毒婦たち: 東電OLと木嶋佳苗のあいだ

  • 河出書房新社
3.47
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感想 : 56
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309246345

作品紹介・あらすじ

「東電OL」、木嶋佳苗、角田美代子、上田美由紀、下村早苗、畠山鈴香…etc.彼女たちはなぜ殺し、殺されたのか?木嶋佳苗と「東電OL」の共通点/援交世代が生んだ女の事件/支配する女と家庭の暴力/女はケアで男を殺す/男が嫌う「母の事件」/女目線で語り続けていくこと/彼女たちは傷ついていたか?/毒婦というパロディ…

感想・レビュー・書評

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  • 自分でも悪趣味だなと思うけど、木嶋佳苗の獄中ブログにはまって最初から全部読んだ。その中で、「毒婦。」の著者である北原みのりを訴えると書いてあり、さっそく読まなくちゃと思った次第。
    ところが図書館から借りてみると、裁判記録をつづった「毒婦。」ではなくて「毒婦たち。」だった。紛らわしい。
    まあいいかと読んでみる。

    中身は木嶋佳苗を中心に、世の中を騒がせた東電OL、角田美代子、上田美由紀、下村早苗、畠山鈴香などなどについて、これまた強烈な上野千鶴子、信田さよ子、北原みのりがしゃべり倒す鼎談をまとめたもの。

    まー、よくしゃべるしゃべる。好き勝手な事を次々と。
    齢は重ねているけれど、これはまるっきり女子会のノリだな。
    テーマはセックス、ジェンダー、援交、DVなど色々。
    なるほどね、と思う部分もあったけれど、何でもかんでもフェミニズムに結びつけちゃうところについていけない。
    頭のいい人が上から目線で論じたところで共感も出来ないし。
    読み物としては一気に読めちゃうほど面白いことは面白いんですけどね。

    だって、援交が受動的ってどういう事よ?
    援交と性的虐待を同じ土俵にあげちゃうのが全く理解できず。
    それに都会と田舎の比較論は分かるけど、このオバサン(敢えて)達が捉える田舎象にどうしても反感を覚えてしまって・・・。
    フェミニストってこんな人だったの!?

    この本を木嶋佳苗が読んだらどう反応するだろう。彼女によると「毒婦。」に書いてあることの7割は嘘だそうです。
    いっそのこと、次回の女子会に木嶋佳苗をゲストで呼んだらどんなに面白いことだろう。全然話がかみ合わないんだろうな。
    ああ、私って本当に悪趣味。

    • 夢で逢えたら...さん
      私も「毒婦。」と、他にも1冊木嶋佳苗関連の本を読みました。
      何が彼女をそうさせたのか知りたかった。
      でも自供がないから仕方ありませんが、...
      私も「毒婦。」と、他にも1冊木嶋佳苗関連の本を読みました。
      何が彼女をそうさせたのか知りたかった。
      でも自供がないから仕方ありませんが、結局彼女の心の闇はわからないままで、残念でした。気になりますよね〜。
      2014/03/26
    • vilureefさん
      夢で逢えたら...さん、こんにちは。

      この本の中で、上野さんと信田さんは木嶋佳苗は過去に性的虐待を受けた過去があるだろうって推測してる...
      夢で逢えたら...さん、こんにちは。

      この本の中で、上野さんと信田さんは木嶋佳苗は過去に性的虐待を受けた過去があるだろうって推測してるんですよね。
      その体験が彼女の男性観に影響し事件に繋がっていると。
      どうも納得できなくて・・・。
      ブログを読む限り、最後まで彼女らしく突き進んでいくんだろうなと思います。
      手記が出たら、きっと読んじゃうんだろうな(^_^;)
      2014/03/26
  • 木嶋佳苗、角田美代子、上田美由紀、下村早苗、畠山鈴香
    など毒婦をテーマに、
    フェミニストな論客3名でだべりまくる。

    女性は、男性を殺した女性犯罪者に自分を同一視するが、男性は女性を殺した犯罪者と自分はいかに違う存在かを力説するという。これは、女性が男性に力で圧せられていることへの反逆を、男性は弱い部分に付け込んでの卑劣な犯罪であることの嫌悪を感じているからなのかもしれない。

