- Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309240459
感想・レビュー・書評
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この本は、欧米の読者向けに書かれていると見るべきだろう。私には西洋の伝説の参照例がほとんど理解できなかったし、絵や写真も文章とどのように関連しているのか、考え込んでしまった。キリスト教圏の民族の素養がある人向けに書かれた本、という認識がないと読書中に挫折する。
初めの章は、ユングが書いて河合さんが訳した章なのだが、この章が特にわかりにくい。85歳のユングの文章は、老人よくあるあるの、偏見、くどさが目立つ。それに、ユングには、東洋人は野蛮な人間というバイアスがかかっているのが読み取れる、これにはがっかりした。(ユングだけではなく欧米人全体が基本的にそうなんだと思う。イエローモンキーなのかな~日本人は)
なので、反面で、河合さんの日本人向けに読み下した、いろいろなユング的な本は、日本人の私の頭脳に浸透するように書いてあると痛感した。
うまく説明できないのだが、西欧(スイス)でのキリスト教とユングの関係は、東洋(日本)での仏教と河合さんとの関係と同じではないかと、私は思うようになった。ユングが生来的にキリスト教徒であるように、河合さんは、生来的に仏教徒なんだと思う。この差は大きく水と油のよう相容れないように感じるのだが、どうなんだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読めば読むほど夢は個人の持ち物ということを念頭において慎重に扱われるってイメージ
タイプ論の『感覚は我々に何かが存在していることを告げ、思考はそれがなんであるかを告げ、感情はそれが快感を与えるかどうかについて告げ、そして、直観はそれがどこからきてどこへ行くのかを告げる。』
元々感情が合理機能に分類されているのがよく理解できていなかったから、すごい腑に落ちた
つまり、感情には快と不快という基本感情があって、「自分にとって快であるか不快であるか」という、確固たる価値判断基準のもとに働いているというふうに考えると確かに合理的だと思いました。 -
タイプ論の発表、フロイトからの離脱など、「なぜそうするに至ったか」というストーリーを書いた晩年の著作。というかかなりの部分をお弟子さんに書かせているので彼が監修した本。色んな苦悩に対して救いがあります。たぶん再販か改訂版なんですが見事な装丁ですね。美しいです。四六版てとこもキュート。
訳者は河合隼雄、元文化庁長官ということで今や少し香ばしい立ち位置の方になっちゃいましたが、本書は1975年の出版ですからバリバリ現役の時ですね。訳本であることを感じさせないセンスを感じます。
上巻の前半はユング自身が執筆したもの。 -
ユング本人とその弟子たちによって、一般の読者向けに企図された作品。
始めこの仕事の話を持ちかけられた時、ユング自身はきっぱりと「ノー」と断ったらしい。しかし、
「自分の書斎に座って世界から訪れてくる偉い医者や心理学者に話しかけるかわりに、公共の場所に立って多くの人たちに演説をしていた。そして彼らは(ユングの)いうことを熱中して聞き、それを理解するのだった。」(本文より抜粋)
という夢を見たユングは、その後改めてこの仕事について懇請されたときようやく承諾した、というエピソードは興味深い。 -
ついにナマ(訳書だけど)のユング著作。ユングが一般人に向けて書いた唯一の本であり、晩年はこの執筆にほとんどの時間を費やしたという。だからもう☆5。権威主義とかいわれても★5。いいものはいいの。
実際、短い文章で、わかりよく、書かれていて、面白い。ユング派心理学というもの自体、おとぎ話や神話をベースに考察するなど、抽象度が高く、『ウケる』学問なのではあるが、やはり文章の面白さというのはその人の人間性に依拠するところが大きい。訳が河合氏で、これまた文章がうまい人が訳したわけなのだが、どんな例を持ち出すのか、どのルートで語りかけるのか、そこからユングという人間を読み取ることができる。批判者に対して常に攻撃的であることも、フロイト批判に項を割いたこともしかり。独善的な論調であることもしかりだ。
独善的―自分の考えに対して全く弱腰でないところ、それは良いであると思っている。ここで、この著作を一人で書き上げる事をせず、複数の優秀な研究者たちと協力したということを考えてみる。それは「解釈は様様にある」という自らの考えに基づいているのであろう。だがそれは自らの解釈とは違くものを許容するということでもあり(ユングの影響を強く受けた研究者たちなので、その差異の大きさは下巻を読んでから判断するところではあるが)、『単なる』独善とは一線を画しているとも言える。自分の考えをつよく信じるという点で独善的であり、それでいて自分以外の人間を巻き込んで客観性を求めるという姿勢は、みならうべきところである。
ユング心理学を学ぶことで楽しいところは、芸術作品や著作に対して、新たな視点から評価を下すことができるようになる点である。?のヘンダーソンの論文がそれ。
5年前あたり、ダンブラウンの『ダ・ヴィンチ・コード』が流行り、主人公の象徴学者ラングドンによる宗教芸術の解説がいろいろな議論を呼んだ。あれは歴史的な分析にとどまっていたと記憶しているが、心理学的な視点から分析すれば、まったく新しい『ダ・ヴィンチ・コード』ができるだろう。興味深い。 -
なんやかんやでめっちゃ時間がかかってしまったけど
おもしろかった。
意識は日々進化し、作られている点。
キーワード…トリックスター・うさぎ・赤い角・双生児(P172) -
最初の第一部がユングで、残りの部分は彼の弟子が執筆している。
英語タイトルの
Human and his symbolというのがかっこいい。hisだってさ。