- Amazon.co.jp ・本 (213ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309260877
感想・レビュー・書評
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現代に生きる“悩んでしまってテータラクな”男たちをその根本から救済せんがために書かれた「秘本世界生玉子」「蓮と刀」の続編。完結編である。
とうとう話しは古代ギリシャにまで及んでいる。「日本人に古代ギリシャは関係ないだろっ!」と思う人は今のこの世の中の複雑さというものがわかっていない。時代を経るほどに人はややこしくなっているのである。
男は、幼児、少年、青年を超えて大人になる。わたしの場合、ついぞ大人にならないままもう老人になりかかっている。ちょっと、悔やまれるところもあるが、人生は人それぞれの過ごし方があってもいいだろうから関係各位のみなさまにはご容赦願おう。
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昭和63年2月第2版発行とあるから、25年前頃に読んだ本。
久々に読み返してみたくなったが、この本は文庫化されてないようだ。
扉と最終ページに蓮と刀・青年編四巻仕立とあり、歌舞伎調というのだろうか、長い長い予告文章が綴られている。
これを知らずや エディプスの始まり見たり不破の関
遠望深慮続篇栄(おもいはふかきごにちのおめみゑ)
濡れる心の哀しさにねぐら貸そうよオレステス
「橋本治と内田樹」でも内田先生がこの四巻仕立の予告のことを聞いているが、橋本氏は単にこの予告文が書きたかったというのである。再読してみると、やはりこのギリシャ編のあと、中世を語り、キリストを語る構想があったと思う。
ヨーロッパの近代が古代ギリシャを理想として発見してしたのだ、という。
アテナイに民主政治が成立したのは、短い期間のことだったし、スパルタなどの他のポリスは全く田舎のままだった。
何故、突然完璧が生まれたのだろうか。例えばギリシャ彫刻は何の準備期間もなく、完成された美を成立させる。
しかし、こういう問いかけは、著者の場合、それって本当かとひっくり返すことも度々である。
男は女と関係を持ち、女の中に母を見る、そして父となることで、父ライオスと息子オイディプスは同一する。被害者と加害者の同一による犯罪事実の消滅。同一人物の分裂にまつわる犯行の恐怖がオイディプスコンプレックスなる呪縛の正体。こういう論は判り易そうで、ややこしい。物凄く面白くて、よく判らない。
近代による前近代の抹殺が我々の呪縛ということだろうか。
この頃の著者は判らない莫迦は相手にしていないんだろうな。
「あんた達に“分からない”という権利なんかない」
未来に対しては観念的という手探り状態しかない。
「あんた達に俺のことを“分かりにくい”なんて言う権利なんかない」
女性は歴史の中にまともに存在したことがあるだろうか、と問いてくる。
後半は父の敵として、母を殺すオレステスと彼を唆す姉のエレクトラの話。
オレステスはゼウスの系譜。そしてゼウス以前の父が子を虐待し、その報いを受ける歴史が検証される。そして、ウラノス=前近代。クロノス=近代。ゼウス=現代との論証。思わず本当かよと言いたいところ。
前近代を死滅する近代という親殺しが語られる。そして、男の観念は“立派な自立した女”を作り、その女が生まれたおかげで、父を倒すような男の子は生まれる機会を失ってしまった。“女神を祀るアテナイは似たりや似たりフェミニズム”という予告文の意味に、やっとたどり着く。
結局、ギリシャに自分でものを考える個人は生まれてなかったという結論が導き出される。今だって個人になってない人間は多いだろうし、女性の分裂をどうにもできない男という悲劇も変わらないかもしれない。
最後は一気呵成でもうちょっと、ゆっくり分かりやすく話して欲しかった。まあ、あり得ないことだけど。
だけど、あるはずの続巻がないんだから、チョットは文句を言っていいんじゃないだろうか
読み返してみたって、なかなか判らないし、五〇過ぎても、難しいものは難しい。
また、いつか読み返そうかさねば。 -
ホモに興味関心のある作者だものなあと思い理解したいが、やはりこれは老後の楽しみに取っといて先に行こう。