Invention and Innovation: 歴史に学ぶ「未来」のつくり方

  • 河出書房新社
3.45
  • (2)
  • (9)
  • (8)
  • (3)
  • (0)
本棚登録 : 215
感想 : 9
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309229140

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 格差のイノベーションが必須
    新たな発見、発明は新たな社会を作るが、古いものは抹消され、形を変えてゆかざるを得ない。そこにはあらゆる格差が生まれ拡大する可能性がある。新たな技術・製品で豊かになる者とそうでない者の差は膨張し、貧富の差が対立、暴動、戦争にもなりかねない。今後地域間、所得、医療、教育格差を解消させて行くイノベーションが必要だと感じた。風習・慣習などで残すべきモノ、コトは、日本の旧態依然の習慣・文化など焦ったいと映るかもしれないが人間味ある安定安心幸福感があるのではないかと思う。

  • 昨今乱用されがちな"Invention""Innovation"という言葉を批判的思考と過去事例を持って再考する一冊。「ブレイクスルー」という単語を見かけることは多いが、科学や技術が飛躍的進化を遂げることは稀である。論文であれば(一応)査読というプロセスがあるものの、我々は未検証の歴史的発見のニュースを日々大量に浴びている。著者の論調は、時に筋違いもしくは的外れのようにも感じるが、楽観や妄想に捉われることなくファクトベースで捉えるという重要な視座を与えてくれる。なお、本書は発明を3つのカテゴリーに分けて歴史的変遷が述べられている。

    「歓迎されていたのに、迷惑な存在になった発明(有鉛ガソリン、DDT、フロンガス)」「主流となるはずだったのに、当てがはずれた発明(飛行船、原子力発電所、超音速飛行)」「待ちわびているのに、いまだに実現されない発明(ハイパーループ、窒素固定作物、制御核融合)」

  • <目次>
    第1章  発明とイノベーション~その長い歴史と現代の狂騒
    第2章  歓迎されていたのに、迷惑な存在になった発明
    第3章  主流になるはずだったのに、当てがはずれた発明
    第4章  待ちわびているのに、いまだに実現されない発明
    第5章  テクノロジー楽観主義、誇大な謳い文句、現実的な期待

    <内容>
    発明は英語でインベンション。これとイノベーションをかけたタイトルである。この本では、さまざまな発明のうち、成功したが、問題点が多く、現在はほぼ使われていないもの。一瞬良いものに見えたが、他のインベンションや失敗から、現在はもう見られないもの。期待は高いが(もしくは高かったが)、いまだに社会に貢献するほどの成果を上げていないもの。こうした例が複数詳細に説明される。第2、3章では、政府や企業が、実験結果の不具合を隠蔽したり、意図的に見ないふりをしたりした。もしくは当時は有効だったが、地球への負荷が高すぎたものなどがあげられる。第4章は、実験上は効果が見られたり、可能性が語られるが、実用性に問題のあるものがあげられる。最終章でその問題点をまとめている。科学は進歩するのだが、誰もがその着実な部分よりも、先進性に目が向きすぎて、問題点や実現性の低さに目を塞いでしまうのだ…。しかしこの本では、科学万能ではなく、人間の方の問題を多く語っている。

  • タイトルからインベンションやイノベーションを推奨するものかと思いきや真逆、現実主義で理想を追いかけることもよいが今解決すべき他の問題もあるだろうと警鐘している。事例が多く、エネルギーやテクノロジーなどの専門分野の話しが多いので読むのが大変。専門家や学者向けの本かな

  • 発明の成否はあとになって過去を振り返ったときに初めてわかる

  • 「INVENTION AND INNOVATION:A Brief History of Hype and Failure」(2023)の翻訳。

    [目次]
    第1章 発明(インベンション)とイノベーション-その長い歴史と現代の狂騒
    イノベーションとはなにか--その失敗と成功
    イノベーションは加速化している?
    「失敗したイノベーション」の三つのカテゴリー
    過去を振り返る

    第2章 歓迎されていたのに、迷惑な存在になった発明

    有鉛ガソリン
    エンジン内に残された問題
    いちばん手っ取り早い解決策
    不正確な名称
    毒性をめぐる議論
    廃止への道
    避けられたはずの悲劇

    DDT
    5億人の命を救った化学物質
    悪影響の初報告
    『沈黙の春』の衝撃
    使用禁止の決定をめぐる議論
    マラリア対策における役割
    初期の成功が災いした発明

    クロロフルオロカーボン類(フロンガス)

    「無毒」で「不燃」の冷媒
    「いかなる意味でも危険はない」
    国際協定を結ぶ
    1920年代後半の状況に逆戻り
    まったく予測不可能な失敗

