本をつくる 書体設計、活版印刷、手製本――職人が手でつくる谷川俊太郎詩集

  • 河出書房新社 (2019年2月18日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (226ページ) / ISBN・EAN: 9784309256276

みんなの感想まとめ

本ができあがる過程を深く掘り下げたこの作品は、読者に本への愛情を新たに呼び起こします。職人たちの緻密な作業や情熱が、文字やページに込められた思いとして語られ、普段意識しない本の背後にある世界を知ること...

感想・レビュー・書評

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  • 手製の「本をつくる」仕事とはこんなにも大変なのかというのが、正直な感想。プロフェッショナルなお仕事の素晴らしさを堪能し、完成までのドキュメンタリーに参加したような、そんな気がしている。

    谷川俊太郎さんの詩集「私たちの文字」が出来上がるまでの工程を、時間軸に沿って丁寧に記録した本で、写真も豊富。職人さんたちのインタビュー記事も読みごたえがある。
    ちょっと面白いのは、先にフォントありきで、それに合わせて谷川さんが詩を寄せたという点。
    既存のフォントを使用せずに書体から手作り。さて、どんな風に?興味津々で読んでいく。

    発案は「本づくり協会」による「一篇の詩のために文字をつくる」というもの。
    書体設計士・鳥海修さんが詩人・谷川俊太郎さんのために文字をつくったら一体何が起きるのか。2016年12月の編集会議の場からスタートだ。

    鳥海さんが用意した3種類の文字見本から、谷川さんが選ぶ。
    次に仮名文字をつくっていくのだが、その工程が最大の見どころだ。
    試作をして方向性を定めたら、一文字20ミリ角で下書き。
    下書きに墨入れをし(筆で手書き)、次にホワイトで修正。
    現物の写真も登場するが、まるで「ひらがな練習帳」のよう。
    更に一文字48ミリに拡大して再び修正、仕上げとなるが、次に一文字ずつ切り離して台紙に張りスキャンしてデータ化していくのだ。

    この間鳥海さんは何度も迷い、修正を繰り返す。
    でも素人目には全く問題など見つけられないのが残念なところ。
    やがて文字が完成して詩が書き下ろされる。
    あとは詩の世界をいかに損なわないようにつくっていくかだ。

    次は「組版・活版印刷」だが、「組版」とは指定された文字や図をページに配置すること。
    パソコンでなされる作業だが、戦前から続く組版工・活版職人である「嘉瑞工房」の「高岡昌生」さんがこれを請け負う。
    新しい文字の金属活字を鋳造する職人さんが今の日本にいないため、樹脂凸版を作成して活版印刷で刷ることになる。本のページは蛇腹折り。経本と同じだ。そして紙も選ぶ。表は和文。裏は英文。
    何度も何度も試作を繰り返す。「文字づくりの方がはるかに大変ですよ」と言いながら。

    さて、ようやく製本。これは製本歴60年の職人「美篶堂(みすずどう)」の仕事。
    資材を選び、束見本をつくり、表紙をつくり・・完成したのは発案から実に2年後。
    本書の最初にあらわれる、シンプルで美しい立ち姿の本だ。
    完成目指してとことんこだわりぬいた結果が、この時の流れということ。
    もう良いのでは?と画像を見て何度そう思ったことか。
    人の手による本づくりは、加速度的に消費されていく今の世には合わないのかもしれない。
    それでもたまらなく惹かれるのは、ものづくりの原点がここにあるからだ。
    読みながら、眺めながら、紙の手触りやインキの匂いまで漂ってきそうなほどの魅力がある。今すぐ手に取りたい、ページをめくりたい、文字を見たいと心から思った。

    完成した本をもし手に入れたら、職人さんたちのことなどそっちのけで読むのだろう。
    それは、彼らが意図的に姿を隠し、息をひそめているからだ。
    技だけを求めてひたすら進み、完成に向けて尽くしぬく。そして、後は沈黙する。
    読みやすいと感じる本の隙間に、彼らの仕事は空気となって宿っている。
    職人さんたちのインタビューでは、彼らの志に触れることが出来るのも嬉しい。
    出来れば完成した本を読んでからこちらを読みたかったところだが、何しろ500部の印刷だ。
    私の手元になどまわるはずもない。
    でももしも、もしも手に入れられたら読んでみてね。
    いつか手づくりで本を出したいという方にも、参考になりそう。いいなあ、ものづくりって。