    また、一般的にモテる容姿ではない木島佳苗が圧倒的なケア力でモテていたというのも、なるほどと思った。

    3人のお話は、ある意味、暗黙知が共通的な立場の方々なので、話が通じあうことで、若干ヒートぎみに上っすべりになるところもあった。
    (信田さんもあとがきで「ついつい話すぎてしまい失言かなと思う部分もあったが、ま、いいかと思ってそのまま掲載することにした。」と述べており、まさにこの通りの本かなと思います。)

    ただ、3人とも、自分の意見をなんとなく流すところなく、議論する感じはさすがでした。


    学者、研究者なので、どうしても分析的、分類的になるのでしょうが、
    当然、「男は~」と男を敵視したような発言も多々あり。
    世界を支配している権威(強いもの)に対するアンチと分かっていても、
    この3名の論客は十分強く感じるので、なんかそこまで男を敵視しなくても
    と感じてしまうところもあり。

    考え方として、「男」という仮想敵があるところから考えがスタートしているように聞けてしまうのが、逆に視野を狭めてしまっているようにも見えて。

    ジェンダー関係は性差が出発点になるのでそういう展開なんでしょうが。

  • 北原みのりさんと同じく、木嶋佳苗はじめ、女性が起こした事件に興味を持っていて、ついこの手の本を読んでしまう。

    あたしは壇蜜と同い年のエンコー世代で、毒母持ちであり、男と同等の評価が欲しいと社会で苦しむ、結婚をゴールとしない独身女である。
    …このお三方の研究分野にすっかり当てはまってしまった。

    しかし、あたしはエンコーコギャル世代ど真ん中でしかも比較的都会にいたのに、その時期、人生で最も輝く10代を、みっともない脂肪にまみれて暮らしていて、誰からも性的に求められなかった。現実から目を逸らして暮らしていた。
    大人になって、ああ、あれは肥っていたからだ、そう思っていたのだ。
    木嶋佳苗には、だから驚いて興味を持ってしまったのだと思う。
    人から求められない理由に、容姿は関係ないのだと。
    木嶋佳苗を知れば知るほど、魅力的に思えてくる。
    たしかに、これはモテるかも。
    なんだこの、負けた感は。
    みんながだからざわつかされたのだ。
    本書にも出てくる似た事件の犯人は、背景がわかりやすい。だから誰も興味をもたない。同じようだが、魅力的ではない。教育も、お金もなかったのだろう、と思うだけだ。

    10代で自分を無価値と位置づけたあたしは、オンナを上手く使うことも、そこに飲み込まれることもなく、誰にも興味を持たれない、その他大勢の時間を過ごしている。

    堂々と生きている木嶋佳苗がすこし羨ましい。

  • ずんずんと一気に読んで、非常に疲れた。鋭い指摘が随所にあり、なるほどと思うことも多いのだが、上野千鶴子さん、信田さよ子さん、北原みのりさん、いずれ劣らぬ猛者三人、三者三様のパワーに圧倒されてしまう。

    自分や社会について深く考え、行動においてもその思索を裏切らず一貫したものを持ち続けようと思ったら、特に女性は、あちこちにゴンゴンとぶつかることばかりだ。その理不尽さへの怒りをずっと持ち続けているエネルギーたるや、半端ではない。気持ちよく読ませてくれるわけではない、そのザラザラした違和感を今しばらく抱えて考えてみよう。

  • かなえには笑える要素があるけど、東電OLには笑える要素がない、との一文にまさにまさに!と膝を打つ思いで読み進めていたのだけれど、その構造が反転する瞬間があって、どちらの事件も女であるがゆえに起きた女の悲しみの発露であることを考えると、やはりそこには遣る瀬無さしかない。

    お三方の考えや意見に100%賛同できるわけでもないが、女であるという共通点だけしかないんだから、そりゃ当たり前だよな、と思ったり。ここに書かれてる毒婦とされる女性たち、そんな女を論じる女性たち、こういったものを嬉々として読んでいる女の私、その個々全てに底のない世界が広がっているようで薄ら寒い。

