賭博/偶然の哲学 (シリーズ・道徳の系譜)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309244556

感想・レビュー・書評

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  • 人間存在の偶然性について哲学的に考察をおこなっている本です。

    本書でまずとりあげられるのが、「タカモト式」と呼ばれる競馬の予想法です。「タカモト式」では、日本の競馬はすべてJRAの仕組んだレースであり、しかもJRAはその結果をさまざまなサインを用いてファンに伝えているという「世界観」にもとづいていると著者はいいます。こうした「世界観」は、偶然的な世界のうちに必然的な法則の兆候を読み取ろうとする、人間の思考のありようをカリカチュアライズしたものとしてみなすことができるでしょう。

    第二章では、九鬼周造とドゥルーズという二人の哲学者がとりあげられ、彼らの思想を著者自身の観点から読み解きつつ、「賭ける」という人間の行為はけっきょくのところ、世界の偶然性に対してどのように向きあうことなのかという問いが追及されています。最後に著者は、フーコーの生権力論などを手がかりに、偶然的な世界を計算可能なものとみなすリスク社会論の前提を吟味しなおす試みをおこなっています。

    著者の問題意識については理解できたように思いますが、本書の議論を通じて示された偶然性に対する感受性が、哲学的にどのような水準に位置づけられるのかという見通しがなかなか得られず、もどかしさを感じてしまいました。

  • [ 内容 ]
    競馬をめぐるかつてない洞察にはじまり、ドゥルーズ/九鬼周造/フーコー/ドストエフスキーを斬新に読み解き、偶然の論理と倫理、そしてリスク社会の生をラディカルに問う、気鋭の哲学者による哲学の賭博。

    [ 目次 ]
    第1章 競馬の記号論(タカモト式とライプニッツ;競馬の経験論 ほか)
    第2章 賭けることの論理―九鬼とドゥルーズ(偶然性と出来事の時間;出来事性の分類論 ほか)
    第3章 賭けることの倫理―リスク社会と賭博(生きることの倫理;構造の無責任 ほか)
    終章 賭博者たち(ドストエフスキー;一九九一年五月府中・二〇〇五年五月梅田 ほか)

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著者プロフィール

檜垣 立哉 1964年生。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中途退学。大阪大学名誉教授、専修大学文学部教授。哲学・現代思想。著書に『生命と身体』(勁草書房)、『日本近代思想論』『ヴィータ・テクニカ』(青土社)、『バロックの哲学』(岩波書店)、『日本哲学原論序説』(人文書院)、『ベルクソンの哲学』『西田幾多郎の生命哲学』(講談社学術文庫)、『哲学者がみた日本競馬』(教育評論社)、監訳書にN.ローズ『生そのものの政治学』(法政大学出版局)ほか。

「2023年 『ニューロ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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