- Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309244549
作品紹介・あらすじ
人間の隠された本性を科学的に実証し世界を震撼させた通称"アイヒマン実験"-その衝撃の実験報告。心理学史上に輝く名著・待望の新訳版。
感想・レビュー・書評
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アイヒマン裁判を基にした、当時イェール大学教授のミルグラムが考案した心理学実験。
あらゆる階層、職業から選ばれた先生役の被験者が、学習者役(これはセミプロの役者)が間違える毎に電気ショックを与えていく、さらに間違いが加算すると電撃が強くなると言うもの。
苦しむ学習者を前に、どこで被験者が指示系統に対し異議、またはリタイヤを申し出るかを色々設定を変えて記録したもの。権威に対する服従がどのようになされたのか、正義の履き違え等わかりやすく書いてある。
「訳者あとがき」と「蛇足」は必読。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
歴史的に有名なミルグラムの実験については著作も多いが、本人が書いて、山形さんが訳すこの本が一番確実な気がして購入。わかりやすかった。
年月を経ても色あせない新鮮な実験だと思う。人間の心に潜む暗黒面をくっきりと浮かび上がらせる。 -
アイヒマン実験という有名な心理学実験についての本。
テレビで紹介されたこともあるので、知ってる人は多いと思う。
■どんな実験?
一般の人に「学習と罰の関係を調べる実験です」と言って協力してもらう。
一人は先生役、一人は生徒役に。
生徒が回答を間違えたら、先生は罰として電撃のスイッチを押さないといけない。
しかも、実験者から「間違えるたびに電撃をどんどん強くしてください」と言われる。
生徒は実は協力者で、電撃が強くなると悲鳴をあげたり、痛がっている演技をする。
さて、先生はどこまで電撃を強くするだろうか?
どの時点で実験者(権威)に逆らって、実験をやめるのだろう?
(※先生が罰をためらったり助言を求めた場合は、
実験者が「続けて下さい」とうながし、
それを4回言っても「やめたい」と言う場合、実験中止)
■結果
「人が痛がってたら、無理してまでやらないだろう」という予想が多かったが、
結果は40人中25人(62.5%)が最大の電撃を与えた。p54
時に人々は嫌悪感を示し、強く緊張しながらも実験を続けた。
なぜ実験者に反抗できなかったのか、一体何が人々を縛っているのか。
つづき:
http://haiiro-canvas.blogspot.jp/2014/05/blog-post.html -
久々に「ヤバ」い本に当たってしまったようだ。ごくごく平凡な者が、戦争の名の下にほんの2・3ヶ月で大量に人を殺す人間になりえる(その可能性が大いにある)というのは、非常に恐ろしいことだ。つまり、事と次第によれば、自分があるいは友人がそうなってしまうということを意味するからだ。権威というものが、人間の行動を制限し拘束するその力は非常に強力であることが、諸実験の生々しい結果とともに突きつけられる。衝撃的だ。どうして人間は「権威」というものに安々と服従してしまうのだろうか。それはある種の秩序からくる圧力と、報酬・罰の相互作用によるものだという。一般に権威に従えば、報酬が得られ、反発すれば制裁されることになるからだ。多くの人は権威というものからつまり自分より上位から発せられる命令に従うようにできているようだ。前述の通りそれは秩序の維持のためでもある。集団になると流されやすくなるという実験結果もむべなるかなと思った。しかし、実験のサンプル数が有効な数字か疑問は残る。同時に、時代性、国民性など含めた横断的な試行というものがあればより説得力が増したであろう。その点は残念だ。
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アイヒマン実験の実験内容が詳しく書いてあり面白かった。
実験結果だけでなく、その実験過程における細やかな心情の機微が書かれていて素晴らしかった。 -
本書の著者、スタンレー・ミルグラムは通称・アイヒマン実験と呼ばれる人間の服従心をテーマにした心理実験を行ったことで有名です。
アイヒマン実験とは、「実験者に命じられると、被験者は"被害者"に対してどの程度の電撃を与えるか」と言う事を確認する実験でしたが、その余りにも予想外な結果により大きな論争を引き起こしました。
本書は、この実験のミルグラム自身の手による具体的な実験手順の解説、実験結果の詳細、実験に対する分析・所感と言った内容が載っている本です。
全15章からなる本書ですが、
1章で実験内容及びその結果に対する概説、
2章から9章で具体的な実験手法の解説とその結果の提示、
10章、11章でなぜ人間は服従するのかと言う分析と服従のプロセスの解説、