    • ししまるさん
      『製本大全』(グラフィック社)『本づくり大全』(美術出版社)という技術書二冊とと並べたらきっと壮観!
      『製本大全』(グラフィック社)『本づくり大全』(美術出版社)という技術書二冊とと並べたらきっと壮観!
      2020/08/07
    • nejidonさん
      夜型さん、こんにちは(^^♪お元気ですか?
      コメントの中にある二冊の本を検索してみました。
      すごい豪華(*^-^*) まさに壮観ですね!...
      夜型さん、こんにちは(^^♪お元気ですか?
      コメントの中にある二冊の本を検索してみました。
      すごい豪華(*^-^*) まさに壮観ですね!
      フォントから作るということさえ未知の分野だったので、非常に興味深い内容でした。
      一冊ずつ手作りで(技術を継承しながら)読者に手渡すというのが、今後の紙の本のありかたかもしれないですね。
      猛暑が続きます。どうぞご自愛ください。
      2020/08/07
    • shimomuuさん
      いいなあ、ものづくりって。っていう感想、まさに!でした...
      いいなあ、ものづくりって。っていう感想、まさに!でした...
      2021/04/05
  • ◆詩の魂を汲む職人仕事[評 カニエナハ(詩人、装丁家)]
    本をつくる 書体設計、活版印刷、手製本 鳥海修、高岡昌生、美篶堂、永岡綾著:Chunichi/Tokyo Bookweb(TOKYO Web)
    https://www.tokyo-np.co.jp/article/book/shohyo/list/CK2019050502000191.html

    河出書房新社のPR
    「詩人・谷川俊太郎の詩のために新しく活字を作るとしたら?」1つのお題の元、書体設計士、活版印刷職人、手製本職人が集まり、やがて一冊の本が出来上がった。その過程を追った記録の書。
    http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309256276/

  • 具体的に本を作ろうと思って手にとったわけではなく、本の感じから偶然手に取っただけだったけど、文字を作成するパートが興味深くて、最後まで読んでみることに。

    一冊の本は複数の業者さんが協力して作るということ。文字のデザイン完了後に、次の段階で別の業者さんによって文章を配置してみた時に、ひらがなと漢字のバランスを調整したという。デザイナーとの信頼関係があるからこそ、成り立つエピソード。

    デジタルでは行き届かないアナログの部分で、職人さん達のこだわりが隠されていることが心に響いた。

  • 谷川俊太郎詩集『私たちの文字』ができるまでの軌跡

  • 本がもっと好きになる本

    職人はひっそりと息を潜めているのですね。

  • 書体設計士が文字をつくり、詩人が詩を書き、
    組版工が活版印刷するためにそれを組み、製本職人が製本する。

    さんざん本を読んできたけれど、本ができあがるまでの過程に
    思いを馳せたことがなかった自分の浅さを恥ずかしく思いました。

    500部しかない完成本、いつか手にとることができますように。

    ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
    【本文より】

    ・積み重ねてきた人生の断片は、思い出として脳裏に残るだけでなく、職人の指の動き1つ1つに流れ込み、今に繋がっている。

    ・背筋を伸ばして、真面目にぶつかる。

    ・「不幸になることは易いが幸福になることは難しい 愛と優しさ それに不断の自己反省と強く生きる意志 ここに幸福への道がある」谷川徹三

    ・僕自身、この文字の形をずっと探しあぐねて、ここに辿り着きました。

    ・「本」と一口にいっても、いろいろなものがあります。1回読んで捨ててしまうような本を、わたしはつくりたいとは思いません。/美篶堂の親方

    ・To live in hearts we leave behind,Is not to die. (志を継ぐ者がいれば、死んだことにならない) 

    ・本にも一点物のルリユールから機械製本まで、多様なつくり方があります。そんな中、インダストリアルとクラフトの間にあるのが美篶堂ではないかと思っています。

  • 本ができる一連の工程に関わる職人視点のお話。
    専門職としての立場にインタビューで語られる話の一言一言がずっしりと重い。
    その重さを感じながら本ができるとはどういうことかの真理に近づいた本に思う。
    多様性のある世界の中で残る形としての製本。
    手触りや組版を感じながら本に触れていたい。

  • 谷川俊太郎さんにとことん対峙して作られた文字「朝靄」。その文字から生まれた詩「私たちの文字」。その詩をもっとも活かせる形で組版・印刷し、素直な美しい製本で本の形に仕立てる。
    職人たちがそれぞれの分野で最高のパフォーマンスをする。物づくりにかける矜恃が伝わってきた。ひとつのものを作るのに、本当に色々なひとが関わっていて、これからは本を読むときも、色々なところもじっくり味わいたいなぁと思った。
    本作りのなかでも、文字を作る「書体設計士」の仕事は今回初めて知り、とても興味深かった。

