徒に対する価値評価も行っている。
    また、さらに本書の中で同性愛者であることをカミングアウトする。そういったことがもう決して意外ではない世界に変わったことも驚く。それが、ヒューマニズムであり、平等主義によって実現したことは間違いない。そして彼が21歳になるまでそのことに自覚的でなかったことをもって、たいていの人は自分のことをよく知らないのだ、という。2050年の世界においては、そんなことはきっとないと。同性愛者という性向が、社会的環境から生まれるのか、生得的なものなのかという議論はここではおくとして、自分の性向を自分よりもよく知ることが技術的に可能であるということの例としてはおそらくはもっともわかりやすい例のひとつとして挙げている。本書の流れの中でも「21」という数字とともに象徴的なエピソードであるが、これが著者にとって『サピエンス全史』や『ホモ・デウス』とは異なる性質のものであることを象徴的にも示しているように思われた。


    最後に全21章がどのようなものであるのか列挙しておきたい。

    1. 幻滅
    2. 雇用
    3. 自由
    4. 平等
    5. コミュニティ
    6. 文明
    7. ナショナリズム
    8. 宗教
    9. 移民
    10. テロ
    11. 戦争
    12. 謙虚さ
    13. 神
    14. 世俗主義
    15. 無知
    16. 正義
    17. ポスト・トゥルース
    18. SF
    19. 教育
    20. 意味
    21. 瞑想

    ここで扱われたテーマのほとんどは『ホモ・デウス』の中でも出てきたものである。『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』の長い補足、という位置づけはおそらくは間違いではないと思う。グローバルな視野をもった一級の知識人としての彼の思考をなぞるにも適した本。

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    『サピエンス全史(上)文明の構造と人類の幸福』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/430922671X
    『サピエンス全史(下)文明の構造と人類の幸福』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4309226728
    『ホモ・デウス 上: テクノロジーとサピエンスの未来』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4309227368
    『ホモ・デウス 下: テクノロジーとサピエンスの未来』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4309227376
    『西洋の自死: 移民・アイデンティティ・イスラム』(ダグラス・マレー)のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4492444505

  • 『ホモサピエンス全史』『ホモ・デウス』の超ベストセラーを有し、気鋭の歴史学者であり、現代最高峰の知性と謳われるユヴァル・ノア・ハラリ氏の最新作。”21”Centuryにかけて”21”のlessonsを説く。

    ハラリ氏は歴史学者というより未来学者に類すると思うが、彼の視点は極めて鋭くリアリストだ。その指摘は狂乱や妄信や固定観念を排し、ときに残酷な響きを持ちときに『リア王』の道化のように振る舞う。AI時代に訪れる「無用者階級」大量発生は、必然でありながら多くの有識者が黙殺している視点だ。訪れる未来を推定しつつ現代の抱える矛盾や課題を冷静に分析し捉えないと本当に有意義な解決策は出てこない。

    「謙虚さ」の章以降は、テーマが価値観や概念を扱い且つ”辛辣”を多方面に配慮した結果(ユダヤ教やキリスト教やイスラム教やヒンドゥー教を等しく捉えよ!)、冗長的で論点が不明瞭になっている点がやや残念。誰にも何にも遠慮せずハラリ節を読みたかったところだ。

    本書は現代社会の問題を正しく捉えて再定義し、常識を疑いアップデートし、物語の呪縛から我々を解き放つインサイトを与えてくれる本だ。

  • 「サピエンス全史」「ホモ・デウス」に続いて、ハラリさんの本は3冊目だけど、とにかく常に圧倒される。まさに知の巨人だと思います。この本を簡単にまとめることはできないけど、自分の中に響いたのは3点。ひとつめは「神経科学や行動経済学のような領域での研究のおかげで、科学者は人間のハッキングがはかどり、とくに、人間がどのように意思決定を行なうかが、はるかによく理解できるようになった。」その結果、「ITとバイオテクノロジーが融合することで、間もなく何十億もの人が雇用市場から排除され、自由と平等の両方が損なわれかねない。ビッグデータを利用するアルゴリズムがデジタル独裁政権を打ち立て、あらゆる権力がごく少数のエリートの手に集中する一方、大半の人は搾取ではなく、それよりもはるかに悪いもの、すなわち無用化・存在意義の喪失に苦しむことになるかもしれない。」というところ。ホモデウスにも同様の話が出ていたと思う。やがて人間はテクノロジーに凌駕されてしまうということ。そして、富める者はより富み、場合によってはすべてを手に入れることになるかも知れないが、多くの人は無用化・存在意義の喪失に苦しむことになるというもの。

