21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考
- 河出書房新社 (2019年11月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (472ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309227887
感想・レビュー・書評
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サピエンス全史より、こっちのほうがいいですね。
サピエンス全史はあたかも史実を書いてるように誤解させるところがあったけど、こっちは著者の意見というのがハッキリしてるので、そういう見方もあるのかーと素直に読めます。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
サピエンス全史では、宗教、お金、国家など、あらゆるイデオロギーを「フィクション」と結論付けてあぶくに踊る社会のバブルをパチンッと割ってみせた。本書はそのお得意シリーズの第二弾と言って良いだろう。
※前著「ホモデウス」は人類の未来予想の色合いが強かった。そういう意味ではハラリさんのフィクションにどっぷり浸かる内容と言って良い。
今回のお題は、仕事、自由、平等、ナショナリズム、移民、テロ、戦争など現代社会が抱える問題。今回も宗教と神の存在に切り込んでいる。人々を信じ込ませる言説の後にパチンと割ってみせるお得意パターンは、「マジックの種明かし」動画でも観るような爽快感がある。
政治家や指導者が「犠牲」「永遠」「純粋」そして「救済」のどれかを連呼するようなら身構えよう。厄介な状況の始まりかもしれない。 -
『サピエンス全史』『ホモ・デウス』と同じ著者の本.テーマ別に課題やポイントをまとめたもの.半分以上は既に読んだ話だが,いろいろ示唆に富んでいる.外出時に簡単に持ち出せないので,読み終わるまでにずいぶん時間がかかってしまった.
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220722*読了
「サピエンス全史」を数年前に読んで、ずっとこちらも読みたかったのだけれど、なかなか踏み出せず…。
賢人たちの意見をまとめた別の新書をきっかけに、やっと読むことができました。
今とこの先を考えるための21の思考が書かれているのですが、特に心に残っているのは「雇用」と「教育」。
テクノロジー、バイオテクノロジーが発達する未来は、便利になって、長生きできて、と明るく見えてしまうのだけれど、そうなった時に仕事を失ってしまう人がいる。
しかも、今も生活に苦しんでいる人の仕事がなくなってしまう、と思うと楽観視はできない。
教育もだんだんと変わってきてはいたとしても、詰め込み型の学校教育では通用しなくなってしまう。
そう考えた時に、子どもたちにどんな風に学んでもらうのがいいのか。
こんな風に一つひとつの章を読みながら、思考することこそを著者は望んだのではないでしょうか。
この本を読む余裕もなく生きている人がいる。その事実を受け止め、この本をを読む機会に恵まれた自分は何を感じ、考え、行動していくのか。深淵な気持ちになります。
学者じみた説き方ではなくて、事実を並べながら、押し付けがましくなく問いかけてくれる点も、私がユヴァル・ノア・ハラリ氏を推す理由です。 -
ユヴァルは綺麗な目をしているゲイだ。その事をこの本でも明らかにしている。LGBTでは有名な台湾のオードリータンとも対談し、動画がアップされている。両氏ともに多弁で非常に面白い内容である。
性別を常識の枠組から乗り越え、宗教を冷静に批評するユヴァルの知性は、それらフィクションを超越したからこそ得られる視点だろう。サピエンス全史で明かした認知革命以降、現代の我々を取り巻く虚構の物語とその危うさ、歴史学者の分析的な視点を哲学者の態度で貫く。どんな文化背景を纏おうとも、最後は肉体を宇宙の一構成要素に委ね、AIには実装され得ぬ「意識」に回帰し瞑想に沈むのだ。
ユヴァルの連想を辿りながら、思考を重ねていく。遥かに深く多面的な思考が存在感を示し、私の既成概念を押し除け、時に対峙する。素晴らしい読書体験だった。
思考中に幾つかの警鐘。無用者階級にシフトする人間の存在意義。AIのアルゴリズムに解析された人間自身の疑似ニーズをターゲットにした、AIによる生産活動のサイクルにより、生産だけではなく消費もAIに代替される。人は何のために生きるのか。意味を定めず、しかし子育てこそが純粋な人間の仕事となるベーシックインカムの世界。共産主義的ユートピア。意識を持ち得ぬAIは決して危険だと思わないが、小麦の奴隷さながら、人間が嬉々としてアルゴリズムの奴隷になり得はしないだろうか。今、まさにこの兆候は出始めている。
虚構の物語は、合理化により見破られている。異なる文化、宗教、人種においても、ドルや核兵器は共通の価値を持つ。国家という虚構を崩した後に辿り着く世界観は、デジタルを使いこなした後に到来するユートピアかディストピアか。この本で、ユヴァルのファンになった。 -
