仕事場対談―和田誠と27人のイラストレーター

著者 :
  • 河出書房新社
4.00
  • (3)
  • (1)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 22
レビュー : 2
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309264998

作品紹介・あらすじ

日本を代表するクリエイターたちが現場で打ちあけた。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 正直知らない人もいたけれど絵を見ると知っていたり。皆さん自分の作品に対するプライドが高い。違う業界の話を聞くのは楽しい。

  • 対談集にもピンからキリまである。書くという行為に比べて、話すという行為は自己抑制が働かない嫌いがあるのか、組み合わせによっては勝手な口吻ばかりが目について、読んでいて鼻持ちならない気がしてくる物もある。その反対に、相手との間合いの取り方がうまく、自然に話者の持ち味を引き出すのに長けた人もいる。和田誠は差し詰め後者の代表である。

    相手の仕事場を訪ねての対談はインタビューに近く、同業者ということもあり、対談者も気を許して和田との対話を楽しんでいる様子がよく伝わってくる。使っている紙や筆記用具の種類、エッチングやリトグラフの手法、絵の具の種類や色指定の方法についての話などは、実際にイラストレーターを志している人にとっては、有益な情報となるものかもしれない。

    対談の中にも出てくるのだが、不思議なのは、そういった技法についても隠すことなく開けっぴろげに話し合える関係である。みな、仲が好いのだ。一番よくけんかするのが双子の兄弟である田島征三と征彦兄弟だというのが面白い。番外の座談会で宇野亜喜良が言っている。「芸術家だと思想があるわけでしょ。そうするとおまえの絵は何だという論理的な展開で難しいことを言い合ったりするんだけど、我々はお互いを容認する、社会が仕事をさせているんだからみんな同じだみたいなところがある」。いい意味での職人気質なんだろう。互いに相手の仕事振りが気に入っているのだ。手を動かし続けてきた人達の持つ共同体意識のようなものもあるのかもしれない。

    60年代、横尾忠則が、あの独特の絵柄と色遣いで人気が出てきた頃、イラストレーターは時代の花形だった。新宿で石を投げるとイラストレータにあたるとさえ言われたほどだった。その頃、京都で開かれた横尾の展覧会に行ったことがある。皮のジャケットを着た横尾はテレビで見るのと少しも変わらず、シャイで繊細に見えた。当時は憧れの職業だったのだ。

    柳生弦一郎のように画風がまったく変わってしまった人もいるが、峰岸達やスズキコージのように、あの頃の画風を今も伝えている人もいる。イラストレーターと言うものの、絵本作家やグラフィックアーティストといった方が通りのいい人もいる。27人もいれば、まったく知らない人がいても不思議はないのだが、名前は知らなくても、どの人の絵もどこかで見たような気がするのが不思議だ。

    新聞や週刊誌の表紙、単行本の装丁、挿画、あるいは絵本、漫画と、彼らの出番は多い。読者は知らず知らずのうちにそこに描かれた絵を導き手として、本の世界に入りこんでいるに違いない。一時期と比べて、イラストレーターという言葉にかつてほどのインパクトを覚えなくなった。それだけ彼らの仕事がスタンダード化しているということだろう。ちょっと名が売れるとアーティストと呼ばれたがる人種の多い中で、イラストレーションという仕事にこだわる人達の心意気が憎い。

全2件中 1 - 2件を表示

著者プロフィール

イラストレーター、グラフィックデザイナー、映画監督、エッセイスト。1936年生まれ。多摩美術大学在学中に日宣美特選。ライトパブリシティ勤務後、フリー。1977年から『週刊文春』表紙絵を担当、昨年2000回を数えた。

「2018年 『定本 和田誠 時間旅行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

和田誠の作品

ツイートする