    2つ目は、サピエンス全史に繋がるのかもしれないけど、「ホモ・サピエンスが他のあらゆる動物を凌ぎ、地球の主人になれたのは、個人の合理性ではなく、大きな集団でいっしょに考えるという、比類のない能力のおかげだった。そして、人間は社会的な動物であり、そのため、人間の幸福は他者との関係に大きく依存しているということ。愛や友情やコミュニティがなければ、幸せになれる人などいるだろうか?だから幸せになるためには、少なくとも家族や友人やコミュニティの仲間を気遣う必要がある」ということ。

    そして、3つ目は人間の協力関係を形づける宗教の役割。「人間が世界を支配しているのは、他のどんな動物よりもうまく協力できるからであり、人間がこれほどうまく協力できるのは、虚構を信じているからだ。宗教の教義は、人々をまとめることによって、人間の大規模な協力を可能にする。その一方で、美しかろうが醜かろうが、そうした宗教伝統はみな、特定の人々を団結させる一方で、彼らを隣人たちから区別する。一神教が間違いなくやったのは、多くの人を以前より不寛容にすることで、それによって一神教は宗教的迫害と聖戦を広めるのに貢献した。それでは、宗教はどうやって人をそこまで信じ込ませるのか?すでに何千年も前に聖職者やシャーマンがその答えを見つけている。すなわち、儀式だ。儀式は抽象的なものを具体的にし、虚構を現実に変える摩訶不思議な行為だ。あらゆる儀式のうち、犠牲を払う行為が最も強力だ。そして、でっち上げの話を一〇〇〇人が一か月間信じたら、それはフェイクニュースだ。だが、その話を一〇億人が一〇〇〇年間信じたら、それは宗教」とまで言い切る。仲間と協力と宗教の関係がクリアになったような気がする。

    こうした中で、人間の苦しみについても少し考察がある。「苦しみが現れるのは、私たちがこれを正しく認識しそこなっているからだ。人は、どこかに永遠の本質があり、それを見つけてそれとつながれさえすれば、完全に満足できると信じている。この永遠の本質は、神と呼ばれることもあれば、国家と呼ばれることもあり、魂、正真正銘の自己、真の愛と呼ばれることもある。そして、人はそれに執着すればするほど、失望し、惨めになる。ブッダによれば、人生には何の意味もなく、人々はどんな意味も生み出す必要はないという。私たちは、意味などないことに気づき、それによって空虚な現象への執着や同一化が引き起こす苦しみから解放されるだけでいい。」そして、筆者自身の経験から「自分の苦しみの最も深い源泉は自分自身の心のパターンにあるということだった。何かを望み、それが実現しなかったとき、私の心は苦しみを生み出すことで反応する。苦しみは外の世界の客観的な状況ではない。それは、私自身の心によって生み出された精神的な反応だ。」という考察をしている。
    何とも奥深い。折に触れて改めて目を通したい。

  • 過去 サピエンス全史
    未来 ホモデウス
    現在がこれ

    生命とは何か、人生の意味とは何か、前二冊に繋がる形で深堀している本作。しかし最後はよくわからなかった。前半8割は前二冊の焼き増しなので、内容はあまり濃くない。個人的には全二冊までで良いかと思った。



    I テクノロジー面の難題
    1 幻滅 先送りにされた歴史の終わり
    ・ファシズム、共産主義を差し置いて世界中に自由をもたらした自由主義は格差をはじめとした諸問題に一般大衆の幻滅はピークに達している。
    ・自由主義は、他のどんな選択肢と比べても優れてると言われるが、生態系の破壊と技術的破壊に対して何ら明確な答えを持っていない。パイは増えない、良くて現状維持。
    ・21世期の大衆迎合主義の反乱は、人々を搾取する経済的エリート層ではなく、人々をもはや必要としない経済的エリート層に向けて展開される存在意義の喪失との戦いかもしれない。そこにトランプやブレグジッドがある。

