福島第一原発収束作業日記: 3.11からの700日間

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 189
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309246369

作品紹介・あらすじ

「2011年3月11日14時46分――。
 オイラはその時、福島第一原子力発電所(1F)で原子炉建屋内のオペフロ(建屋最上階のオペレーティングフロア)で作業してたんだ。
 ドドン!という縦揺れの後、最初のグラグラッという横揺れが、ゆっくりとグーラグーラという大きな横揺れに変わり何分間か続いた。オイラは中越沖地震(2007年)の時、柏崎刈羽原子力発電所の定期検査で作業してた経験もあり、「あぁ、あの時と同じ感じだなぁ…」って思いながら、近くの手摺りにつかまり、両足で踏ん張って何とかその場に立っていた。
 何分間か経って、その大きな横揺れがだんだん小さくなってきて「柏崎の時と同じく地震が収まる」と思って安心した次の瞬間、ゴゴォー!っという感じの今まで経験した事のない大きな横揺れが始まったんだ」

あの時、何が起きていたのか? 今、何が起きているのか?
福島第一原発の現役作業員による3・11からの「生」の手記。


「ハッピーさんが教えてくれる原発事故情報が、余計な不安と嘘めいた安心をどれだけぬぐいさってくれることか」
――いとうせいこう

「進まぬ汚染水処理、劣悪な労務環境、困難を極める廃炉作業……。
名もなき原発作業員の「つぶやき」がこれほどまでに胸を打つのは、そこに原発の「細部」を描写するこだわりと、仲間たちへの暖かい目線、そして強い覚悟があるからだ。
本書は貴重な原発事故の記録であり、どんな報道関係者にも真似できないルポルタージュであり、新世代の労働者文学でもある。
ハッピーさんを通して知ることができた原発作業員たちの等身大の日常は、我々が決して目を背けてはいけないものだ。
ハッピーさんがいてくれて、良かった。」
――津田大介

感想・レビュー・書評

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  • 3・11の原発事故後、福島第一原発で働く収束作業員の日記。
    生々しい情報が語られます。

    緊張感の中、日々命を張って作業をしている彼のような人々に、原発事故以降の日本は何とか支えられていると言っても過言ではないでしょう。
    仕事は過酷を極め、実際に何人も作業員が就業中に亡くなっているそうです。

    ただ、著者はハッピーと名乗るように、その日記は明るく、鬱々とした恨み節はありません。
    あまりにひどい場面に直面し、現状改善はあきらめて、もはややるしかないと腹を据えているのでしょうか。

    淡々と自分が取り組んでいる作業をつづっていますが、彼らは実際の作業員でありながら、末端担当者であるため、国や東電の発表に簡単に踊らされてしまいます。
    戦場を把握せずに体裁ばかりを気にし、無理な決定を下していく政府に対する怒りが、時折読み取れます。

    たとえば国と東電が決めた収束時期を作業員はニュースで知り、それがどれだけ無理なスケジュールでも、決められた以上はその工程で強引にもこなさなくてはいけなくなるのだそう。

    もしその工程が遅れれば、国民に叩かれるのは政府ではなく東電になるため、東電は下請けメーカーに圧力をかけるのだそう。
    また、今後かかるであろう莫大な補償のため、東電は原発収束にかかる予算を大幅にカットし、人員補充もままならないのだそう。
    まさに「無理が通れば通りが引っ込む」状態。
    国民感情をなだめるために出された公約で、作業員たちはどれだけ無理難題を強いられたことでしょう。

    神経がすりきれそうになる中で、相当被曝もしながら作業に取り組む彼らの声は、もっと尊重されるべきでしょう。

    これは事故発生直後から約2年間の話になるため、今ではまたずいぶん状況が変わってきていますが、それだけに生々しい現場の声が記録されていることに旋律さえ覚えます。
    著者は「新たな電力会社が生まれ消費者も電力会社を選べる。原発の東電か自然エネルギーの新たな電力会社か消費者が決めればいい」と提案していますが、確かに新しく電力会社が誕生し、彼が提案した流れになっています。

    2011年の事故から月日が経ち、日々のニュースには採り上げられなくなりましたが、いまだ原発廃炉のめどは立っておらず、危険は去っていない状態。
    この問題が決着を迎えるまでにはまだ長い時間が必要で、その間は我々国民もしっかりと問題意識を持ち続けていることが必要だと、改めて感じました。

