「男の娘」たち

著者 :
  • 河出書房新社
3.33
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本棚登録 : 92
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309246741

感想・レビュー・書評

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  • 2022年10月
    女装する人たちのルポルタージュ。女装する理由は、変身願望的なものから自分の性に対する切実な違和感まで様々だが、どう装いたいかということとどういう人生を生きたいかということは極めて近いところにあるのだと思った。
    この本が書かれた2011年〜2014年と現在ではインターネット周りの状況が大きく異なるが、当時を切り取っているという意味で非常に興味深い。

  • 大学の後輩が載っているので、本の存在は出版当初から知っていました。ただ、それでもすぐには手に取らなかったなぁ。手に取るようになったのは、自分のあり方を見つめなおす上で、トランスジェンダーや性差別について考えるようになってからです。

    私自身、大学在籍時に女装を始めました。その意味では、私のライフ・ヒストリーを見つめなおすきっかけを与えてくれたと思います。プロパガンダは知りませんでしたし、女装子向けのお店に行ったことは1回か2回程度しかありません。ただ、あおみかんさんもあしやまひろこも私はリアルタイムで会っていますし、今考えれば彼女らとの縁によって私も女装し始めたといっても過言ではありません。

    ただ、内容ということでいえば、川本さんの書き方に正直うなづけないところが多かった。
    人脈があって、よく勉強しておられるので、ポリティカル・コレクトネスに配慮しようとする姿勢、「男の娘」について得に知識のない人でも読めるように書こうとなさる姿勢、大変伝わってはくるのです。
    ただ一方で、カテゴリーにくくって「あの人はこうだけどこの人は」という書き方があんまり好きになれません。女装している人のタイプには多種多様なものがあります。それぞれ、自分らしく生きたいからこそ苦悩して、苦悩しつつも自分らしく日々を生きていこうとする、尊い人ばかりです。ファッションで女装しようが、性自認ゆえに女装しようが、それぞれのジェンダー・セクシュアリティをはっきり書いてしまおうとするのは、何か疑問が残ります。

    私にはここに登場する「男の娘」たちほとんどが、自分の存在証明のために悩み苦しんでいるようで、その悲痛の叫びすら聞いたようで、著者としては明るい話ということの筈の箇所でどこか悲しい気持ちにさえなりました。悲しみを原動力にしている反面、行動する中でより根本的で深い悩みにはまっていくという感じでしょうか。

    結局、「男の娘」というジャンルを生み出していくような、そういう我々のまなざしが問われているように、私には思えてなりません。改めて、ジェンダー・セクシュアリティという概念、MtFやヘテロセクシュアル等諸々のカテゴリー、「男らしさ/女らしさ」で区分しないと気が済まない性分・まなざし自体が問われているように、この本を読みながら感じました。

  •  「男の娘」とは二次元文化のスラングだと理解していたが、本書は現実のトランスジェンダーの女装者を対象としている。さまざまな専門用語・カテゴリーの定義が初心者にはわかりにくく、また取材者と取材対象の距離がノンフィクションとしては近すぎる感がした。「なるべく女装の明るい側面を強調」と明示しているように、差別や病気や犯罪などの問題はあまり深く言及されない(取り上げられた女装者たちが高学歴だったり、アッパーミドルクラス以上の「恵まれた」とおぼしき者が多い)。いろいろ不完全燃焼の1冊。

  • 世の中にはいろんな人がおるんやな~~~、プロパガンダめっちゃ楽しそうやな・・・。
    桜塚やっくんめっちゃ懐かしい・・・やっくん・・・やっくんはつまりヘテロの女装子だったのか??
    唐突なまどほむ引用クッソワロタ。
    あと表紙のモデルさん一瞬まゆゆに空目した。

  • 「はじめに」の文章を読んだら「男の娘」の定義が書いてあって、それ読んだらなんかクラクラしてきちゃって、図書館で借りてきた本なのに読む気が起きなくなって、期限1週間くらい過ぎたところでようやく読み始めた。

    クラクラした理由は、MtFとかMtXとかいろいろ専門用語使ってあったからで、それ以上のことはないんだけど、そこのところの定義をちゃんとしておかないとその先が書けないことだったのかなあ?という気がする。ていうか、「男の娘」が本来は二次元のもので、三次元の「男の娘」は存在しない、三次元の「男の娘」が存在するというと攻撃されるとか、そこら辺のことは初めて知った。

    内容的には、基本、女性ジェンダーを身体表現しても全く構わないというか、逆に強調したいという生物学上男性(この言い方嫌いなんだが)たちの話をまとめたもので、まぁ「男の娘」もみんな同じこと思ってるんじゃなくて、バラバラだよねって本だった。