    2雇用 仕事がなくなる
    ・ITとバイオテクノロジーの融合により、人間の行動原理までAIが掴むことができるようになることで、人間ならではの能力においても人間を凌ぐかもしれない。
    ・AIが持つ人間と無縁な能力で特に重要なのが持続性と更新可能性
    ・メンテナンスやデータ分析、サイバーセキュリティで新たな雇用を生んでいる面もある。
    ・芸術は生化学的反応なので、共感感動する作品はAIがパーソナルに作り上げることが可能だと思われるが、医薬などの研究開発はまだ人間に強みがあるかもしれない。しかし問題は高度な専門性が求められ、非熟練労働者の雇用問題は解決できない。
    ・チェスでは人間の叡智を結集したストックフィッシュに対し、アルファゼロは最新の機械学者で自分自身との対戦を4時間繰り返し行い、28勝72分だった。型破りな創造的な手は機械から生まれる。
    ・人間が消費者として必要とされ続けるかもわからない。
    ・最低所得保証、最低サービス保証という手はあるが、国単位で実行しても必要な人に届かない可能性がある。例えば先進国の服はバングラで作られていて失業するのは彼ら。また最低の定義は難しい。
    ・人の満足は期待にかかっており、期待は境遇による。平均的な待遇改善を目指しても失敗するだろう。ユダヤ教超正統派の男の半数は生涯働かず妻の稼ぎと政府の支援で生活する。教義の実践に捧げるがその幸福度は高く一つのモデルになりうる。意味とコミュニティの探究

    3 自由 ビッグデータが見守る
    ・選挙や国民投票はどう考えるかではなく、どう感じるかを問うている。人は合理的に判断しない、感情で判断。合理的に判断するならば全員に聞く必要もない。
    ・データのオススメに従うようになると、人は自らの意思決定というものが無くなっていく。
    ・ロボットが主人に反抗することより、従順なことを恐れるべき

    4 平等 データを制する者が未来を制する
    ・財産こそが長期的な不平等の前提条件、狩猟採集民の生活な平等主義的だった。
    ・多数の人間が秩序を持って動くために階層は必要だと考えられていた。しかし20世紀以降は格差の縮小へ動いている、これは労働力として健康な人が必要だから。しかし実際には富が一部人に集中する格差が広がる。
    ・21世期は更に能力の増強や健康まで格差が広がるかもしれない。
    ・データ所有の規制をどうするかが大きな問題

    II 政治面の難題
    5 コミュニティ 人間には身体がある


    6 文明 世界にはたった一つの文明しかない
    ・西洋文明とイスラム原理主義のぶつかりに見えるがどちらもグローバル文化の枝の違いくらいの差だ。

    7 ナショナリズム グローバルな問題はグローバルな答えを
    ・ナショナリズムの側面は、よそ者よりも自分に近い者を好むのを基本としつつ、時折逆を取ること。
    ・巨大な制度は人々の忠誠心なくしてなし得ない。民主主義は穏やかな愛国心なくしてなしえない。
    ・ナショナリズムへの基本的な批判は戦争に繋がること。しかし実際に暴力と繋がってもナショナリズムの過剰は押さえ込まれなかった。
    ・しかし核の登場により、その魔物を押さえ込むコミュニティを発展させた。しかしもし自国第一主義を優先すれば逆戻りしかねない
    ・大国が国を閉じようとしているように見えるが、グローバルネットワークなくして基本的な生活財すらどの国も手に入らない。
    ・共通の敵は共通のアイデンティティを作り上げるための最善の触媒であり、今少なくとも気候変動、核、技術的破壊という三つが存在する。
    ・人は家族、同業者、国家だけでなく人類と地球にも忠実になり、グローバルなアイデンティティを形成する必要がある。国政レベルでは太刀打ちできない。グローバル政府の設立ではなく、各国がグローバルな問題や利益を重視することを意味する。

    8 宗教 神は国家に仕える
    ・宗教は知識の源から権威の源に格下げされてしまった。それでも人類の力が集団の協力を拠り所にし、そのために共有された虚構を信じることが必要である限り、宗教や儀式は重要であり続ける。

    9 移民 文化にも良し悪しがあるのか
    ・多くの国が不法移民に目を瞑り、期限つきで外国人労働者を受け入れることで安価な労働力、才能に与ろうとする。一方で移民は望まないとしてこうした外国人の身分を法律で認めることは拒む。正規国民が搾取する階層社会を生む。
    ・移民受け入れることは義務なのか?
    ・移民ご受け入れるべき基本的価値観はどこまでなのか

    III 絶望と希望
    10 テロ パニックを起こすな
    ・テロは恐れが主体で政治情勢の変化を期待する軍事戦略、実際の死者はそれに対して少ない。
    ・重要な決定を敵の手に委ねる、敵を暴れさせて目的を達成する。テロリストへの過剰な反応はテロそのものより遥かに大きな脅威となる