  • 上野千鶴子さんと信田さよ子さんは知っていたので、このひとたちの本なら、と思い借りてみた。
    しかし、フェミニズムの本はむずかしい。つくづくそう感じた。
    女性から見た男性って、こんなにも厄介な存在なのか…?
    見えない暴力というか、社会というものができた時点でもう避けられないような、そんな暴力性なのかなと思った。
    人間関係は、相手を支配できると思うからこそ扱いがぞんざいになってしまう、という部分が印象的でした。
    そういう意味で、相手を敬える関係をつくっていきたい。

  • かなりおもしろい。というか気持ちいい。女たちの目線で世の中を見ること。言葉を獲得していくといことが真実の見え方にどれだけ影響するかを思い知った気がする一冊。思考停止していたのかもしれない。マスメディアが流す一元的価値観に自縄自縛に陥っていた自分の後頭部を思いっきり金槌で殴られた気がする。メディアが男社会であるという意識もなかった。男の股間のケアを要求する社会に逆手にとって現れた「毒婦」たち。毒婦は自分であるという目線。「言葉を持って女目線で現実をちゃんと暴きだすことが必要。(上野)」上野千鶴子の歯切れの良さ、好き嫌いハッキリわかれそうな人だけに、好きだと思った。

  • 「毒婦」をテーマに上野千鶴子、信田さよ子、北原みのりが鼎談している。
    「毒婦」って何だろう。男性版のそういう言葉ってない(と思う)からそもそも「婦」にだけ「毒」がつくっていうのが上野さんあたりが突っ込むべきところじゃないかと思うけどそういう話は出てこない。勝手に女性に聖性を求めてそれと違う女性には「毒」をつけて侮蔑したり揶揄したりという構造だと思う。
    ここで双璧に論じられているのが東電OLと木嶋佳苗。木嶋佳苗は一時期ブログなど愛読しその非凡さはそれとなく知っていた。一方東電OLについてはこの本を読んで初めて知った逸話もあった。どこか正気でない淫らなひとという印象だったんだけど、それ以上に既存の会社社会=男社会への悲しい反逆だったのかなと思うところがあった。
    いずれにしてもお二方とも見事な生き方。その枠に納まらない見事さが世間というまだまだまだまだ男目線の人々をして「毒婦」と言わしめるのだろう。だからやっぱりこの本が「毒婦」を銘打つのには大いに違和感。
    鼎談もちょっとバランス悪い印象。北原みのりが思いだけで突っ走ってる感じがしてしまう。対して上野千鶴子には蓄積を感じる一方で、総論的な話にはしりすぎな感じも。信田さよ子は両者からわざと一歩引いてる感じ。

  • 前に斎藤 学氏と 村山 由佳さんの対談を読んだときと同じ感想。
    ひとりで書かれたものはすごく面白いのに、対談にするとイマイチになってしまう。

    上野千鶴子さんも信田さよ子さんも好きなんです。
    一番面白かったのはそれぞれの「あとがき」でした。
    北原みのりさんの『毒婦。』も読んでみようと思います。

    東電OLは、亡くなっているから、真実はわからないですね。
    「こういう解釈もあるんだ。」と思うだけです。

  • 非常に頭の良い(といっても何を持って頭が良いとするかはいろいろありますが、この場合は自分の考えをポンポン言語化できるってことかな)お三方が世を騒がせた事件、女性について勢いよく思いの丈を語るもの。制限なく好きなことを語ってるだけあって(世間のコメンテーターらの正論ではない所が)特に面白い。
    もともと、世間を騒がせた女性たちの事はもちろんニュース的には知っているがそれ以上は知らなかったのでほうほうそういう事件であったのかと知る分についても大いにあった。それぞれ持っている背景(みてきたもの)が違うので捉え方も根本は違うんだろうなとは思ったが。
    上野千鶴子、信田さよ子については著書も読んでいて多少なりとも知っていたが今回北原みのりの対談を始めて読んで。かなり思い込みの激しい人だなと。その思い込みの激しさで興味のあることに驀進する事は良いことだと思うんだけど(他の御二方よりは)私の世代に近いので、その思い込みを世代代表女性代表で言わんといてほしいわ〜と思う部分もあった。他国の良い面をみて自国の反省をするのは良いが、他国の見方も浅いような気がする。

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著者プロフィール

上野千鶴子(うえの・ちづこ)東京大学名誉教授、WAN理事長。社会学。

「2021年 『学問の自由が危ない』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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