ジョン・レノン ロスト・ウィークエンド Instamatic Karma
- 河出書房新社 (2008年11月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309270579
感想・レビュー・書評
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1973年秋から75年初頭にかけ、ジョン・レノンがオノ・ヨーコと別居生活を送った、いわゆる「失われた週末」。その時期をジョンとともに暮らした中国系アメリカ人女性の著者が、多数の未公開写真とともに当時の思い出を綴った本だ。
文章は写真の合間に挟まれている程度で分量も少ないので、あっという間に読み終わる。基本は写真集である。
「失われた週末」といえば、従来の評伝などでは、「ジョンが愛するヨーコと仲違いしたことでうちひしがれ、酒に溺れて無為に暮らした日々」として扱われている。本書は、そうしたイメージをくつがえす内容だ。
ジョンがこの時期酒に溺れぎみだったのはたしかだが、彼はメイ・パンと楽しく暮らしていたようだし(古女房と別居して若い愛人と暮らしていたのだから、楽しくないはずがない……なんて言ったら怒られるか)、音楽活動の面でも充実した日々を送っていた。『心の壁、愛の橋』や『ロックン・ロール』も、この時期に生み出されたアルバムなのである。
何より、本書に掲載された多数のオフショットに見るジョンの自然な笑顔が、「失われた週末」が不幸な日々ではなかったことを雄弁に物語っている。
そもそも、本書の「はじめに」で明かされているが、「失われた週末」期にメイ・パンとジョンをくっつけたのは、ほかならぬヨーコ自身なのである。
ヨーコは、レノン夫妻のアシスタントとして働いていたメイ・パンに対して、「ジョンは誰かほかの人と一緒に暮らすことになるだろう、その相手は『ジョンをうまく扱うことのできる人』であってほしい」と言い、「あなたがジョンと一緒になるといいと思うの」と言ったのだという(!)。
本書の随所に登場するメイ・パンの写真を見ると、美人ではないしキュートでもない。そして、タイプとしてはやはりオノ・ヨーコを少女っぽくしたような感じだ。メイ・パンはヨーコにとって、「安心して夫にあてがうことのできる愛人」であったということか。
まあ、そういう舞台裏のドロドロはともかく、本書は秘蔵エピソード満載で興趣尽きないし、写真集としてもなかなかよい。
とくに強い印象を残すのは、ジョンのもとに、当時10歳だった息子のジュリアン・レノンが遊びにきたときの写真。ジュリアンの写真は多数掲載されており、本書のもう1人の主役といってよいのだが、その表情はなんとも愛らしく、しかも寂しげなのだ。
前妻シンシアとの間に生まれたジュリアンが、生前のジョンと過ごすことのできた日々はごくわずかだった。数少ない父子の交流の一つが、本書には刻みつけられているのである。詳細をみるコメント0件をすべて表示