    11 戦争 人間の愚かさ
    ・冷戦、日本や中国の成長、イラン、イスラエルいずれも昨今は戦わないことによって経済成長を成し遂げている。他の人に代わりに戦ってもらうのが最善策だと理解しているようだ。
    ・中東で何兆ドルも使ったアメリカは大失敗。唯一成功したのはロシアのクリミア征服。これは誰も抵抗しなかったから。それでも威信と引き換えに払った戦争費用や経済制裁、資本の逃避は対価として遥かに大きい。
    ・21世紀に戦争の勝利が難しくなったのは、経済資産が人、天然資源などから知識へ変わったから。
    ・人間の愚かさを過小評価してはならない。経済的利益がなく、損失が大きいとはいえ、世界大戦が起こらないとはいえない。

    12 謙虚さ あなたは世界の中心では無い
    ・それぞれの宗教でそれぞれが全ての祖であるかのように語られている。

    13 神 その名をみだりに唱えてはならない
    ・不可思議な神の根本的な特徴は、具体的なことを何一つ言えないこと。
    ・道徳とは神の命令に従うことではなく、苦しみを減らすことであり、道徳的な行動に神話も物語も必要ない。

    14 世俗主義 自らの影の面を認めよ
    ・独占を主張しない、観察と証拠に基づいた真実と思いやりを重視する。
    ・人権運動は、宗教的偏見や暴君に対して豊富な反対論や防御策を繰り広げてきたがら過剰な大量消費やテクノロジーユートピアからは守れない。
    ・どの宗教やイデオロギーや信条にも負の面があり、道を誤ることを自分にはないと甘い考えを持つのは避けるべきだ。
    ・世俗主義が一つ有利な点は、進んで誤りや盲点を認める建前となっていること。

    IV 真実
    15 無知 思っているほど多くを知らない
    ・一人一人は驚くほど何も知らず、集団でものごとを考えている。
    ・人は自分の無知に気づけていない、他人の知識を自分のもののように扱うから。合理性よりもコミュニティの集団思考の考えにしがみつく。
    ・権力者は権力の中心にいるほど世界を歪んだ形でしか見れず、事実に触れるには希少な時間を浪費させる必要がある。

    16 正義 正義感は時代遅れかもしれない
    ・人の数が膨大になったことで、私たちの道徳感覚は圧倒されてしまう。グローバルな因果関係が分かりにくい。私たちが実際に何をしているのか把握するのが極めて複雑になった。
    ・近代以降の歴史上で最大級の犯罪は憎しみや強欲だけでなく、無知と無関心に負うところが大きい。しかし何をもって知ろうという真摯な努力なのか。、
    ・誰かが裏で糸を引いているという陰謀論は想像しやすいが、根も葉もない幻想に過ぎない、現代世界はそれには複雑すぎる。

    17 ポストトゥルース いつまでも消えないフェイクニュース
    ・特定の軍事紛争だけでなく、歴史全体や国家全体が偽造されうる。でっち上げの話を千人が1ヶ月信じたらフェイクニュースだが、10億人が千年信じたらそれは宗教だ。
    ・真実がホモサピエンスの課題リストの上位に入ったことは一度もなかった。
    ・人々に真実を信じるように頼むよりも、馬鹿げたことを信じるように求める方が遥かに優れた試金石になる。正しいという折り紙付きの事実しか信じる気がないなら、何の証になるのか。
    ・真実と力は別々の道を歩み始める。力を求めると、どこかの時点で虚構を広め始めなくてはならない。
    ・自分の偏見をあびき、情報源の確かさを確認するために時間と労力をかけるのは私たち全員の責任だ。
    ・信頼できる情報が欲しければ、たっぷりお金を払い、もし自分にとって格別重要に思える問題があったら、科学文献を読む努力をする。

    18 SF 未来は映画とは違う
    ・SFはAIや気候変動のようなものをどう理解するか決めるであろう、その意味で価値がある。
    ・姓は有機的な多細胞生物の特徴であり、女性AIの映画はAIではなくフェミニズムがテーマである場合が多い。
    ・マトリックスの中から脱出してもさらに大きなマトリックスの中にいるだけ。マトリックスの中だろうが結局は自分の脳の中の神経細胞の反応であることには変わりない。
    ・恐るべきは、アルゴリズムによって力を与えられた少数のエリートと力を奪われたホモサピエンスから成る巨大な下層階級の争い

    V レジリエンス
    19 教育 変化だけが唯一不変
    ・詰め込みには意味がない。氾濫した情報の意味を理解したり、重要なものを見分けたり、大量の情報の断片を結びつけて世の中の状況を幅広く捉える能力。
    ・もう時間は長くない。生命そのものの方向づけをするのは今の世代であろう。
    ・大人に頼り過ぎない、良かれと思ってやってはいるが、大人も世の中を理解できずにいる。

