ウナギと日本人: “白いダイヤ”のむかしと今

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (205ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309253015

感想・レビュー・書評

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  • いまだに謎の多い生き物であり、絶滅危惧種、毎年その価格の高騰が話題になるウナギ。その生態の謎と、食文化や産業、歴史を追う。

    新聞で「ウナギは太平洋のホンの小さなポイントで産卵している」という記事をよく目にしたことがある。本書ではそれだけでなく、産卵ポイントに向かうまで半年ほどウナギは絶食しているなど、さらに謎が多い生態について解説されている。

    謎が多く、希少性があり、なおかつ美味(ヒトにとって非常に良い栄養素を含んでいる)故か、いささか怪しいウナギ信仰が地方によって存在したりする。そして、いまだに密漁は多いようで、その生態だけでなく生産量など統計上の数値にも謎が多い。

    年々不漁が進むウナギ。人間の欲望をスルリと通り抜けて、人類の前から姿を消してしまうのだろうか。

  • 歴史解説と統計の紹介がつらつらと書かれている。養殖業者やシラス漁に携わってきた人など個々のストーリーは取材をして拾い上げていった苦労が伺えるが、全体としては正直読みづらくつまらなかった…。

  • 流し読み。つまらない。


  • サイエンス

  • 昨今話題になっているウナギである。

    読む前に抱いていたイメージと違って、本書は「ウナギが絶滅しそう!やばい!」みたいな本ではない。もちろん昨今の不漁についても触れているが、メインの論点は日本人がどうウナギを獲ってきたかという描写である。

    高知県物部川でシラス漁を行っていたある夫妻の話から、シラス漁が突如として多くの人の収入源になった様が描かれる。その背景には、養殖技術の発展があった。

    そこから、ウナギの養殖(蓄養)の歴史と、養殖業の実際が描かれている。ウナギの養殖は儲かるが、水産業特有の価格リスクと資源リスクの療法のボラティリティが特に大きい産業だ。それが更に、台湾、その後中国と競合しなくてはいけなくなったので、さらに厳しい世界になっている。

    このあたりの描写は、いかに資源の漁獲が経済的な理由に動機づけられているかが生々しく描かれている。やはり資源の分析には、資源の価格や期待値がどう関係者の行動を決定づけるかという観点が必要なことがわかる。


    資源管理の観点から見ると、なぜ管理が難しいのかがわかる。シラスウナギの漁獲を捕捉するのが非常に難しいのだ。もちろん密漁も多くあるので、本当にどれだけ取れているかがわからない。

    密漁に関しては本書では詳しくは言及されていなかったが、
    反社会的勢力が絡む、触れがたい問題でもある。聞いた話ではあるが、ウナギの規制に関わっている水産庁職員の家族が謎の事故にあったりするという話も別の水産庁職員から聞いたことがある。

    それでもウナギの人気は落ちない。美味しい上にある程度の価格で手に入り、精力もつくとあれば当然である。

    本書で知ったのだが、ウナギの完全養殖技術自体はすでに開発されているらしい。ウナギ「養殖」という言葉はミスリーディングだが、ウナギはご存知の通り、天然の稚魚であるシラスを捕まえて、それを温室で温かい温度が保たれた池に入れ、餌を与えて太らせてから出荷される。稚魚を捕まえて成長させてから出荷するタイプの養殖は「蓄養」とも呼ばれて、卵から完全に養殖する完全養殖と区別される。

    卵から孵すのであれば、当然資源の問題はなくなる。(完全養殖が天然資源に与える影響はゼロではないが。)しかし、本書によれば、コスト的な問題で完全養殖を実用化するにはまだ難しいようだ。

    技術的な進化と、資源枯渇による価格上昇によって、ある時点で完全養殖が実用化させるタイミングは来るだろうが、問題は天然資源がその前に崩壊してしまう可能性がある。

    もし完全養殖が確立されれば、天然資源は不要なのか?不要でないなら、今行うべき管理施策は予防的原則に従わなければならない。現状はそのような状態からかけはなれていることに、少し絶望を覚える。

  • 【館長の本棚】 常吉図書館長<2017-2018>推薦

    【所在・貸出状況を見る】
    http://sistlb.sist.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&materialid=11401198

  • 毎日書評、2014-08-10

  • 2015年2月新着
    同じく2月新着の『うな丼の未来』は、現在のウナギ問題を直球で取り上げた大警告の書である。本書のほうは、もう一歩ひいて”ウナギと日本人”の付き合い方の、これまでとこれからについて、多角的に教えてくれる一冊である。蒲焼だけでなかった食べ方や民俗学的側面、あるいは過去の養殖や輸入の歴史、密漁についてなど。インタビューも豊富に載せている。
    著者は元共同通信社の記者で、在野の民俗学者とのことである。読みやすく、ぶらない文章が好ましい。もちろん、現在のウナギ問題についても著者の範囲できちんと考察されている。本書一冊で、かなりウナギについて詳しくなれるのは間違いない。

  •  ウナギの捕獲高が減少と言うニュースが流れていた。この本によるとウナギは「白いダイヤ」と呼ばれていた時代があったそうだ。最近でこそマリアナ海溝付近で産卵するようだと推定されてはいるものの、相変わらず詳しいウナギの生態はよく分かっていない。
     
     ウナギの中には、北に向かうと日本人と言う生き物がおれたちを好物としていて狙うので危険だ。そんなところに行くなんて嫌だと非行に走る「ヤンキーウナギ」が出ても不思議ではない。それでも運悪く人間に捕まってイオンの売り場デビューを果たすウナギもいるかもしれない。ウナギにどれだけのコミュニケーション能力があるか知らないが、もし記憶力もあればウナギ萌え~の生き物が生息しているくらいのうわさは広まるはずだ。

     そんなことはさておき、ウナギを巡る人間の戦いは今も昔も行われている。昔は、と言っても戦後間もないころの話だが、ウナギの稚魚を救って一晩で3万円になったという話が載っている。

     ウナギの養殖の歴史は、東京の深川で始まったと書かれている。明治の初めごろに深川の池にウナギを話したことから始まったとあるが、シラスからの養殖は大正時代になってからとある。その後、土地不足になり浜名湖沿岸で事業化されるようになった。

     ウナギで儲けたウナギ成金がいたとして、著者はウナギ仲買い業者の1人、相曾保二(あいそやすいじ)の著書「浜名湖うなぎ今昔物語」を引用している。持ちなれない金を手にして飲む、買う、打つと定番の散在三位一体を行うものが出てひんしゅくものだったと書かれている。ウナギバブルだけにつかみどころがない。

     これから先ウナギの運命はどうなるのか。さすがに絶滅とはいかないだろうが、何らかの対策を立てないと本当に消えてしまう可能性がある。つかみどころがないウナギの生態だが、何とかつかんでウナギの生産量を増やしてもらいたいものだ。

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著者プロフィール

1944年生まれ。民俗研究家。 著書に『サンカの真実 三角寛の虚構』『葬儀の民俗学』『新・忘れられた日本人』『サンカの起源』『猿まわし 被差別の民俗学』など。

「2023年 『漂泊民の居場所』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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