ロシア革命100年の謎

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (364ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309248288

感想・レビュー・書評

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  • ■「ロシア革命」とは1917年10月の出来事……ではなくって、古くは1825年のデカブリストの乱からその胎動が始まっているし、10月革命を経ても混乱の度合いはいや増すばかり、ゆうに100年以上治まらない激烈な嵐であった。その間、数えきれないくらいの思想家、文学者、活動家、労働者、農民たちが文字通り命を賭して関わってきているので、「ロシア革命」全体を論じようにも詳しくやろうとしたらキリがない。逆に簡単にすまそうとしたら中身がカラッポになる。偶然の要素にも大きく左右されていて、「ロシア革命」について腑に落ちるような簡潔な説明を求めることなどそもそも不可能なのだ。
    ■本書は最初から最後まで、ロシアの権威、亀山郁夫と沼野充義のふたりだけがロシア革命についてしゃべりたおした一冊。対談形式なので思いついたことをその場で口に出しても全然不自然でないし、相手も自分と同じくらい教養があるので興に乗っていくらでも蘊蓄を傾けられる。それでいてあまりに専門的になって読者をおいてけぼりにしないように、手綱はふたりで締めたり弛めたり自由自在にできる。
    読者からしても、「この一冊でもって”ロシア革命100年の謎”をぜひとも解明したい」などと大層な期待など抱いていない。知らなかった事実に感心したり、しみじみ歴史を振り返ったり。……”亀山・沼野のハイレベルな会話に隣席した気分になる”のが本書の眼目なのだろう。
    というわけで、茫洋たる「ロシア革命」を概説するに当たってこの対談というのは、まことに相性のいい形式だなぁと読みながら思った。
    ■史実、芸術作品、芸術家や政治家たちの裏話……。知らなかったことがポンポン出てきて感心しきり。だが、「それはさすがにコジツケでは……」と思うこともしばしば。情報量は膨大なので、時々手に取って適当に開いたところをおさらいする読み方も可能。とにかくロシア好きにはいろんな楽しみ方ができる本だ。

  • 読み始めてすぐに緊急手術・入院、退院後の自宅療養と続いて
    読み終わるのにめちゃくちゃ時間がかかってしまった。

    昨年はロシア革命から100年ということで関連書籍がいくつか出ている。
    本書もそのうちのひとつ。

    ただ、タイトルにこそ「ロシア革命」と入っているが全体としては革命
    前夜からのロシアの芸術・文学史を基礎において、ロシア民族を語る
    という感じかな。

    トルストイ、ドストエフスキー等の作家をはじめ、芸術家・音楽家の
    名前がわんさか出て来るので、ある程度のロシア文化の知識がないと
    ふたりの話について行くのが大変。

    ロシア文学を読み漁ったのって10代後半から20代にかけてだもの。
    細かいところなんて既に忘却の彼方なので、記憶を呼び起こすのも
    一苦労だったわ。

    それでも、ロシア文化おたく(?)ふたりの対談は面白かった。頭のいい
    人の話というのは予備知識がない人間が読んでも理解しやいんだなと
    思った。

    後半部分では「え、そんなこと言っていいの?」と若干、読んでいる側
    が引くような発言もあるが、これもおふたりのロシア愛なのだろうな。

    読み終わってロシア人作家の作品を読みたくなった。革命を念頭に置いて
    読むと、以前とは違った読み方が出来そうだ。

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著者プロフィール

名古屋外国語大学 学長。ロシア文学・文化論。著書に『甦るフレーブニコフ』、『磔のロシア—スターリンと芸術家たち』(大佛次郎賞)、『ドストエフスキー 父殺しの文学』『熱狂とユーフォリア』『謎とき『悪霊』』『ショスタコーヴィチ 引き裂かれた栄光』ほか。翻訳では、ドストエフスキーの五大長編(『罪と罰』『白痴』『悪霊』『未成年』『カラマーゾフの兄弟』)ほか、プラトーノフ『土台穴』など。なお、2015年には自身初となる小説『新カラマーゾフの兄弟』を刊行した。

「2023年 『愛、もしくは別れの夜に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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