蒼い時

  • 河出書房新社
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感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (40ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309265025

感想・レビュー・書評

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  • 絵がとても好き。色は青と黒と白だけ。
    とくにこの、暗い色調の青がよい。

    犬かヤギかよくわからない動物2匹(訳者は犬だと言っているが)が、各ページで一言ずつコメントする。

    しかし2匹の発言は、噛み合っているようで噛み合っていない。例えばこんなふうに。

    「人生のすべてが メタファーとして解釈できるわけじゃないぜ。」(Not everything in life can be interpreted metaphorically.)
    「それはいろんな物が 途中で脱落するからさ。」
    (That's because things fall out on the way.)

    いろいろこじつけたくなる誘惑にもかられるけれど、それぞれ無関係な声と聞いたほうが、なんとなく広々として爽快な気持ちになる。

    また、妙な日本語(原文はローマ字)で書かれたページもある。
    「カンパンヨ-イス ノ リョーキン ワ トクベツ ニ イクラ デス カ?」
    「キブン ガ ワルイ」
    (絵は団扇のデザインを反復したようなもの) 

    訳者の柴田元幸氏自身、
    「ゴーリー邦訳もこれで5冊目だが、訳がわからないという点では、いままでのなかでこれが一番訳がわからないということになるだろうか」
    と書いている。そう、訳わかろうとすればするほどドツボにはまりこむ。

    だから言葉は字面どおり受け取らねばならないとして、
    ひとつ気がついたのは、この2匹の動物たちが決して正面を向かないこと。横顔ばかり見せている。

    それから、ひょっとして口を持っていないのかもしれないということ。私の解釈では、この2匹、お互いに向かって言葉を発しているのではなくて、じつはそれぞれどこかから降ってくる声を聞いているのではないか。そんな気がしてきた。

  • 不思議な動物たちが、世界の色々な場所に出現。

    不穏なテイストは少なく、ある意味ほんわかした、間の抜けた感覚を味わえるゴーリー本。

    そしてあいかわらず、文章はしみじみ味わえる

    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
    僕は絶対 他人の前で君を侮辱しない。
    君の言うことはすべてつながってるってこと
    僕はつい忘れてしまう。
    ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

  • ブルテリアみたいな犬2匹が交わす会話。少し離れた場所にいて、会話の断片が時折聞こえる情景を想像し、届かなかった言葉を色々と憶測してみると趣深い。例えば、夕暮れ時に、2匹がテラスへの扉を開け放った居間で向かい合って大きな椅子に腰掛けている場面での会話。
    「生きることじゃなくて、生きてもらうことが大事なんだ。」「そのひとこと、ほかのいくつかと一緒に書き留めておかなくちゃ。」人生の黄昏時についての話なのかなと憶測すると色々な背景が浮かんでくる。

  • 蒼が美しい。

    どこか間が抜けた可愛さを持つ2匹。
    それに対局なまでの言葉(文章)の数々。
    理解できない。でも感じる。

    言葉を折り重ね、愛(動物・人間愛)を小難しく語り合っているのだろうか。

  • ゴーリーの絵本にしては珍しく可愛らしい本。『なんとなく哲学ふうの、いくぶん切ない物憂げな気分を、きわめて快く喚起してくれる』本。2匹の犬の一見チンプンカンプンな会話。何か深い意味が込められて…いるのかしら?この意味不明さが心地良い癖になる。初見では「ゴーリーにしてはつまらない」と思ったけど、じわじわくる魅力ありマス。

  • 独特の韻を踏んだ文章を原語で楽しめないので、そう言う意味では味わうのが難しい作家でもあるエドワード・ゴーリー。「読み解くのが難しい」「哲学的なのか奇天烈なだけなのか判別しにくい」と言う印象が強いが、旅行嫌いな作者がスコットランドに行った時の事を描いたと言うこの本、深く考える事なく、これは知らない土地でその瞬間々々に頭の中をよぎった「旅行」とは関係ない頭の中の独り言を書いた物と言う印象で、黄昏時に関わらず、人は場所に相応しくない事を散文的に思うもんだよなぁ、解る、と思った一冊。

  • 旅行嫌いのゴーリーが珍しくスコットランドへ赴き、その思い出を表紙にいる二匹の犬に託して語った絵本。
    訳者・柴田元幸さんによると「犬」かどうかも不明のようですが。どのあたりがスコットランドなのか、またかみ合っているのか微妙な会話ばかりと謎だらけ。ほぼ全作を訳している柴田さんが分からないなら、わたしが分からなくても当然か(笑)見た目は全く同じ二匹だが、会話からなんとなくおっとり系とひねくれ系に分かれているように思う。ワインの会話がお気に入り。とぼけた表情の犬たちを眺めるだけでも楽しめる一冊。

  • 『旅嫌いのゴーリーが、唯一遠出したというスコットランド旅行での思い出を二匹の犬に託して語る摩訶不思議な物語』とありますが、どこら辺がスコットランド?犬なのか?コレ(笑)。…で、やっぱり意味不明。訳者もやはりワケワカランという事なので、自分の知力のせいじゃないと一安心。英訳の途中に日本語の文章(ローマ字)があるのは何故?本に不備があるとされ通販元から\0で送られてきたけど不備見つからず。もしかして【あいしあお 。】という活字の部分かと推測しますが、これなら解説を読めばワザとと思われるので無問題^^

  • ◆もう、スコットランド旅行の覚書を2匹の犬に託して語るという設定だけで、犬好きの私には十分。◆パラパラと気楽に読む。タロットカードみたいな本。体調や気分によって、読み取れる意味やイメージが変容する。◆こんなところで日本語がでてくるなんて! しかもこんな言葉(笑)◆原題直訳は「蒼い時」。挿絵の背景もまさに青。「黄昏時」という意味で用いられるらしいが、2匹の対話のつかみどころのなさは「黄昏」の語源「誰そ彼(たそかれ)」に、なるほど似つかわしい。◆手元に置きたい「愛らしい(by訳者)」本。眠る前の理想の1冊。【2013/03/13】

  • 人生は理屈通りにはいかない。いろんなものが抜け落ちるから。

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著者プロフィール

1925年シカゴ生まれ。独特の韻を踏んだ文章とモノクローム線画でユニークな作品を数多く発表。おもな邦訳に『うろんな客』『ギャシュリークラムのちびっ子たち』など。2000年没。

「2023年 『どんどん変に…』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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