いろんな考えの人がいる中でかなりグルーミーながらもどことなく人生捨てたものではない感じを出してる。
直接投票はどう考えるかを問うのではなくどう感じるかを問うもの。自由意志は幻想で、自らの意思決定は生化学的なアルゴリズムの計算結果であり、ビッグデータアルゴリズムに24時間監視されるようになれば、人間はアルゴリズムにハッキングされる。シンギュラリティには否定的だが、意識と思考は違うとか、SFでAIが女性を模していたらそれは女性解放がに女性優位となるのを恐る男性の心理の表れとか鋭い洞察も。グローバル化によって、現代においては文明は一つ。生産において重要な資産が土地、ものから知識へと変わり、戦争で得られるものがなくなった。神の名をみだりに唱えないは、口実や名目に神を出さないということ。世俗主義の道徳性や知的な謙虚さ。ポストトゥルースの時代と言われるが、虚構を創り出し信じるというホモ・サピエンスの能力を考えれば人間は常にポストトゥルースの時代に生きてきた。人生に物語性、意味を求めるには虚構が必要だが、絶対的に確信させるものはなかった。まずは苦しみに注意を向け、それが何かを調べることから、物語ではない世界や人生の意味を知ることにつながる。そして心は何かを知る方法として瞑想は有用な手段の一つである。 -
読了しました。
読書会に一緒に参加していたママ友のプレゼンがとっても上手で、早々にポチっとして手にした本です。
著者は、「ホモデウス」「サピエンス全史」で世界的に有名な方です。
本書は、ホモデウスが「人の未来」、サピエンス全史が「人の過去」に続いて、「人の現在」をつまびらかにしたものであり、書名にある21のテーマに基づいて、かつそのテーマがストーリーとなって紡がれています。
テーマには、戦争、雇用、自由、コミュニティ、宗教、正義、教育など惹かれるものばかりです。
人はこれまでの文化、言葉、宗教、教育、歴史観など何らかの人とのつながりの中で成長しており、多かれ少なかれ何らかの影響を受けてます。
誰かが人の現在を描き出すと、なんらかの属性が少なからず影響し、知ってか知らずか主観的なものになってしまいがちです。
著者は、ユダヤ人であり世界的な目線ではマイノリティに属しますが、著者の博学さ、鋭い目線から紡ぎだされる、人の現在について、「あっ!そうみるのか。」「それはちがうかも」「未来だと思っていたのに、すでにそうなのか」など感じることが多く、あげられるテーマの一つ一つについて、数多くの視点で客観的に語られています。
正直、著者の知識がすごすぎて、まったく理解できないところもあります。おそらく自分自身にそういった考え方を持ち合わせてないので理解できないものもあると思います。
しかし、難しい言葉で語られているわけでなく、世界的にベストセラーというだけあって450ページある本書も、あれよあれよと読み切ってしまうほどのソフト感です。
通勤電車で本を読んでいるのですが、本書をみて周りを見わたすと、同じ風景なのに今までと違ったものの見え方が自然に見えるような本でした。時々そういう本に出合いますがこれが本書です。
著者は、頭が良すぎるのか、ちまたにあふれる情報はフェイクばかりで、真実を常に追い求める姿勢の持ち主です。グローバルな人の今を知りたい方、基本的な価値観を考えている方にお勧めの本です。 -
最後は矢継ぎ早という感もあったが、幅広い領域で唸らされる問題提起がされており、刺激を受けた。
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ずっと気になっていた人。最初から上下巻はきついかな、と思いこれを選んだ。
読む前の予想は、『Think clearly』系統。
だけど、読後感は全然違う。
難しいところは多かったけど、読んでよかった一冊。
自分の把握した感じは、
「テクノロジーの進歩で問題だらけ。
立ち向かうには世界中で手をつながないとならない。
今の世の中、地球の裏側の人も無関係ではいられないのだ。
一つの文化や宗教を妄信せず、その狭い定義から抜けて探求することが、これからの世界を生きる力になる」
みたいな感じ。
テクノロジー関連で『おバカな答えもAIしてる』を読んだとき、楽しかったし勉強にもなったけれど、小さな不安も覚えた。「本当にこんな楽観的でいいのかな?」と。
『21Lessons』でその不安は具体的に書かれていた。想像した以上のことで、恐ろしくなった。 -
科学技術、宗教、社会、文化などの多様な側面から、この社会への展望を述べる
【感想】
audiobookで聴いているが、難しい本だった。取り扱うテーマが広すぎて、この本を通じて著者が何を言わんとしているのかが掴みきれなかった。タイトルに結論が書いてある本ではない。著者が非常に博識で、宗教、政治、戦争、ITと社会変化について統合しながら見解、知見を述べていくのだが、なかなか1本にまとめて理解することができなかった。それぞれが独立した話のように感じてしまい、具体的なインプリケーションを抽出できなかった。
機会があれば、紙の本でメモを取りながら、再トライしてみたい。