    第3章 主流となるはずだったのに、当てがはずれた発明

    飛行船
    次世代の期待の星
    大戦中の軍事利用
    航空史上初の快挙
    突如として迎えた終わり
    軍用飛行船の復活
    消えた商用活用の夢
    復活と消滅を繰り返す夢

    核分裂反応を利用した原子力発電
    なぜアメリカは原子力発電所を建設することにしたのか
    石炭火力よりも「安い」発電
    第二次原子力時代が訪れるという期待
    実現しなかった夢とその代償
    言い訳はできない
    成功した失敗

    超音速飛行(スーパーソニック・フライト)
    超音速飛行への誤解
    なぜアメリカの超音速機開発は頓挫したのか
    <コンコルド>の教訓
    アメリカのスタートアップによる新たな夢

    第4章 待ちわびているのに、いまだに実現されない発明

    ハイパーループ--真空(に近い)空間で移動する高速輸送システム
    200年以上前からあるコンセプト
    磁気浮上式鉄道のアイデア
    高速輸送システムの新たな商業プロジェクト
    課題はいまなお解決していない

    窒素固定作物
    「緑の革命」を起こした発明
    利点の多い発明にも欠点はある
    マメ科植物のような能力を穀類に
    三つの方法
    あとどのくらい時間がかかるかは答えられない

    制御核融合
    商用化への道筋
    注目すべき実験
    マスメディア報道の誤り
    実際どこまで進んでいるのか
    常温核融合は科学か

    第5章 テクノロジー楽観主義、誇大な謳い文句、現実的な期待

    「ブレイクスルー」ではない「ブレイクスルー」の数々
    テラフォーミングからブレイン・コンピュータ・インターフェースまで
    新薬開発、長距離航空輸送、AI

    「加速化するイノベーション」という根拠のない説
    急速な指数関数的成長
    低い指数関数的成長
    現代文明の基盤を築いた10年間

    私たちがもっとも必要とするもの
    「がんとの戦争」
    地球規模での脱炭素化
    もっとも発明が必要とされている分野はどこか

    訳者あとがき
    参考文献
    索引

  • 素晴らしき「発明(インベンション)」は必ずしも「イノベーション」にあらず。歴史を振り返りながら、失敗したイノベーションを明らかにするとともに、今「ブレイクスルー」などと言われるイノベーションの問題点などについて解説する。


    第1章 発明(インベンション)とイノベーション―その長い歴史と現代の狂騒
    第2章 歓迎されていたのに、迷惑な存在になった発明
    第3章 主流となるはずだったのに、当てがはずれた発明
    第4章 待ちわびているのに、いまだに実現されない発明
    第5章 テクノロジー楽観主義、誇大な謳い文句、現実的な期待

  • ・歓迎されていたのに、迷惑な存在になった発明
     有鉛ガソリン、DDT、クロロフルオロカーボン類(フロンガス)
    ・主流となるはずだったのに、あてがはずれた発明
     飛行船、核分裂反応を利用した原子力発電、超音速飛行
    ・待ちわびているのに、いあmだに実現されない発明
     ハイパーループ、窒素固定作物、制御核融合

    加速化するイノベーションという根拠のない説

全9件中 1 - 9件を表示

著者プロフィール

カナダのマニトバ大学特別栄誉教授。エネルギー、環境変化、人口変動、食料生産、栄養、技術革新、リスクアセスメント、公共政策の分野で学際的研究に従事。研究テーマに関する著作は40冊以上、論文は500本を超える。カナダ王立協会(科学・芸術アカデミー)フェロー。2000年、米国科学振興協会より「科学技術の一般への普及」貢献賞を受賞。2010年、『フォーリン・ポリシー』誌により「世界の思想家トップ100」の1人に選出。2013年、カナダ勲章を受勲。2015年、そのエネルギー研究に対してOPEC研究賞が授与される。米国やEUの数多くの研究所および国際機関で顧問を務める。これまでに米国、カナダ、ヨーロッパ、アジア、アフリカの400以上の会議およびワークショップに講演者として招待されるとともに、北米、ヨーロッパ、東アジアの多くの大学で講義をおこなう。日本政府主導で技術イノベーションによる気候変動対策を協議する「Innovation for Cool Earth Forum(ICEF)」運営委員会メンバー。おもな著書に、『エネルギーの人類史』(青土社)、『エネルギーの不都合な真実』(エクスナレッジ)。

「2021年 『Numbers Don't Lie』 で使われていた紹介文から引用しています。」

バーツラフ・シュミルの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×