くまとやまねこ

著者 :
  • 河出書房新社
4.39
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本棚登録 : 1772
レビュー : 282
  • Amazon.co.jp ・本 (48ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309270074

作品紹介・あらすじ

突然、最愛の友だち・ことりをなくしてしまった、くま。くらくしめきった部屋に、ひとり閉じこもっていたくまが、やがて見つけた、あたらしい時のかがやき。感動の絵本。

感想・レビュー・書評

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  • なかよしの ことりが 死んでしまう場面から始まる、この絵本。「死」というテーマは、重く 悲しいので、そこを じっと見つめることは、辛いかもしれませんが

    この絵本は そんなテーマを、詩のような世界観、そして繊細で情緒あふれる絵によって、やさしく あたたかな作品に、仕上げています。

    「きみは この ことりと、ほんとうに なかがよかったんだね。ことりが しんで、ずいぶん さびしい思いを してるんだろうね」

    忘れられない現実があった時に、それを受けとめて、また 前を向くまでには
    こんな風に、状況を まるごと 受けとめてもらえることが、きっと 必要なのだと思います。

    誰かに受け入れてもらえることで、悲しい現実が満たされて
    そこから やっと、次の視点へ 目を向けることができる。

    流れてゆく時間を 止めることはできませんが
    一緒に過ごした 輝きは、なくなることは ありません。

    せつなさの中に、希望を含んだ
    素晴らしい一冊です。

  • 「夏の庭」や「ポプラの秋」の湯本香樹実さんの絵本です。

    心優しいくま。大の仲良しのことりが亡くなり、言い知れぬ喪失感に引きこもってしまいます。きのうの朝も「きょうの朝」だった。あしたの朝も「きょうの朝」と言うんだろう。あさっても。これはとても深い示唆に富んだセリフです。どんなに辛いことがあっても時間は流れていく。そしてまた「きょうの朝」は必ずやってくる。きのうの朝はもう「きょうの朝」ではなくなっている。こうやって、人は毎日をそのときそのときの「今」を一所懸命生きるため、「きょうの朝」をぬりかえていくんだろうなと思います。ことりは、「きのうの朝」より「あしたの朝」より、「きょうの朝」がすきさ、と言っていました。私たちも過去の辛い事にとらわれ過ぎたり、未来の心配ばかりにとらわれるよりも、今日という一日を大切に過ごしたほうがいいですよね!

    優しいくまは、喪失から立ち直れず、茫然とした生活を送っています。でもある日ようやく風や草のにおいにつられ、外に出てみるといつも見てきた自然がキラキラ光って見えます。そして、やまねことの出会い。やまねこは、ほかの動物のように、忘れろとは言いません。「ほんとうに仲がよかったんだね。ずいぶんさびしい思いをしているんだね」と声をかけます。この言葉に、くまはようやく重く閉ざした心の扉が開きます。

    人生辛いことが多い。人にいろいろ相談し、救いをもとめるけど、大概の場合、自分の心の整理には時間が必要で、ただ聞いてほしい、気持ちを分かったうえで、優しく同調してほしい、それだけでいい、、そういう部分が多いにあるでしょうね。男性である私は、ついついあれこれ論理的に考えてアドバイスを考えてしまいがちですが、実はそんなことは今いらないんだ、という事が多いです。やまねこのように、心に寄り添うことで、くまはようやく今までの楽しかったことりとの日々を受け止め、前にすすめるようになります。とても大切なことを改めて学ばせていただきました。

  • 死んでしまった人との別れが辛い、こういう経験を子どもに伝えるのに良い絵本。もちろん、大人にも。
    白黒の絵が死を経験している辛い心とマッチしていて深く心をえぐってくると同時に、やまねこの音楽が色付きで見えてくるような感覚を感じた気がする。
    国語の教科書にあったスーザン・バーレイの『わすれられないおくりもの』とともに死について考える本として合わせて読むのも良いと思う。

  • やまねこが待ってくれる友達で本当によかった。

    あなたのそばで、悲しんでいる人がいたら

    どうか待ってあげてほしい。

    自然に心が癒えるまで。

    自分の心に逆らわず、静かに時を待って

    少しずつ顔を上げられるようになるまで。

    また笑えるようになるまで。

  • 2008年発表。


    だって僕たちは、
    ずっとずっと
    いっしょなんだ。



    突然最愛の友達である
    「ことり」を亡くしてしまった、くま。


    くまは手作りの箱に
    花びらを敷き詰めて
    そっと「ことり」を入れ、持ち歩くようになります。


    箱の中を見るたびに
    困った顔をする森の動物たち。
    そしてみんな決まって言うのでした。

    『くまくん、ことりはもうかえってこないんだ。つらいだろうけど、わすれなくちゃ』


    くまは、暗く締め切った部屋に、ひとり閉じ籠ってしまいます。

    でも、やがてくまにも
    光あふれる、新しい時が訪れて…。



    小説『夏の庭』でお馴染みの湯本香樹実さんと
    絵本作家・酒井駒子さんの夢のタッグが実現したコラボレーション絵本です。



    酒井さんの描いた
    モノクロの
    繊細かつ重厚な絵柄と共に
    『ことり』を失い
    誰とも口をきかなくなった
    くまの悲しみが
    ひしひしと伝わってきて
    本屋さんで涙ウルウルになりました(汗)