12章では被験者が感じた緊張と実験者に対する非服従の原因とそのプロセスの解説、
13章では被験者が"被害者"を傷つけたのは人間が持つ攻撃性によるもので、権威への服従によるものではないと言う意見に対する反論、
14章では実験手法に対する疑問や指摘に対する反論、回答など
そして最終章の15章では、原著の執筆当時の社会的な関心事(ベトナム戦争におけるアメリカ軍の残虐行為)と実験結果をリンクさせ、権威への盲目的な服従の危険性を強く警告しています。
また15章の後に補遺として2章分のスペースを使い、実験に対して倫理的な批判を浴びせてきた批判者に対する反論等が載っていました。
途中、10章に「人間に服従心が生まれたのは、進化の過程で服従心を持った方が有利だったから」と言う内容が検証なしに載っている点が気になりましたが、それ以外については色々と参考になる内容でした。
実の所、アイヒマン実験に関してその概要を以前少し聞いていました。
なので、大体この様な内容が書かれているのだろうなあと想像しながら本書を読んでいたのですが、様々なケース、例えば被験者に命令する実験者(権威者)が複数おり彼らの間で意見が食い違ったケースや実験者が電撃の犠牲者になったケースなど様々な変則的な条件における実験内容も載っており、その点が予想外でまたミルグラムの研究チームは様々な条件を設定して実験を行っていた事が確認できました。
その為、以下の様なこの実験分析結果
「人間が独立的に行動する場合の行動指針と組織など権威グループの中に取り込まれた場合の行動指針は違い、権威に命じられれば一人では不可能な残虐行為も可能になる。そして一度権威グループに取り込まれるとそれを抜け出すのは至難の業」
は、只の一つの参考意見程度の代物ではなく、かなり真実を突いているのではないかと思いました。
色々と考えさせてくれる内容です。
一読をお勧めします。
"#尚、本書の最後には訳者によるミルグラムに対する反論が<蛇足>と名付けられて載っています。
#この<蛇足>、例えば309ページにおいて、被験者と実験者に反感を持つ集団との同調と解釈できる例を実験者以外の権威への服従と解釈するなど、訳者は本書の内容が記憶にないのかと言った疑問を感じる内容でした
#この様に言っては何ですが、本当に蛇足になった感じです・・・・" -
人は権威に従う。その内容の如何に関係なく。
A、B、C、……。意思決定における因子の比較において、権威は強く機能し、自己正当化などの他因子への影響も生じる。他人に苦痛を与える行為でさえ、権威からの命令は人の良心を押しやり、行為の実行へと押しやっていく。
しかしながら、単純化されたモデルのなかで行われた権威への服従に関する心理実験を、スタンレー・ミルグラムは広く社会全体の考察に結びつけている。それは権威による理由付けがアウシュヴィッツやアブグレイブでの人々の行動に影響を及ぼしたと述べているが、それは権威がひとつの変数として認められたに過ぎず、権威が人の残虐性のすべての根源というわけではない。 -
イエール大学という「権威」の指示で、「先生役」(被験者)が「生徒役」(実は役者)に罰を与える。電気ショックの電圧は、間違いが増えるたびに徐々に上がっていく。「生徒役」は抵抗し、苦しみ続ける。
当初この実験は「人道的に先生役の被験者は実験を継続できないだろう」と予想される。しかし「先生役」の被験者は、生徒役が苦しむのを見て、確かに実験を継続することに抵抗をしめすが、権威ある実験者が責任を負うことを保障すると。電圧を上げて実験を継続してしまう。
権威者に服従してしまうナチスの心理を体現しているため、別名アイヒマン実験と呼ばれている。
この本を読んで、権威に服従する心理を理解したつもりになるのはたやすいが、わが身を振り返ったときに、数多くのパターンの実験の中で浮き彫りになった、特に自己弁護の際立っていた婦人の例を、わたしたちは笑えないだろう。
翻訳の日本語も読みやすいだけでなく、山形氏らしい2種類用意された気取らないあとがきも、読後の理解をさらに深めてくれる。 -
置かれた環境により人は如何に行動するか、自分の良心とは関係なく、「権威」に従うかということを、実験を通じて立証したミルグラムの実験の本。
内容は濃い。
が、実験結果はもう少し短く、要約程度であれば、読みやすかったと思う。
なので★4つ。
■引用(補遺2 個人間のパターン)
しばしば人の行動をきめるのは、その人がどういう人物かということではなく、その人がどういう状況に置かれるかということなのだ、ということである。 -
0703-0709
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権威が命令すれば人は殺人さえ行うのか?
人間の隠された本性を科学的に実証し、世界を震撼させた通称〈アイヒマン実験〉──その衝撃の実験報告。心理学史上に燦然と輝く名著、山形浩生による新訳決定版!