遺族外来: 大切な人を失っても

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309248103

感想・レビュー・書評

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  • 二人称の死、三人称の死など、死や遺族外来について学びが多かったです。遺族とどう接したらいいかある程度わかりました。
    ただ、「どうして亡くなってしまったのか」遺族に聴く人に対して、「共感力がない」と厳しく批判していましたがそこが納得いきませんでした。遺族でなくても、友人や恋人の死は受け入れがたく、死を乗り越えるためには、どう亡くなったのか知る必要がある場合もあるかもしれません。遺族に対する共感はあっても、「残されたすべての人」に対する共感を本書からは感じられませんでした。

  • p18 日常生活のストレスを測定した調査によると、死別は日常生活で最も大きなストレスの一つ
    55歳以上の男性で配偶者を失うと、配偶者のいる人に比べて、死別後半年間で死亡率が40%近く上昇し、死因の3分の2は、心疾患であることが判明している。
    p75 記念日反応による症状は様々、悲しくなる、涙が出る、落ち込む、頭が回らない、食べられない、動けない・・正月、桜、青空、頬に当たる風
    特に1周忌前後では、気持ちが沈んだり、活動が低下することもあるので、多くの予定を組まないようにする。
    p79 過認について、遺族の半数以上が経験する。生じる時期としては、死別後10年以内が多く、故人の姿が見えるように感じる人、声が聞こえる人
    誤認がなぜ起こるのか、誰かが亡くなるとその人にもう一度会いたいという気持ちが湧き上がることがある。これは思慕と呼ばれ多くの遺族に認められる。
    誤認には別の意味もある、死別で辛くなった心を慰める自己治療的な役割を果たしている。心の奥底が死別による心身の疲れに気づいて、それを和らげるシグナルを送っているのかもしれない。
    p133 法華経の中に常懐悲感 心遂醒悟と書いてある箇所がある、これは恐れていると、恐怖の心がますます大きくなる。死が認められないでいると、死がますます怖くなってしまう。
    苦しみは時が経っても変わらない、しかし、苦しみを経験したことで、心が徐々に成長していく。心の器が大きくなることで苦しみが心の中に入る場所が出来る。
    人間の心はいかなる状況にあっても成長する力を秘めている、人は苦悩にあっても様々な方法でその状況に適応する力がある。悲しみに暮れている遺族もいつかは心の器が成長する事を知っておくことが大切。
    人間には回復する力が備わっている。苦悩から徐々に立ち直り死別後の人生を歩み始める。

  • 夫を亡くした妻、娘を亡くした母など、身近な人との死別による強いストレスに対して治療や緩和を行うのが「遺族外来」らしい。その遺族外来を専門とする著者が様々なケースを紹介している。印象に残ったのは、遺族がうつ病に罹患するケースが多いことと、周囲のなにげない一言が遺族にとっての強いストレスになるということ。だからこそ、著者は、遺族にどう接するべきかという教育を進めるべきだと説く。多死社会を迎えて、なるほどと思った。

  • 死ぬことについて語るのは、生きている人にしかできない。
    生き延びないと死について語れない。生きている人は死んでいないし、死んだらもう自分の体験について語れない。なんかわかんないな、これ。生きてるってとても奇妙なことだよ。

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著者プロフィール

1986年横浜市立大学医学部卒業。同大学講師、神奈川県立がんセンター精神科部長を経て2006年4月埼玉医科大学精神腫瘍科教授。2007年4月埼玉医科大学国際医療センター精神腫瘍科教授。がん患者の精神医学的治療を専門とする。患者遺族の心のケアも行っている。

「2019年 『女性のがん 心のケア』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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