露出せよ、と現代文明は言う: 「心の闇」の喪失と精神分析

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 222
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309246376

作品紹介・あらすじ

《露出》の強制、それこそは、21世紀グローバル化時代の〈人間学〉が立ち向かう究極のテーマだ。人間は、すでに新しい歴史ステージにある。……亀山郁夫80年代ニューアカを愛したひとに。90年代に育ったひとに。そして00年代にもの足りなかったひとに――つまりこれは僕たちのための本だ。……市川真人凶悪犯罪のたびにメディアで語られてきた「心の闇」。しかし現代の犯罪者は、ほんとうに「心の闇」をもっているのだろうか。むしろ彼らの心に「闇」がないことが問題なのではないか。私たちの心から「闇」が失われつつある。それこそが、現代の危機、心の危機をもたらしているとしたら?

感想・レビュー・書評

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  • ☆著者は、サカキバラや宮崎勤に対する宮台や大塚の言説に違和感を覚える著者。彼らは心に闇があったというより、「心の闇」がなかったのではないか。彼らがネガで自分がポジではなく、むしろ、彼らがポジであるという意識になぜ立つことができないのだろうか。
    ☆だが、わかるのはここまで。ラカンの話になると、読む気にならんな。

  • ラカン理論が難しかったので、その辺はサラッと読んだ。「無意識」を手放しつつある現代と精神分析についての本。この本を読んで、「フロイト他諸々の精神分析って、ただのキモい妄想だろ」という認識はとても改善された。

  • 非常に興味深い現代の精神分析による現代社会論。
    求めるものが与えられ続ける資本主義・情報社会のなかではセクシュアリティ-無意識-思考の価値が重視されなくなり、社会的権威としての統計的超自我に支配された行動心理学的な人間像が支配的になる?
    精神分析・精神医学の現状についても触れられており精神分析の理解も深まった。

  • ともすると認知行動療法に駆逐されがちな精神分析の現代的な状況から、フロイト〜ラカンへと繋がる精神分析の系譜とその思想の、今日的な意義をあらためて問うている。

  • 【北海道大学蔵書目録へのリンク先】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2001600606

  • 心理
    精神

  • 個人がこれほどまでに「私」を露出するようになったのは、何時からなのだろうか。そこには精神的解放があるのか?
    日本で精神分析が一般化しなかった理由は何だろうか。

  • 面白かったです。

    卑近な文化の話から始まり、このあたりは大澤真幸の現代文化論と重なる感じ。オリジナリティがないというわけではなく、アプローチの角度や論点の違いはあるにせよ、結論としては同じ地平にたどり着いた、といったところ。

    後半になるに従い、フランスの精神分析業界のコアな話が増える。ラカンを論じる人はこのあたりのコアな話が好きなんだよな、と思わせられたにせよ、「フランス精神分析業界のコアな話」をここまでクリアに論じられたことはなかったと思う。

  • 立木康介『露出せよ、と現代文明は言う 「心の闇」の喪失と精神分析』河出書房新社、読了。全てを晒そうとする欲望と内面の露出が人間を突き動かしている。現代文明の特徴とは「露出」ではないか--挑発的な現代批評だが肯きながら読んだ。躍起になってベールをはがしたところで空虚な現実しか存在しない。

    「心の闇」の解明こそ現代社会の至上命題だが「『心の闇』は社会の敵なのか」(帯)。むしろ私たちは「心の闇」(修辞や隠喩)と、そのつきあい方を喪失した、解答集の模範解答のごとき「内面」などそもそもない。

    「心の闇」の駆逐は結局のところ思考の弱体化をもたらす。実際的な現代の認知療法とて「晒す」と「露出」の圏内にとどまっている。ラカン派の精神分析学者の本格的現代批評。http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309246376/

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著者プロフィール

1968年生まれ。京都大学文学部卒業。パリ第八大学精神分析学科博士課程修了。専攻は精神分析。
現在、京都大学人文科学研究所教授。
著書に『精神分析と現実界』(人文書院)、『精神分析の名著』(編著、中央公論新社)、『露出せよ、と現代文明は言う』『女は不死である』(河出書房新社)、『狂気の愛、狂女への愛、狂気のなかの愛』(水声社)などがある。

「2023年 『極限の思想 ラカン 主体の精神分析的理論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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