ヘーゲルを読む

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309241746

作品紹介・あらすじ

「難解な哲学」という、かたまったヘーゲル像をふっくらとしたゆたかな言葉でほぐしながら深く味わう。「哲学史講義」「歴史哲学講義」をわかりやすい日本語で完訳、ヘーゲル・ルネッサンスの契機を作った著者の待望の最新刊。

感想・レビュー・書評

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  • ヘーゲルにかんする著者の文章を収録している本です。論文というよりはエッセイに近いスタイルで書かれたものが多いようです。著者のヘーゲルに取り組む姿勢は一貫してはいるものの、主題が多岐にわたっており、一冊の本としてのまとまりにかける印象もあります。

    著者は、ヘーゲルが近代が形成されつつあった現実のなかで思索を展開したことに、とくに注意をはらっています。たとえば「ヘーゲルの『美学講義』とカントの『判断力批判』をくらべれば、思想の質のちがいは歴然としている」と著者は述べます。カントの思想が展開される場所は、超時間的な「美」の本質が位置する平面であったのに対して、ヘーゲルは人類が歴史のなかで美に対してどのようにかかわってきたのかを問い、その大きなうねりをとらえることに努力を傾けています。

    また著者は、ヘーゲルの最初の著作「フィヒテとシェリングの哲学体系の差異」に、後年のヘーゲル哲学への予感を見ようとしています。ヘーゲルはこの論文のなかで、当時の宗教や政治における分裂に言及し、ふたたび統一を求める時代の要請に哲学はこたえなければならないと主張しています。ドイツ観念論において、分裂と対立を代表するのがフィヒテの哲学であり、統一を代表するのがシェリングの哲学でした。しかし、現実世界の分裂はほんらい、現実の世界において統一を求めるのでなければならないはずです。それでもあえて現実世界の分裂が哲学上の統一を求めると主張するのであれば、「哲学」の概念そのものが、現実世界の分裂を取り込めるほどの具体性をもったものであるということを意味しています。著者は、ヘーゲルが求めた「哲学」が、まさにそうしたものだったと主張します。その後のヘーゲルの歩みは、現実からの超脱によって哲学上の優位性を獲得していたドイツ観念論に、現実の分裂と統一を持ち込もうとする試みだったと見ることができると著者は主張します。

    現実世界における「近代」の形成過程と取り組みつつみずからの哲学を構築していった哲学者としてヘーゲルを解釈する著者の見方に、アカデミズムにおけるヘーゲル研究の狭隘さを批判する意図を見て取ることもできるように思います。

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著者プロフィール

1960年生まれ 専修大学法学部教授。[専門]理論言語学,生成文法理論にもとづく英語統語論。
[著書・論文]"Swiping Involves Preposition Stranding, Not Pied-Piping," a paper read at GLOW 30 colloquium held at the University of Tromsø, 2007. "On Swiping," English Linguistics (Journal of the English Linguistic Society of Japan), 23: 2, 433-335, 2006. " Reflexive Binding and Its Interactions with Phase System," The World Linguistic Research (『言語研究の宇宙―長谷川欣佑先生古希記念論文集』), 53-69, Kaitalisha, Tokyo, 2005. "A Note on Traces/Copies and LF Movement of Reflexives," UCI Working Paper in Linguistics 6, ed. by Ruixi Ai et al.,1-16, 2000.

「2009年 『Anglo-Saxon語の継承と変容Ⅲ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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