  • 谷川俊太郎詩集『私たちの文字』ができるまでの軌跡―。一篇の詩のために書体設計士が文字をつくり、詩人が言葉を紡ぎ、それを組版工が組んで活版印刷し、製本職人が手作業で仕上げる。これは、人の手による本づくりの過程を追いかけた記録である。(出版社HPより)

    ◆◇工学分館の所蔵はこちら→
    https://opac.library.tohoku.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=TT22130194

  • 文字をつくるひとと、言葉をつくるひととが、出会って、その対峙からうまれたものがひとつずつ組み上がっていく

    延々と、試して調整、試して調整、試して調整、、、

    「完成」と、「調整が済む」とは違うんだろうな、と思った

    文字つくりはものすごい悩みがよくみえた
    それが、ひとつの向きに定まったあと、後の工程にいくほど、悩みはあるにしても、揺らぎの幅は縮まり、完成に向かって収斂していく、素晴らしいです

    谷川俊太郎の詩が、これまた良い

    あー素晴らしい

    これだよね、これよ

  • (図書館員のつぶやき)
    職人!いい響きです。あなたはどんな職人さんをうかべますか。この本は本の職人さんです、うーん、すごい、一文字に、形に、紙に、大きさに・・・こだわった一冊
    が出来上がります。ちょっと読みたくなりませんか!借りてみらんですか。

  • [図書館]
    読了:2019/6/30

    「さ」の文字が浮いて見える…

  • 谷川俊太郎の詩集が出来上がるまでの記録。書体設計士がフォントを作り、活版印刷業者が組版・印刷し、製本業者が装丁を考えて製本する。出来上がった本は、いわゆる「豪華本」といわれる装丁が豪華なものではない。どちらかというとシンプル。でも、その工程にかけられた時間と手間を考えると、これほどの豪華本もないだろう。

  • 本が好きで、本に携わる仕事に就きたいと思ってた頃があったので書店で見つけた時は即手に取りました。
    結局そういった仕事には就かなかったので、私的疑似体験ができて非常に満足です。

    書体設計士、組版・活版印刷職人(この呼び名で良いのだろうか…)、製本職人、のそれぞれの章に分かれ、丁寧にその過程が記録されていて読んでいて常にわくわくとどきどきが味わえた。
    私たちの手元に本が届く限り、そういった仕事があるんだなーと漠然とした想像はあるけれど、実際にどんなことをしているのか詳しくはわからない。
    読み終わって思ったことは、「工場見学的なものはないのかな……」という実際に見てみたいという好奇心……。

  • この本はちょっと凄い。
    谷川俊太郎の詩集をつくるために、書体設計士が書体をつくり、活版印刷所が組み版・印刷をし、製本工房が手製本をする工程が収められた本。

    もちろん、普通は詩のために書体を設計することはない。
    だからこの企画は特別で、商売と言うよりは、純粋にそれぞれの職人が自らの仕事に向き合っている様が収録されている。

    やっぱり、ものづくりって憧れる。
    そして、ものづくりをしている人たちは凄い。普段は知ることのない仕事の様子を垣間見ることができる一冊だ。
    出版された実際の詩集を持っていなくても、価値のある一冊。

  • モノを作ると言うことがどう言うことなのか、
    感じさせてくれる優れた本。

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著者プロフィール

鳥海 修(とりのうみ おさむ)

書体設計士。1955年山形県生まれ。多摩美術大学卒業。79年写研入社。89年字游工房の設立に参加する。ヒラギノシリーズ、こぶりなゴシック、游書体ライブラリーの游明朝体・游ゴシック体など、ベーシックな書体を中心に100以上の書体開発に携わる。2002年佐藤敬之輔賞、05年グッドデザイン賞、08年東京TDCタイプデザイン賞を受賞。12年から「文字塾」を主宰し、現在は「松本文字塾」(長野県松本市)で明朝体の仮名の作り方を指導している。22年には個展「もじのうみ 水のような、空気のような活字」(京都dddギャラリー)を開催した。著書に『文字を作る仕事』(晶文社、日本エッセイスト・クラブ賞受賞)、『本をつくる 書体設計、活版印刷、手製本――職人が手でつくる谷川俊太郎詩集』(河出書房新社、共著)がある。

「2024年 『明朝体の教室 日本で150年の歴史を持つ明朝体は どのようにデザインされているのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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