    わたしはここまで来てる人とはほとんど付き合いがないので、へぇと言う感じだし、書いてある内容については特に言うつもりはないんだが、ただ、あまりにも「女性ジェンダー」への肯定が強すぎて。。。「どこから見ても男性とは絶対に思えない」ことを目指すのは別に個人の自由だからいいんだけど、わたし個人としては「明らかに女装していると思える姿」でも、それはぜーんぜんおかしいとは感じないし、逆に本当にそれが「その人」って感じがして割と好きなんだけどなあ。本の書き方として「そういうのはねー」みたいな書き方だったんで、そこら辺はちょっと気になった。

  • 三葛館一般 367.9||KA

    一瞬AKBかと思う表紙のかわいい女の子。実は男の子なんです。「男の娘」の時代がやってきた。という前書きから始まる本書は、様々なセクシュアリティを持つ女装男子「男の娘」への3年に及ぶ取材をまとめたものです。一言で「男の娘」といっても、やはり1人1人違った人間で、違った考えを持っています。
                                  (うめ)

    和医大図書館ではココ → http://opac.wakayama-med.ac.jp/mylimedio/search/book.do?target=local&bibid=79707

  • 【選書者コメント】男の娘が今社会的にアツイと思うので
    [請求記号]3670:1737

  • 自分が好きな漫画が女装漫画なので、興味本位で読んでみた。最初に断っておくと自分はトランスジェンダーではない。なお、この本はほとんど三次元の『男の娘』について書かれており、二次元についての話はあまりでてこない。
    読んで初めて知った、自分の知らない世界のことがいろいろ書いてあった。そんなにあちこちの公園にハッテン場があるもんなの? とか、なんでこんなに男から告白されてる男が多いの? とか(特に衝撃だったのが、橘芹那というニューハーフタレントの方の話。小学四年生でクラスメイトの男子に告白されて付き合うことになったとか。ちなみに、小3のころには女の子とつきあっていたらしい)。というより、全体的に恋愛早い人が多い気がした。大学で初めて恋人を作った井上魅夜の人の紹介のところでは、『初めての恋愛は非常に遅かった』と書かれているほど。大学で遅かったら、自分はやっぱり諦めたほうがいいのかもしれない。
    後、女装している人のなかにもいろいろな人がいることがわかった。異性愛者で同性愛嫌悪っぽい人もいれば、女装者同士で付き合う(カマレズというらしい)ことに否定的な人もいたり。
    後、やけにドワンゴの名前がでてくるなと思ったら、ドワンゴの社員でMtFの人とつき合ってる人がいたらしい。まあ、東証一部上場で人数も多い会社だし、数人はいるのかもね(ただでさえ、ドワンゴって変わった人が多いイメージだし)。
    後、女装の世界では妬み、嫉みが渦巻く側面があるんだとか。このへんは女の世界も似たようなところがあるかもしれないけど、集まる場所が公園というのが女装界特有か。
    後、筑波大学なんでこんなに女装する人多いのかと。いったい、女装が広まるきっかけはなんだったんだ。
    それと、男子にたいして男らしく生きているところにたいして、「格好いいな」と思ってる人がいたのだけど、男子たちがAVやエロ本を見て喜んでるところすら格好良く思えたらしい。いや、それはおかしいだろ(少なくとも、女性でそんなこと思う人はいないと思う)。
    後、女装とは関係ないのだけど、東京大学に所属する性同一性障害の子の幼少期の話に笑った。一歳でしゃべることができ、車が通った時に親戚に「ブーブーだよ」と言われたが、「あれは自動車です。馬鹿にしないでください」と返したのだとか。さすがに誇張だろと思うのだけど、どうなんだろ・・・。
    ちなみに、最近は『性同一性障害』ではなく、『性別違和』というらしい。確かに、障害っていうと違和感あるので、自分もこれからは『性別違和』ということにしようと思う。

  • 「男の娘」の時代がやってきた! 日本最大の女装イベント・プロパガンダ、コスプレ女装男子、完全に女性として日常を送る埋没系……綿密な取材でトランスジェンダーの現在に肉薄する傑作ドキュメント!

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著者プロフィール

1980年生まれ。文芸評論家。『新潮』『文學界』『文藝』などに寄稿。著書に『「男の娘」たち』(河出書房新社、二〇一四)がある。現在、フィルムアート社のWebマガジン「かみのたね」で『日記百景』連載中。

「2019年 『吉田健一ふたたび』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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