    20 意味 人生は物語ではない
    ・輪廻転生、ダルマ、命の輪、自然の法則
    ・物語は、私に何かの役割を与え、私の地平線の外まで続いていれば、私の人生に意味を与えられる。
    ・人は特定の物語を強く信じていると、その物語のごく些細な点にまで強い関心を抱く一方わその範囲外には目が入らなくなる。私たちの想像力は簡単に尽き果てさせることができる。
    ・文化的なもの、生物学的なもの、どちらにせよ何かを後に残す外で安全に思える。
    ・最も安全でつつましい物語はロマンスかもしれない。
    ・もし人生の真の意味を問い、その答えとして物語を与えられたら、それが間違った答えであることを承知しなければならない。厳密な詳細は関係ない。どんな物語も間違っている。
    ・個人のアイデンティティは物語の上に築かれるため、知性を使って物語の真偽を問うより物語を合理化しようとする可能性の方が遥かに高い。
    ・物語は所属集団の上に築かれているため、これを疑うのは実に恐ろしく、そうした人は追放や迫害を受ける。
    ・物語を信じるようになるには儀式が必要、儒教で孔子は礼を大変に重んじた。また、犠牲を払うほど信じる気持ちが強まる。他人に苦しみを与えても効果は出る。この物語が真実か、自分は冷酷な悪者か、という二者択一を迫られるから。
    ・人は同時にいくつかの物語を信じることができるし、真実だと確信したものもない。だからこそヒトラー帝国が破綻しても自殺した将校は1割だった。そしてその後凄まじい速度で復活した。
    ・この信じきれない部分が宗教の悩みの種であったが、近代では疑う事が自由の前提条件になった。
    ・既成の物語に自分を当てはめ意味を見つけるのではなく、美しいと感じるのはあくまで自分自身であり、宇宙に意味を与えるのは自分である。
    ・欲望が単なる生化学的反応だと知ると、自分が何者でどんな存在か見当もつかなくなる。その後の発見の旅では、自己は絶えずアップデートされる虚構の物語であると認める必要がある。

    21 瞑想 ひたすら観察せよ
    ・瞑想により、瞬間瞬間の感覚がどんなものかわかり、自分の心の動きを制御できないことに気づく。怒りは何度も経験しているが、外の対象に対してではなく、自分自身の反応に気付ける
    ・脳がニューロンとシナプスの生化学物質ののやりとりに対して、心は痛みや快感といった主観的な流れであり、両者の結びつきは全く見当がついていない。
    ・訓練して心を体系的に学ぶこも、これが瞑想、そうやって自分自身を吟味し、自分が本当に何者なのかをじっくり吟味する事ができる。

  • 「サピエンス全史」「ホモ・デウス」の著者の本。
    雇用、文明、宗教、テロ、戦争、神、無知、正義、SF、教育、意味、瞑想などといった切り口で語られる「物事の見方」?的な話は興味深いのだけど、短時間で一気読みしようとしたこともあり、どこまで理解できてるかは自信がない。
    ただ、終章が瞑想というのは…と思ってしまう。
    それだけ、瞑想がものの見方や感じ方に影響を与えるんだろうなと思いつつ、日本では瞑想を学ぶ場所をちゃんと選ばないとエライ目に遭いそうだし…。

  • サピエンス全史とホモ・デウスが面白かったこともあって、図書館にあったので、つい借りてしまった。なかなかナウな話が多いし、それなりにサクッと読める。トラXプが終了し、ブレXジットの結果のデータが出揃い、色々な今起こってることが推移した後に、”古い話”として再読してもええかと思う。今(July2020)読むのはタイミングが悪く、イライラさせられることも多かった(主観)。ジュー色強く考え方の違いがわかりやすく出ているのが興味深くはあるが、それゆえにどうしても、よそ事感がぬぐえない。江戸時代にフェレイラが苦悩したであろう”日本人”の宗教観というか”あり方”について、ふと考えてしまった。私も多分宣教者を「あ”ーーもう!!」とイラっとさせるんだろうなと想像。生粋の日本人型信心をもち、それを誇りに思っている。神が1つだけ、というのは、うさんくさすぎる。十人十神でええではないか。

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著者プロフィール

歴史学者、哲学者。1976年イスラエル生まれ。オックスフォード大学で中世史、軍事史を専攻し博士号を取得。現在、ヘブライ大学で歴史学を教授。『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21 Lessons』。

「2020年 『漫画 サピエンス全史 人類の誕生編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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