    くまは
    音楽を弾きながら
    世界中を旅して回る
    『やまねこ』と
    やがて運命の出会いをします。


    くまの悲しみを受け止めて
    優しく寄り添ってあげることのできる
    『やまねこ』も
    過去に同じように
    死を乗り越えてきたからなのかもしれない。

    『やまねこ』のような人に
    自分もなれるかな。


    死と向き合い
    乗り越えていかなくちゃ。


    忘れるのではなく
    思い出として
    一緒に生きていこうと誓ったくまのように
    愛する人や身近な人との別れを
    人はどう受け止め
    乗り越えていけばいいのかを
    優しく教えてくれます。


    突然やってくる死や別れを
    怖れることなく
    忘れることなく


    やがて来る新しい出会いに
    胸ときめかせて。

  • やまねこがヴァイオリンを弾いている絵が特に良かった。
    グリーフケア

  • とても優しい気持ちになれる素敵な絵本。
    大好きな酒井駒子さんの絵に湯本さんのふんわり穏やかなお話が載る…なんて贅沢な世界!

    仲良しのことりが亡くなり悲しみにくれるくま。
    一緒にずっと「きょうの朝」にいられると思っていた。
    きのうの朝よりあしたの朝より「きょうの朝」が一番好きだから。
    けれど大好きなことりが亡くなり「きのうの朝」に戻りたい、と大粒の涙をこぼすくま。
    ことりのことを思い出すと辛いかもしれないけれど、無理して忘れなくてもいいんだよ。
    ずっとずっと友だちなんだから。
    大切な誰かを亡くした時、くまにとってのやまねこのように、悲しい気持ちにそっと寄り添ってくれる友だちがいてくれることって素敵なことだ。
    くまとやまねこの楽しい演奏が聴こえてくるようなラストに温かな気持ちになれた。
    何かと疲れがたまっている大人にこそ読んでほしい絵本だと思う。

  • 大切な友だちを亡くしてしまった“くま”が、悲しみに暮れ、少しの間閉ざし、そして“やまねこ”と出逢い再生していく物語。
    出逢いと別れ、そして新たなる出逢い。テーマはとても普遍的なのだけど、酒井駒子さんの美しい絵とともに描かれているこの絵本からは、“くま”の言いようのない悲しみや再生の喜びが、とても深く優しく伝わってきます。

    大切な誰かを失った時、一度深く深く落ち込むことって必要なことだと思う。すぐに元気を取り戻す必要なんてない。
    暗い闇の中からある日抜けて見えた空はとてもきれいに見えるし、そのあとの新しい出逢いも素直に受け入れられるようになると思うから。

    “やまねこ”もきっと誰かを失った経験があってこその、“くま”への優しさだったのだと思う。
    このふたりの旅が出来るだけ長く続いてくれることを祈りたくなるような、そんなすばらしい絵本です。

  • くまと、小さなことり。
    どんなに大好きでも、”生きている”限り、ずっと一緒にはいられない。

    「こんな日が来るなんて・・・」
    ある朝起きると、ことりは静かに横たわったまま。
    あまりにも大切な存在を失ったとき、心の支えが突然失われたときでした。

    「忘れなさい」
    そう周りの動物たちはささやきます。

    そんなある日、旅をしていたやまねこに出会います。
    自然と悲しみを包み込んでくれるやまねこと話すうちに、
    くまはことりと過ごしてきた日々を一つ一つ、思い出していくのです。

    「忘れる」のではなく、「乗り越える」のではなく、
    悲しみは悲しみのまま抱えていても、前に進めること。
    くまは自然と、ことりの死に向き合えるようになっていきます。

    早く立ち直るのではなく、自分のリズムを刻みながら生きてね。
    大切な人を失ったすべての人に、そんなメッセージをくれるような1冊です。

  • すごく切なくて、優しい絵本だった。
    亡くなったことりをきれいな箱に入れてあげた様子で、飼い犬を見送ったときを思い出して泣きそうになった。
    森のみんなもくまくんのことを思っての言葉だったろうけど、やまねこが一番必要な言葉を掛けてくれた。きっとくまくんが想像するように、やまねこにも似たような経験があったんだろう。それを思ってまた泣きそうになった。

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著者プロフィール

湯本香樹実
1959年、東京都生まれ。東京音楽大学卒。小説『夏の庭 The Friends』で日本児童文学者協会新人賞、児童文芸新人賞を受賞。同作品は10カ国以上で翻訳され、ボストングローブ・ホーンブック賞、ミルドレッド・L・バチェルダー賞などを受賞。『くまとやまねこ』(絵・酒井駒子)で講談社出版文化賞絵本賞受賞。その他に、小説『夜の木の下で』『岸辺の旅』、絵本『おとうさんは、いま』(絵・ささめやゆき)『わたしのおじさん』(画・植田真)『きつねのスケート』(絵・ほりかわりまこ)など。絵本の翻訳も手がける。

「2019年 『あなたがおとなになったとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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