  • 壁一枚向こうは致死量の高放射能汚染区域。福島第一原発。
    東日本大震災の地震と、それに伴う津波で史上最悪の事故に
    至った原発。

    そこで作業員として従事していたのが本書の著者である
    ハッピー氏だ。

    原発事故直後からTwitterで最前線の現場のことを呟いている
    作業員がいる。そんな話が聞こえて来たのは事故から大分
    経ってからだった。

    そのTwitter上のつぶやきをまとめたのが本書である。原発事故
    関連の作品はもう何冊も読んだが、本書はそのどれとも違う。
    最前線の現場の声であり、日々、生きるか死ぬかで作業に
    あたった人の生の声である。

    報道だけでは分からないリアルな現場が、ぎっしりと詰まっている。
    つぶやきの中でハッピー氏が危惧していたことが、後日、本当に
    トラブルとして発生している。

    あの混乱の中で、必死に状況を改善しようとした人々がおり、
    暑い日も寒い日も、コツコツと作業を続けた人がおり、政府が
    「冷温停止状態」という不思議な言葉で事故収束宣言を出した
    後も、廃炉に向けての作業を続けている人がいる。

    海外のメディアが大きく取り上げた「フクシマ50」だけではない。
    多くの作業員が「どうにかしなきゃ」との思いで、日々、現場に
    通った。

    それなのに、事故収束宣言から作業員の待遇が悪くなっている
    なんてね。一体、他に誰がやってくれるんだよ。東電本店と、
    東電現場の温度差や、現場の声を救い上げない今の体制は
    ハッピー氏がつぶやくように非常に危険なものだと思う。

    これは保存版だな。尚、亡くなった吉田元所長は高線量の
    現場に赴く作業員のことを「地獄の中の菩薩のように感じた」
    と評したそうだ。

    現在、何かのトラブルがない限り、福島第一原発のことが
    ニュースで取り上げられることがない。どこでもいいから
    「今日の福島第一」を毎日伝えてくれないだろうか。

  • 全然何を言っているか理解できていない。それが怖い。

  • ハッピーはtwitterのアカウント名。20年以上も原発作業を続けてきた著者が遭遇した、福島第一原発事故とその収束作業について書かれた記録。
    原発賛成反対、右だ左だというものや、オカルトまがいのトンデモ情報に溢れていたネット上でとても信頼できる情報だった。5年たって読み直してみて、当時とまた違った原発事故の姿が見えてくる。

  • 文庫本

  • 事故当時、そしてその後の現場の状況ともどかしい思いが伝わってくる。どんな力学も考えも、これらの問題を解決できぬウチは空論に聞こえる。廃炉国有化、賛同します。

  • 1

  • 事故からしばらく、どんな報道がされていたか覚えていない自分が非常に残念ですが。
    でも、政府や東電の発表が出るたびに”そんなはずないよね?”と違和感を持っていた人、多数いたと思うんです。
    その違和感が、無知な私達だけでなく現場作業員さんたちも感じていたことがよく判る。そのことは、政府発表がいかにデタラメかを、よく示している。
    3年経った今もまだ”手がつけられない”状況にあるのに、現場検証もせずに再稼働って、やっぱりおかしいよね。

    この本、場合によっちゃ、圧力がかかるかもしれない、という内容です。それでもツイートし続け、書籍化したハッピーさんと、出版した河出書房新社さんに敬意を表したい。

  • ツイッターなどで特に話題になっていた
    原発作業員ハッピーさんによる著書。

    タイトルにある通り、
    例の原発事故以降のハッピーさんの
    ツイッター投稿を元に
    それ以前からあったおかしな事柄や
    これからどうなるのかどうすべきかといった事などが
    原発の前線現場に長年関わってきた人の視点で
    書かれています。

    これを読んで、原発の矛盾や問題って
    エネルギーや放射能なんかの事はもちろんやけど、
    その先に繋がってるのはやっぱり
    格差・差別・貧困なんかの問題になるのかな
    と改めて思ったりしました。
    以前に電力会社に勤務していたという人と知り合った時も
    やはりそんな話になったりしたけど、
    この辺の問題って色んな要素が絡み合っていて
    もう何が良いとか悪いとか、単純には測れないというか。
    要するにウマい事仕組みが出来てるな、と。
    このままじゃいけないってのは多くの人が思ってるのにね。

    とにもかくにも、色々と考えさせられる一冊です。

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著者プロフィール

20年近くのキャリアを持つ原発作業員。福島第一原発で作業中に東日本大震災に遭い、事故発生当初から現在まで断続的に収束作業に従事する。

「2015年 『福島第一原発収束作業日記』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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