日本社会がオウムを生んだ

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309242149

感想・レビュー・書評

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  • 知名度が低そうな本だが、必読の書レベルにしたいくらい良かった。哲学的な話や、元信者の専門の天文学的な話もあったりして、理解が追いつかない所も多かった。

    現代社会の虚しさや、自己否定の気持ちを激しく持った若者が惹かれていったとのこと。自分は高校・大学時代にまさにそんな心境だったところ、プロテスタントキリスト教に救われた。本来は危険な宗教ではないが、キリスト教であっても、信仰はその人の捉え方次第で、簡単に危険なものになると、15年間の自分の信仰生活や周りの信者を見てよく分かる。

    何を絶対視するか、そしてそれによって自分がどんな人間になっていくのかをしっかりと確認する事が大事だと思う。

    あと、麻原彰晃が育ちの過程で増大したと思われる世の中への怨みがましい気持ちや怒りを持つのは危険だと再確認。心を喜びで満たしておきたい。

    宮内氏が、自分がカルトにハマらない理由は、若い頃にドストエフスキーとかの深い文学に触れて、あらゆる人間性の側面や極端な思想を、読書を通して知ることによって免疫ができたからと言っていて、とても納得した。信者(幹部レベル?)の人が文系ではなく理系が多かったという事も、それに関係しているのではともあった。

    終末思想は、まさに聖書に頻繁に出てくるので、この捉え方を間違えるととても危険になる事が分かった。終末を意識するあまり、オウムの様に自分達でそれを起こしてしまうというのは、とてもありがちだと思う。その危険性が分かっていたからこそ、キリストは終末の時期について一切言及しなかったし、人間が立ち入ったり操作できるものではないとしていたのだと思う。聖書には、終末(キリストの再臨)は誰の目にも明らかにやってくると書いてあるので、子育てや仕事など日々与えられている地味な使命に最善を尽くす事しか私達には出来ない。

    キリスト信仰についても、常に自分の姿勢や、共同体の姿勢をしっかり見張り続けたい。身を委ねるべきなのは共同体ではなく、主なる神だけにしたい。

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著者プロフィール

1944年ハルピン生まれ。鹿児島県立甲南高校校卒業後、アメリカへ渡る。ニューヨークで通算13年暮らし、世界60数カ国を歩いた。
早稲田大学客員教授、大阪芸術大学教授などを歴任。
著書『南風』(文藝賞)、『金色の象』(野間文芸新人賞)、『焼身』(読売文学賞 芸術選奨文部科学大臣賞)、『魔王の愛』(伊藤整文学賞)。ほかに『グリニッジの光りを離れて』、『ぼくは始祖鳥になりたい』『金色の虎』、『永遠の道は曲りくねる』など多数。

「2019年 『南風』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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